2019年 11月号back

一昨日やっと窓ガラスの掃除をすることができた。
2つの台風の風と雨で随分汚れていた。
汚れ切った(自分の事か)人生(おおげさな!)をすっきりしたい時、
訪れるのはやっぱり、映画館(自分だけか)!

 

 

 

今月の映画

 

9/26~10/25の台風19号襲来を含む30日間に出会った作品は43本、
今月は邦洋映画の本数が21:22と拮抗している。



<日本映画>

任侠学園 
宮本から君へ 
見えない目撃者 
みとりし 
葬式の名人 
蜜蜂と遠雷 
悪の華 
“樹木希林”を生きる 
最高の人生の見つけ方 
ある船頭の話 
ブルーアワーにぶっ飛ばす 
楽園 
スペシャル・アクターズ 
春画と日本人
破戒(旧) 
旗本退屈男(旧) 
太陽の季節(旧) 
狂った果実(旧) 
非行少女(旧) 
四畳半襖の裏張り(旧) 

赫い髪の女(旧)

 

 

<外国映画>

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
  (Eighth Grade) 
ウィークエンド
  (Weekend) 
パリに見出されたピアニスト
  (Au Bout des Doigts / In Your Hands) 
ホテル・ムンバイ
  (Hotel Mumbai) 
ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち
  (The Hummingbird Project) 
シンクロ・ダンディーズ!
  (Swimming With Men) 
ジョーカー
  (Joker)
エセルとアーネスト ふたりの物語
  (Ethel & Ernest) 
エンテベ空港の7日間
  (Entebbe / 7 Days in Entebbe) 
ジョン・ウィック:パラベラム
  (John Wick: Chapter3 Parabellum) 
イエスタデイ
  (Yesterday)
レディ・マエストロ
  (De Dirgent / The Conductor) 
真実
  (La Verite) 
ボーダー 二つの世界
  (Grans / Border) 
英雄は嘘がお好き
  (Le Retour du Heros / Return of The Hero) 
15ミニッツ・ウォー
  (L’Intervention / 15 Minutes of War) 
ガリーボーイ
  (Gully Boy) 
フッド:ザ・ビギニング
  (Robin Hood) 
ジェミニマン
  (Gemini Man)
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(旧)
  (C’era Una Volta il West /

   Once Upon A Time in The West) 
昼顔(旧)
  (Belle de Jour) 
君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956(旧)

  (Szabadsag, szerelem / Children of Glory)

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

① ジョーカー
ジャック・ニコルソンのイメージが強いバットマンの悪役ジョーカー。その成り立ちを描く映画は、アメコミ映画の陽気さを微塵も感じさせず、むしろ生きることの厳しさをこれでもかと見せつける。ヴェネチア映画祭金獅子賞がうなずける出来だ。監督トッド・フィリップスは「ハングオーバー」シリーズなどを監督、どちらかといえばコメディ作品が多かった。主役のホアキン・フェニックスの入れ込みぶりも凄い。

 

②-1 パリに見出されたピアニスト
パリ北駅の駅ピアノを弾く若者、見守る中年男性から始まる映画は、人に備わった才能を見出し、育てていく物語。コンセルヴァトワール(パリ国立高等音楽院)の女伯爵の異名を持つピアノ教師との激しいレッスンは気味がいいほど。最後は成功するのもうれしい。

 

②-2 蜜蜂と遠雷
恩田陸の小説、直木賞、本屋大賞のW受賞が話題になった原作の映画化。作家自身が映画化は難しいのではとしていた作品に挑んだのは、石川慶監督、監督デビューの「愚行録」に続く作品だ。音楽や心の思いを映像で表現しようと頑張っている。

 

②-3 レディ・マエストロ
現在も少ない女性指揮者、その最初の女性アントニア・ブリコの生涯を描く映画は、オランダの女性監督マリア・ペーテルスによって作られた。ブリコ自身もオランダ人で、この映画もオランダ資本で作られた。単に女性指揮者というに留まらず、ジェンダーの問題や、彼女自身の出生に関する秘密など、豊かな内容が上手く組み込まれた脚本も監督が書いている。

 

③-1 見えない目撃者
2011年の韓国映画「ブラインド」はすでに中国でリメイクされているが、今回は日本でリメイクされた。前2作は見ていないが、3度目ともなれば流石の出来といっても良いか。設定、謎解き、展開の速さなどで見る者を飽きさせない。おススメです。

 

③-2 ボーダー 二つの世界
主人公は入国管理のところに立って、到着した入国者の匂いを嗅ぐ、その人の心の匂いを。恐れややましい心を嗅ぎ分け、彼等が隠している秘密を見つけてしまうのだ。北欧映画らしい、ちょっと冷えたタッチで描かれる不思議な世界。

 

 

 

芸術の秋、面白い作品を映画館で楽しみましょう。(終わったものもあり)。


ウィークエンド:ロンドンのゲイの恋愛を静かに描いた作品は、声高なところがなく、何でもない日常の中に二人の感情に寄り添うように作られている。

 

ホテル・ムンバイ:2008年ムンバイで起きたテロ事件はイスラム過激派により10か所もの場所で同時多発的に起こされた。その中で5つ星のタージマハルホテルが占拠された事件を描く。監督はこの作品がデビューとなるオーストラリアのアンソニー・マラス。

 

任侠学園:今野敏の義理人情に厚い阿岐本組のヤクザたちを主人公にした人気シリーズ「任侠」の1冊「任侠学園」の映画化。社会貢献を目指す善人ヤクザの活躍を描く面白シリーズはなかなか快調。続編やりたいと木村ひさし監督も言っているようで。

 

宮本から君へ:漫画の原作からの映画化。監督は1981年生まれの真利子哲也、サイトのインタビューでは大学生時代に原作を読んで大きく感化されたらしい。その強い思いは作品から感じられる。主演の池松壮亮、蒼井優にも伝染していて元気さだけは凄い。

 

シンクロ・ダンディーズ:モデルとなったスウェーデンの男性シンクロチームも登場のイギリス版。2~3か月前に公開されたフランス版にはタッチの差でこちらの勝ちか。主演はロブ・ブライドン、この人、イタリアに続いて「スペインは呼んでいる」が近く公開。

 

エセルとアーネスト ふたりの物語:イギリスの絵本作家レイモンド・ブリッグズが両親の人生を描いた物語をアニメーション化した作品。牛乳配達の父とメイドの母が出会った1928年から二人が亡くなる1971年までを日常生活を中心に描く、静かな感動作。

 

“樹木希林”を生きる:昨年NHKで放映された同名ドキュメンタリーの映画版は、印象が随分違う。語り・撮影・監督の木寺一孝の声が多く聞こえ、ラストでは樹木に叱られている。これを見せることが狙いだったかもしれない。

 

イエスタデイ:脚本を書いたリチャード・カーティスが大のビートルズファンらしい。主人公が何故インド系?ビートルズだけでなくあの清涼飲料もなくなったのは何故とか、小さな謎をしかけながら、やはりビートルズの曲が何曲も聞けるようにしているのが嬉しい。

 

真実:カトリーヌ・ドヌーヴ主演で、大女優が書いた「真実」という本が巻き起こす娘との関係を中心に描く是枝監督作品。娘がジュリエット・ビノッシュ、その夫がイーサン・ホークという国際的キャストで作られたフランス=日本共同製作映画(ただしメインの製作会社がフランスのため外国映画)だ。監督は2女優をどう輝かせるかがが大事で、それができれば成功と言っている。職人監督として臨んだようだ。脚本も是枝だが、その目的に沿ってなのか、ドヌーヴの映画になっている。

 

ある船頭の話:オダギリジョーの初監督作品は、山あいの川で渡し船を操る船頭の話。見かけによらずと言っては失礼かもしれないが、静かで落ち着いた映画だ。圧倒的に美しい日本の風景がクリストファー・ドイルのカメラでとらえられている。

 

ブルーアワーにぶっ飛ばす:新人監督箱田裕子のデビュー作。CMやミュージックビデオのディレクターとして活躍している彼女が書いた(脚本も担当)今作は、監督自身が限りなく自分に近いと言っているように、女性CMディレクターと友達の故郷茨木トンデモ紀行といった趣。夏帆とシム・ウンギョンのコンビも超快調。

 

英雄は嘘がお好き:ジャン・デュジャルダンとメラニー・ロランで繰り広げるラブコメ、結構面白い。ナポレオンの時代、軍人と令嬢のおなはしだが、丁々発止の関係が楽しめる。

 

楽園:今の日本映画界で信頼できる監督の一人、瀬々敬久監督の新作は、吉田修一の原作からの映画化。人生で起こる様々な出来事が、いつかその後の生き方に影響を与える。それを紐解いてリアルに見せてくれる。

 

15ミニッツ・ウォー:例によって実話の映画化。1976年フランスの植民地ジブチで起きた“奇跡の人質救出”を描く。小学生のスクールバスがハイジャックされ、ソマリアへの国境近くへ。フランス政府は特殊チームを編成して現地へ…。選ばれた5人の編成も面白く、そこに割り込んでくる女教師もいて、見応え十分です。

 

ガリー・ボーイ:インドの女性監督ゾーヤー・アクタルが作ったムンバイのスラムに暮らす青年の物語。Ⅲ今月のインド映画を参照よろしく。

フッド:ザ・ビギニング:フッドは頭巾、日本語ではフード、原題はRobin Hood。どうしてロビン・フッドになったのかを描く。レオナルド・ディカプリオが製作、監督のオットー・バサーストがスピード感あふれるアクション映画に仕立て上げた。

 

春画と日本人:2013年に大英博物館で開かれた春画展は大成功を収めた。それを日本で開こうとしたが、簡単にはいかなかった。公立、私立を含め多くの美術館が二の足を踏んだのだ。猥褻ということで断られ、最終的に小さな私立美術館「永青文庫」で2015年9~12月に開催された。そこに至るまでの内実と、春画自体の歴史に、猥褻と責められることを怖れる風潮など現在の日本の状況を加えて描く。

 

ジェミニマン:ウィル・スミス主演のアン・リー監督作品は、自分に襲われ、戦うアクションはスピード感にあふれ迫力満点。51歳と23歳のウィル・スミスが戦うが、23歳の方はCGで表情などが作られたとか。

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

今月見た旧作は邦洋ともに特定の特集というより、バラバラに見た作品群が並んだ。唯一まとまりで言えるのはスバル座のさよなら興行で見た「太陽の季節」「狂った果実」「昼顔」の3本か。あるいは「太陽…」「狂った…」「非行少女」「四畳半襖の裏張り」の日活4作品か。


<日本映画>
旗本退屈男:市川歌右衛門の出演300本記念映画は正にオールスター映画。1958年の作品には当時の東映2大巨頭の片割れ千恵蔵は勿論のこと、錦之助、千代之介、橋臓など綺羅星の如し。話の展開もスピーディ、見どころたっぷりで楽しんだ。

 


<外国映画>
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト:日本ではちょうど50年前の1969年に「ウエスタン」の名前で公開されたセルジオ・レオーネ作品。初めて見たのだが素晴らしい作品で驚いた。


昼顔:ルイス・ブニュエル監督の作品はドヌーヴ主演で名作といわれてきた。今、初めて見るとなかなか入り込めない。ブニュエルの骨太な作り方は分かるが、あの当時(製作は1967年)なりの古さを感じさせる。

 

 

 

Ⅲ 今月のインド映画

 

歌と踊りのあるのが映画と長く思われてきたらしいインド映画界にあって、このところそれから外れた映画を9月号「あなたの名前で呼べたなら」、10月号「ヒンディ・ミディアム」と紹介してきた。3カ月連続となる今月は「ガリー・ボーイ」だ。
この作品には歌も踊りもある。というより、歌と踊りがメインテーマといっても良いかもしれない。しかし、それがラップとなると今までには見られなかったものだ。インドでラップ?と考えがちだが、世の中に対する不満や欲望を語るように歌うのがラップだとすれば、これほど似合っている歌もないともいえる。実際、この映画で見る限り主人公たちはすんなりラップで訴えている。
階級がはっきりあり、貧富の差も大きく、貧民街も広がっているムンバイの町で主人公はラップに入れ込み、歌うことで自分の場所を見つけようとしている。

 

 

 

Ⅳ 今月のトークショー


10/19 国立映画アーカイブ展示室 映画雑誌の秘かな愉しみ 展でのトークショー
「戦後、映画雑誌の黄金時代をめぐって」 佐藤忠男X 高崎俊夫(編集者・映画評論家) 


現存する日本初の映画雑誌「活動写真会」の創刊(1909年)から110年、現在も続く「キネマ旬報」の創刊(1919年)から100年の節目に合わせて、国立映画アーカイブでは「映画雑誌の秘かな愉しみ」展が行われている。(9/07~12/01)


展示は1.日本の映画雑誌の誕生 2.「キネマ旬報」の100年 3.戦前の映画雑誌 4.戦後の映画雑誌 5.映画雑誌と映画史研究 の5部門に分けて多くの雑誌が展示されている。映画雑誌に興味のある方はお出かけください。
今回のトークショーは現在89歳で映画評論家の最長老ともいえる佐藤忠男さんと、「イメージフォーラム」等の雑誌編集に関わり、今は主に映画関係の本の編集をしている高崎敏夫さんの対談というか、高崎さんが聞き佐藤さんが答える形となった。


佐藤さんは新潟で国鉄等に勤めながら映画雑誌に多くの投稿をしていた。当時投稿者で彼と競っていたのが増村保造(後に大映の監督)だったらしい。1954年「思想の科学」に投稿した「任侠について」が鶴見俊輔に絶賛され、「映画評論」で投稿の常連から執筆者に格上げされたという。その後50年代末ごろから「映画評論」の編集長となり、幾多の新しい書き手を誕生させる。「ヒッチコックマガジン」の中原弓彦(小林信彦)編集長には彼がいつも話していたギャグについて書いてもらい、名古屋から投稿してきた森卓也にはアニメーションについて長い文章を書いてもらった。その後、アジアの映画に多く接したこと、1973年からは個人雑誌「映画史研究」を編集・発行してきたことなどを話された。

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●市川雷蔵は自分を責めるタイプの主人公を演じると不思議な光を放つなあと感じた「破戒」は、市川崑監督の美的センス、和田夏十の脚本も素晴らしい。

 

●駅ピアノという番組がNHK-BSで不定期に放映されている。駅や空港に置かれたピアノ、色々な人たちがそれを弾くのを写した番組だ。こんなにいろいろな場所にピアノが置かれているのにも、さらに多くの人が弾くことにも感心してしまう好きな番組だ。「パリに見出されたピアニスト」はパリ北駅のピアノを弾く場面から始まった。

 

●共に石原慎太郎原作の「太陽の季節」「狂った果実」はいわゆる太陽族の生態を描いているが、裕次郎のデビュー作となり、また太陽族のもとにもなった「太陽の季節」より「狂った果実」の方が圧倒的に面白かった。中平康監督のフランス映画風味も効いている。

 

●柄本明扮する船頭トイチの渡し船に初めに乗ってきた客を見て驚いた「ある船頭の話」。その客に扮していたのが細野晴臣だったからだ。後に分かるが永瀬正敏の父親役で、2人ともマタギという設定だ。カメオ出演ではなく、後半には死を迎える重要な役だ。映画美学校の卒業制作で細野晴臣上映チームに入ったことが思い出された。

 

●年齢のためか聞く能力が落ちてきたとはいえ、高速茨木弁で内容が聞き取れないことが多かった「ブルーアワーにぶっ飛ばす」。そのスピード感、迫力故に作品が生きたことは確かで、そのぶっ飛ばしぶりは楽しめたのだが。

●カメ止めの上田慎一郎監督の新作「スペシャル・アクターズ」は、前作で俳優の素人ぽさが却って効果を上げたのが、今回はシャビ―に見えてしまう方向に働いてしまった。

 

●ブレークしたのが「007 慰めの報酬」だったから故か、オルガ・キュリレンコという女優はアクション中心にちょっと変わった映画に出ることが多い。「15ミニッツ・ウォー」もアメリカ生まれながらジブチ(フランス語です)で学校の先生になっているという役だが、事件に巻き込まれる。ちょっとロンパリ風な瞳が神秘的雰囲気を漂わせる。

 

 

 

 



今月のトピックス:映画祭


Ⅰ 映画祭


10月、11月と東京での映画祭が続く季節。


東京国際映画祭
32回目となる東京国際映画祭は10月28日(月)~11月5日(火)の9日間、メイン会場六本木(TOHOシネマズ+EXシアター)を中心に開催される。
オープニング作品として「男はつらいよ お帰り 寅さん」が上映されるのが話題か。


Japan Nowの特集は映像の魔術師大林宣彦で、新作の「海辺の映画館-キネマの玉手箱」も上映される。

 

各部門の上映本数は次の通り。


コンペティション:14本 

アジアの未来;8本 

日本映画スプラッシュ;9本 

特別招待作品:25本 

ワールド・フォーカス:13本 

Japan Now:14本 

CROSSCUT ASIA:10本 

ジャパニーズ・アニメーション:8本 

ユース:6本

日本映画クラシックス:3本 

シン・ファンタ復活?東京国際ファンタスティック映画祭ナイト:2本

STAR CHANNEL MOVIESセレクション:5本 

アメリカ議会図書館 映画コレクション(国立映画アーカイブにて):9本

東京ミッドタウン日比谷ステップ広場:11本

 

個人的興味としては次の2本。
日本映画スプラッシュで上映される「i -新聞記者ドキュメント-」:大ヒット作「新聞記者」のプロデューサーが放つ衝撃のドキュメンタリー。森達也監督が望月衣塑子記者を通して日本の報道の問題点に迫る。という紹介文に惹かれます。
特別招待作品で上映される「アイリッシュマン」:マーティン・スコセッシの新作という事よりもNetflix作品という事で、ひょっとして日本で劇場公開されない可能性もあるので見ておきたい。

 

 

②東京フィルメックス
20回目となる東京フィルメックスは11月23日(土)~12月1日(日)の9日間、メイン会場を有楽町朝日ホールとして開催される。
まだチラシ、パンフレットは見ていないので、サイトからの情報でお伝えします。

 

各部門の上映本数は次の通り。


コンペティション:10本 

特別招待作品:6本

フィルメックス・クラシック:5本 

特集上映 阪本順治:3本


阪本順治作品に関連しては、もう閉館してしまったスバル座のさよならプログラムで8本が既に上映された。

 

 

 

Ⅱ 多言語字幕アプリ


「旗本退屈男」を丸の内TOEIで見たのは10月4日(金)だった。前日、金曜日に番組が変わるため各映画館の作品をチェックしていて、封切館であるはずの丸の内TOEIで「旗本退屈男」が上映されるのを発見、興味を持った。多言語字幕アプリの実証実験を兼ねていますという案内があったので、これは何だろうと思った。
最近サイト予約ができるようになった丸の内TOEI、上映されるのは地下のスクリーン2、早速予約してみると真ん中座席が3列に渡って30席が予約済になっていた。これは実験用に席を確保しているんだろうなと考え、通路を挟んでの通路側席を確保。
当日、地下に降りた入口の左側に多言語字幕アプリの受付があった。係員ばかりが4~5人いたが、スルーして通常の入口に。そこで渡されたA4用紙には次の記述があった。
“ご来場の皆様へ 本上映は、文化庁が推進する「日本博」の関連事業として、スマートフォンを利用した外国人向け字幕上映の実証実験を兼ねております。上映中、字幕を表示させる専用アプリを使用するためスマートフォンの明かりが視覚に入る場合がございます。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。”
つまり、スマートフォンを利用して何か国語かの字幕を読ませようというものだったのだ。
使用方として、“スマートフォンのアプリを開き、字幕言語を選択、スマートフォンを横にしてお待ちください。マイクをふさがないでください。”とあった。
「日本博」とは何ぞやという疑問はさておき、画面を見ながらスマートフォンに表示される字幕を読むためにはスマートフォンを上に持ち上げていなければならず、映画館向きではないなあと思った。

(日本博 http://www.bunka.go.jp/seisaku/nihonhaku/index.html
ただし、この日これを利用している人は一人もいなかった。上映は5日間となっていたが結果は得られたのだろうか?

 

 

Ⅲ 全面広告

 

広告界における新聞の地位は、新聞部数の低下とともに下がっている。通勤電車の乗客を見ても、新聞を読んでいる人は今や見つけるのが難しく、反対にスマホを見ていない人を見つけることが難しいような状況だ。
新聞における映画の広告は、長く金曜日の夕刊がピークだった。土曜日から番組が変わるので、前日の金曜夕刊に映画の広告が多いのは当然のことだった。今も金曜夕刊には多くの広告が載っているが、昨年6月号でお知らせした東宝の金曜日封切りが昨年5月から開始され、その影響が少しずつ出ていた。朝刊に掲載される広告が以前より少し増えたことだ。
最近、朝刊に全面広告が載ることが目立つようになってきた。従来、全面広告は超ピーク時(GWや盆休み、年末年始)向け作品には時々打たれていた。しかし、ピークでもないこの1か月間に朝日新聞に掲載された全面広告は、次の通りだ。
9/28(土)朝刊 「最高の人生の見つけ方」 1面全面 10/11封切り
9/29(日)朝刊 「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」 1面全面 10/04封切り
10/03(木)朝刊 「蜜蜂と遠雷」 2面全面(出版広告と共同で)10/04封切り
10/04(金)朝刊 「真実」 1面全面 10/11封切り
10/05(土)朝刊 「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」 1面全面 10/04封切り
同上   同上 「楽園」 1面全面 10/18封切り
同上   同上 「宮本から君へ」 9/27封切り済
10/08(火)朝刊 「マチネの終わりに」 1面全面 11/01封切り
10/10(木)朝刊 「最高の人生の見つけ方」 1面全面 10/11封切り
10/13(日)朝刊 「i 新聞記者ドキュメント」 1面全面 11/15封切り
10/3の「蜜蜂と遠雷」は見開き2ページで驚いた。「最高の人生…」と「ヒキタさん…」はそれぞれ2回も全面広告を打っている。さらに日本映画が圧倒的に多い。外国映画は是枝監督の「真実」だけだ。これには何か意味があるのだろうか?

 

 

Ⅳ フレッド・アステア


踊り好きの皆さん、フレッド・アステア特集が始まります。
渋谷シネマヴェーラ 11/02(土)~29(金) Fred Astaire:Born to Dance
フレッド・アステア レトロスペクティブとして24作品を上映。お出かけください。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は師走直前の11月25日にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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