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■大江健三郎略年譜

  
蚤の幽霊
講談社文庫  
解説:鶴見俊輔
定価:533円(税別)
頁数:51頁(文庫)
ISBN4-06-183754-0
初出:1983年1月号 雑誌『新潮』
短編集「新しい人よ眼ざめよ」4番目の作品       
   
  障がいを持ちながらも19歳まで成長した息子イーヨーとの関わりが、ブレイクの画いた絵を媒体として描かれて行く。イーヨーは夢をみることがない。しかしそのイーヨーが<大丈夫ですよ、大丈夫ですよ!夢だから、・・・>と声をかける。子供の成長が宇宙的に語られて行く。

 この短篇のなかで語り手である「僕」は中編小説『みずから我が涙をぬぐいたまう日』を書き、さらには『同時代ゲーム』という長編を書いたと語っている。「僕」は大江健三郎そのものである。しかしこれはあくまでも小説である。フィクションである。
 この本人が現れながら、あくまでもフィクションであるというところが大江が作り上げた小説手法である。慣れるまで読者は複雑な思いで読まなければならない。

 
<冒頭>
   
  
この七月、若いアメリカ人が遊びに来ていた。ヴァージニア大学で、日本の作家ふたり、自決したMさんと僕について修士論文を書いている女子学生で、われわれの会話は、彼女としては研究のためのフィールド・ワークなのでもあった。
 
<出版社のコピー>
 
障害を持つ長男イーヨーとの「共生」を、イギリスの神秘主義詩人ブレイクの誌詩を媒介にして描いた連作短編集。作品の背後に死の定義を沈め、家族とのなにげない日常を瑞々しい筆致で表出しながら、過去と未来を展望して危機の時代の人間の<再生>を希求する、誠実で柔らかな魂の小説。
大佛次郎賞受賞作。
 
<おすすめ度>
  ☆☆☆☆
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