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■大江健三郎略年譜

    
下降生活者
新潮社文庫  
定価:552円(税別)
頁数:33頁(文庫版)
ISBN4-10-112608-9
カバー画:山下菊二 初出:1960年 雑誌「群像」11月号掲載
《つきあっていたけませんか?人間仲間の愛です》
 
 中世フランス語の研究をする大学助教授であった男。大学で影響力のある裕福な名誉教授の末娘と結婚をして、学会での研究発表でも成功をする。九州の山村で小さな商家の三男だった僕は村での<希望>であり、いまや東京で勝利を得た。しかし、僕は、嘘つきの、他人の顔色ばかり見ている、感情の平衡をうしないやすく、恥辱感の強い、村の餓鬼どもの一人であった。今は路地に警官が入ってきたら大声で歌をうたって雇い主に知らせるという一日百円の仕事をしている同性愛者である。
 真実の自分になるため下降を選んだ男の思いはある時代の叫び声のようである。

<冒頭>

 僕はアルコル中毒でもないし、麻薬中毒でもない、僕は饒舌なだけなのだ。僕がとめどなくしゃべりたがるのは、これが僕の天性だからなのだ。もし僕の本質にもってもふさわしい形式が見つかれば、僕は小説を書くか戯曲をつくるかするだろう。

<出版社のコピー>
  
<おすすめ度>
☆☆☆☆

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