2023年 11月号 最近の新聞からback

 

10月になった頃からやっと過ごしやすくなりました。
9月末までは真夏日もあり、 心地良い秋が短くなって、
間もなく冬かというこの頃です。
天候に関係なく、年間通していつでも心地よく過ごせるのは、
そう、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

9/26~10/25の秋らしい青空も時々見えた30日間に出会った作品は41本、
邦/洋画は16/25といつもより日本映画、しかも新作の本数が多くなりました。
新/旧作は39/2と旧作が少なめ。
2本の旧作はいずれも外国映画、しかも名画座ではなく共に封切館で見ました。



<日本映画>

   16本(新16本+旧0本)

【新作】
国葬の日 
沈黙の艦隊 
BAD LANDS バッド・ランズ 
ほつれる 
白鍵と黒鍵の間に 
アンダーカレント 
アントニオ猪木をさがして 
アナログ 
過去負う者 
月 
春画先生 
ゆとりですがなにか インターナショナル 
大雪海のカイナ ほしのけんじゃ 
シェアの法則 
キリエのうた 
おまえの罪を自白しろ

 

<外国映画>

   25本(新23本+旧2本)

【新作】
オオカミの家
  (La Casa Lobo / The Wolf House) 
キリング・オブ・ケネス・チェンバレン
  (The Killing of Keneth Chanberlain) 
燃え上がる女性記者たち
  (Writing with Fire) 
沈黙の自叙伝
  (Autobiography) 
草原に抱かれて
  ( The Cord of Life) 
ヒッチコックの映画術
  (My Name is Alfred Hitchcock) 
コカイン・ベア
  Cocaine Bear) 
ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン
  (Vykradena Pryntsesa / The Stolen Princess) 
ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇
  (Jean Paul Gaultier: Freak and Chic)
イコライザー The Final
  (The Equaliser 3) 
ラ・ボエーム ニューヨーク 愛の歌
  (La Boheme: A New York Love Song) 
旅するローマ教皇
  (In Viaggio
  / In Viaggio: The Travels of Pope Francis) 
オクス駅お化け
  ( The Ghost Station)
ハント
  ( Hunt)
ルー,パリで生まれた猫
  (Mon Chat et Moi, La Grande Aventure de Rrou
  / A Cat’s Life) 
シアター・キャンプ
  (Theater Camp) 
アアルト
  (Aalto) 
ヨーロッパ新世紀
  (R.M.N.)
宇宙探索編集部
  (宇宙探索編輯部 / Journey to the West) 
栗の森のものがたり
  (Zgodbe iz kostanjevih gozdov
  / Stories From The Chestnut Woods)
ザ・クリエイター/創造者
  (The Creator)
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
  (Killers of The Flower Moon) 
私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?
  (La Syndicaliste / The Sitting Duck)

 

【旧作】
ロック,ストック&トゥ・スモーキング・バレルズ
  (Lock, Stock and Two Smoking Barrels) 
ラブ・アゲイン
  (Crazy, Stupid, Love)

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

①-1 BAD LANDSバッド・ランズ

黒川博行の小説を原作とし、監督の原田眞人が脚本も書いて映画化している。今や名称、巨匠と呼ばれるようになり、美しく重厚な作品も手掛ける原田監督だが、今回の作品のように軽快な作品も得意にしている。テンポよく話を進めながら、描くべきところはきっちり見せてくれる。俳優の使い方も巧く、安藤サクラを一回り大きくした印象。映画を楽しむことができる。

 

①-2 ハント

監督・脚本を担当しているのはイ・ジョンジェ、「イカゲーム」を見た人は知っているかも。今年50歳になる韓国の男優で、今まで監督の経験はないと思われる。チェン・ウソンとダブル主演もしている。1983年韓国が舞台。この年、ラングーンを訪れていた全斗煥大統領を狙う爆発事件があり21名が爆死、47名が負傷というラングーン事件があり、北朝鮮によるとされている。映画はあくまでフィクションで、北のスパイが韓国の安全企画部に入り込んだとされ、海外次長と国内次長の二人がそれぞれ捜査をし、その過程で大統領暗殺計画が出てくる…。125分と少し長いが、だれることなく最後までハラハラドキドキが続く。

 

②-1  沈黙の艦隊

かわぐちかいじの漫画を知ったのは30年以上前、と言っても完読したわけではないが。今回の映画では自衛隊の協力が得られ、実際の潜水艦を使うことができリアル感が凄い。30年前の漫画に、実写映画がやっと追いついた感がある。こうした映像を作ったのがクレデウスという会社らしい。2018年10月30日の設立というからまだ5年しか経っていない。2006年から連載が開始され、まだ続いている「キングダム」の映画を手掛けたのもこの会社だ。映像の力で、原作漫画がより広がりを持つことになっている。

 

②-2 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

80歳になったマーティン・スコセッシの新作、1920年のアメリカ・オクラホマ州のオーセージを舞台に、先住民オーセージ族が次々に謎の死を遂げる物語を描く。石油工業権を持ち裕福になっているオーセージ族の権利を奪おうとする白人との闘いは、実話に基づいたものだという。キングと呼ばれ先住民からも、白人からも信頼されているという男をロバート・デ・ニーロが、その甥で先住民と結婚する男をレオナルド・ディカプリオが演じている。206分と長い映画だが、スコセッシは流石に飽きさせず見せてくれる。

 

-1 宇宙探索編集部

中国からやってきたこの作品、コン・ダーシャン監督の北京電影学院の卒業制作として作られた。ちなみに監督は1990年生まれ。廃刊寸前のUFO雑誌「宇宙探索」の編集長が、中国西部の村に宇宙人が現れたという情報により西に向かう物語。何だが写りの悪い画面はいつの時代だと思わせ、奇妙な内容と相まって大いに楽しめる作品。

 

③-2 シェアの法則
今月一番のおススメかも。一般的には小野武彦が映画で初主演とかで紹介されているが、これは完全に脚本の勝利。小野の演技も結構いいが。元々が舞台の作品で、同じ人(映画にも出演している岩瀬顕子)が映画用に脚本を書き直しているため、細かいところまできちんと考えられている。疑問は総て解決され安心して見ていられる。今月のトークショー参照。

 



映画を映画館で楽しみましょう!(上映が終了しているものもあります。)


オオカミの家:驚きのストップモーション・アニメの作品は、チリからやってきた。作ったのはクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの二人組。見ていても、そのあまりの奇想天外ぶりについていくのに必死で、物語が頭に入ってこない。

 

国葬の日:安倍元首相の国葬から1年が経っている。7月8日に銃撃された安倍元首相の国葬が決定されたのは7月22日で、9月27日に執り行われると発表された。監督の大島新は9月27日の日本各地でインタビューを敢行、その映像を繋いでドキュメンタリーを完成させた。国葬という割には既に忘却の彼方になってしまったように感じるのは、国を挙げてというところまで行かなかったところに原因があるのだろうか?

 

燃えあがる女性記者たち:インド北部の州で女性達だけの新聞社ができ、彼女たちが社会をよくするために取材をする姿を追ったドキュメンタリー。カースト制度が色濃く残り、女性の地位も低いという大きな壁のある社会で、彼女たちがくじけずに進む姿には感心する。

 

ヒッチコックの映画術:アルフレッド・ヒッチコックは1980年80歳で亡くなっている。その彼が話し出す形でこのドキュメンタリー映画は始まる。勿論フェイクだが、いかにもヒッチコックが言いそうな内容で、彼自身の映画の作り方などを説明するのだ。いつも映画のどこかに出演していたヒッチコック、出たがり屋、目立ちたがり屋だった彼らしさを上手く出している映画。面白いです。

 

白鍵と黒鍵の間に:南博というジャズピアニストが書いた回想録の映画化。脚本は大胆に改定したらしいが、これが分かり難さを作り出している。主人公は二人いて南と博、しかも3年の年月があり、演じるのは池松壮亮で一人二役。こう書けば簡単に思えるが、説明はないので、一人の人間の3年間のお話かと思いがちだ。これで混乱だけが残る。もう少しスッキリさせてほしかった。話は結構面白いので。

 

アンダーカレント:豊田徹也の同名の漫画からの映画化。かなり有名な漫画らしい。脚本は監督の今泉力哉が澤井香織と共同で行っている。今泉力哉は軽めの恋愛映画が多いが、この映画は軽めとは言い難い。真木よう子が結構暗く演じていて、作品を重いものにしている。

 

旅するローマ教皇:初めての南米出身のローマ教皇フランシスコを追ったドキュメンタリー。監督のジャンフランコ・ロージは説明のナレーションを一切つけず、教皇の言葉だけでその人となりを描いている。今年87歳になった教皇は2013年からの9年間に37回の旅で53か国を訪ねたらしい。控えめで偉ぶらない教皇の姿が浮かび上がる。

 

アントニオ猪木を探して:力道山時代しかプロレスを見ていないので、アントニオ猪木については名前以外に知っていることは殆どない。彼が家族と共にブラジルに渡り、その地に巡業でやってきた力道山にスカウトされて1960年に日本に帰ってきたというのも知らなかった。プロレスに真摯に向き合った猪木の姿が印象に残る。

 

過去負う者:基本的にはドキュメンタリー映画を上映するポレポレ東中野で、この映画は上映された。監督は舩橋淳で、ドキュメンタリーxドラマの演出手法で作品を作っている。俳優を使いながら、台本はなく、設定と役割だけを俳優に伝え、俳優たち自身が考えた言葉を発し、動くという方法だ。スムーズに台詞が出てこない場合もあり、見ている方は時に不思議な感覚に襲われる。

映画のテーマは受刑者の再犯率50%という日本社会の不寛容だ。

 

アアルト:フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトを追ったドキュメンタリー。監督はフィンランド女性、ヴィルピ・スータリ。建物を設計するだけでなく、それに合う家具などまでをデザインしたアアルト。そのデザインには妻のアイノ・アアルトの存在が大きかった。彼女亡き後再婚したエリッサ・アアルトとも協業したアルヴァ。今年生誕125年となるアルヴァ・アアルトと二人の女性の在り方を描く。今月のトークショー参照。

 

ヨーロッパ新世紀:この映画の字幕は3種類からなっている。普通の白抜き文字はルーマニア語、黄色はハンガリー語、ピンクはその他の言語(英語、独語、仏語等)となっている。舞台はルーマニア・トランシルヴァニア地方の小さな村。主人公は出稼ぎ先のドイツで問題を起こし帰ってきたが、妻との仲は冷え切り、息子は話すことができなくなっていた。村のパン工場にアジアから二人の労働者がやってくるが、村人は彼らを排除しようとする。ルーマニアの小さな村に世界の分断、差別、暴力が見られるようだ。

 

:2016年の相模原障害者施設殺傷事件をモチーフとした辺見庸の小説「月」の映画化。この映画化を進めていたのは河村光庸プロデューサー、「新聞記者」「宮本から君へ」等を製作してきた。悲しいことに、昨年6月に急逝された。監督に石井裕也を起用したのも河村だ。石井に新しい面を持たせようとしたのだろう。宮沢りえ、二階堂ふみなどの起用も河村のアイディアだろうと想像する。今月のトークショー参照。

 

春画先生:春画については殆ど知識がない。映画の公式サイトには次の文面があった。“これまでその取扱いは日本映画でもタブーとされ、性器部分の描写は映倫審査でボカし加工が必要だった。しかし、本作は、映倫審査で区分【R15+】として指定を受け、商業映画として全国公開される作品としては、日本映画史上初、無修正での浮世絵春画描写が実現した。”そうだったのか!原作・監督・脚本を担当したのは塩田明彦。なかなか面白い。

 

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?:映画は主人公に感情移入して見るのが普通で、良いことをしていると信じていた主人公が突如悪いこともしていたと分かるとドキドキする。フランスの原発関係企業の労働組合の女性委員長と経営側との闘いを描くこの映画、4/5過ぎたあたりからドキドキが発生。但し主人公もしぶとい。実話から作られたこの作品、フランスの人たちは結果を分かって見ていたはずだからドキドキはなかった?

 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<外国映画>
ロック、ストック&トゥ・スモーキング・バレルズ

「オペレーション・フォーチュン」の公開に合わせて、ガイ・リッチー監督の長編デビュー作(1998年、日本公開は1999年))が公開されている。ジェイソン・ステイサムのデビュー作でもある。その年にイギリスで公開された作品の年間興行成績1位になっている。
リッチーは脚本も担当していて、この入り組んだお話を手際よくまとめていることに関心、更に作品全体のテンポが良く、軽快に話が進む。

 

ラブ・アゲイン

2011年の作品が、ワーナー・ブラザース創立100周年記念として映画館ル・シネマが選んだ15本の中の1本として上映された。有名度で言えば他の作品にちょっと劣る、しかも主演はスティーブ・カレルで日本ではそれほど人気がない。彼以外にはライアン・ゴスリングとかエマ・ストーン、ジュリアン・ムーアなどが出ているが。カレルはコメディアンでありながら、真っ当で真面目な人物を演じることが多い気がする。そんな彼が原題のCrazyでStupidな恋をする。

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー

 

10月13日 ヒューマントラストシネマ有楽町「アアルト」上映後

アルヴァ・アアルト等により設立されたインテリアブランド、アルテックの林アンニさんと司会者による対談


1935年に設立されたアルテックは北欧を代表するインテリアブランドとして世界的に人気を得た。更にアルテックはインテリアにとどまらずArt とTechnologyを融合したモダニズム商品を提供してきた。建築家が家具迄デザインするのは珍しいが、それには妻であるアイノ・アアルトの才能・力が大きく働いていた。
アアルトはフィンランドでは非常に高く評価され、かつてのヘルシンキ工科大学は現在アアルト大学に名称変更がされている。
自然と人間、社会全体のシステムデザインをして90年、そのシンプルさゆえに長く人に愛されてきた。

 

 

 

10月14日 ユーロスペース「月」上映後 

石井裕也監督、鎌苅洋一カメラマンの2名の予定だったが、そこに宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみの出演者も加わった初日(正確には2日目)挨拶


鎌苅カメラマンは杖を突きながらの登場だった。6月に事故に遭ったそうで、若いのにゆっくり歩いて登場された。
初日挨拶らしく、各人からお越しいただきありがとうございますとお礼が続いた。
そんな中、映画の舞台となった障害者施設内部の暗い映像について話題になった。鎌苅さんから、映画がフィルムからデジタルに変わったことにより、フィルムであれば半分は黒の画面が必ず挟まれていたものから、デジタルになってそれが無くなった。それを勘案して撮影を進めたという話があった。確かに、フィルムを見れば分かるが一つ一つの画像の間に黒い枠があって、画像が続いているように我々には見えるが実際には黒い部分も映写されている。カメラマンはそうしたことも考慮しているのかと妙に感心した。

 

 

 

10月17日 K’sシネマ「シェアの法則」上映後 出演俳優岩瀬顕子、内浦純一の対談

 

岩瀬顕子はこの作品の製作、脚本、出演を兼ねているが、舞台版「シェアの法則」の脚本も書いている。つまり舞台作品からの映画化ということになる。
岩瀬は企画・脚本を手掛ける舞台シリーズ「日穏—bion」を立ち上げ、毎年公演を行い15年になる。内浦は仲代達也の主宰する無名塾の出身で舞台、テレビ映画と幅広く活躍している。二人は「日穏—bion」の1本「Gift~星空の向こうから~」の舞台で2014年に共演して以来の仲だという。
舞台版から映画版となった「シェアの法則」を例にとり、舞台と映画(+テレビ)の脚本の違いについて岩瀬から話があった。
舞台版は設定がシェアハウス内に限られ、映画版に登場していた喜代子(宮崎美子)や光太郎(内浦)は登場しない。舞台版は台詞で物語を語っていくのに対し、映画版は映像で多くを語っていくので、台詞の量は3対1ほどの違いがある。岩瀬はテレビ朝日の「遺留捜査」シリーズの脚本も時々書いていて、テレビはながら視聴でじっくり見ていない人もいるので台詞を説明的に書き、大きめの声でと依頼しているとも話していた。

 

 

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき(悪いことも良い事も)


●日本でもクマの被害が話題になっているが、アメリカで実際にあった事件を映画化したのが「コカイン・ベア」。題名の通り、コカインを運んでいた小型機が故障で不時着、コカインの包が散乱、それを口にしたクマが…。コメディー調なのに、残酷描写が過ぎる。

 

●オペラは高く、長く、退屈というイメージを覆そうとした日本人女性が、印象を変えようとオペラの名作を映画化した「ラ・ボエーム ニューヨーク 愛の歌」。96分と短くはなっているが、歌唱は全くのオペラ調で張り上げる。反対に物語は全く分からず、歌のみの印象。サイトにはミュージカル映画とあるが、決してそんなものではない。ちょっと残念。

 

●アメリカの夏休み、多くの子供たちが様々なキャンプに送り出されることは知っていたが、俳優等を目指す子供たちが行くのが「シアター・キャンプ」。面白い。キャンプ最後に上演される卒業制作の舞台は、正にミュージカルの楽しさ。

 

●テレビからの映画化はドラマを見ていない人は置き去りされることがあるなあと思わされた「ゆとりですかなにか インターナショナル」。総花的に人物が出てきます。やはり、見ていた人向けでしょかね。

 

●岩井俊二監督の新作となれば期待しない方がおかしいと思われた「キリエのうた」。まったく乗れず、入り込めませんでした。主人公を演じたアイナ・ジ・エンドの歌い方が好きになれない、物語的にも時制の飛び越え方が分かり難い、179分は長すぎると驚きばかり。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:最近の新聞記事から  

 

Ⅰ 最近の朝日新聞記事から

 

TOHOシネマズ圧力問題(10月4日朝刊)

映画の配給会社に対して圧力をかけていた疑いがあるとしてTOHOシネマズが独占禁止法違反(不公正な取引方法)で公正取引委員会の調査を受けていたらしい。
公取委によると、遅くとも2016年11月以降、複数の映画配給会社に対し、上映枠を限っている作品の配給でTOHOシネマズに優先して配給することや、他の映画館に映画を配給しないことなどを要請していたという。この要請に応じなければ取引停止をほのめかし、実際に一時取引停止をしたこともあったという。


TOHOシネマズは東宝の子会社。と言っても、多くのシネコンを抱え、東宝作品のみを上映するわけではない。他社のシネコンと同じように大型作品を中心に話題作を上映している。製作会社としての東宝は日本の映画会社の中では圧倒的な成績を20年以上に渡って続けている。親会社のこうした成績を背景に、さらに全国74劇場で695スクリーンを擁し来場者数は日本でトップという成績のTOHOシネマズが、こうしたパワハラを取引先に対し行ったことは許されるものではない。
今回の公取委の調査に対し、TOHOシネマズは改善計画を提出、公取委はこれを認め調査は終了したという。

 

 

 

獣道を淡々と歩く濱口ワールドの“異質” 3大映画祭で受賞(10月4日朝刊)

今年のべえチア国際映画祭で濱口竜介監督の「悪は存在しない」が銀獅子賞を獲得した。44歳の若さでベルリン、カンヌに続き3大映画祭で受賞した濱口監督にインタビューをした編集員の石飛徳樹がその魅力を探っている。(「悪は存在しない」は日本ではGW公開予定)
監督の言葉に“俳優を起用する以上、「芝居をするな」とは言えません。しかし、許容できない演技があることも確かです。仮面をつけているような演技はあまり見たくありません。僕の映画には、自分自身を表現するために演技する俳優に出てほしいです。”とある。濱口演出では棒読みのリハーサルが有名だが、変な演技を付けてほしくないということだろう。“俳優が演技しようとすればするほど、現実から離れ、かえってフィクションを壊してしまう。だから、演技していることを隠そうとするのは、やめた方が良いと思います。”とも述べている。


濱口映画が欧州でどう受け止められているのかと、パリ在住の映画ジャーナリスト林瑞絵さんに聞いている。
“ベネチアのコンペにはNetflixなどの配給作品も多く参加していたが、人気スター、大物監督の起用で話題性があり、映像も美しく、編集の切れもいいが、どこかで見た作品であり、個性が感じられない。今年のベネチアは配信作品の限界が見えた年として記憶されるのでは。濱口映画はその反対です。「悪は存在しない」は音楽ライブで流す映像を依頼されたのが出発点。作り手にとって全く見えない獣道を通って生まれた。自分の道を愚直に淡々と歩いてきた。結果、誰も見たことのない異質な秀作が撮れているのだと思います。観客を子ども扱いして柔らかい食べ物ばかり与えるのではなく、大人扱いしてくれる映画だから評価されているのではないでしょうか。”

 

 

 

制作数世界一 映画熱に新たな波 インド新時代(10月5日朝刊)

昨年10月21日に日本で公開され、1年が経とうとしている「RRR」は東京では様々に映画館を変えながらも今も上映が続いている。「ムトゥ 踊るマハラジャ」の記録を越えて日本で最もヒットしたインド映画になった。この映画は今年の米アカデミー賞で歌曲賞を受賞している。


国連教育科学文化機関(UNESCO)の調査では、インドの映画製作本数は2016年に1986本となり、中国の853本、アメリカの658本を大きく超えて世界最多となっている。この本数の多さの理由の一つが、憲法で認められた言語が22にのぼり、映画も地域や言語ごとに作られてきたからとされる。そのインドで最近は吹き替え版が多く作られるようになってきたという。ヒンドゥ語からマラーティー語への吹き替えを担当した声優ガネッシュ・ディウェカーさんは“この5、6年で声優の大切さが認識され、若者の職業の選択肢になってきた”と話す。
上映時間が長く、言葉の問題があったために歌や踊りが使われてきたインド映画も、そのスタイルを変えつつあるとも言う。

 

 

 

 

 

Ⅱ 防衛省/自衛隊


「沈黙の艦隊」の初日に行ったら、初日プレゼントを渡された。時々あるクリアファイルで中に何か書かれた用紙が入っている。よくよくみると、クリアファイルには「防衛省」「自衛隊東京地方協力本部」とありその電話番号と、HP,Twitter,YouTube,Instagram,Facebook用の5つのQRコードが印刷されていた。中の用紙は、自衛隊東京地方協力本部のイベント情報がフルカラーで印刷されていた。
ちょっと驚き。まあ、それだけなんですが。

 

 

 

今月はここまで。
次号は、冬がやってきているであろう11月25日にお送りします。

 

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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