2021年 2月号back

 

冬らしい寒さがやってきた。
季節ごとの変化を感じられる日本。
映画という文化が今後どうなるにせよ、
やはり心落ち着いて作品に向き合えるのは、
そう、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

12/26~1/25の年末年始を含む31日間に出会った作品は43本。
新/旧作では28/15と旧作の比率が少し高い。
見たい旧作が多かったのに加え、新作の作品不足が響いている。



<日本映画>

   9本(新7本+旧2本)

【新作】

約束のネバーランド 
無頼 
ジョゼと虎と魚たち 
AWAKE 
大コメ騒動 
おとなの事情 スマホをのぞいたら 
本気のしるし

 

【旧作】
<生誕100年 映画女優 山口淑子>
霧笛

<世界のミフネと呼ばれた男>
宮本武蔵

 

 

<外国映画>

   34本(新21本+旧13本)

【新作】
新感染半島 ファイナル・ステージ
  ( Peninsula) 
ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢
  (The High Note) 
ソング・トゥ・ソング
  (Song to Song) 
Away
  (Away) 
ヘルムート・ニュートンと12人の女たち
  (Helmut Newton-The Bad and The Beautiful) 

燃えよデブゴン/TOKYO MISSION
  (肥龍過江 / Enter The Fat Dragon) 
パリのどこかで,あなたと
  (Deux Moi / Someone,Somewhere) 
GOGO 94歳の小学生
  (GOGO) 
チャンシルさんには福が多いね
  ( Lucky Chan-Sil) 
スタント・ウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち
  (Stuntwomen The Untold Hollywood Story) 
ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!
  (Bill & Ted Face The Music) 
ハッピー・バースデー 家族のいる時間
  (Fete de Famille / Happy Birthday) 
アンチ・ライフ
  (Breach)
キング・オブ・シーブス
  (King of Thieves)
43年後のアイ・ラブ・ユー
  (Remember Me) 
パリの調香師 しあわせの香りを探して
  (Les Parfums / Perfumes) 
ミッドナイト・ファミリー
  (Midnight Family) 
どん底作家の人生に幸あれ!
  (The Personal History of David Copperfield) 
KCIA 南山の部長たち
  ( The Man Standing Next) 
羊飼いと風船
  (気球 / Balloon) 
天空の結婚式
  (Puoi Baciare Lo Sposo

  / My Big Guy Italian Wedding)

 

【旧作】
価値ある男
  (Animas Trujano / The Important Man)

 

<ソフィスティケイテッド・コメディへの招待>
フィラデルフィア・ストーリー
  (The Philadelphia Story) 
グッド・フェアリー
  (The Good Fairy) 
襤褸と宝石
  (My Man Godfrey) 
オペラ・ハット
  (Mr. Deeds Goes to Town) 
気まぐれ天使
  (The Bishop’s Wife) 
女性No.1
  (Woman of the Year) 
淑女超特急
  (That Uncertain Feeling) 
ちょっとフランス風
  (Slightly French) 
素晴らしき休日
  (Holiday)
花嫁凱旋
  (Theodora Goes Wild) 
無責任時代
  (Nothing Sacred)、
うわさの名医
  (People Will Talk)

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

3日前までベスト1、2はないかと思っていた。それくらいパッとした作品がない。最後の追い込みで、やっと次のようにすることができた。


①  KCIA 南山の部長たち
韓国の大統領は、その多くが退任後主に金銭的な罪で逮捕されてきた。今年の1月14日に判決が確定した朴槿恵(パク・クネ)は朴正煕(パク・チョンヒ)の娘。1962~79年と長く大統領職にあった朴正煕はKCIAの部長に暗殺された。その日までの40日間を硬質なタッチで描いた作品。実話を基にしたフィクションとのことだが、その緊張感は本物。部長を演じるイ・ビョンホンは流石の演技。

 

②-1 パリの調香師 しあわせの香りを探して
フランスらしい洒落た映画がやってきた。香水の調香師の世界を優雅に、適度なユーモアを交え描いて最後まで飽きさせない映画らしい映画。監督・脚本はグレゴリー・マーニュという人。ジャーナリストの後、ヨットで大西洋ひとり旅、その日々をカメラに収めて初映画作品、ドキュメンタリーとフィクション、脚本と監督の間を行き来しているとサイトにあった。長編映画としては2作目。要注目。

 

②-2 羊飼いと風船
1969年生まれのペマ・ツェテン監督はチベット映画人のパイオニア的存在と言われる。小説家としてスタートした後、2002年から北京電影学院に学んだ。日本では映画祭での上映はあったものの、この作品が初の劇場公開作品となった。チベットの高原に暮らす羊飼い一家の生と死、性と女性問題を描く。素朴な、しかし力強い映画。今月のトークショー参照。

 

③-1 ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢
コロナ禍の状況とは言え、もう少し宣伝が頑張ってほしかった。実にしっかり、内容のある映画だった。音楽業界の内側を丁寧に描いている映画で、音楽面でも楽しめる。

 

-2 新感染半島 ファイナル・ステージ
4年前の「新感染ファイナル・エクスプレス」の続編はさらにパワーアップ。ゾンビ度アップ。カーチェイス、女性活躍など見せどころ満載の映画。

 

 

 

他にも楽しめる映画が映画館でお待ちしています。(上映が終了しているものもあります。)


約束のネバーランド:孤児院が実は怪物に対する食用の児童を育てる施設だったという漫画からの映画化。なかなかに面白いが、怪物が出てきてちょっとファンタジーになった。

 

ジョゼと虎と魚たち:田辺聖子の小説からアニメ化。2003年には犬童一心監督によって実写映画も作られている。今回のアニメ版は主人公ジョゼを助ける大学生の恒夫の部分を少し膨らませて、共感性の高い作品になっている。

 

Away:ラトビアの若者が3年半の時間をかけ一人で作ったアニメーション。まるでかつての新海監督のようだ。画面の美しさで引き込まれる。台詞もなく自然の中をオートバイで走り抜ける青年のロードムービー。

 

AWAKE:昨年Numberが藤井聡太特集を出したり、将棋界は結構盛り上がっている印象だ。プロ棋士とコンピューター将棋ソフトが戦う電王戦にヒントを得て書かれたオリジナル脚本による本作は、プロを目指す少年から青年の姿を描き見せてくれる。脚本を書き、自ら監督もして商業映画デビューを果たしたのは1980年生まれの山田篤宏。

 

パリのどこかで、あなたと:パリに住む二人、ガンの免疫治療の研究者メラニーと倉庫で働くレミー。ごく普通の生活を送るそれぞれが交わることなく悩んだり、喜びを得たりする結構リアルな若者たちを描いたのはセドリック・クラピッシュ。いつも若い人を描いている。

 

チャンシルさんには福が多いね:本作で長編映画デビューとなったのは韓国の女性監督キム・チョヒ(1975年生)。パリ第一大学で映画理論を学んだ後、ホン・サンス監督のプロデューサーとして何本かに関わったという。映画の主人公も映画のプロデューサーで女性、映画の始まりで監督が飲み会で死んでしまう・・・?元気ととぼけた笑いが一杯。

 

大コメ騒動:富山で起こった女性中心でのコメ騒動を描く映画。1918年(大正7年)に実際にあった事件で、全国的ではなく富山では有名らしい。室井滋、柴田理恵、立川志の輔等の出演者、本木克英監督も富山出身。

 

ハッピー・バースデー家族のいる時間:さすがに最近は実年齢に近い母親役が多くなったカトリーヌ・ドヌーヴの新作は70歳の誕生日を祝う母親役。南仏の彼女の家に集まってくる3人の娘、息子とその家族など。庭に並べた食卓で食事をしながらも、家族の間を嵐が吹き抜ける。どんどん激しくなる嵐の中での余裕を見ていると、流石に肉食人種と変に感心。

 

キング・オブ・シーブス:2015年ロンドンの宝飾店街ハットンガーデンの貸金庫から約25億円の宝石、現金が盗まれた。しかして、その犯人は?平均年齢60歳以上の窃盗集団だったという実話を映画化。最高額、最高齢の金庫破りの実態を描く。マイケル・ケイン、ジム・ブロードベント、トム・コートネイなど出演者も当然高齢。

 

本気のしるし:4時間弱の長編は、名古屋テレビのドラマを編集して1本の映画にしたもの。漫画を原作とした作品を監督したのは深田晃司監督、それなりによくできているのだが、武正晴監督の「アンダードッグ」と同じような冗長さを感じることがあった。

 

ミッドナイト・ファミリー:メキシコからのドキュメンタリーは、メキシコシティで繰り広げられる違法私営救急車の世界を見せてくれる。900万の人口に対して公営救急車は45台しかなく、その間隙を縫って違法救急車が夜の街を駆けめぐる。

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<外国映画>

渋谷シネマヴェーラで上映された<ソフィスティケイテッド・コメディへの招待>に通い先月号の1作品にプラス12作品を楽しんだ。楽しめた7作品を見た順に。

 

フィラデルフィア・ストーリー:再見。1940年、ジョージ・キューカー監督の有名作。これでジェームズ・スチュアートがアカデミー主演男優賞を取ったというのには驚く。

 

グッド・フェアリー:1935年、ウィリアム・ワイラー監督作品は、プレストン・スタージェスの脚本が素晴らしい。これほど笑った映画は新作を含めても久しぶり。

 

オペラ・ハット:1936年、フランク・キャプラ監督作品。彼らしく社会批判を含みながら、純朴、純真な田舎青年のゲーリー・クーパーをうまく生かして笑いを取っている。

 

気まぐれ天使:1947年、ヘンリー・コスタ―監督作品。天使になるケーリー・グラントが素晴らしく、司教のデヴィッド・ニーヴン、その妻のロレッタ・ヤングと絶妙の配役。

 

女性No.1:1942年、ジョージ・スティーヴンス監督作品。スペンサー・トレイシーとキャサリン・ヘップバーン共演の記念すべき第一作。これも脚本が素晴らしく、面白い。

 

素晴らしき休日:1938年、ジョージ・キューカー監督作品。K・ヘップバーンとC・グラントのコンビは、この年に前作「赤ちゃん教育」があり最高作品が並んでいる。

 

うわさの名医:1951年、ジョセフ・L・マンキウィッツ監督作品。ケーリー・グラントが名医役、名優ヒューム・クローニンが意地悪な悪役で共に似合い過ぎ。

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー

 

123日 シネスイッチ銀座 羊飼いと風船 ペマ・ツェテン監督
コロナ禍の折、対面トークショーはできず、北京にいる監督のオンライントークショーとなった。
チベットの羊飼いを描く作品は、言葉はそれほど発せられない。行動で示されるようなところがある。画面に現れたツェテン監督は、朴訥な感じの人だった。しかし、一旦話し始めると、きちんと長く話されることが分かった。観客からの短い質問にも、返ってくる答えは十分な長さがある。
中国におけるチベットの位置からなのだろうか、あるいはオンラインのカメラの位置なのか、ちょっと伏し目がちの監督だった。
今回の作品は1990年代半ばを想定している、中国がまだ一人っ子政策をしていた時期で、この時期でないと描けない内容にしたとのこと。羊飼い一家には3人の子供がいて、罰金も払っているようだ。この回答からも分かるように、監督は深い考えのもとに物語の設定をしている。非常に知的な印象を受けた。
なお、子供たちが祖父の背中に白い粉を塗りながらというシーンがあり、あれは何ですかという質問に、チベットにはマッサージをする時小麦粉をまぶす(?)ことがあるのですとの回答がありました。

 

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき


●ビル・プルマンが演じる父親は長い間DJをしていて、娘のマギーは音楽にあふれた環境で育ってきたという設定の「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」は、音楽業界内部がきちんと描かれているのが良い。大スターを演じるのはダイアナ・ロスの娘トレイシー・エリス・ロスというのだが、知らない人だった。この作品はコロナの影響でアメリカでは劇場公開されず、配信されたらしい。私が見た時は結構人が入っていて安心したが、もう少し宣伝されても良かった作品だ。

 

●ドニー・イェンとは思えない写真に驚いた「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」のポスターだ。“太っても、最強”の惹句の如く超太った体型、顔面も膨らんでまるで別人だ。エンドロールには太造り過程が出てくる。多く出てくる東京は歌舞伎町、築地、東京タワーと総てセットで撮られたというのも驚き。竹中直人も食えない刑事でグー。楽しめました。

 

●下着姿の男が走り回る「チャンシルさんには福が多いね」は、韓国の女性監督が自分の経験から作られたようだが、最近この手の自分の内面会話の相手を実際の男性が演じる映画が続く。始まりは「おらおらでひとりいぐも」、次が「私をくいとめて」だった。3作目がこの作品だが、韓国映画を含め主人公はすべて女性だ。

 

●女性スタントを追ったドキュメンタリー「スタント・ウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち」を見ていて、スタント運転をする女性もいることを知った。女性アクション映画も増えているので、当然と言えば当然だが。

 

●ディケンズの小説「デヴィッド・コパーフィールド」を映画化した「どん底作家の人生に幸あれ!」は、原作の細部まで覚えていない者にとってはちょっと厳しい映画化だ。人種入り乱れた配役にも驚くが、スピードあふれる物語の運びはついていけないほど。

 

●カリスマ・ウエディングプランナーのエンツォ・ミッチョ自身が出演している「天空の結婚式」は、舞台がイタリアの景勝地チヴィタ・ディ・バニョレージョだ。それにしても、この天空の村への長い橋はその橋脚がいかにも細く頼りなげ。大丈夫だろうか?

 

 

 

 



今月のトピックス:価値ある男   

 

Ⅰ 価値ある男


今月出会った価値ある男が二人。


三船敏郎
1961年のメキシコ映画「価値ある男」。主演は三船敏郎だ。1961年と言えば代表作の1本「用心棒」が公開された年でもあり、彼の絶頂期であったことは間違いない。そんな時期に何故メキシコ映画に出たのだろうか?三船の初めての海外作品となる。
「価値ある男」はメキシコの小さな村に住む男の物語だ。妻と4人の子供を抱えながら、自分は酒と博打に明け暮れ、畑は働き者の女房にまかせっきりでありながら、村祭りを取り仕切るマヨルドーモにはなりたいと願うダメ男だ。
日本とは全く関係のない物語であり役柄だ。画面で見る限り三船が台詞を言う時の口の形は台詞に合っている。どの映画でも台詞は完全に覚え、台本は撮影現場に持ってこないと言われた三船は、この映画でもスペイン語の台詞は完全に覚えていたと言われるが、最終的には映画は吹き替えで作られた。三船の腹に響く低音が聞かれないのは残念だが、少なくとも口の形には違和感はない。
日本人でありながらメキシコ人を演じて違和感がないのには驚いた。何度も妻や家族を裏切ってきた男を演じ、最後に妻の代わりに警察に自首するとはいえ、ほぼ最後までダメ男であり続けた役を演じたのも驚きだ。
この映画は結果的にはアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされるなど、様々な映画賞を受賞した。三船自身も同年に公開された「用心棒」と併せてブルーリボン賞の主演男優賞を受賞している。
昨年は三船生誕100周年ということで国立映画アーカイブでの特集上映が行われ、コロナ禍で開催が遅れた新宿武蔵野館での<世界のミフネと呼ばれた男>特集上映はこの1月に行われた。
デビュー作でありながら、印象強い悪役を演じた「銀嶺の果て」からして甘いところを排していた三船。敗戦直後、日本には何もなく、国民全員が生きることに必死であった時代。そうした時代に合っていた強さを持っていたのだろう。さらに、類稀な運動能力、反射能力があり、多くの作品でその片鱗を見せている。有名なのは黒澤の「蜘蛛巣城」で無数の矢が三船に向かって放たれる場面。大学の弓道部の学生に狙わせたらしいが、狙われた方はたまらないですよね。黒澤も三船ほど速い動きができる者はいないと認めているようだ。「用心棒」とか、あるいは他のどんな作品でも三船の華麗な動きを見ることができる。
今もって、世界で最も有名な日本の俳優と言って良いだろう。

 

 

ケーリー・グラント
12/19~1/22の約1か月にわたって渋谷シネマヴェーラで<ソフィスティケイテッド・コメディへの招待>の特集では39本が上映された。そのうち見たのは13本。もう少し見たかった。
高校生の頃、深夜に放映された週末映画劇場で多くのコメディを見た。他愛のない話が多く、その気楽さを楽しんだ。その頃からケーリー・グラントは好きだったのだが、今回の特集で5本のグラント主演作を見て彼の偉大さを再認識した。
コメディは勿論脚本が重要だ。特にソフィスティケイテッドと称されるコメディでは俳優が体技を使える訳ではなく、話の面白さ、人物造形の面白さが重要だ。しかし、コメディだからと言って、俳優がオーバーな演技をしてしまえば、洗練さは失われ狙いとは違った笑いになってしまう。かといって、真面目一方の演技では笑いは発生しなくなる。コメディほど演技のバランスのとり方が難しいものはない。
特に「気まぐれ天使」の天使役や、「うわさの名医」の名医役を見ていると、実際にはありえないような役柄を何の疑問もなく、自然に演じていて、見る方はいつの間にかその世界に入り込めている。簡単そうでいてこれはなかなか難しい。
彼の役を他の俳優が演じるところを想像してみると、ぞっとするのである。

 

 

 

 

 

Ⅱ 再び緊急事態宣言下の映画界


まずは首都圏の1都3県が1/8~2/7の期間で、追って2府5県が1/14~2/7の期間で緊急事態宣言が発せられた。再び飲食店に対する営業時間短縮要請、外出自粛の要請、テレワークの推進などが求められることになった。第一波の頃から言葉だけの要請がされてきた。先の見通しや改善計画等ははっきりしたものが提示されず、1年経とうとしているのに先が見えない。
映画界にとって幸いだったのは、映画館の閉鎖とはならなかったことだ。前回の緊急事態宣言では2か月近く映画館が閉鎖された。6月にオープンされた後も、座席を1席ずつ空けての販売となり、たとえ満席となっても従来の半分以下の収益しかあがらない状況だった。全席が使用可能となったのは9月19日以降だ。これ以降少しずつ成績は上昇していくが、完全に元に戻ることはなかった。そんな折、10月16日に封切られた「鬼滅の刃 無限列車編」が空前の大ヒットとなり、映画館・映画界にとっては救いの神となった。
しかし、それ以外に大ヒットとなる作品はなく、依然として苦しい映画界が少しずつ回復してきている時の緊急事態宣言発令だった。

 

今回の緊急事態宣言の映画界への影響を映画館と作品の状況から見てみよう。
【映画館】
今回は全面的閉鎖はなかったが、飲食店に対する営業時間短縮(20:00までの営業)要請に合わせ、映画館もほぼ20:00までに終映するようになった。演劇等の劇場にしても同様の措置をしており、飲食店以外に具体的な指示は出されていなかったが、横並びでの時間変更となった。
座席を1席ずつ空けることに関しては、多くの映画館は全席オープンで営業している。ル・シネマやシネスイッチなど、一部座席を空ける営業に変更したところもあるが。今までに映画館でのクラスターは発生していないので、感染対策をしっかり行えばという認識になっているのだろう。
サイト等での3日前からの席予約を中止し、当日予約のみ可としている映画館もある。

【作品状況】
外国映画の公開延期が再び増加している。つまり、アメリカなりで映画館が完全には開いていないため、大作を中心に映画館が開いて多くの集客が見込める時まで延期されているのだ。集客が少なければ製作費の回収ができないので、当然と言えば当然なのだが。
作品名:(最初の公開予定日→)最近までの公開予定日→延期の予定日 で表示しよう。
007 ノー・タイム・トゥ・ダイ:(2020/4→)2021/4→2021/10(全米予定、日本未定)
キングスマン ファーストエージェント:2021/3/12→2021/8
ピ-ター・ラビット バーナバスの誘惑;2021/4/2→2021/11
ゴーストバスターズ アフターライフ:2021/7→2021/11
モービウス:(2020/7→)2020/3→2022/1
ザ・スイッチ:2021/1/15→延期 公開日未定
日本映画でも延期になったものがある。
ザ・ファブル 殺さない殺し屋:2021/2/5→延期 公開日未定
これからも延期、或いは配信への変更等が発生することが考えられる。
それに関連して、特に外国映画の作品不足が目立つようになっている。

 

 

 

 

Ⅲ 健康と映画


この半年ほど膝を痛めている。以前から良くはなかったのだが、左膝が十分には曲がらず、90度くらいに曲げて長く座っていることがかなりきつくなったのだ。
色々な場面で座ることがある。地下鉄、バス等の乗り物。ラーメン屋のカウンター。そして映画館だ。どの場所でも左足が伸ばせるかが重要になっている。
座席予約ができる映画館では、左側が通路に面した席を確保した上で出かけている。
昨年「死霊魂」が公開された時、上映時間が8時間26分とありあきらめざるを得なかった。あまりに長く、途中休憩は2度ほど入るとはいえ、座り続ける自信がなかったのだ。
接骨院に通い、太ももの筋肉増のトレーニングをしてかなり改善はしてきた。
コロナと言い、映画にとって健康が大事だと実感するこの頃だ。

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号はそろそろ春が芽吹き始めるかなという2月25日にお送りします。


                         - 神谷二三夫 -


感想はこちらへ 

back                           

               

copyright