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         スローグッドバイ
著者:石田衣良
集英社文庫
解説:香山リカ
定価:457円+税 
ISBN4-08-747816-5
写真:西郡友典 AD:松田行正 2005年5月25日刊
<気持ちのよい読書を楽しみましょう>
 
 著者の初めての「短篇集」。
 全編甘くほろりとにがい恋愛小説のオンパレード。女性作家が活躍する中で、いま最も安定的に
いい作品を出し続けている男性作家石田衣良(いしだいら)の初期作品集である。
 「あとがき」にも著者が書いているがここにある作品は「読み終わったあとで心地よい酔いを残すような
ラブソトーリー」である。こんな話ないよな、というような善人の男性が沢山でてくる。ここでは誰もが素直に
生きてゆけない、どこかで孤独な生き方をしている、ということは現代においては普通のひとたちのことだが、
その人たちがこうあって欲しい、こうひととひととの関わりを持ちたいと思う、そんな夢物語が綴られている。
これを甘すぎると思うひとは読まなくてもいい。でも、時にはちょっといい気持ちにしてくれる、ほんのささやかな
暖かみにふれてみたいと思う人には、お勧めである。
人生のワンシーンを鮮やかに描きたいという著者の思いは十分い成功しており、読み終わったあと幸せな
気持ちを味わえることは保証できます。

作品とは直接的な関係はないのだが、表紙の写真がとても素晴らしい雰囲気を持っています。西部友典という
写真家にも注目です。
 
<収録作品>
 
・泣かない
・十五分
・You look good to me
・フリフリ
・真珠のコップ
・夢のキャッチャー
・ローマンホリデイ
・ハートレス
・線のよろこび
・スローグッドバイ
  <冒頭>
  <泣かない>

 携帯の着メロが寝ぼけた頭のなかで鳴っていた。上昇と下降を繰りかえす、単純だけど一
度耳にしたら忘れられないメロディだ。ぼくの携帯には、J・Sバッハのコラール「主よ、
人の望みの喜びよ」が入力してある。机のうえの充電器におかれた電話にベッドから手を伸
ばした。部屋のなかは真っ暗なままだ。
 「もしもし・・・・・」
 「ごめん、おこしちゃった」
<出版社のコピー>
 
「涙を流さなくちゃ、始まらないことだってあるんだよ」。恋人にひどく傷つけられて、泣けなくなった女の子。彼女に青年の心は届くのか(「泣かない」)上手に別れるため最後にいちばんの思い出の場所へいく。そんな「さよならデート」に出かけたふたりが見つけた答えー(「スローグッドバイ」)など普通の人たちの少しだけ特別な恋を綴った10篇。出会いから別れまでの一瞬一瞬をやさしく描く傑作短篇集。


  <おすすめ度>
☆☆☆★