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時代が生んだリアルなファンタジー小説 2006年9月のベストおすすめ文庫
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      夜のピクニック
著者:恩田陸
新潮文庫
解説:池上冬樹
定価:円+税 
ISBN4-10-123417-53-5
カバー装画:唐仁原教久 2004年7月新書刊   2006年9月文庫刊
       
<さわやかな青春小説>

 高校生活の総括として24時間で80キロを歩く「歩行祭」に参加した融と貴子。この二人を軸にして物語りは展開をしてゆく。
江戸時代以前ならともかく現代人にとって80キロを歩き続けるという途方もない企て。ここに受験を前にした若者の悩み
喜びが描かれてゆく。物語はひっそりと進み、ドラマティックなところはない。あるのは仮眠をしていよいよ最後の20キロまで
来たところから。それまでの伏線がまたよい。淡々と若者が描かれてゆく。
ちょっとさわやか過ぎるのではないかと思えなくもないが、いやこういう作品があっていいのではないだろうか。
どろどろと描くだけが小説ではない。こうあって欲しいという希望が描かれているのはいいことだ。
情景描写が優れている恩田陸の文章を楽しめるのもいい。

 
 単行本で出ていた頃に比べて文庫版は表紙画・デザインが秀逸。実に見事に小説が表現されている。この表紙のために
本を買うのも悪くない。

  

<冒頭>
 
 晴天というのは不思議なものだ、と学校への坂道を登りながら西脇融(にしわきとおる)は考えた。
 こんなふうに、朝から雲一つない文句なしの晴天に恵まれていると、それが最初か
ら当たり前のように思えて、すぐにそのありがたみなど忘れてします。だが、もし今
のお天気がどんよりとした曇り空だったらどうだろう。または、ポツポツと雨が降っ
ていたりしたら。ましてや、吹き降りだったりしたら?
   
<出版社のコピー>
 
 高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、
北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。
三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために − 。
学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに
胸を焦がしていた。
本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 
<おすすめ度>
☆☆☆☆