2011年 1月号back

なんだか急に年の瀬になりました。
今日はクリスマス。
いつもと同じ時間の進み方のはずなのに、
ここにきて速度を増しているように思えます。
平常心に立ち戻り余裕を取り戻すには、
そう、映画館です。

 

今月の映画

 11/26~12/25の30日間に巡り合えた作品は30本、「小津安二郎の世界」が今現在も続いていて、さらに黒澤明のデビュー作も見てしまい、先月同様本数が増えています。
 反面、お正月作品を見るのが遅れています。
 今年のお正月休みは本当に正月作品を見て回ることになりそうです。

<日本映画>

行きずりの街 
パートナーズ 
ゲゲゲの女房 
Space Battleshipヤマト
酔いがさめたら,うちに帰ろう 
最後の忠臣蔵
レオニー 
ノルウェイの森

  (小津安二郎→11本)
戸田家の兄妹 
長屋紳士録 
東京の合唱 
早春 
お早よう
朗らかに歩め 
彼岸花 
小早川家の秋 
麦秋 
秋日和
晩春

(黒澤明→2本)
姿三四郎
続姿三四郎

 

<外国映画>

アメリア永遠の翼
勝手にしやがれ(古) 
ハリー・ポッターと死の秘宝Part1
リトルランボーズ 
シュレック フォーエバー 
ロビン・フッド 
白いリボン 
クレアモントホテル 
バーレスク

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① 白いリボン
 静かな田園地方の風景の中に、密かに現れてくる人間の悪意。

 彼らの真剣な、迷いのない瞳の中に、深い恐怖を感じさせるミヒャエル・ハネケ監督の傑作。

 

② 最後の忠臣蔵
 武士は耐えることと覚えたり。
 役所広司入魂の演技、取りつかれています。映画は静かに武士の生き方を描いています。

 

③-1 ロビン・フッド
 リドリー・スコットはやはり現役最高の監督かも。
今まで幾多作られたロビン・フッドものの中でも、その生き方を描いて堂々の風格。

 

③-2 レオニー
 イサム・ノグチの母、レオニー・ギルモアの物語。
 あの時代に未婚の母として日本で子供を育て、さらに第2子も生むという事実に感心する。小泉八雲の妻まで登場する。

 

次点 バーレスク
 楽しみました、歌と踊りの数々。
久しぶりのシェールも2曲歌いますが、主演のクリスティーナ・アギレラの歌唱力が凄い。

 

 

 

 次の作品もお勧めです。ご覧ください。

 

行きずりの街:志水辰夫のはまりすぎる傑作小説を映画化。登場人物、いずれもはまりすぎのところが、難と言えば難だが、坂本順治監督はすっきり描いている。

 

リトルランボーズ:悪ガキがこれほど魅力的な映画は久しぶり。もちろん、純真なところがあるので、すべて許せるという王道もきっちり。

 

ゲゲゲの女房:NHKの朝ドラで超人気のゲゲゲの女房。ここはぐっと渋く、二人がまだ貧しかった頃だけを描いて、あの頃を思いださせる。

 

酔いがさめたら、うちに帰ろう:鴨志田譲の原作を映画化。西原理恵子との生活はこの後西原原作「毎日かあさん」が2月に封切られるが、見比べてみたい気も。

 

クレアモントホテル:ロンドンのクレアモントホテルで生活する人々、面白いエピソード以上に気になるのは、こんな風にホテルで暮らすことがイギリスでは普通なのかということ。

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

★ピーター・ギャラがー

 「バーレスク」でシェールの元夫を演じていたのはピーター・ギャラガー、
目と口がやたらデカイ、ほとんど宝塚顔の男優は、特にどの作品というのは難しいが、一度見たら忘れられない顔で、サンドラ・ブロックと共演の「あなたが寝てる間に」など思い出す。

 

アラン・カミング

 「バーレスク」でバーレスクラウンジの入り口で料金を受け取っているのはアラン・カミング、映画にもぽろぽろ出ていますが、私にとってはブロードウェーで見た、「キャバレー」の再演(サム・メンディス演出)時のMC役が印象深い。確かトニー賞を受賞していたはず。

「バーレスク」でも1曲、その芸を見せてくれます。

 

 

 


Ⅲ 今月の不思議

 

 ゲゲゲの女房と言えばNHK朝の連続テレビ小説久しぶりの大ヒット作。
その映画化作品が11/20に封切られたがヒットしたという話を聞かない。少し遅れて見に行ったが、とてもヒットしている状態ではなかった。作品的には問題はない。TV作品より地味な分あの時代を正しく映し出していたともいえる。

 

 確かに、成功する前の時代を描いていて華やかさはない。水木しげるを演じる宮藤官九郎は向井に比べ明かに不細工だ。ただし、それだけよりリアルともいえる。女房を演じる吹石一恵はTVよりよいのでは?

 

 この映画はNHKとは関係なく作られた。
もちろん民放TV局作品のようにTVで宣伝されることはNHKだからありえないが、話題としてさえ露出することはなかったような気がする。東京での封切り館も単館のユーロスペースと銀座シネパトスだから、人気TV小説の映画化という感じではない。確かにTVから流れて作られた訳ではないから当然と言えば当然だが。

 

 それにしても人気のあり方、広まり方というのはよく分からない。



 


今月のトピックス:決算報告 & ETC

 

Ⅰ 決算報告

 

 毎年1月号でお伝えしている決算報告、この1年で映画にいくらお金を使ったかを報告します。決算は12/25現在で行いますので、見せよう会通信の会計年度は、12/26~12/25 となっています。


 今年は次のようになりました。

 

         期間: 2009/12/26 ~ 2010/12/25
        支出額: 254850円
       映画本数: 310本
    1本当たり金額: 823円

 

 井上ひさしさんの対談集を読んでいたら、毎日1本、年間365本の映画を見たいと話していましたが、今年本数が初めて300本を越えて、毎日1本に近づきました。大きな原因は昔の映画を多く見たことですね。その本数を除けば、昨年とそれほど違わないのではと感じていますが、そのあたりについては新年特別号でお伝えします。

 

 1本当たりの料金は昨年の796円から823円と、27円の上昇となりました。

原因ははっきりしませんが、大きな額ではないのでほぼ同じとしておきましょう。

 

 


Ⅱ 映画館の現在

 

 7月号で書いた映画館の状況は今も変わっていない。いやむしろ進んでいると言えるだろう。シネコンの数が増え単館系映画館が減っているという状況だ。

 

 東京の恵比寿といえば、かつてサッポロビールの工場(30年以上前慰安旅行のセールスで訪ねたことがあります)があった。その跡地が恵比寿ガーデンプレイスとなり、フランスの3星レストランができたり、その奥には高級ホテルができたのだった。その1角に恵比寿ガーデンシネマがある。はじめは1スクリーンだったものが途中から2スクリーンになり、たくさんの作品を見せてくれた。
とくに有名なのは、開館以来公開されたウディ・アレンの作品はすべてここ封切りしてきたこと。今や映画館で特徴があるところは少なくなってしまったが恵比寿ガーデンシネマ=ウディ・アレンは確立していた。

 

 そのガーデンシネマが1/28の上映を最後に閉館することになった。現在、最後の封切り作品ウディ・アレンの「人生万歳」を上映中だ。この作品の新聞宣伝の片隅に“15年間ありがとうございました”とあったことに、気付かれた方もいたかもしれない。

 

 元々は映画配給会社ヘラルド系の映画館として開場したはず。国内資本の洋画配給会社としては大手であったヘラルドも、角川資本に吸収合併され2006年に約50年の歴史に幕を下ろしている。

 

私の知る限り、東京ではこの1~2年の間に次の映画館が無くなっている。

 

・渋谷/ヒューマントラストシネマ文化村通り

  (かつてのシネ・アミューズで2スクリーン)
・渋谷/シネマライズの地下劇場及びライズX

  (2階の劇場は運営継続、3スクリーンから1スクリーンへ)
・渋谷/TSUTAYAシネマ

  (3スクリーン)
・有楽町/シネカノン1丁目

  (1スクリーン)
・新宿歌舞伎町では新宿プラザ劇場、新宿オデオン座、

 新宿グランドオデオン座、新宿アカデミー劇場など、

 地区内に14館あった映画館が今や4館に。
・恵比寿/ガーデンシネマ

  (2スクリーン)

 

 このほかにも無くなった映画館はあるはず。渋谷/恵比寿では単館系のスクリーンが大きく減ったことになる。単館系のスクリーンが減るということは作品のバラエティが減るということ。新年特別号で年間ベストテンをお伝えしますが、作品の多くは単館系で上映されたものではないかと想像される。大きく言えば、日本の文化の幅が狭まることになる。

 


 今月はここまで。

次は元旦にお送りする新年特別号の予定です。


 


                         - 神谷二三夫 -


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