■大江健三郎 まずはこれから
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■大江健三郎略年譜
治療塔
車椅子に乗った祖母と三十歳の娘。車椅子を押して来たのは、爆発による火傷のほかに
も全身に故障のある模様の初老の男。娘は日頃にない盛装の派手さを気にかけている様
子。かれらは歓迎会の人ごみから逃れて来た。「『新しい地球』から、おかえりなさい！」
「帰還者、この地球の希望！」というようなビラが通りにも見られる。
少年の日の記憶、生の途上における人との出会い。
「文章を書き、書きなおしつつ、かつて見たものを
なぞる過程でしだいに独特なものをつくってゆく」という
方法意識の作家「僕」が綴る、表題作九篇の短篇小説。
切迫した震える如き感動、時にユーモアと諧謔をたたえて
還暦近づき深まる、大江健三郎の精神の多面的風景。