いよいよ明後日からGWがスタート、
五月晴のもと大型連休を楽しみましょう。
勿論この時期の正しい過ごし方、
“映画館で映画”もお忘れなく。
(ゴールデンウィークという言葉は映画界が作りだしたのです。)。
3/26~4/25の31日間に出会った映画は29本、例によって外国映画の方が約2倍程優勢でした。
色々な国の現在の状況から世界の名作、童話までが揃い、楽しませてもらいました。
日本映画もそれなりに充実です。
ひまわりと子犬の7日間
インターミッション
相棒シリーズ X Day
千年の愉楽
舟を編む
ぼっちゃん
(古)球形の荒野
鬼畜
疑惑
河内カルメン
女の一生
ジャックと天空の巨人
ある海辺の詩人
アンナ・カレーニナ
マーサ,あるいはマーシー・メイ
シュガー・ラッシュ
ヒッチコック
キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け
汚れなき祈り
ホーリー・モーターズ
天使の分け前
君と歩く世界
恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム
ライジング・ドラゴン
きっと,うまくいく(試写会)
コズモポリス
カルテット! 人生のオペラハウス
リンカーン
海と大陸
①きっと、うまくいく
インド映画は年間1300本近くが製作され世界一の映画王国。歌と踊り、美男美女、ハッピーエンド、長いというのが特徴。能天気にハッピーなだけではなく、面白い話に感動も与えてくれるこの作品、ハッピーエンドがこれほどうれしい作品は久しぶりです。 5/18公開です。
②-1 天使の分け前
60年代に偶然TV(確かNHK)で見た「キャシーの場合」というTVドラマの衝撃は、今でいえばドキュメンタリードラマの先駆けだったと分かるのだが、その監督がケネス・ローチ、今のケン・ローチである。今もって労働者階級の若者のドラマを作っていることに感動する。
②-2 君と歩く世界
肉体に起こる出来事をこれほど真摯に受け止めながら、なおかつ人間は強いと教えてくれる映画。
③-1 ヒッチコック
ハリウッド的に、つまりは話題性十分に作られた「サイコ」監督当時のヒッチコック物語。「サイコ」はパラマウント作品だったのが意外だった。次の作品「鳥」はユニバーサルだし、ユニバーサルスタジオには「サイコ」のあの家があったのだから。イギリス人的なウィットがヒッチコック自身にも、アルマ夫人にももっとあったような気がする。
③-2 舟を編む
地味なことを小説や、映画にしても楽しめることを認識させてくれた作品。
何が大事って、そりゃ情熱でしょ、これが重要。最近の松田龍平は良くなってきました、それにもましてオダギリジョーが上手くなった。
③-3 カルテット 人生のオペラハウス
高齢者による高齢者のための高齢者主人公の映画の一つ。ダスティン・ホフマンの初監督作品は性格を反映してか、静かに控えめ。それにしても引退した音楽関係者のための“ビーチャムハウス”はうらやましい環境です。
次の作品たちも面白いです。お勧めします。
◎ひまわりと子犬の7日間:子供の頃保健所の人の野良犬狩りを見たことがあるが、その仕事を描き今のペットブームに静かに異議申し立てする優しい映画。
◎ある海辺の詩人:ベネチア近くの小さな漁村キオッジャ、旧ユーゴスラビアから移住してきた男たち、出稼ぎで中国からやってきた女。現実に流される哀しい話は正に一編の詩。
◎アンナ・カレーニナ:トルストイの長編小説を2時間前後の映画にまとめるため作り手は舞台を利用した。
その過激な舞台化ぶりは華麗な画面とともに楽しめました。舞台の方が想像力に訴えるので飛躍もできる。
◎キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け:ニューヨークのセレブ生活の裏側を見せて、いかにもなお話。リチャード・ギアがいかにもに演じています。
◎ホーリー・モーターズ:ゴジラの伊福部昭の音楽が出てきたり、ファンタジー度はたっぷり。まるでディズニーの「カーズ」のようなラストまで、レオス・カラックス監督は走っていますが…。
◎ライジング・ドラゴン:ラストでジャッキー・チェン自らの言葉で“これが最後のアクション作品です”と語られる。“長い間楽しませてくれてありがとう”と言いたそうな人が、一杯詰めかけていました。ありがとう、お疲れ様。
◎コズモポリス:映画作りが上手い監督の一人デイヴィッド・クローネンバーグ監督の新作は、リムジンでニューヨーク市内を回りながら仕事をする金融超リッチ男の物語。
◎リンカーン:始まりの言葉のやり取りの速さにはついていけなかった、アメリカ人には常識の人物名だったんでしょうね。スピルバーグ監督のお言葉が最初に流れたのはそのあたりを心配してでしょうか。
☆トム・コートネイ
「カルテット 人生のオペラハウス」でマギー・スミス演じるジーンと、9時間だけ結婚していたレジ―を演じているのはトム・コートネイ、もちろん「長距離ランナーの孤独」で孤独に走っていたあの人だ。1962年の映画だから50年も前のこと。その後「ドクトル・ジバゴ」にも出ていたけれど、舞台中心に活躍していた彼はそれほど多くの映画には出ていない。悲しみをたたえて凛とした姿を久しぶりに見た。実はもうじき別の1本も公開される。5/17にロードショーされる「モネ・ゲーム」、やっぱり苦みのある役なんでしょうか?
春休み、映画興行の上位を占めているのはアニメ作品だ。
定番のドラえもんは1980年に開始以来の累計観客動員数が一億人を超えたようだし、原作者鳥山明が参加した新しい「ドラゴンボールZ 神と神」は正に大ヒット、興収1位を3週も続けた。
そんな中にあって、ディズニーは「シュガー・ラッシュ」で参戦し、その週の1位となり、今も頑張って集客している。見に行ったのは春休みの平日4/03(水)の昼間だったためか、映画館は子供が多かった。字幕版を見ようと探したが見つからない。仕方なく吹き替え版を見て分かったが、題名や途中で出てくる字がすべて日本語(字幕ではなく)で出てくるのだ。これを作っていたら、字幕版は上映しないよね。
最近のディスニーアニメの作品と同じように、子供よりもむしろ大人が見た方がいい映画になっていた。
舞台はゲームセンター、ゲームの登場人物が主人公たちだ、しかも主人公は悪役キャラ。ゲームセンターとか、ゲームのキャラクターとか、日本が得意とする分野だったはずではないか?そんなことは軽々と越え、この映画は普通の大人が見ても充分に楽しめる映画になっていた。アニメは日本の得意分野などと安閑としてはいられない。世界を見据えたディズニーや他のハリウッドアニメは、世界での稼ぎという意味では大きく先行してしまった。「シュガー・ラッシュ」を見ていて他の国ではその国版が上映されたんだろうか、それでは負けるよねと感心してしまった。
「ホーリー・モータース」と「コズモポリス」は舞台がリムジン、主人公はリムジンで街を徘徊する。
リムジンという空間は外界から遮断され、主人公たちを王様気分にさせる。「悪人」の妻夫木聡がファーストシーンの車の中で感じていたように。王様気分は大げさにしても、空想の世界が広がり独断的になるのは確か。安全なリムジンの中からまるでゲームを楽しむように現実感なく外の世界に接触する。空想の世界でのようにいろいろな人生を演じる男であり、金の動きに現実感がない金融取引世界で稼ぐあるいは破産する男である。
フランスとアメリカ(監督はカナダ)から送られてきたリムジンで過ごす男たちの物語。バーチャルな世界、現実感の希薄な世界が広がってきたことに対する警鐘でしょうか?
●童話はホントは残酷という説がありますが、「ジャックと天空の巨人」(豆の木)は、結構残酷でしたね。更に、巨人が徹底的に醜悪。子供が見たら怖くなりそう。
●閉館する映画館銀座シネパトスを舞台に繰り広げられた「インターミッション」は、映画館内外の周辺だけの映画にしては面白かった。
●緒方拳は巧い俳優でしたねえ、「鬼畜」のダメ男ぶりを見て再認識した。
●“家”のために感情を犠牲にして生きた「女の一生」(森本薫の戯曲の映画化)は、“家”の力が強かったかつての日本社会を思い出させる。
映画はどんな作品であれ現在を映し出していると思っているので、基本的に新作を見るのが好きであるとは以前にもお伝えした通り。
今月、特に4つの国の現在に思いをはせた。
①イギリス:天使の分け前
グラスゴーの労働者階級の青年が主人公。父親譲りのカーッとなりやすい性格から暴力沙汰で逮捕、300時間の奉仕活動を命じられる。恋人に赤ちゃんが生まれるというのに職も家もなく恋人とも別居なのに、それほど悲観しているふうでもないのは、奉仕活動名監督や、同じ奉仕活動仲間との人間的な繋がりだろうか?落ち込まないある種のいい加減さが日本人には見られないものでは?
②フランス:君と歩く世界
肉体的に大きな喪失を経験した女性と、肉体には自信があるために肉体には無頓着な男。ふたりが最終的に結びつくのは心の部分を経過してだが、ここまで徹底して肉体にこだわれるのは人間の動物的面をしっかり自覚しているから
だろうか。子供が氷の割れ目から湖に落ちた時、手を怪我しながら助ける行為も含め、これほど肉体の存在感を見せる状況は日本にはないのでは?
③インド:きっと、うまくいく
インドで工科大学に行くのはとてつもないエリートで、それだけ周りからの期待も大きいとみえる。エリートとエリートぶっている人たちを面白がり、貧しい生活さえ、まるで『シャボン玉ホリデー』のハナ肇家族のように見えてしまう描き方。インドも洗練されてきている。
④日本:ぼっちゃん
秋葉原無差別殺傷事件に想を得て作成された作品。他の人との交流が上手くできない、まるで子供のような主人公は、今の日本で増えているような気がする。自分の感情をネットに書きこむことを人との交流の代償にしているような、
一方通行で自分の感情を吐き出すことしかできない人たち。負け組、勝ち組と分ける、いじめの延長のような社会。どうしてこんな息苦しい社会になってしまったんでしょうか?
4月14日に90歳で三國連太郎さんが亡くなった。怪優とも、役者馬鹿とも、奇人とも呼ばれていた人。家庭など顧みずというか、初めから家庭を作る気などなかったかのように、演じるという仕事一筋に突き進んできた。真面目な仕事ぶりを見るのは楽しみだった。
東銀座を歩いていてスカウトされたのが27歳のとき、演技経験などない新人は28歳のとき「善魔」でデビューする。デビュー作にはその人の持っているものが現れる。不器用で熱血漢の新聞記者三國連太郎を演じた佐藤政雄は、何物にも毒されないピュアなものを見せている。そして、役名そのものを芸名にしてしまう。最期まで、いつもどこかにピュアなものを持っていた三國連太郎さん。あなたを失って本当にさびしくなります。
1950年代後半~60年代初頭、イギリス映画はトニー・リチャードソン、カレル・ライスなどの新人監督がまとまって頭角を現し、ニューウェーブ/怒れる若者たちと呼ばれた。
作品的には、「蜜の味」「土曜の夜と日曜の朝」「長距離ランナーの孤独」、「ある種の愛情」「孤独の報酬」などである。これら内、次の作品が日本でDVD発売された。その宣伝のため作られた4つ折りの15x11cmくらいの小さなチラシを映画館で見つけた時、あの当時の空気までが感じられた。
4つの面にモノクロ写真で姿を見せていたのは
「怒りを込めて振り返れ」のリチャード・バートン
「蜜の味」のリタ・トゥシンハム
「土曜の夜と日曜の朝」のアルバート・フィニー
「長距離ランナーの孤独」のトム・コートネイ
だった。
その、新鮮でふてぶてしい面構えは、確実にあの頃を思い出させてくれる。少し年上のリチャード・バートンは随分前に亡くなっているが、他の3人はまだ健在。「007スカイフォール」でも絶妙な味を見せていたアルバート・フィニー、今月の懐かしい人のトム・コートネイ、映画にも出ているようだが日本には全く来ていないリタ・トゥシンハムいずれも70代の3人、これからも活躍してほしい。
では、良いゴールデンウィークをお迎えください。