
2025年9月号 戦後80年の戦争関連映画
2025年9月号 戦後80年の戦争関連映画
そろそろいい加減にしてほしいと思える今年の暑さ。
先月に続き真夏日が続いている。
まあまあ、カッカしては自ら暑くしているようなもの。
そんな時は頭を冷やして、
そう、映画館で!
7/26~8/25の暑~い暑~い31日間に出会った作品は46本、
邦/洋画は13/33とほぼ通常のペース。
今月のベストスリー
1 アイム・スティル・ヒア
“私は今もここにいる”という題名は、連れ去られた夫に対する妻の叫びだ。ブラジルで1970年代に起こった事件を、その一家の息子マルセロ・ルーベンス・パイヴァが書いたポルトガル語の同名小説Ainda Estou Aquirを原作としている。1964年のクーデターにより軍事政権になっていたブラジル。下院議員職を剝奪され民間のキャリアに戻っていたマルセロの父ルーベンス・パイヴァが1971年1月に逮捕されてしまう。彼は家族に秘密で政治亡命者を支援していた。この後パイヴァは帰ってこない。夫不在になった妻のエウニセは48歳で法学部を卒業、ブラジル先住民の権利についての専門家となり、ブラジル連邦政府、世界銀行、国連の顧問を務め、2018年89歳で亡くなっている。監督は久しぶりにブラジルに戻ったウォルター・サレス。
2-1 ランド・オブ・バッド
フィリピンの南西、マレーシアの北東に位置するスールー海はイスラム過激派の移動ルートとして使われるなど危険地帯となっているらしい。この地域で活躍する米軍特殊部隊デルタフォースの活躍を描く。今の戦いはこういうものかと驚く。現地で戦う4人の兵士の行動と、遠隔地アメリカから作戦を支援する空軍の無人戦闘機のオペレーターからの指示が繰り返される。言ってみればオペレーターはゲーム感覚だろうか。米海軍全面協力によるとはいえ、銃、ハイテク兵器、戦闘機、戦術など、すべてが実にリアル、これほどリアルな今の戦いは初めて経験した。監督・プロデューサー・共同脚本を担当したのはウィリアム・ユーバンク。
2-2 大統領暗殺裁判 16日間の真実
1979年韓国のパク・チョンヒ(朴正煕)大統領が暗殺された。側近の情報部部長キム・ジェギュによって暗殺されたのだ。映画はこの事件の裁判を様々な立場・観点から描いている。裁判にかけられている情報部長の秘書役の軍人パク・テジュとその弁護士チョン・インフ、そしてこの事件・裁判を裏で操る合同捜査団長チョン・サンドゥの3人の人物を巡って描かれる。監督のチュ・チャンミンは“法廷シーン以外の部分は脚色が行われた”と述べていて、事実と創作を混ぜて作られている。人物の名前も変えられていたりする。
3-1 木の上の軍隊
実際にあったことから井上ひさしが原案を作成、彼の亡き後こまつ座で舞台化された作品からの映画化。沖縄伊江島でアメリカ軍と戦った日本兵はいつの間にか二人になり、木の上に隠れて過ごすことに。終戦したことも知らず、そのまま終戦後2年も経ってしまったという二人だけの軍隊。笑っていいものか?堤真一と山田祐貴が主演、脚本・監督は沖縄出身の平一紘。今月のトピックスも参照。
3-2 豹変と沈黙-日記でたどる沖縄線への道
日中戦争から第二次世界大戦までに出兵した4人の日記に沿いながら、残された子供や親せきの人たちにインタビューをしていくドキュメンタリー。戦場を経験することで人間が豹変していく様や、日記には書いているのに様々な事柄について表立っては沈黙を守ってしまう様子が描かれる。出兵した人たちが亡くなり、遺品の中に日記があり、そこで初めて父親の豹変を知る人たち。南京虐殺など、負の記憶をないことにしようとする最近の風潮にNOを言わなければならない。今月のトピックスも参照。