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開高 健 作品紹介 

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裸の王様
新潮社文庫  
解説:佐々木 基一
定価:438円(税別)
頁数:81頁(文庫版)
ISBN4-10-112801-4
初出:「文学界」昭和32(1957)年12月号
デビューの頃の開高健の傑作
 
 この本を読んだのは、大江健三郎の「死者の奢り」と芥川賞を争って、受賞を勝ち得た作品という興味で読んだ記憶がある。本当に大江作品を越えていたのであろうか、という気持ちからである。だから正直のところ期待はしてなかった。あくkまでも興味本位であった。
 しかし、すぐれた作品と思った。作品に序列をつけることは意味がないのでやらないが、一度は読んでおくべき作品と思う。開高の作品はいろんなジャンルに広がってゆく。自分達の世代にはベトナム戦争のさなかにベトナムへ向かった作家という印象が強い。そこからがスタートであったが、やはり遡ってこの作品に戻ってみる必要がある。
 今の時代にはこのようがごく私的な画塾があるとは思えないが、あるべきなのかもしれない。教育が本当に難しい時代に入ったと思う。しかし、ここに描かれているように昭和30年代もすでにその萌芽はあったのだ。
 題名となっている「裸の王様」は主人公が教えているこどもが描いた作品。越中フンドシをつけた裸の男が松の生えたお堀端をあるいている。チョンマゲを頭にのせ、棒をフンドシにはさみ、兵隊のように手をふってお堀端を闊歩している。

<冒頭>
  大田太郎は山口の紹介でぼくの画塾へくることになった。山口は小学校の教師をするかた
わら自分でも画を描いている男である。抽象派のグループに属していて、展覧会があると学
校を休んでも制作にふける。太郎のときも、ちょうど古典の会期に迫られていたので、自分
の担任クラスの生徒でありながら、ぼくのところへまわしてよこしたのである。
<出版社のコピー>
 打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作。