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■大江健三郎略年譜

    
幸福な若いギリアク人
講談社  
解説:尾崎真理子
定価:5000円(税別)
頁数:18頁
ISBN978-4-06-509000-8
ブックデザイン 鈴木成一デザイン室 初出:1961年 雑誌「小説中央公論」1月号掲載
北海道を舞台にした明るい物語
 ギリアク人というあまりなじみのない民族をテーマに書かれた作品。日本人としてはあまりにも顔のつくりが異なっていたのだろう、20歳の製材工は勤め先の同僚からインディアンとよばれていた。終戦後に母親と二人樺太から引き上げてきた青年は自分の出生についてなにも疑問に思うこともなく育ってきた。そんな若者がある日自分より少し年輩のひとに「おまえは、ギリアク人だ」と断定的に言われた。それまでギリアク人については全く知識を持ち合わせていない青年は自分のアイデンティティーについて初めて興味を持つことになった。
 ギアヌク人というのは一般にはなじみがない民族だがチェーホフの「サハリン島」とか村上春樹の「1Q84」とかに出てきたので知っているひともいるかもしれない。樺太以北にいる少数民族である。
 この作品が発表されたのは1961年であるが大江はその2年前に北海道礼文島を訪れている。この作品の構想はそのときの経験によるものかと思われる。
 大江作品としては同時期に書かれた「セヴンティーン」のような衝撃性はないが明るい作品として読んでいても楽しくなる。しかし大江らしいしかけがいくつも見ることができ作品としては重要である。
<冒頭>
 アメリカ・インディアンのように皮膚が黒く硬いのでインディアンとよばれている二十歳の製材工が工場のまえの黒褐色の土層のむきでている広場で子供らと一緒に、しゃがみこんで、一頭の樺太犬を見まもっていた。
<出版社のコピー>
雑誌発表以来57年、初の書籍化!
<おすすめ度>
 ☆☆☆ 


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