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■大江健三郎略年譜

  
アトミック・エイジの守護神
新潮社文庫  
定価:476円(税別)
頁数:頁(文庫版)
ISBN4-10-112607-0
カバー画:山下菊二 初出:1964年1月号 『群像』掲載
短篇のおもしろさ
 原爆孤児を10人集めて救済をしようとした男がいた。怪しげな経歴をもち、現在もアラブ式健康法道場を開いている。若い作家は偶然に広島でその男をめにし、興味をいだいた。男は10人の孤児にひとりあたり300万円の保険をかけ、受取人を自分にしている。戦後の混乱をたくみに生き抜く男である。
 すでい孤児は4人が死に、6人だけになってしまった。
 戦争、原爆を扱っているが、そこに集中して読むよりも、ひとつの物語性を楽しむのがいい作品といえる。

 <冒頭>

 ぼくがその中年男をはじめて見かけたとき、かれはABCCの建物のなかの廊下で、立ったままむせび泣いていた。かれは泣きながらも、顔をおおっていなかったので、ぼくはかれの浅黒く青みがかった丸い顔の涙に濡れてぱっちり見ひらかれた海驢(あしか)の眼みたいに愚鈍そうな眼をいかにもはっきり見たことをおぼえている。


 <出版社のコピー>
  核時代の苦いユーモア
 <お勧め度>
  ☆☆☆★ 

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