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■大江健三郎略年譜

  性的人間
新潮社文庫  
解説:渡辺広士
定価:400円(税別)
頁数:113頁(文庫版)
ISBN4-10-112604-6
カバー画:ウイリアム・ブレイク 初出:1963年 雑誌「新潮」5月号掲載
初期の中篇傑作
 主人公Jの物語。前半と後半でそれぞれの短篇をつないだ実験的な作品。Jの暮らしぶり、生き方は1960年代の日本ではきわめて特異的といえる。一見石原慎太郎の作品に出てきそう。感情移入ができない作品として描かれているが、人間としての弱さにどこか惹かれるものがある。
<冒頭>

 暗闇のなかを象牙色の大きなジャガーが岬の稜の突端まで疾走してくる。ジャガーは夜の
海にむかって右に、滝のように不意に急勾配の降り坂となった枝道へはいりこみ、岬の南側
に脇の下のようにかくれている耳梨湾にむかった。ジャガーはアリフレクス16ミリを積んで
いる。車も、撮影機も、みんなからJ(ジェイ)と呼ばれてい29歳の青年のものだ。

<出版社のコピー>
痴漢をテーマに”厳粛な綱渡り”という嵐のような詩を書こうとする少年と青年Jを主人公に、男色、乱交などあらゆる反社会的な性を描き、人間存在の真実に迫る問題作。
<おすすめ度>
   ☆☆☆☆

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