2019年 1月号back

20年ぶりくらいに北海道を訪れた。
新千歳空港に到着した時に横なぐりの雪で迎えられ、
その日から4日間の滞在中ずっと最高気温は氷点下になっていた。
晴れ間がのぞく時があるも、曇り、雪という状態が続いたが楽しんだ。
激しい雪に囲まれた時、観光を一時辞め、
飛び込んだのは、そう、映画館!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

11/26~12/25の北海道旅行を含む30日間に出会った作品は46本、
日本映画は新作のみで9本、外国映画は新作22本、旧作15本と、
いつもに近い1:4の比率になった。
もう少しお正月映画を見ていれば紹介できたのですが、
旧作の蓮見重彦コレクションに引っ掛けられて、そちらに重点が行ってしまいました。

 


 



<日本映画>

体操しようよ 
ハード・コア 

母さんがどんなに僕を嫌いでも 
ポルトの恋人たち 時の記憶 
人魚の眠る家 
来る 
熱狂宣言 止まったら死ぬぞ! 
リバーズ・エッジ

 

 

<外国映画>

赤毛のアン 卒業
  (L.M. Montgomery’s Anne of Green Gables:Fire
  & Dew) 
いろとりどりの親子
  (Far from the Tree) 
バルバラ セーヌの黒いバラ
  (Barbara) 
恐怖の報酬(オリジナル完全版)
  (Sorcerer) 
彼が愛したケーキ職人
  (The Cakemaker) 
ファンタスティックビーストと黒い魔法使いの誕生
  (Fantastic Beast)The Crime of Grindelwald)
マダムのおかしな晩餐会
  (Madame) 
エリック・クラプトン~12小節の人生~
  (Eric Clapton:Life in 12 Bars) 
山中傳奇 4Kデジタル修復・完全全長版
  (山中傳奇 / Legend of The Mountain) 
コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~
  (A Bold Peace) 
最後の楽園コスタリカ オサ半島の守り人
  (Osa:The Jewel of Costa Rica) 
くるみ割り人形と秘密の王国
  (The Nutcracker and The Four Realms) 
ガンジスに還る
  (Mukti Bhawan / Hotel Salvation) 
マチルダ 禁断の恋
  (Mathilda) 
おとなの恋は,まわり道
  (Destination Wedding) 
パッドマン 5億人の女性を救った男
  (Padman) 
セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!
  (Sergio & Sergei) 
ヘレディタリー/継承
  (Hereditary) 
マイ・サンシャイン
  (Kings) 
台北暮色
  (強尼・凱克 / Missing Johnny)
家へ帰ろう
  (El Ultimo Traje / The Last Suit) 
私はマリア・カラス
  (Maria by Callas)


<蓮見重彦セレクション ハリウッド映画史講義特集>
堕ちた天使(旧)
  (Fallen Angel)、 
夜の人々(旧)
  (They Live by Night) 
将軍暁に死す(旧)
  (The General Died at Dawn) 
モスクワへの密使(旧)
  (Mission to Moscow) 
レオパルドマン(旧)
  (The Leopard Man) 
キャットピープル(旧)
  (Cat People) 
恐怖のまわり道(旧)
  (Detour)
アスファルト・ジャングル(旧)
  (The Asphalt Jungle) 
罠(旧)
  (The Set-Up) 
過去を逃れて(旧)
  (Out of the Past) 
十字砲火(旧)
  (Crossfire) 
悪の力(旧)
  (Force of Evil)


<その他の旧作> 
刑事マルティン・ベック(旧)
  (Mannen pa Tket / The Man on the Rof) 
拳銃を売る男(旧)
  (Stranger in the Prowl)  
デスティニー・イン・ザ・ウォー(旧)
  (The Chinese Widow)

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

①-1 恐怖の報酬(オリジナル完全版)
1977年に製作されたウィリアム・フリードキン監督の作品は、北米以外では30分近くがカットされて封切られたという。元々1953年のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の名作のリメイク作品であり、この名作をTVでしか見たことのなかった私は、それと比べてかなり出来が悪いと感じたものだ。監督が執念で完全版を復活させ2013年ヴェネチア映画祭で上映、その後世界各国で上映されてきたものがやっと日本で封切られた。驚いた。まったく違う作品かと思うほど、その迫力は凄いものだった。CGなどが殆どなかった時代、よくあそこまで描けたものだ。今のCG頼りの映画が吹っ飛ぶ。

 

①-2 家へ帰ろう
最後は祈った、会えるようにと。88歳の主人公アブラハムはアルゼンチン・ブエノスアイレスの仕立て屋、娘たちは彼を養老院に入れ、家を売り払おうとしている。ポーランド出身のユダヤ人、彼は故郷の町ウッジにいるだろうある人に会うために長い旅に出る、いや家出をする。足が悪くまともに歩けない彼を支えるのは、スペイン、フランス、ドイツ、ポーランドで出会った人々。決して優しさだけの映画に陥っていない。監督・脚本はパブロ・ソラルス、これが長編2作目の49歳だ。お正月休み、必見です。

 

②-1 ハード・コア
90年代の漫画「ハード・コア 平成地獄ブラザース」を原作に山下敦弘監督が映画化、この漫画にほれ込んでいた主演の山田孝之が製作にもかんでいる。バブルがはじけた後の日本の姿・感情を、対照的な兄弟と精神薄弱気味の男にロボットを加えて鮮やかに描き出す。

 

②-2 リバーズ・エッジ
93~4年にかけて雑誌に連載された岡崎京子の代表作の実写映画化。あの当時の社会の在り方、若者たちの生き方を描いて、とんがった感覚の持ち主に受け入れられていた漫画をかなり現実感を持って映画にしているのではないか?行定監督作品としても充実したものになった。2月16日に公開されていたが、やっと見ることができた。

 

③-1 パッドマン 5億人の女性を救った男
いかにもインド映画らしく歌(主人公が歌う)から始まる作品だが、それがメインではない。生理ナプキンが高すぎて買えない女性を救うため立ち上がった実在の男性を描いたお話。驚いたのは2000年以降の物語であることだ。話題性だけではない力強さを持った作品。

 

③-2 セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー
1991年宇宙での長い滞在を続けていたソ連の宇宙飛行士セルゲイは、ソ連崩壊に遭遇、帰還することができなくなった。その頃経済不況のキューバでは娘と母との3人暮らしの大学講師セルジオが食事にも事欠く有様。この二人を結びつけたのは無線通信、NYの無線仲間も巻き込んでセルゲイの救出が描かれる。

 

 

おもしろい作品は他にも。映画館にレッツラゴン!

 


赤毛のアン 卒業:作者モンゴメリの孫娘が製作総指揮として関わった今回の「赤毛のアン」3部作は、原作に忠実にという基本線で作られた。物語の持つ面白さ、主人公アンの成長する姿を真直ぐに描いている。

 

いろとりどりの親子:ゲイとしての自分が親に受け入れられなかった作家アンドリュー・ソロモンの原作から映画化されたドキュメンタリー。彼自身のエピソードも含め、ダウン症、自閉症など“普通と違う子供”を持つ6組の親子を取り上げる。

 

斬、:「野火」に続く塚本晋也監督の新作は初めての時代劇。江戸時代末期、時代の変化を感じながら田舎で暮らしていた若者たちが、剣の達人と出会うことによって時代の渦に巻き込まれていく様を描く。

 

彼が愛したケーキ職人:イスラエル映画の新人監督オフィル・ラウル・グレイツァの長編デビュー作は、繊細なタッチで男/男、男/女の愛を描く。ユダヤ教によるコーシャ(食物の清浄規定)など、舞台となるイスラエル/ドイツの宗教、国、文化の違い等も興味深い。

 

マダムのおかしな晩餐会:フランスの豪邸に住むアメリカの金持ち夫婦が開いたセレブを招待しての夕食会。13人の夕食会にならないよう急遽加えたのはメイドの一人。よくできた脚本、新人アマンダ・スティル監督も良いテンポで喜劇を見せてくれる。結末がどうなるのか興味津々だ。

 

エリック・クラプトン~12小節の人生~:クラプトン自身のナレーションで語られる彼の人生を追ったドキュメンタリー。これほど厳しい、不幸な出来事が続いたのかと驚く。ロックファン必見です。

 

山中傳奇 4Kデジタル修復・完全全長版:キン・フ―監督(1997年65歳で死去)の1979年の作品は「恐怖の報酬」と同じく日本では短縮版が映画祭等で上映されたのみ、全長版での初めての封切り。これまたヴェネチア映画祭で2016年に初めて上映されたもの。後の「グリーン・デスティニー」などにつながるワイヤーアクションの先駆者だが、この作品では剣ではなく音の戦いや、金縛りの術など一味違う面白さあり。

 

来る:悪霊がやってくる映画を撮ったのは中島哲也監督、「下妻物語」「告白」などを見せてくれた監督は元々CMディレクターで、今回の作品もその技が至る所に見られる。登場人物がどんどん亡くなっていく中、最強の霊媒師はどう動くのか?

 

ガンジスに還る:死期を悟った父親がガンジス河畔の聖地に赴くのに同行する息子、2人のバラナシ「解脱の家」での生活を中心に、インドの死生観や生活を描く映画を撮ったのは27歳のシュバシシュ・ブティアニ監督。歌や踊りのないインド映画です。

 

おとなの恋は、まわり道:舞台はサン・ルイ・オビスポ(ロスとサンフランの間でロス寄り)郊外のワイナリーでの結婚式。こうしたちょっと変わった場所での結婚式がDestination Wedding(原題)として流行っているとの語りから始まる映画は、総てを斜めから見る男と女の会話劇、かなり笑えます。主演はキアヌ・リーブスとウィノナ・ライダー。ぴったり。

 

ヘレディタリー/継承:祖母が亡くなったグラハム家は、妻・夫・息子・娘の4人暮らし。やがて次々に発生する不思議な出来事。一家は何を引き継いだのか?美しい映像と落ち着いたペースで作品を作ったのはアリ・アスター、長編デビュー作である。

 

マイ・サンシャイン:1991~2年のLAを舞台に描く映画は、なぜかフランス・ベルギーの合作でアメリカは関わっていない。ハル・ベリー、ダニエル・クレイグの共演でもちろん英語で作られている。監督はトルコ生まれ40歳の女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン、フランス国立映画学校で学んでいる。長編デビューは「裸足の季節」、2作目が「マイ・サンシャイン」、決してうまい映画ではないが、不思議なエネルギーがある。

 

台北暮色:製作者がホウ・シャオシェン、監督はシャオシェンに育てられた女性監督ホアン・シー、41歳での長編デビュー作だ。現代の台北に生活する若者たちを描く、淡々とした作品。

 

私はマリア・カラス:マリア・カラスが元々はギリシャ移民の子としてニューヨークで生まれたアメリカ人だったとは知らなかった。後にギリシャ国籍にしているが。20世紀最高のソプラノ歌手とも言われた彼女の波乱万丈の人生を追ったドキュメンタリー。 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<外国映画>


渋谷シネマヴェーラで現在も上映中の<蓮見重彦セレクション ハリウッド映画史講義特集>に足繁く通った。蓮見は独特の文体の映画評論家だが、第26大東京大学総長(1997~2001年)や、80歳にして小説「伯爵夫人」で2016年の三島由紀夫賞を受賞したことでも有名。今回選ばれた27本の映画も渋く、一癖ありそうな作品が並んでいる。正月(1月1日のみ休映)を挟んで1月11日まで上映されているので、興味のある方はどうぞ。
27作品のうち、カラー作品は2作のみ。1932~1953年に製作された27作品なので仕方がないとも言えるが、今までに見た12作品で一番感じるのが白黒画面の美しさ、奥行きのある深さである。カラーになって失ったものは何だったのかを実感した。


目立った作品は次の通り。


キャット・ピープル」「レオパルドマン」「過去を逃れて」:パリ生まれのフランス系アメリカ人監督ジャック・ターナーの3作は、2つの動物人間ものも含め画面が美しい。


アスファルト・ジャングル」:ジョン・ヒューストン監督・脚本の宝石泥棒ものは覚悟を持った人物たちが辿る末路を描く。


十字砲火」:憎悪の連鎖を描いて、まるで現代のヘイト問題に向けて作られたのかと勘違いしてしまう。監督エドワード・ドミトリクはこの作品のため赤狩りにあってしまった。


夜の人々」:ニコラス・レイ監督のデビュー作で、後にロバート・アルトマン監督が「ボーイ&キーチ」としてリメイクした作品。主人公二人の若者のナイーブさが描かれる。


」:35歳のボクサーを主人公にしたロバート・ワイズ監督作品。八百長試合に巻き込まれた主人公がリングに上がる。

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー

 

12/14 拳銃を売る男 新文芸坐 大寺眞輔
新文芸坐で定期的に行われているシネマテークは特定監督の作品を上映し映画評論家の大寺眞輔が解説する上映会。第24弾はジョゼフ・ロージー監督について4回、4作品を上映、その最終が「拳銃を売る男」だった。
1953年の作品は、赤狩りでハリウッドを追われたロージーがヨーロッパに渡って初めて撮った作品。イタリアで作られ、アンドレア・フォルツァーノ名義で発表されたもの。ロージーはイタリアを気に入っていたようだが、一旦イギリスに出て再度入国しようとした時、イタリアから入国拒否をされ仕方なくイギリスにとどまることになったという。後の、いかにもイギリス的な作品を多く発表しているロージーしか知らなかったので、イタリアを好きだったという話には驚いた。確かにこの映画を見た印象はイタリアのネオリアリズモそのもので驚いたのだった。戦後の荒廃したイタリアの町で子供が主人公なんて「自転車泥棒」みたいじゃないか。大寺さんも、もしロージーがイタリアに居続けたらどうなっていたかと話されたが、それを想像するのはなかなか面白い。

 

 

Ⅳ  今月の懐かしい人

 

★ガブリエル・バーン
先月の「マイ・プレシャス・リスト」に続いて、「ヘレディタリー/継承」にガブリエル・バーンが出てきたので驚いた。懐かしい人ではなく先月も出た人だ。しかも、妻役が私の好きなトニ・コレットなのである。

 

★ハーヴェイ・カイテル
今月はトニ・コレット主演の映画が2本あり、いずれも見ごたえのある映画だったが、もう1本が「マダムのおかしな晩餐会」で、この映画での夫をハーヴェイ・カイテルが演じていた。「タクシー・ドライバー」「レザボア・ドッグス」「ピアノ・レッスン」など一筋縄ではいかない作品が多いが、「スモーク」とかしみじみした作品もある。作品数は圧倒的に多く、最近ではウェス・アンダーソン作品(「ムーンライズ・キングダム」「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬が島」)の常連でもあって、懐かしい人ではないが、こんなに肩の力を抜いて、アメリカ人らしい役を演じたのは久しぶりかなとこじつけました。来年には80歳になる。

 

 

 

Ⅴ 今月の惹句(じゃっく)


11/26~12/25の間に封切りされた作品の惹句の中から、今月は登場人物の言葉という形でアピールする2作品。

 

「クララ―見た目に惑わされるな」:くるみ割り人形と秘密の王国


“マリアとして生きるにはカラスの名が重すぎるのー”:私は、マリア・カラス

 

今回の2作品は「」や“”が付けられているが、何も付けられずに主人公の心の声を書いている惹句は結構見られる。

 

 

 

 

Ⅵ 今月のつぶやき


●懐かしく感じられるロボットが時代の閉塞感を飛ばしてくれるかのような「ハード・コア」は、ロボットの外観によってだろうか、全体に懐かしい感じがする。子供の頃に見た、読んだロボット漫画のようでもある。

 

●1978年に日本公開されているから見た可能性は高い「刑事マルティン・ベック」を国立映画アーカイブで見た。マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの警察小説シリースの映画化。いかにもスウェーデン作品らしく、主人公ベックのおじさんぶりが好ましい。監督のボー・ウィデルベルイといえば、「みじかくも美しく燃え」が思い出される。

 

●コスタリカといえば、日本の平和憲法に関連して軍隊を廃止した国としてTVで紹介されていたのを見たのは随分前だ。そのコスタリカについて2本のドキュメンタリーがやってきた。「コスタリカの奇跡~積極的平和国家の作り方~」は1948年に軍隊を廃止することを決め、その予算を社会福祉に充てるに至った過程や、何かと紛争の多い中米に於いてその維持を如何に行ったかを教えてくれる。「最後の楽園コスタリカ オサ半島の守り人」は70年代の森林伐採や観光開発による自然破壊から如何に方向転換して自然を保護するようになったかを描いている。教えられることの多い2本だった。

 

●ダイヤモンドダイニングという会社のCEO松村厚久を追ったドキュメンタリーが「熱狂宣言 止まったら死ぬぞ!」だ。若年性パーキンソー病に罹患し、体の動きが不自由な彼の、しかしエネルギー一杯の活躍を撮ったのは奥山和由、通常は製作者として活躍している人だ。ちょっと月並みか?

 

●モデルになったソ連の宇宙飛行士はセルゲイ・クリカレフ、彼は2005年10月に国際宇宙ステーション滞在中、日清カップヌードルのCMが撮影され、No Borderのキャッチフレーズと共に彼の姿がお茶の間に流れたという。「セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー」はその一つ前の宇宙滞在の時の話。91年5月19日から10月までの予定が延びに延び、アメリカのスペースシャトルで帰還したのは92年3月25日となったのである。

 

●ロドニー・キング事件ってあったなあ、黒人が白人警官から暴行を受けた事件。この裁判で警官が無罪になってロサンゼルス暴動が起こる時期を描く「マイ・サンシャイン」は、商店が略奪にあう場面がリアルに描かれる。

 

 

 



今月のトピックス:恒例の決算報告


Ⅰ 決算報告


例年同様に今年の決算報告も、2017/12/26~2018/12/25の1年間です。
見せよう会通信の2018年1月号から今月の12月号までの報告です。
この1年は毎日が日曜日でしたので、昨年に比して映画の本数が増えました。
結果は次のようになりました。

 

期間: 2017/12/26 ~ 2018/12/25
支出額: 477658円
映画本数: 537本
1本当たり金額: 889円

 

一年中フリーになった一年目は、当然ながら時間が自由になり毎日が映画館状態でした。本数は大きく増えて537本と、ちょっと見過ぎか。しかし、このうち旧作が179本で、新作だけに限れば358本でした。分かりやすく言えば、ほぼ一日一本の新作を見ていたことになる。公開本数は2017年が1187本でしたので、ほぼ同じ本数が今年も公開されたとすれば約1/3の新作を見たことになる。


1本当たりの金額は昨年の912円から889円と少し下がりました。これは昨年より旧作を多く見たためと思われます。主に名画座等で見る旧作は新作よりは安くなります。さらに、4/29~5/28の1か月間、TOHOシネマズのマイレージにより無料パスをゲットしたことも安くなった要因です。
総額は昨年より少し高めのヨーロッパツアー相当額になりました。

 

 

Ⅱ ボヘミアン・ラプソディ


ボヘミアン・ラプソディ騒動が収まらない。11月9日に日本封切りされたこの作品、今週で7週目に入っているが6週目までの週末興行成績では2位以上をキープと驚きの結果になっている。「ファンタスティック・ビースト」が封切られてから3週はベスト1を譲り、「ドラゴンボール」が封切られた週はベスト1を譲ったが、2位以下になったことがない。


しかも、興行収入が5週目までは常にその前週を上回ってきたのだ。興行収入は封切り週が最高で、その後ぐんぐん落ちていくのが普通。封切り週で1位になった作品が5週目まで常に増収というのは久しく聞いたことはない。「カメ止め」は初めは10位以下から始まり、拡大公開によって増収していったのだが、「ボヘミアン・ラプソディ」は初めから1位で、しかもその後も増収したのである。
一時は1位の座を受け渡した「ファンタスティック・ビースト」を6週目で抜き去り、「ボヘミアン…」が2位、「ファンタビ」が3位となっている。
新聞でも話題になっていたが、上映中に歌ったり、手拍子したりできる「応援上映」も繰り返し行われていて、リピーターも増えているようだ。さらに、フレディ・マーキュリーの曲作り、歌唱力等も改めて脚光を浴びている。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」がお正月興行でどうなるか注目だ。

 

 

 

Ⅲ 旧作?新作?


今月の外国映画の新作欄に2本の旧作を入れている。「恐怖の報酬(オリジナル完全版)」と「山中傳奇 4Kデジタル修復・完全全長版」だ。どちらも初めの公開時には不完全な形で上映されたものだ。
映画は監督のものという考え方が日本では一般的だが、海外は製作者のものという意識が強い。製作者は公開時効率的に利益を上げられるように、分かりやすくして多くの人を呼び込み、しかも短くして上映回数を増やそうとすることがある。今回の2本が題名にオリジナル完全版とか完全全長版を付け加えているのは、芸術としての映画を作った監督等が、自分の作品として正しい形で残したいと考えたからだろう。
今までにも、ファイナルカットとか、ディレクターズカット版とかの名前で作り直された作品があった。こうした作品を見直すことは今まであまりしてこなかったのだが、今回「恐怖の報酬」を再見してあまりに印象が変わっていたため、新作として扱うことにしたものだ。

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は2019年1月1日元旦に新年特別号をお送りします。

良い年をお迎えください。

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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