2008年 1月号back


 師走の忙しい時期、一足お先に1月号をお届けします。
今年に悔いが残らないよう、残りの日々は映画館で。

 

 

今月の映画

 11/26~12/25に巡りあえた映画は19本、さすがに忙しく本数も少なくなるかな~と思いましたが。

<日本映画>

椿三十郎 
愛の予感、
ミッドナイトイーグル
日本の青空
魍魎の匣

 

<外国映画>

ベオウルフ 
マイティハート愛と絆
ある愛の風
君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956
ウエイトレスおいしい人生の作り方
マリア 
アイアムレジェンド 
エンジェル 
夜顔 
ここに幸あり
その名にちなんで 
サーフズ・アップ 
昼顔 
ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

   ※今月も、先月に続き4点作品が多い。

 

マイティハート愛と絆
 アフガニスタンで夫がテロ組織に誘拐されたジャーナリスト夫妻の話。フランス人女性ジャーナリストの実話に基づいている。元々ドキュメンタリータッチのマイケル・ウィンターボトム監督の特徴が上手く出て、緊迫感溢れるストーリー運び。ブラッド・ピットのプロデュースによるアンジェリーナ・ジョリー主演作という感じとは違う作品。


ある愛の風景
 デンマークのスザンヌ・ピア監督の作品が先月の「アフター・ウェディング」に続いて公開された。彼女の作品は細かい心理描写で、日常の隙間に潜む様々な感情を的確に表す。どちらもなかなかにきびしい作品だ。

 

その名にちなんで
 ニューヨークに住むインド人一家の物語。異文化の中で揺れる民族的なアイデンティティ。同じ民族だからOKという訳でもない話が良い。

 

 

次の作品もオススメです。

 

ミッドナイト・イーグル:日本映画のお正月作品では一番。


愛の予感:退屈になるほどの日常の繰り返しの中、二人は出会う。


君の涙ドナウに流れ:1956年のハンガリー動乱があくまで市民の目線で描かれる。


サーフズ・アップ:最近の流行り、ドキュメンタリータッチのリアルさのアニメ。


魍魎の匣:話はなんともという感じですが、映画の作りはかなりスムーズ。



今月のトピックス 


Ⅰ 黒澤映画のリメイク

 

 かつて、天皇のように日本映画に君臨していた黒澤明。1960年代前半までの黒澤は、確かにどんな作品であれ輝いていた。そのダイナミズムは誰もまねのできないものだった。だから、日本映画界の誰もリメイクなど考えなかったし、黒澤自身、許しもしなかったろう。

 

 そんな時、海の向こうで翻訳リメイクされたのが「荒野の七人」だった。
1960年、ハリウッドで作られたこの作品はスティーヴ・マックィーンやチャールズ・ブロンソン、ジェームス・コバーンなど幾多のスターを生み出した。作品に力があったからこそ、スターも生まれたのだし、オリジナルの「七人の侍」にはリメイク作品にも光を与えてしまう程の力があった。

 

 1964年にはイタリアから、「荒野の用心棒」がやってくる。
「荒野の七人」とは違い、著作権侵害、つまりことわり無しのパクリ作品。マカロニウエスタンの走りとなった記念碑的作品は、後のセルジオ・レオーネがボブ・ロバートソンという仮名を使ってでも、作ってしまいたいと思わせた黒澤の「用心棒」があったためにできたのである。最近TVで「天国と地獄」や「生きる」がリメイクされた(すいません、見ておりません)が、映画界でリメイクしようなどとは誰も思いもしなかった。いや、思ったかもしれないが、実行されはしなかった。それが、ついに行われたのである、「椿三十郎」で。勇気ある関係者は、森田芳光監督、織田祐二などである。

 

 「椿三十郎」はあの当時の黒澤作品にしてはゆったり感のある、それまでの緊迫感ある作品とは少し違う作りだといわれた。確かにコメディですからね、基本は。この作品を、手直し無しの同じ脚本で映画化するというのである。
勇気がある、確かに。コメディは作者の力量、役者のキャラ、実力、人柄が出てしまう。

 

 これは初めから負けが決まっているようなものだ。
で、やっぱり負けた。あまり見る気もしなかったのだが見てみるとこれはつらいものがあった。織田の一言一言の後から、三船の台詞回しの方が大きく聞こえてくるのである。どう見てもTV的な薄っぺらさしか感じられない俳優、織田では無理。いくら40歳になるといっても、年取れば良いというものではない。(年末で過激です!?)

 

 全く違う作品としてみればよいのだろうが、それは無理というもの。まあ、オリジナル作品をもう一度見て見たいと思わせる作品ということにしておこうか。

 

 

 

Ⅱ お正月映画の現在

 

 お正月が映画界にとって本当に良い時期なのかどうか分からないが、やはり年の初めとて、大作が揃うのが通例であり、似合っていた。明るく、派手な作品が似合う時期である。ここぞという大作、話題作が揃ったものである。

 

 しかし、今年のお正月は渋い。大作といえるのは、アイアムレジェンド、ナショナル・トレジャーくらいか。アイアムレジェンドなど、人類が一人になる話なので、当然といえば当然ながら寂しい感が漂う。ウィル・スミスと犬しか出てこないようなお話だ。
(作り方はなかなか良い。見る価値あり。但し怖い。)
その点、ナショナル・トレジャーはアメリカ流のほら話、お正月向きかも。残る大作は、AVP2ね、つまり、エイリアンVSプレデター2なので、なんだか、拡大B級映画のような趣。それにしても2本も人類絶滅?なんてねえ、お正月から。

 日本映画では、上記の椿三十郎や、ミッドナイトイーグル、茶々天涯の貴妃が大手三社の布陣だが、まともで見る価値のあるミッドナイトイーグルは良いとして、和央ようかが主演の茶々も凄く危ないですね。いくら宝塚のスターといっても、美女でもなく、スター性もなくヒットするとは思えない。
(すいません、やはり過激です!未見なので、傑作かもしれない。)

 

 ということで、大作では楽しく見られるのがナショナルトレジャーくらいとなれば、小粒作品に期待したいところ。


*迷子の警察音楽隊:エジプトの警察音楽隊がイスラエルで迷子に・・・。
*再会の街で:予告編では70年代開放感テイストがありますが・・・。
*暗殺リトビネンコ事件:あの事件のドキュメンタリーでしょうか興味津々。
*ベティ・ペイジ:50年代ピンナップガールの感覚。


それにしても、日比谷スカラ座のお正月作品が「サーフズ・アップ」というのが今年のお正月映画を象徴していますね。明るい大作不足か。はい、サーフズ・アップはオススメ作品ですよ。でも、ペンギンのアニメです。

 

 

 

3.今年の映画決算

 

 今回で2年目の映画決算報告、これも2回目の嘆き、”儲けもあればいいのにねえ”という感慨にもめげず、昨年と同じ基準で今年の私的映画決算、収支報告です。

 

2006.12/26~2007.12/25までの実績。

 

       見た本数:243本(なんと!)

   映画に使った支出:246,070円
    1本あたりの料金:1,013円

 

昨年が1,111円で見ていましたので、結構頑張りました。

 

※今年最後の見せよう会通信はここまでです。


次回は元旦にお送りする予定の新年特別号です。



                         - 神谷二三夫 -


感想はこちらへ 

back                                                                         

copyright