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■大江健三郎略年譜


  
   狩猟で暮したわれらの先祖
新潮社文庫  
解説:渡辺広士
定価:552円(税別)
頁数:79頁(文庫版)
ISBN4-10-112609-7
カバー画:山下菊二 初出:1968年2月号〜5月号、8月号 雑誌『文藝』掲載
故郷の森から出てきた六人組との関わり

 単行本として出版された「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」では第三部「オーデンとブレイクの詩を核(コア)とする二つの中編」の最初の作品。
 
 大江健三郎の特長である表現方法がよくあらわれている作品、想像力の結実。明治、大正、終戦以前の昭和、そして終戦後の文芸作品の数多く書かれた時代。それらを経てでのことではあるが、この作品あたりから大江の特異性は突き抜けてくる。全く異質な、他の作家が近寄ることのできない作品を次々と発表し始めた。

<冒頭>

 夜明けがたに、幼女が犬に咬まれたといって救助をもとめる叫び声が聞えた。また、犬の吠え声もひと声だけ、舗道からたちのぼるのを聞いた。それは悲鳴のようにも聞えた。この時刻に、舗道を幼女が歩いているのは、どういうことかと不審に思いながら、僕は眠った。
 
<出版社のコピー>

外部からおそいかかる時代の狂気、あるいは、自分の内部から暗い過去との血のつながりにおいて、自分ひとりの存在に根ざしてあらわれてくる狂気にとらわれながら、核時代を生き延びる人間の絶望感とそこからの解放の道を、豊かな詩的感覚と想像力で構築する。「万延元年のフットボール」から「洪水はわが魂に及び」への橋わたしをする、ひとつながりの充実した作品群である。

 
<おすすめ度>
☆☆☆★    

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