2017年 4月号back

桜も開花していよいよ新年度が始まる季節。
快適な気候の中、新しいことにチャレンジするには適した時期かも。
ワクワク、ハラハラ、ドキドキ、キラキラと
かたかなの氾濫に疲れたら落ち着いて楽しめるのは、
そう映画館!!

 

 

 

 

今月の映画

 

2/26~3/25の2日少ない28日間に出会った映画は32本、
実は先月日本映画1本(破門 ふたりのヤクビョーガミ)を入れ忘れ、
それを今月に加えています。
それにしても充実した作品の多かった今月、平均値の高さは相当なものでした。
お楽しみください。


 



<日本映画>

破門 ふたりのヤクビョーガミ 
愚行録 
彼らが本気で編むときは, 
雪女
チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃった

 ホントの話 
しゃぼん玉
3月のライオン 前篇 
話す犬を,放す

 

 

 

<外国映画>

アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発
  (Experimenter) 
マン・ダウン 戦士の約束
  (Man Down)
サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ
  (Sacromonte, Los Sabios de la Tribu) 
おじいちゃんはデブゴン(試写)
  (The Bodyguard) 
お嬢さん
  (The Handmaiden)
ラビング 愛という名前のふたり
  (Loving) 
素晴らしきかな,人生
  (Collateral Beauty)
汚れたミルク あるセールスマンの告発
  (Tigers) 
夜に生きる(試写)
  (Live by Night)
静かなる叫び
  (Polytechnique)
モアナと伝説の海
  (Moana) 
哭声/コクソン
  (Waiking)
太陽の下で ―真実の北朝鮮―
  (V Paprscich Slunce / Under The Sun)
ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ
  (Weiner)  
SINGシング
  (Sing) 
逆行
  (River)
トトとふたりの姉(試写)
  (Toto si Surorile Lui) 
私は,ダニエル・ブレイク
  (I,Daniel Blake) 
フレンチ・ラン
  (Bastille Day / The Take) 
アサシンクリード
  (Assassin’s Creed) 
ボヤージュ・オブ・タイム
  (Voyage of Time:Life’s Journey) 
百日告別
  (Zinnia Flower)
牯嶺街
  (クーリンチェ)
少年殺人事件
  (A Brighter Summer Day)
パッセンジャー
  (Passengers)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 


① 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件

本来は(古)とすべき1991年の故エドワード・ヤン監督作品。初めて見て感動した。
1960年代初頭、建国高校の昼間部の受験に失敗し夜間部に通う主人公“小四”は仲間たちと対立するグループとの喧嘩などに明け暮れる。その間ある少女と親しくなる。
15才の少年の日常生活を描きながら、あの当時の台湾の社会をみせてくれる。
それにしても3時間56分休憩なしの映画がかなりのヒット、満席が出ているのには驚いた。皆さん何を求めて見に来ているのだろうか?

 

 

ラビング 愛という名前のふたり

1958年のヴァージニア州の町のレンガ職人リチャード・ラビングは、妊娠した黒人の恋人ミルドレッドと共にワシントンDCに出かけ結婚する。
ヴァージニア州は異人種間結婚禁止法が適用されていたのだ。その後10年、2人の戦いは続き1967年に最高裁で、この法律は違憲であるとの判決を勝ち取るのだった。
この実話を驚くほど静かに映画化したのはジェフ・ニコルズ監督、主演の二人も好演。

 

 

③-1フレンチ・ラン
フランス映画なのに始まりは英語での会話だった。
ついにフランスも世界市場を目指して英語かと思ったのだが、何故か主人公はCIA。
それでもここまで面白い作品は今月随一。最後まで飽きさせず、変な裏もなく、すっきりの92分。偉い!!

 

 

③-2 夜に生きる
デニス・ルヘインの原作から脚本を書き監督、主演したのはベン・アフレック。
アカデミー賞受賞作「アルゴ」から5年ぶりに監督作品を送り出した。
1920年代末~30年代にわたるギャング世界を描いてみせてくれます。
脇役にも渋い役者が多いが、父親役のブレンダン・グリーソンがいい味です。
5/20に封切りです。

 

 

 

 

他にも面白い作品、お勧めしたい映画があります。

 

破門 ふたりのヤクビョーガミ:黒川博行の原作は非常にシビアらしいし、映画にもその片鱗は見えるが、基本線喜劇のところがグーで楽しめる作品になっている。

 

アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発:アイヒマン裁判が始まった1961年、アメリカで行われた実験は人間が権力にいかに従うかを明らかにした。それを描くこの作品は、冷静に実験をしている雰囲気。暗い目のピーター・サースガードがこのところ好調。

 

マン・ダウン 戦士の約束:アフガニスタンの戦場から帰った主人公は変わり果てた街の姿に愕然、更に息子の助けを求める声も聞こえて…戦争の後遺症を緊迫感を持って描く。

 

サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ:フラメンコのリズムはこころに響く。あの手拍子をカッコよく打ってみたいものだ。サクロモンテの洞窟住居で生きる人たち。

 

愚行録:石川慶監督の長編デビュー作、1977年生まれの監督は大学で物理を学んだ後、ポーランド国立映画大学で演出を学んだという。デビュー作とは思えない、落ち着いて理性的なつくりの映画、人間関係に隠された秘密が露になっていく。

 

彼らが本気で編む時は、:荻上直子と言えば「バーバー吉野」でデビュー、その後「かもめ食堂」はヘルシンキ観光のスポットとなるくらい大ヒット、緩い笑いの暖かい作品が人気だが、この作品はトランスジェンダーを主人公に差別問題に本気で取り組んでいる。

 

お嬢さん:日本の漫画を原作にして作った「オールドボーイ」で度肝を抜いたパク・チャヌクの新作は、サラ・ウォーターズの「荊の刑」を日本統治時代の韓国に舞台を移し映画化している。だまし合いのドンデンが続く話が、テンポよく強い線で語られる。

 

汚れたミルク あるセールスマンの告発:パキスタンで起こったミルク騒動は、ネスレの粉ミルクというより水の質が問題なのだった。その会社名を違う名前で作りながら、はっきりネスレと分かるようにしているところには驚いた。

 

チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話:スポ根ものは迷いを捨ててラストでの感動に向けて一直線が成功の秘訣!を実感できる。きたろうが良い味。

 

しゃぼん玉:乃南アサの小説を映画化。親の愛を知らず悲惨な環境下に育った主人公が、山奥の村で人々に囲まれながら再生を目指していこうとする行程を描く。

 

静かなる叫び:1989年モントリオール工科大学でのフェミニスト(というより女性)集団射殺事件が、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督によって、冷たい光沢をもって映画化。無駄な説明は一切なく、何故あの男性は自殺したのかなど語ることなく白黒画面は突き進む。

 

モアナと伝説の海:最近のディズニーは常に正しいことを目指しているが、子供のために必ずコメディ役を用意している。今回は知能指数ゼロの鶏のヘイヘイ、ゼロがいいです。
曲の多くを手掛けているのがリン=マニュエル・ミランダ、ブロードウェイで話題の「ハミルトン」の作曲、脚本、主演をしています。こういうところディズニーは目ざとい。

 

太陽の下で ―真実の北朝鮮―:北朝鮮での集団行動の一糸乱れぬ様は有名だが、そのための多くの練習、細かく注意をする指導役など、本番前の練習風景を追ったドキュメント。

 

トトとふたりの姉:ルーマニアからやってきたドキュメンタリーは、母親が麻薬ビジネスで収監されて居ず、17歳、14歳の姉と10歳のトト(男の子)の3人暮らしだが、怪しげな薬中がいつもたむろして注射などしている。明るさと悲惨さが同居している。
4/29、GWの初日に封切りです。

 

SINGシング:アメリカポピュラー音楽界の幅広さを思い知らせてくれる快作、そこに絡む日本のきゃりーぱみゅぱみゅの音楽はどうにも子供か。テンポよく楽しめるアニメ。

 

私は、ダニエル・ブレイク:ニューカッスルを舞台に妻を亡くし心臓病で働けない初老の男性と、ロンドンから二人の子供と共に移住してきたシングルマザー家族の流れゆくさまをシビアに描くケン・ローチ監督の新作。

 

3月のライオン 前篇:連載10年になる羽海野チカの漫画の実写映画化。将棋世界で活躍する高校生の主人公を中心に、実際のプロ棋士の世界を見せてくれる。

 

百日告別:同じ交通事故で婚約者を失くした女性、妻と子を失った男性の百日告別に至るまでを静かに描く台湾映画。ありがちな二人が結びつくなどはなく、悲しみを自分の心に収めていくまでを伝えてくれる。彼女がひとり旅をする沖縄もすごくいい雰囲気だ。

 

逆行:ラオスでNPO運営の病院で医者として働く主人公が、休暇で訪れたリゾート地で酔った上での喧嘩で人を殺してしまう。その場から逃げる主人公…、なかなかの見ごたえ。

 

パッセンジャー:地球が満杯、新しい住処を求めた5000人が新天地に向かう宇宙船、到着までに地球時間で120年かかるため冬眠状態での旅。その途中、30年経ったところで目覚めてしまった二人の生存への戦いを描く。アンディ・ガルシアがほんの一瞬出てくる。


 

 

 


Ⅱ 今月の懐かしい人

 

 

☆サモ・ハン
サモ・ハン・キンポーと言えば、ジャッキー・チェンが大きな人気を博していた頃、その太目の身体に似合わぬ敏捷な動きでカンフー映画の一翼を担っていた。
有名なのは「燃えよデブゴン」だが、元々はカンフー映画の武術指導をしていて、ジャッキーと同じように自ら身体を張ってのカンフー、アクションを披露していたのである。
彼が20年ぶりに監督をし、主演した「おじいちゃんはデブゴン」が5/27に封切りされる。
1998年にはハリウッドに進出、TV「LA大捜査線/マーシャル・ロー」に主演するに際しキンポーを取って、サモ・ハンに名前を変更した。
今年65歳になり、流石に往年の動きは無理だが、あの頃の香港映画の妙な緩さが感じられる作品で存在感を示している。
「おじいちゃんはデブゴン」は5/27封切りです。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー


雪国」はラフカディオ・ハーンの怪談からの映画化。
監督・主演の杉野希妃と雨宮幹生役の松岡広大のトークショーがあった。
内容をほとんど忘れてしまった、要するに新作挨拶だった。
溝口健二の映画が好きで、この映画を作ったという。
何故この映画を作ったのかがよく分からなかった私は、今一つトークショーにも入り込めず、聞き逃したことも多かったかも。

 

 

 

 

Ⅳ 今月の台湾

 

40年ぶりくらいに台湾を訪れたのは昨年12月。驚いたのは台湾の人たちが大きな声では話さない事だった。中国人と言えばうるさいというイメージからは程遠い。
地下鉄に乗ってもうるさく聞こえてくるのは一緒に旅行した我ら日本人一行の声。最近日本では結構若い人が座っている優先席に、台湾の若人は坐っていませんでした。ゆったりした地下鉄駅のホームなど感心してしまいました。
「百日告別」は初七日、49日など日本でも行われる法事と同じように愛する人を失った主人公たちが、その都度都度に寺院に出かけ多くの人たちと一緒に読経をする。その様子を見ていて、台北のいくつかのお寺で多くの人が読経していた姿を思い出した。そうか、あれはその日に49日などを迎えた人たちが集まり、一緒に読経していたのかと合点がいった。
「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」の時代は1961年で、まだ台湾が落ち着いていない
時代だったのだが、少年たちの動きは激しいものの、それほどの喧騒という印象はなかった。勿論エドワード・ヤンの性質によるものかもしれない。
中国とは驚くほど違うと感じるのは私だけではないだろう。

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき

 

●サクロモンテといえばロマのフラメンコが見られるグラナダの1地域という知識はあったが、「サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ」を見ると様々なことを教えられる。驚いたのは、5000人近くが暮らす洞窟住居が、1963年大雨のためその多くが破壊されたというとこと。その中には勿論タブラオも含まれていて、洞窟フラメンコは衰退したという。その後、時間をかけて再建され再び多くの人が訪れる洞窟フラメンコが復活したというのだ。

 

●生田斗真が性転換した女性を演じることが話題になった「彼らが本気で編む時は、」は、今の時代になっても差別がやまないLGBT問題を片肘張らず、しかし真面目に取り上げている。

 

●何か事があると出てくる北朝鮮国営放送のおばちゃんアナウンサー、力入り過ぎのあの口調は北朝鮮関係の中でも印象に残るものだが、「太陽の下で―真実の北朝鮮―」を見ていたらおばちゃん予備軍の小学生が出てきた。子供たちのショーの司会者として、正にあの口調で女の子が話したのだ。栴檀は双葉より芳しだろうか。

 

●知りませんでしたというか、忘れましたというか、2013年のニューヨーク市長選挙に立候補したアンソニー・ウィーナーという男、そのあまりにあほくさい有様を追ったドキュメンタリーが「ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ」。7期目の下院議員を務めていた2011年、人気絶頂だったウィーラーに突如SEXスキャンダルが。女性と性的なメッセージや画像を送り合う“セクスティング”(この言葉知りませんでした)という隠された性癖が表に出て議員辞職。その2年後の市長選挙運動を最後まで追った作品。あほらしく、人間臭いその総てを映している。

 

●続編がありますよという内容の「アサシンクリード」はゲームが原作と知って、それでこの1本で決着まで到達しなかったのかと納得。テンプル騎士団とアサシン教団の力関係が簡単に分かってしまったら、その先も見て行こうという気がなくなってしまう。

 

●何なんでしょうか、あの原始人類のような人間の登場は?やめてほしかったなあ。「ボヤージュ・オブ・タイム」は寡作で有名なテレンス・マリックの新作。画面だけは美しいと言ってもいいが、予告編からの想像よりは美しくなかった。2011年の「ツリー・オブ・ライフ」以降結構多作だが、私には1本も良いと思える作品がない。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:名画・特集上映はどうなっているか?  



Ⅰ 名画・特集上映はどうなっているか? 

 


東京には昔でいう名画座(古い映画を上映する映画館、封切り後数ヶ月で上映するいわゆる2番館とは別)は数軒ある。名画座ではプログラムを組む人がテーマを決め2~5週間くらい(もっと長いものもある)の上映スケジュールを組んで上映をする。企画の良し悪しで集客が決まるのでプログラマーは気が抜けない。今月珍しくも(古)の映画がなかったということは、私の気にいった特集がなかった(か、新作で見たいものが多かった)ため。

 

最近の大きな特徴は普通のロードショー館で名画や未公開作品の特集上映をすることが多くなってきたことだ。昔からロードショー作品に関連して、その監督の特集上映が行われることはあった。また、今年で8年目になる「午前十時の映画祭」のような例もある。
最近行われた(る)ロードショー館での名画・未公開映画上映会には次のようなものがある。

 

 
1/07~3/31 ヒューマントラストシネマ渋谷:未体験ゾーンの映画たち2017


3/11~4/07 YEBISU GARDEN CINEMA:イタリアネオ+クラッシコ映画祭 


3/18~3/24 東劇:ヒッチコック9 アルフレッド・ヒッチコック サイレント全作品


3/18~3/31 アップリンク:チェコアニメ・ベストセレクション


3/25~4/07 シネマート新宿:シネ・エスパニョーラ2017


3/25~   ユーロスペース:theアートシアター 第1回上映作品として
「ミツバチのささやき」「エル・スール」を上映


4/22~4/28 テアトル新宿:あにめたまご2017


4/29~5/19 テアトル新宿:田辺・弁慶映画祭セレクション2017

 

 

 

今までのように名画座だけをチェックしているだけでは、見逃してしまう可能性がある。

 

この状況には色々な要素が垣間見られるが、新作に力がない、つまり集客が弱いというのが一番の理由ではないか?それだけ状況が厳しいのではないか?
映画が多く見られるのはうれしいが、総てを追うのは時間的にも無理である。
しかし、暫くはこうした状況が続くだろう。

 

 

 

  

Ⅱ 「、」のある日本題名

  

映画もツアーも、見るまで、行ってみるまではその実体は分からない、形のない商品だ。
形のないものを売り込むにはその名前が大事。印象的な名前のために担当者は必死になる。
他とは違っていて、しかし映画の内容をうまく伝えるような作品に最適な名前を探す。
脚本家や監督、或いは製作者が決める日本映画と違って、外国映画は配給会社の宣伝担当が考えることが多い。

 

映画の宣伝文句をじっくり見られたことはあるだろうか?
古いところでは「愛とは決して後悔しないこと」(これは英語台詞の翻訳ですが)とかありましたが、今月のベスト2の「ラビング 愛という名前のふたり」は次のようなもの。

 

  ただ、一緒にいたかった― その切なる願いが、世界を変えた。

 

この短い文章の中に文字以外のものが、「、」「―」「。」と使われている。
映画の宣伝文句は短い文が基本、短いゆえに印象に残りやすいのです。
更に「、」「―」「。」や「!」などを使い、短く切ることによって短い言葉の羅列にする。
映画宣伝をチェックしていると、行替えの多い事にも気が付く。これも“短い”のため。
上の例文でいえば、これは縦書きの2行になっていました。
こうして、少しでも印象に残ることを最大限狙うのが題名ということになる。
今月の外国映画で一番短い題名は「逆行」、原題は「River」で「川」だからそのまま訳せば1文字ですが、これでは何かを表すということが難しいので「逆行」としたのだろう。

 

最近題名に句読点が入ることが多くなった。
昨年話題の映画は「君の名は」ではなく「君の名は。」でした。もっとも、これは既に超有名な「君の名は」があったためでしょう。
今月の映画にもありました。
「彼らが本気で編むときは、」「素晴らしきかな、人生」「私は、ダニエル・ブレイク」「話す犬を、放す」
2014年の私のベスト1は「6才のボクが、大人になるまで。」で、普通の文章のように句読点がどちらも入った題名でした。
昔「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」という超長い題名がありましたが、句読点は使われていません。
一つの「、」にも意味を持たせる題名、暫くは続きそうな気がします。


 

 

 

 

Ⅲ ちょっとだけアカデミー賞

 

 

今年のアカデミー賞の話題は、なんといっても作品賞の発表間違いですね。
プレゼンターは「俺たちに明日はない」のコンビ、ウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイ、アメリカ公開50周年の記念の年だからでしょう。79歳になるウォーレンが読み上げようとして、ちょっと躊躇、相談するように76歳のフェイに話しかける。フェイが用紙を引き取って「ラ・ラ・ランド」と読み上げた。
7個目のオスカーを勝ち取った関係者は喜び勇んで壇上へ。一人目の製作者が挨拶、2人目に替わるあたりから、アカデミー関係者が後ろをうろうろ、そして「間違いでした」と「作品賞はムーンライトです」と発表したのです。
係員がその前に発表された主演女優賞の用紙を渡してしまったらしい。
それにしても前代未聞!
「ラ・ラ・ランド」関係者は案外すっくと立ち直り、「ムーンライト」関係者にオスカー像を渡したのだが、混乱は残り、何ともすっきりしない大団円となってしまった。

 

私の予想は「ラ・ラ・ランド」をすべて外したため2/6となりました。外さなければ4/6。
それでも好きなケイシー・アフレック(主演男優)とヴァイオラ・デイヴィス(助演女優)がアカデミー賞を取れたのは良かった!

 

 

 

 

 

Ⅳ 映画界の状況2016

 

 

キネマ旬報の3月下旬号は「2016年映画業界総決算」、そこからいろいろご報告。


  公開本数:1149本(対前年101.1%、邦画610本、洋画539本)


  入場者数:1億8020万人弱(対前年108.1%)


  興行収入:2355億800万円(対前年108.5%、邦画1486億800万円、

       洋画869億円)

 

 

入場者数が1億8000万人を超えたのは、1974年以来42年ぶりだという。1974年はベータマックスビデオが世に出る1年前、そこに戻れたのは画期的と言われる。興行収入も過去最高となった。「君の名は。」がとんでもない数字を挙げたのはご存知の通り。2年に渡る収入は245億円を超えた。2016年中には220億円くらいになっていたはずで、全体の10%弱を稼ぎ出した。
映画会社別では東宝が興収850億円を超え圧倒的、松竹187億円、東映149億円に大きく差をつけている。

 

驚いたのは韓国の成績。
入場者数2億1702万人を全人口5022万人で割れば、人々は年4.12回映画館に行くことになる。日本の1.42回に比べると、3倍近く映画館に行っている。
公開本数でも1520本と日本の1.32倍、外国映画だけで1218本という。
日本での韓流ブームは去ってしまいましたが、どっこい韓国映画界は隆盛です。作品的にもどんどん進化していると感じます。

 

アメリカはメジャースタジオの間では、ディズニーが26.3%のマーケットシェアで圧勝している。従来のディズニー作品に加え「スターウォーズ」のルーカスフィルム作品、アメコミのマーベル作品もある程度持っているので強いのは当然かもしれない。
邦洋合わせた日本での興収トップ10には7本のアニメーション(報4、洋3)が入っているが、アメリカでのトップ10にも3本のアニメが入っている。その他にもアニメ作品は多く作られており、大人向けのアニメ作も含め効率の良い商売ができているようだ。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号はGW直前の4/25にお送りします。




                         - 神谷二三夫 -


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