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      火の粉
著者:雫井修介
幻冬舎文庫
解説:藤田香織
定価:762円+税 
ISBN4-344-40551-X
2004年8月5日刊
隣人の笑顔を信じてもいいのか?
 この小説を読むと誰もが隣人が気になり始める。かなり恐ろしい話です。

 タイトルにもなっている小さな「火の粉」が、ある日大きな炎となって平和な
家族を呑み込んでゆくという物語。
 舞台は閑静な高級住宅街。そこに元判事で今は大学教授になっている
梶間勲は親子4世代で暮らしている。介護が必要となっている母親を軸に
自分の妻と姉との確執。さらに無職で司法試験を受けようとしている息子と
その嫁と孫。介護という難しく現実的な問題を抱えながらも世間的には平和な
生活であった。
 ある日、売れ残っていた隣家に一人の男が越してきた。その男は梶間勲が
無罪判決を下した男。一家惨殺事件という凄惨な犯罪の容疑者であったが、
証拠不十分ということで無罪とした。しかし、死刑という判決に対する裁判官
としての恐れの気持ちもあったのかもしれない。その男が実に巧みに梶間の
家庭に入りこんできた。そこから起こるさざなみは、やがて家庭を揺らがせる
ことになり、最後には大きな火の粉となり、一家を襲う。

 この小説では女性が実に重要な役割で登場している。勲の妻・尋恵や息子の
嫁・雪見、姑の曜子、勲の姉・満喜仔といった女性たちの言動が実に現実的に
描かれていて思わずうなってします。なんとかならないのかと、もどかしくて
ならない。これが実によい。


 注目したい作家です。

  <冒頭>
   「紀藤さん。昨日は結構遅かったんじゃないですか?」
 刑事一部の裁判官室を出たところで、梶間勲は判決草稿に何気なく目を落としながら、隣
に立つ右陪席裁判官の紀藤に小さく声をかけた。

<出版社のコピー>
   「私は殺人鬼を解き放ってしまったのか?」 元裁判官・梶間勲の隣家に、二年前に無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌ある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝い・・・・。武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴む。しかし、梶間家の周辺で、次々と不可解な事件が起こり・・・・・。最後まで読者の予想を裏切り続ける驚愕の犯罪小説!
  <おすすめ度>
☆☆☆★