2018年 10月号back

酷暑の後、急にと言うか、かなりスムースに秋になった。
なったはなったで、朝方など寒くて起きてしまうことも。
今年の天候には本当に振り回されるようだ。
ゆっくり心落ち着いて楽しむことが必要。
それにはもちろん、映画館!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

8/26~9/25の大阪なおみ優勝を含む31日間に出会った作品は44本、
邦洋画共にバラエティに富んだ作品群、楽しめました。
ぴあフィルムフェスティバル《PFF》にも初めてかなり参加、
旧作の多くはそこで見たものでした。
なお、従来(古)としていた旧作は(旧)に改めました。

 


 



<日本映画>

銀魂2 掟は破るためにこそある 
検事側の罪人 
縄文にハマる人々 
SUNNY強い気持ち・強い愛 
小さな英雄 カニとタマゴと透明人間 
寝ても 覚めても 
泣き虫しょったんの奇跡 
きみの鳥はうたえる 
愛しのアイリーン 
きらきら眼鏡 
コーヒーが冷めないうちに 
響―HIBIKI―
日本脱出(旧) 
巨人と玩具(旧)
さらば愛しき大地(旧) 
野菊の如き君なりき(旧) 

笛吹川(旧)

 

 

<外国映画>

若い女
  (Jeune Femme / Montparnasse Bienvenue) 
つかの間の愛人
  (L’Amant d’un Jour / Lover For A Day) 
輝ける人生
  (Finding Your Feet) 
マンマ・ミーア! ヒア・ウィ・ゴー
  (Mamma Mia!Here We Go Again) 
判決,ふたつの希望
  (L’Insulte / The Insult) 
テル・ミー・ライズ
  (Tell Me Lies) 
ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男
  (Borg/Mcenroe / Borg vs Mcenroe) 
アントマン&ワスプ
  (Ant-Man and The Wasp) 
妻の愛,娘の時
  (相愛相親 / Love Education) 
大人のためのグリム童話 手をなくした少女
  (La Jeune Fille Sans Mains

   / The Girl without Hands) 
懺悔
  (Monanieba / Repentance) 
ブレス しあわせの呼吸
  (Breathe) 
1987,ある闘いの真実
  (1987 / 1987:When The Day Comes) 
MEG ザ・モンスター
  (The MEG) 
ヒトラーと闘った22日間
  ( Sobibor) 
プーと大人になった僕
  (Christopher Robin) 
500ページの夢の束
  (Please Stand By) 
顔たち,ところどころ
  (Visages, Villages / Faces Places) 
スカイスクレイパー
(Skyscraper) 
ザ・プレデター
  (The Predator)
そして僕は恋をする(旧)
  (Comme Je suis Dispute …(Ma Vie Sexuelle)

   / My Sex Life …or How I Got Into an Argument) 
光と闇の伝説 コリン・マッケンジー もう一人のグリフィス(旧)
  (Forgotten Silver)
特攻大作戦(The Dirty Dozen) 
ビッグ・リーガー(旧)
  (Big Leaguer) 
悪徳(旧)
  (The Big Knife) 
キッスで殺せ(旧)
  (Kiss Me Deadly) 
攻撃(旧)
  (Attack)

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

① 寝ても、覚めても
恋におちる時の状況を静かな画面と確実なタイミングでのカットのつなぎで見せてくれる。特に初めの恋の場合は、台詞もなく見ているだけの我々も恋する二人の感情を知ることができる。2年後に同じ顔の男に出会った時、女は激しく彼を拒否するが新しい男の気持ちを知ることもでき…。恋愛感情を豊かに描いた作品が誕生した。

 

② 判決、ふたつの希望
レバノンの首都ベイルートでベランダに流した水が工事関係者にかかる。そこから始まる二人の男の対立は裁判にまで発展する。流した方はキリスト教徒のレバノン人、水を受けたのはパレスチナ難民、宗教も民族も違う二人の周りには色々な力・思惑が交錯する。どちら側にも差別・被差別のある社会、世界のどこにでもある現実だ。

 

③-1 1987、ある闘いの真実
一人の学生が取り調べ中に拷問を受け死んでしまう。死因を隠そうとする政府に対し死因解剖をする検事。そこから、真実を求め、民主化を求める韓国の人々の闘いが力を増していく。ソウルオリンピックの1年前の韓国、その真実が描かれる。

 

③-2 愛しのアイリーン
新井英樹の漫画原作を映画化。1980年代後半から実施されたフィリピン人花嫁の斡旋を通じてやってきたアイリーンと彼女を迎えた岩男の家族との関係を、過激に、ねばりっこく、妥協なく描く吉田恵輔監督作品。俳優たちの強い演技も素晴らしく、中でも木野花の容赦ない母の姿の強烈さは必見。

 

 

 

 

お楽しみいただきたい作品は他にも!様々な作品が待ってます。

 

若い女:フランスのアラサー女性、10年続いた彼との間がおかしくなり、精神的に不安定に。ハチャメチャに近い彼女の行動に驚き、感心していると…人生いろいろあります。

 

輝ける人生:40年近く夫に尽くし、夫が貴族の称号を得たというパーティの日に夫の浮気を発見、相手は彼女の友達(面していた)だ、しかも5年間も。家を飛び出して姉の家に転がり込んだサンドラの新しい生活が始まる。レディだからとお高くとまっていた彼女がダンスを通してきらきら輝きだす楽しい作品。

 

マンマ・ミーア ヒア・ウィ・ゴー:大ヒットした前作から10年、マンマ・ミーアの続編は主人公の若かった頃を描いてみごたえあり。アバのビヨルンとベニーは多くの曲を書いていて、前作でも、舞台でも使われていない曲も沢山聞くことができる。シェールが流石の貫禄で登場、メリル・ストリープも存在感あり。

 

テル・ミー・ライズ:ピーター・ブルックと言えばイギリスの舞台演出家として超有名だ。彼の1968年の作品は、歌から始まる。アメリカがベトナムについて嘘をついていると。当時、ベトナム戦争反対運動は最高潮だった。その雰囲気を思い出してしまう。今やフェイクニュースのトランプの時代、進歩したのか退化したのか?

 

縄文にハマる人々:東京国立博物館で7,8月と「縄文特別展 1万年の美の鼓動」を開催していたが、映画関係ではこの作品。縄文時代が1万年も続いていたとは知らなかった。さらに謎だらけの土偶や過剰ともいえる文様の施された土器など、不思議は深まるばかり。

 

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男:テニスと言えば今は大阪なおみだが、ボルグ/マッケンローに時代の変わり目があった。1980年のウィンブルドン決勝戦を中心にリアルに描かれる。ボルグは26歳で引退したというのも驚きだが、彼の若い頃はほぼマッケンローだったことはもっと驚きだ。人間は変わることができる、炎から氷に。

 

アントマン&ワスプ:最近のハリウッド、妙に内輪受けする笑いが増えているような気がする。「デッドプール2」は度合いも濃すぎるが、このマーベル作品もかなりなもの。キティちゃんまで登場。日本では「銀魂2」がほぼこの路線。笑って過ごすか。

 

懺悔:ジョージアの監督テンギズ・アブラゼの1984年の作品。先月号に入れた「祈り」(1967年)、「希望の樹」(1976年)と合わせ「祈り3部作」と言われる。本来であれば旧作となる。3本の中では一番現実の時代に近いためか、今の日本の、世界の政治状況も想定され面白く楽しめた。

 

ブレス しあわせの呼吸:ロビンが28歳でポリオにかかり首から下が一切動けなくなったのは1959年ケニヤでのことだった。身重の妻とロンドンに戻り、やがて男の子に恵まれるも、病院での寝たきり生活だった。そこから、家に戻り、電動呼吸器付き車椅子で動けるようになり…。この実話を製作したのはその彼の長男ジョナサン・カベンディッシュ、「ブリジット・ジョーンズの日記」等の製作者でもある。心地良い感動作。

 

泣き虫しょったんの奇跡:最近多い将棋界を舞台にした実話の映画化。35歳でプロ棋士になった瀬川昌司自伝の映画化。監督豊田利晃は9~17歳に奨励会に在籍していたという。26歳でプロになれるかなれないかが決まってしまう厳しい世界。それゆえ瀬川プロの存在が夢を感じさせてくれる。松田龍平も好演、わんさか出る脇役陣もそれぞれうまい。

 

ヒトラーと闘った22日間:ソビボルはポーランドにあるナチスの強制収容所の一つ。そこから集団脱走が起きたのだ。400人が脱走し、100人は途中で死亡、150人は住民の通報で捕まったと最後に出てくる。生き延びたのは150人か。収容所の内部をリアルに描写。

 

500ページの夢の束:ダコタ・ファニングの久しぶりの主演作。最近は妹のエル・ファニングの方が有名かもしれないが、名子役だったダコタもなかなか。自閉症の主人公がいかに外の世界で生き抜いていくかの物語。「スタートレック」ファンは必見です。

 

顔たち、ところどころ:何とも不思議な映画で、アニエス・ヴァルダとJRという年齢54歳差のふたりの芸術家が、フランスの町、村を訪ね人々の写真を撮り超拡大して家の壁などに貼り出すのを追ったドキュメンタリー。どんなことにも芸術があるというような。

 

響―HIBIKI:柳本光晴の漫画からの映画化。15歳の女子高生鮎喰響(あくいひびき)が小説を書き、出版社の新人募集に応募。その作品が芥川賞、直木賞を狙う…。小説を読み、書くことが歓びの彼女、自分の心を曲げることなく、どんな人にも対応する。それに暴力が伴うのは漫画だが。真摯な女子高生の在り方が緩んだ社会をひっぱたく。月川翔監督作品。

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<日本映画>

 

《PFF》「さらば愛しき大地」「野菊の如き君なりき」「笛吹川」


さらば愛しき大地:茨木の田舎を舞台にくずれていく男を根津甚八で描き切る。


野菊の如き君なりき:60年ぶりに故郷を訪ねる主人公を笠智衆が演じる。目がきれいだ。


笛吹川:不思議なパートカラーは何を目指していたのか?戦いが続く戦国時代、翻弄される笛吹川のほとりに住む一家の姿を描く。

 

 

 

 

<外国映画>

 

《PFF》女も男もカッコいい! ロバート・アルドリッチ監督特集 
「特攻大作戦」「ビッグ・リーガー」「悪徳」「キッスで殺せ」「攻撃」


特攻大作戦:軍刑務所にいた12人を訓練して重要な作戦に使うというお話、生き残ったのはひとりのみ。オールスターキャストでも、厳しい面はきっちりのアルドリッチらしい傑作。


ビッグ・リーガー:ニューヨークジャイアンツの入団テストキャンプを舞台にしたスポーツもの。小気味いい佳作。エドワード・G・ロビンソン、ヴェラ・エレンも楽しめる。


悪徳:志を持った舞台俳優からハリウッドでアクションスターとして成功したキャッスル、昔に戻ろうと進言する妻、彼を金・契約で縛ろうとするハリウッド資本、彼に群がる女たち、特ダネを狙う女性レポーター…。ハリウッドの内幕を描いた傑作。ソール・バスのタイトルもシャープ。ジャック・パランス、ロッド・スタイガーも好演。


キッスで殺せ:ミッキー・スピレーンのハードボイルドが原作。しかし驚くのは放射性物質の扱いだ。外国映画には時々これと同じとんでもない勘違いをしているものがある。


攻撃:アルドリッチは実質の人だ。仕事ができない奴は嫌いだ。そこから真に反戦的な作品が生まれる。男だけの厳しい世界。Jパランス、Lマーヴィン、Rジャッケルなども快調。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー

 

9/09 《PFF》追悼 たむらまさきを語りつくす 
挑戦者たちよ!柳町光男とたむらまさきに空族が迫る 「さらば愛しき大地」上映
今年5月23日に亡くなったたむらまさきカメラマンを追悼して3回の対談が設定された。この日は柳町監督と映画作家集団「空族」の富田克也監督、相澤虎之助監督の対談が柳町作品「さらば愛しき大地」の後に行われた。
三里塚のドキュメンタリーなどで有名なたむらさんは、カメラマンには珍しくロケハンが嫌いだったとか。口数も少なく意見をあまり言わない人だったが、作品には彼の考えていることが反映されていた。職人だったのだ。

 

9/15 《PFF》スペシャル講座「映画のコツ」
原恵一と橋口亮輔が映画の神髄を探る「天才・木下恵介は知っている:その2
両監督が木下恵介について語る昨年に引き続いての第2回は「野菊の如き君なりき」「笛吹川」の木下2作品上映後に行われた。アニメ作家である原恵一監督(クレヨンしんちゃん、河童とクゥの夏休み、百日紅等)は木下恵介を崇拝していて、彼の生誕100年記念映画「はじまりのみち」の脚本・監督で実写映画デビューをしている。
今回の上映作品関係では、「野菊の如き君なりき」の大部分を占める回顧場面は総て楕円形に囲まれた画面で作られ、周りは白くなっているが、これはカメラの少し前に楕円形の穴が開いた紙を置いて撮影していたという情報があった。
「笛吹川」では多くの戦いが描かれるが、その戦いの画面が統制が取れた動きで大きな塊で動くような黒澤流の描写ではなく、素人が兵として集められたらしい統制されない、一見変な動きの戦いがごく自然に描写されているが、当然ながら監督の指示通りであるはずで、こうした戦闘場面は素晴らしいとの話があった。
両親に溺愛されて育った木下監督は、たとえ幽霊であっても両親に会いたいと言ったとか。確かに彼の映画は家族についての物語が殆どだ。

 

 

 

Ⅳ  今月の惹句(じゃっく)

 

8/26~9/25の間に封切りされた作品の惹句の中から、今月は簡潔に2語で決めた2作品。どちらも「。」付き、意思を表している。

 

1.愛に逆らえない。寝ても覚めても
逆らえないのはふたりの関係と恋・愛を描いた映画にふさわしい。

 

2.私は、曲げない。響―HIBIKI
主人公響の生き方、考え方をそのままに。

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●恋愛好きなフランス人について考えさせられたのは「若い女」と「つかのまの愛人」を同じ日に見た時だ。人の心は簡単にころころ変わる。それでも自分の心に忠実に、幾多の困難を乗り越えてでも好きな人といたい。まあ、これはフランス人に限らないとは言えるが。

 

●なんだか出てくるだけで型通りの演技が展開されるのでがっかりしたのが「検事側の罪人」だ。登場人物に膨らみが出ない。主演者二人が普通の俳優であれば…。

 

●イギリス人の自然好きをもろに感じさせたのが、「輝ける人生」。同居することになった姉妹がロンドン市内の池に泳ぎに行くところ。普通の池でプールではない。しかも彼女たちだけでなく他の人達もスポーツクラブのように来ているのだ。

 

●韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」は見たいと思いつつ見逃していた。その日本でのリメイクが「SUNNY強い気持ち・強い愛」だ。オリジナルと違っていたのは仲間が7人から6人になり、時代が1980年代後半から1990年代後半にされたことだ。韓国の1980年代後半は軍人出身の全斗煥大統領の下で経済はある程度発展したが、民主化が十分ではなく抗議運動、デモが多発していた時代。国民共通の心があった時代(今月見た「1987、ある闘いの真実」に描かれる)だ。それに比べて日本版ではコギャルが騒がれた時代と言う。残念ながら差がありすぎる。

 

●フランスからやってきたアニメーション「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」は絵の描写が凄い。殆ど定形はない。高畑勲監督の「かぐや姫の物語」の自由さを大幅に拡大、絵が自由に飛び跳ねる。

 

●函館三部作は佐藤康志原作の函館を舞台にした小説の映画化。監督はそれぞれ違う人が担当している。その4部作目が「きみの鳥はうたえる」だ。サイトを見ると原作の東京から舞台を函館に移してとある。本当なんだろうか?映画での若者たちの在り方は東京の方が向いているかと思われるが、どうなんでしょうか?

 

●韓国映画を中心にアジア映画を多く上映しているシネマート新宿。「1987、ある闘いの真実」はそんな劇場だからこそか、平日の昼間に見たのだが結構の入りだった。劇場全体が映画に対してうなずいているようでもあった。

 

●思ったよりは見られた「MEG ザ・モンスター」は海底の底の下にまた海があるというのが凄い。その間の幕を破ったのは人間だが、そこから巨大鮫メガロドンが上がってくる。

 

●香港に高さ1km、240階建てのビル「パール」が完成間近という「スカイスクレイパー」、こちらも思ったより見られたのだが、どちらもハリウッドと中国との出会いが興味深い。ハリウッドは中国という市場に向かって作品を作り、「MEG」では中国の映画資本も参加し、物語的にも中国人が大きな役を演じていた。

 

●予告編では4回泣けますと宣言していた「コーヒーが冷めないうちに」では、ラストの解決の仕方がどうにも釈然としない。分かった方教えてください。

 

 

 



今月のトピックス:新聞の映画関係記事から


Ⅰ 新聞の映画関係記事から


日本人が1年間に映画館に行く回数が約1.4回と極々少ない状況では、新聞に載る映画関係の記事が多くないのは仕方がないことかもしれない。朝日新聞の夕刊で言えば、毎週金曜日にその週末(または翌週)に封切られる新作4本の映画評と監督や俳優へのインタビュー記事や作品の話題が二面に渡って掲載される。また、広告ではあるが月に1回金曜日にその週末に上映されている映画の一覧表が別の一面に載る。
朝刊には定期的に映画関係の記事が載るコラムはない。しかし9月に入って色々な形で映画についての記事が掲載された。その内容は以下のものだった。寅さん、希林さん、東京芸大とお伝えしたい記事が多かった。

 

9月7日 社会面 22年ぶり新作 山田監督「不思議な映画に」
9月7日 文化・文芸面 寅さんに突き動かされ
この2本の記事は同じ日に別の面に掲載された。来年で第一作から50年になる「男はつらいよ」シリーズの22年ぶりの新作が、来年第50作目の作品として公開されるように動き出したというものだ。22年前に亡くなった渥美清が寅さんを演じるという。そんな馬鹿な!と誰もが思う。今までの出演場面を利用するらしいが、詳しくは説明されなかったようだ。いずれにしろ、50年目でいろいろな催し物が予定されているという。そういえば山田監督の寅さんについての小説「悪童(ワルガキ)」が出版された。面白いです。新作はひょっとしてこれもアイディアの一つかも。

 

9月11日 文化・文芸面 CG映画 アナログで感情移入
この記事は“テクノロジー×表現”についてのシリーズの1本。「ジュラシックパーク/ワールド」シリーズを例に、CGだけに頼らず実際に恐竜ロボットを作り感情表現をしたことや、「ミッション・インポッシブル/フォールアウト」でトム・クルーズが体を張って実際のアクションをこなしたことで観客が主人公に感情移入しやすくなるなど、CG表現以外に如何にアナログ表現や、更には物語づくり自体が重要であるかという内容の記事でした。

 

9月14日 文化・文芸面 ベネチア活況 立役者はネトフリ
世界三大映画祭と言われてきたが、21世紀に入るころからカンヌ一強となっていたところ、今年のベネチア映画祭が二つの追い風を利用し充実した作品群を集め復活したというもの。ひとつはカンヌ映画祭から締め出されたネットフリックスなど配信映像サービスの作品を受け入れる事。カンヌが排除した「ローマ」という作品(ネットフリックス製作)が金獅子賞を受賞した。もう一つは米アカデミー賞がベネチアでお披露目した作品で争われることが多くなった。「シェイプ・オブ・ウォーター」「スリー・ビルボード」「ラ・ラ・ランド」も参加していた。
ベルリンも2020年から新体制になるという。カンヌ一強からそれぞれの個性を主張して並立する“多様性の時代”が来ようとしているというもの。やはり一強は良くない。

 

9月17日 社会面 樹木希林さん死去


9月19日 文化・文芸面 毒舌ファニー 達人の間合い 樹木希林さんを悼む
Ⅱ 樹木希林 を参照してください。

 

9月18日 文化・文芸面 日本映画の新芽 東京芸大から
東京芸術大学大学院に映像研究科映画専攻が設置されたのが2005年、13年たった現在、遂に日本映画の様々なジャンルに東京芸大出身者が先頭に立ち始めているという記事。二人の監督が紹介されている。
濱口竜介監督は映画専攻2期生で現在公開中の「寝ても覚めても」の監督。三大映画祭初参加でカンヌ映画祭のコンペ部門に選ばれた。この作品は濱口監督にとって初めての商業(資本による)映画だ。前作は5時間17分という長さの「ハッピーアワー」、殆ど演技経験のない人たちを使い作った。
月川翔監督は映画専攻1期生で現在公開中の「響―HIBIKI―」の監督。濱口監督の終了制作「PASSION」に打ちのめされたが、大学の恩師から濱口監督と同じ土俵で戦う必要はないと言われ、エンターテインメントを作ろうと決めたという。昨年「君の膵臓を食べたい」という大ヒットを作り、今年は「となりの怪物くん」「センセイ君主」「響」と3作を送り出している。
この映画専攻には監督、脚本、プロデュース、撮影照明、美術などの7領域(コース)があり、その7領域は商業映画の職能区分と同じになっている。“プロデュース領域の修了生が同期の監督や技術者に仕事を依頼するなど、やっと横のネットワークが有機的につながってきた”と設立にも関わった堀越謙三名誉教授は語っているという。
撮影所システムが崩壊して長い年月が経っているが、それを補完するものが色々試行錯誤されてきた。その一つの回答としてこの東京芸大大学院の映画専攻なのだなと知った。

 

9月24日 文化・文芸面 クロスレビュー 欅坂46・平手友梨奈
欅坂46というグループ名しか知らない私は、当然のごとく平手友梨奈の名前は知らなかった。しかし、映画「響―HIBIKI―」で主演する彼女を見て、かなりのインパクトを感じたので、ここに取り上げる。
記事では、「響」の監督月川翔、作家・翻訳家松田青子、アイドル評論家中森明夫の3氏が彼女についての評価を語っている。

 

 

 

Ⅱ 樹木希林 


俳優にも、人間にも熟すということがある。人間は根本のところでそれほど変わることはないと思う一方で、何かのきっかけで変わることがあるとも感じている。
悠木千帆という名前で出てきたちょっと変わった女の子、元々は文学座の俳優だと知ったのはいつ頃だったろうか?それにしては舞台の出演作は知らない。
一般的に名前を知られるようになったのはTVドラマだろう。1965年に始まった「時間ですよ」、銭湯を舞台にしたドラマで、久世光彦が演出していた。同じ久世演出の「寺内貫太郎一家」にも出演、“ジュリ~!”と叫び話題になった。
1977年4月日本教育テレビ(NETテレビ)から全国朝日放送(テレビ朝日)に局名変更の記念番組で悠木千帆という名前を競売にかけて売り払い、樹木希林に変更する。Wikipediaには「樹や木が集まり希(まれ)な林を作る=みんなが集まり何かを生み育てる」ということを連想し、自ら樹木希林に決めたとある。
このころからCMにも出演、ピップエレキバンやフジフィルムが有名で、彼女のキャラクターを生かした面白いものだった。
彼女は映画の出演数も多い。そのほとんどは脇役である。どこにいたかも分からない印象の薄いものから、かなり存在感のある特異な脇役まで、むしろそれを楽しんでいる印象の脇役が多い。純然たる主役を演じた作品はないのではないか?主人公の母親役、妻役は色々あるし、殆ど主役というものもあるが主人公ではない。
脇役にあっても、普通と違うアプローチの仕方が的を射っていることが多く、作品自体に膨らみを与えている。作品の内容をつかみ取り、彼女なりの方法で伝えようとする。今年5月に朝日新聞に連載された「語る、人生の贈りもの」で彼女をインタビューした石飛徳樹氏は「自身の演技も自然体のように見えて、実はすべてが論理的に考え抜かれたものだった。」と書いているが、演じるという事に対するこうした真摯な姿勢があったようだ。
最近の約10年、彼女の映画での演技はどんどん自然体になり、しかもどれにも独自の魅力があった。どんな自然も、そこに美しさがあるのと同じように、何を演じようと彼女自身であり、役にもなりきっていた。
10年前には紫綬褒章を受章、5年前にはがんであることを告白した。これらのことによって人生観が変わったのだろうか?力が抜け、変な引っ掛かりがなくなったような印象だ。
一番いい時に逝ってしまった。ご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

Ⅲ 新聞折込チラシ


いつだったのか正確には憶えていないのだが、朝刊の折り込み広告に「判決、ふたつの希望」のB4版のカラーチラシが混じっていた。折り込み広告に映画が入っていたのは見たことがなかったので驚いた。“大ヒット上映中”とあるから、この作品が封切られた8月31日以降だったろう。
映画の折り込み広告があっていけないということはない。裏面にはジアド・ドゥエイリ監督と木村草太首都大学東京法学部教授との対談があり、内容充実のものだった。
多くの人に見てもらいたいという関係者の気持ちが感じられた。

 

 

 

 

今月はここまで。


次はさわやかな高い空の下、スポーツも芸術も満喫できるだろう10/25にお送りします。

 

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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