見せよう会通信 (最新映画寸評) 本文へジャンプ
2011年新春特別号  

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あけましておめでとうございます。

全国的には少し荒れ模様の年明けであったようですが、
東京に関しては風が冷たかったとはいえ、
ほぼ晴天の内に新しい年を迎えました。

昨年10月に痛めた膝が完治せず、
今まで毎年行っていた新末広橋までは行けず、
初日の出ジョギングはいつも走っている晴海大橋へ。
結構多くの人が来ていて驚きました。
高層マンション群の間から初日の出を見ることができました。
月並みながら、良い年となりますように願いました。


2010年1年間に見た映画は313本になりました。
これほどの数になったのは、
古い映画をかなり見たことによるものです。
最近ロードショー館で新作映画に合わせその監督の古い作品を、
特集上映的に公開することも多く、
そうした作品と純粋に名画座での主に日本映画の古い映画をたくさん見ました。
数えてみると、今年の新作以外の作品を78本見ていました。


新作として見た235本から選んだ私のベスト10は次のようになりました。



<日本映画>


    1.悪人

    2.ヘヴンズストーリー

    3.告白

    4.最後の忠臣蔵

    5.必死剣 鳥刺し

    6.Colorful カラフル

    7.オカンの嫁入り

    8.ケンとジュンとカヨちゃんの国

    9.十三人の刺客

   10.川の底からこんにちは


「悪人」は現在の日本社会で普通に見られる風景を、
主人公たち男女二人の視点で描きながら、
ある種の普遍性にまで到達した作品だった。
家族という社会の最小単位自体が崩壊しつつある日本の、
人との結びつきの新しい方法を見出し得ないでいる社会の姿が、
見ている者に訴えかけてくる。
多くのエピソードの中に人の結びつきの在り方を問う「ヘヴンズストーリー」も、
我々に問いかけてくるものの多い作品だった。

今年は時代劇が多い年でもあった。
かつて映画の黄金時代(1950年代)には、
アクション、コメディ、サスペンス、人生劇などバラエティに富んだ時代劇が、
多く作られていた。
藤沢周平原作の映画化は、ここ数年毎年のように作られてきた。
「必死剣 鳥刺し」はその中でも一つの頂点ではあるまいか。
今のサラリーマン社会にも通じると言われる藤沢周平原作の映画が、
時代劇製作を細々と支えてきたのだが、
今年は幅が広がった。
「最後の忠臣蔵」はほとんどアクションのないもう一つの忠臣蔵ものであり、
アクションの頂点を目指したのが「十三人の刺客」のリメイクである。
小説では根強い人気を保っている時代劇、
そうした小説の映画化を中心にこれからも一定の時代劇が作られていくだろう。


世界的には飛び抜けてバラエティに富んだ作品が作られているアニメ映画、
今年はライトノベルを原作とする「colorful カラフル」が、
劇映画と同じ、いやそれ以上とも言える感動を与えてくれた。


無縁社会が流行語にもなる現代の日本社会、
「オカンの嫁入り」は新しい家族の在り方、
人の結びつきを描いて元気をくれる映画だった。
今日本に必要なのは心を温かくしてくれるこんな映画かもしれない。



<外国映画>

    1.白いリボン

    2.冬の小鳥

    3.シングルマン

    4.息もできない

    5.ハートロッカー

    6.インセプション

    7.シルビアのいる街で

    8.ペルシャ猫を誰も知らない

    9.瞳の奥の秘密

   10.ロビンフッド


「悪人」が主人公は悪人だろうかと問うことで悪人とはと投げかけたのに対し、
「白いリボン」は人の中にある悪の存在を描き、
それを顕在化させる社会、宗教などに思いをさせる力を持っていた。
あえて白黒画面を使い宗教的戒律を感じさせるハネケ監督は、
一方で子供に悪意を含んだ笑いをさせている。

笑いを忘れてしまった「冬の小鳥」の主人公ジニは、
9歳でフランスに養子として送られる。
少しの甘ささえ見せず淡々と描いたルコント監督の凛とした姿勢に感じ入る。

ハリウッドは多くの空疎な大作を作りだす一方で、
「ハートロッカー」や「インセプション」のような新しさをも送り出してきた。
どちらの作品も見ている観客の心をわしづかみ、
その緊張感は尋常ではない。
爆発の恐怖を超拡大して見せた「ハートロッカー」、
頭脳の中に深く潜っていく「インセプション」、
共にその描写の力強さは見事という他ない。

現代の映画のキーワードの一つはリアリティだろう。
ドキュメンタリーかと見まがうドラマ作りが増えているのではないか。
そんな中、街を歩いている感覚そのままに
映画の新しい世界を感じさせる「シルビアのいる街で」や、
現在のイランの街を舞台に音楽家たちの生き方を描く「ペルシャ猫を誰も知らない」
は、リアルの一つの在り方を教えてくれる。

2010年の映画興行収入は過去最高になると言われている。
3D映画が通常の料金以外に追加料金を収受、
その影響で「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」「トイストーリー3」
の3作品が百億円を超える収入をあげたとされる。
過去最高であれば映画界は好調ととられがちだが、
その一方、前号でお伝えした通りつぶれている映画館も多い。
単館系映画館が立ちいかなくなりつつあるのである。

上記のベストテンで、単館系で上映されたものは日本映画で4本、
外国映画で7本に上る。
これらがもし公開されていなかったとしたら、
何んとつまらないベストテンになっただろうか。

どんな文化形態においても、バラエティを失うことは
幅を失い、ベーシックなものの在り方を縮小していくだろう。

2011年はより多様な作品に出会えるように祈らずにはいられない。


                                                                                                         神谷二三夫

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