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■大江健三郎略年譜

    
近未来SF 治療塔
講談社文庫  
解説:小谷真理
定価:619円(税別)
頁数:281頁
ISBN978-4-06-275981-6
装丁:司 修 2008年2月15日文庫出版
初出:1989年7月 雑誌『へるめす』第20号から324号まで連載  
近未来小説
 雑誌掲載時の題名「再会、あるいはラスト・ピース」
 
 古い地球に残った残留者の少女<リツコ>が主人公。
 近未来の地球は汚染と破壊の泥沼の中であえいでいた。<新しい地球>の創生をめざした宇宙船団の<選ばれた者>たちが宇宙のかなたへ飛び立っていった。それに対し、古い地球にのこった<落ちこぼれ>である残留者たちとしてリツコは祖母とともにくらしていた・・・・・。

<冒頭>

   1
 マルス船長は虎斑の牝猫だが、年をとって大きく肥えふとり、自分が牡だか牝だかよくわからな
い様子。大出発の後、増えた野良猫が空地にあらわれると、年中マウンティングを試みる。今日は
うっそりと落ち着いて、窓枠の右隅に坐っている。陽のあたる左隅には、祖母がよく手入れしてい
るゼラニウム。祖母自身は窓から距離を置いた椅子にかけて外光をさけながら、うつらうつらして
いる。 − 死んだ者のように、と祖母はいうのだが、マルス船長ほどにも眼を開くなら、遠方はよ
く見渡すことができる眼だから、淡い緑の葉も赤い花もこぎれいなゼラニウムの鉢とはかけ離れた、
荒廃はなはだしい植生が見えるだろう。

<出版社のコピー>
 
<おすすめ度>
 ☆☆☆★
  岩波書店ISBN4-00-001360-2

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