2023年 12月号 韓国映画の強さback

 

今年は暑い日が続いたと思ったら、
突如寒くなりなど、不安定な気候が続いた。
そんな不安定な気候の下でも、
日常生活は続く。
今日も映画館に行こう!

 

 

 

 

今月の映画

 

10/26~11/25の夏日になった日もあった31日間に出会った作品は39本、
邦/洋画は16/23といつもより日本映画の本数が多くなりました。
旧作はなく今月はすべて新作でした。

 



<日本映画>

   16本(新16本+旧0本)

【新作】

愛にイナズマ 
唄う六人の女 
ゴジラ -1.0 
almost people 
おしょりん 
かぞく 
正欲 
法廷遊戯 
花腐し 
OUT 
1%の風景 
NO選挙,NO LIFE 
ブルー・ウインド・ブローズ
コーポ・ア・コーポ 
首 
翔んで埼玉 琵琶湖より愛を込めて

 

<外国映画>

   23本(新23本+旧0本)

【新作】

ドミノ
  (Hypnotic)
SISU/シス 不死身の男
  (Sisu) 
極限境界線 救出までの18日間
  ( The Point Men) 
悪い子バビー
  (Bad Boy Babby) 
トンソン荘事件の記録
  ( Marui Video) 
キャロル・キング ホーム・アゲイン ライブ・イン・セントラル・パーク
  (Home Again Karol King Live in Central Park) 
ザ・キラー
  (The Killer) 
私がやりました
  (Mon Crime / The Crime is Mine) 
人生は,美しい
  (Life is Beautiful) 
サタデー・フィクション
  (蘭心大劇院 / Saturday Fiction) 
マーベルズ
  (The Marvels)
パトリシア・ハイスミスに恋して
  (Loving highsmith) 
理想郷
  (As Bestas / The Beasts) 
蟻の王
  (Il Signore Delle Formiche
  / Lord of The Ants) 
ぼくは君たちを憎まないことにした
  (Vous n'aurez pas ma haine
  / You Will Not Have My Hate) 
ガザ 素顔の日常
  (Gaza) 
スラムドッグズ
  (Strays) 
JFK知られざる陰謀
  (JFK Revisited: Through The Looking Glass)、 
リアリティ
  (Reality) 
モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン
  (Mona Lisa and The Blood Moon) 
PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ
  ( Phantom)
ロスト・フライト
  (Plane)

 

【試写】
ウォンカとチョコレート工場のはじまり
  (Wonka)(12月8日公開)


 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

①-1極限境界線 救出までの18日間

今月のトピックスにも書いた韓国映画の1本。2007年に韓国人のグループがアフガニスタンでタリバンに拉致された事件に基づいて作られた映画。先月の「ハント」同様、事件を細かく描き、しかもエンターテイメントにする力に感服。今月のトピックス参照。

 

②-1 蟻の王
アルド・ブライバンティというイタリアの詩人・劇作家・演出家を巡る実話の映画化。同性愛者であった彼が教唆罪で逮捕収監された事件。1960年代、同性愛は病気であり治療が必要として、彼と愛し合った若者は電気治療を受け、アルドは若者をかどわかしたとして裁判にかけられた。LGBTQの認識が進んだ今では考えられない事件。

 

②-2 NO選挙、NO LIFE
畠山理仁(みちよし)というフリーランスのライターをご存知だろうか?彼は選挙に憑りつかれ、25年に渡って選挙を取材してきた。しかも候補者全員を取材するというポリシ―を守ってだ。このドキュメンタリーでは2022年の参院選・東京選挙区で取材する畠山に密着。全候補者34人に取材する姿を描く。今月のトークショウ参照。

 

③-1 私がやりました
監督デビュー以来コンスタントに作品を作り続けるフランソワ・オゾン監督の新作はコメディ。殺人事件は正当防衛だったと供述して無罪、それで人気俳優になった女優の前に、わたしが犯人よと大ベテラン女優が…。イザベル・ユペール登場で笑いが爆発。オゾン作品では一番笑える。喜劇作家ではないが。

 

③-2 ロスト・フライト
イギリス男優のアクション派としては、2才年上のジェイソン・ステイサムと同年代での2枚看板のジェラルド・バトラーの新作。いつものように製作にも関わっていて、これまた最後まで手を抜かないでサスペンスを高めている。最後までドキドキだ。監督はフランスのジャン=フランソワ・リシェ。

 

 

 

楽しめる作品は他にも、映画館でどうぞ。(上映が終了しているものもあります。)


◎Sisu/シス 不死身の男:珍しくフィンランドからやってきたアクション映画。題名通り死なない男シスはめっぽう強い。安心して楽しめます。

 

◎愛にイナズマ:先月の「月」に引き続き石井裕也監督の新作。「月」に比べると、こちらの方が彼らしいと言えるだろうか?まだ40歳の若さだから、変に老成しないで充分に遊んでほしいと思うのだが、根が真面目な人なんだろうな。

 

◎唄う六人の女:監督・脚本・編集の石橋義正は、パフォーマンスグループ「キュピキュピ」を主宰しているという。何とも予測のつかないストーリーはそのあたりから来ているのだろう。画面はなかなかにシャープ。

 

◎悪い子バビー:35年間母親に騙されて家から1歩も出なかった男バビーが主人公。オランダ生まれオーストラリア育ちのロルフ・デ・ヒーア監督は脚本に10年かけ、映画が完成したのは1993年。なぜ30年後に日本公開となったかは不明。いかにもオーストラリアらしい破天荒さ。

 

◎トンソン荘事件の記録:何の前知識も無く見ていて、これはドキュエンタリーかと思うほど、ドキュメンタリーらしさを出して作られている韓国映画。如何にも古いドキュメンタリー風を出すためだけに力を使っている。それ以上でも以下でもないが、結構凄い。

 

◎ゴジラ -1.0:今年はゴリラ誕生70年目、「シン・ゴジラ」から7年ぶりにやってきた新作ゴリラは30作目となる。1作目と同じ11月3日に封切りされた。今回ほど戦争と関連して描かれたゴジラはなかったのでは?大体ゴジラはビキニ環礁での核実験が誕生の原因だったのでは?と思っていたのでちょっとびっくり。

 

◎おしょりん:日本製メガネの95%は福井県で生産されているという。福井県での眼鏡生産がどのように始まったのかを描くドラマ。明治時代から始まったメガネ作りは、冬は農業 ができずそれに代わるものをというところから始まった。

 

◎人生は、美しい:平凡な主婦が突然余命2ヶ月と宣告され、初恋の人探しに、不器用な夫を連れて旅に出る。平凡な幸福、突然の悲しみ、夫との初恋の人探しのワクワク、これらが歌と踊りで彩られる。ミュージカル大国からやってきた、小さなミュージカル映画。

 

◎サタデー・フクション:1941年の上海、日本軍の占領を免れた英仏租界は日中欧の諜報員が入り乱れるスパイ合戦が繰り広げられていた。そこにやってきた日本の海軍少佐から情報を如何に聞き出すかのサスペンス。少佐がオダギリジョー、聞き出すのがコン・リーのロウ・イエ監督作品。

 

◎ウォンカとチョコレート工場のはじまり:ロアルド・ダールの原作「チョコレート工場の秘密」の実写映画化3作目。但し、今回は2作目の「チャーリーとチョコレート工場」の前日談でほぼオリジナルのストーリー。ティモシー・シャラメが歌い踊るミュージカル・ファンタジー。12/5以降にUK Walkerに紹介文が載る予定です。12月8日公開。

 

◎理想郷:スペイン・フランス合作の作品は、スペインの田舎に越してきたフランス人夫婦と村人の対立を描く。対立はどんどん加速していく。スペイン/フランスの対立というより、移住者と村人の対立だ。

 

◎花腐し:70年代末から脚本家として活躍してきた荒井晴彦、1997年に初監督、今回が4作目の監督作品。ピンク映画界を中心に映画界に関わる二人の男の会話で、ねちっこくエロっぽく状況を描く。山崎ハコが出てきたのには驚き。ファンなのだろうな。

 

◎リアリティ:2017年のトランプ大統領誕生はロシア政府によって仕組まれたものだったという報道があった。この情報の漏洩をしたとして取り調べされたリアリティ・ウィナーの FBI尋問音声記録を完全再現して作られた映画。アメリカには本当に驚くことが多い。

 

◎1%の風景:日本で助産婦による出産は全体の1%。女性の吉田夕日監督は自身第2子を助産所で出産したことで、映画をつくろうと決心したという。今月のトークショー参照。

 

◎PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ:1933年日本による統治下の朝鮮半島。京城で繰り広げられるスパイ合戦。本当にあったことなのか、すべてフィクションなのかはどうでもよく、先の分からない面白さがある。

 

◎コーポ・ア・コーポ:岩浪れんじの同名の単行本漫画を原作に作られた仁同正明の監督作。大阪にある安アパートを舞台に、居住する個性豊かな人物を描き、それぞれのペースで前向きに生きる人たちの物語。肩の力が抜けた“まぁええか”的住民の生き方がしっくりきた。

 

翔んで埼玉 琵琶湖より愛を込めて:思わず大ヒットした第1作の続編。魔夜峰央の原作漫画からだが、関西編は映画のオリジナル。監督:武内英樹、脚本:徳永友一は前作と同じ。主演のGACKT、二階堂ふみに加え杏、片岡愛之助、藤原紀香も出演。まあまあ笑える。

 

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

11月3日 ユーロスペース「almost people」上映後 関友彦プロデューサーと監督の一人 横浜聡子監督との対談
関プロデューサーが世界のミニシアターに向けて作ったという作品。何の知識もなく見に行ったので、分かってないところが多すぎた。4人の兄弟姉妹が感情の欠けた人間として登場、各人の物語がオムニバス映画のように描かれるが、きちんとした区切りはないので一続き。ぼーっと見ていたので、彼らが兄弟姉妹というのさえきちんと認識していなかった。
横浜監督は喜びの感情がない長男の物語を担当。感情がない人物を描くのはかなり難しかったとのこと。4人の監督は1人(たぶん石井岳龍監督だろう)を除き、うるさく騒ぐ人もなく、チームワークは良かったとのこと。

 

11月18日 ポレポレ東中野「1%の風景」上映後 吉田夕日監督と出演者平塚克子さんの対談
助産婦による出産を描くドキュメンタリーを撮った監督と出演者の対談。日本では出産の99%は病院で行われる。1人目は病院、2人目は助産所で出産した平塚さんは、2人目の子がダウン症かもしれないと思いつつ、出産後7日目にダウン症ですかねと助産婦に聞いた時、いつから気付いていましたかと聞かれたと話す。病院であれば、可能性はすぐに教えられただろうが、自分たちで考え、自分たちから聞いたことが言い渡されるより良かったと話す。助産婦は出産する人や家族に寄り添い、会話をすることで見守ってくれるのが良いと。

 

11月18日 ポレポレ東中野「NO選挙、NO LIFE」上映後 前田亜紀監督と大島新プロヂューサーの対談
前田監督は通常大島新さんが監督する際の製作を担当している。今回は役割が反対になっている。前田さんはこの作品が監督としてのデビューとなるらしい。二人ともこの映画の主人公畠山氏のエネルギーに驚いていた。前田監督は石橋をたたいて渡ると言った慎重派らしい。大島新はいつも助けられたという。

 

11月20日 新宿武蔵野館「ブルー・ウインド・ブローズ」上映後 富名哲也監督と畠中美奈プロデューサーの挨拶対談
お二人はご夫婦で、テツヤトミナフィルムという会社を作り、監督・脚本・編集をご主人が、企画・プロデュース・キャスティングを奥様が担当して、富名監督のデビュー作であるこの作品を作り上げた。この作品は少し前にできていて、2018年のベルリン国際映画祭のジェネレーション・コンペティション部門公式出品作品となっている。今年の東京国際映画祭には、2作目になる「わたくしどもは。」がコンペティション部門公式出品作品となったという。ベルリンに出品した後、コロナになってしまい、今回の作品は暫く離れて2作目作品を製作していたが、今回突然公開が決まり、日本題名をどうしようかと考える間もなく、Blue Wind Blowsのカタカナ読みのままにしたと話された。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人

 

☆コン・リー
「サタデー・フィクション」でオダギリジョーの日本海軍少佐から情報を引き出すために近づく女性を演じたのは、張芸謀(チャン・イーモウ)の監督デビュー作「紅いコーリャン」(1987年)で女優デビューをしたコン・リー。36年も前のことになる。
チャン・イーモウとは公私に渡りコンビとなり1995年の映画「上海ルージュ」まで続いた。陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品にも出演し中国を代表する女優となり、2005年には「SAYURI」(主演ではないが)でハリウッドにも進出した。
一回り下のチャン・ツィー(彼女が主演)が可憐さで売り出し、先にハリウッドデビューしていた。コン・リーも可憐さはあったが、むしろ強さも感じさせる女優で、田舎娘役にはぴったりだった。そんな彼女が随分洗練されて、久しぶりに姿を見せた。

 

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき(悪いことも良い事も)


●どこの国でも実際に働く人と、上からものをいう人たちの間には溝があるものだと感じさせたのは「極限境界線 救出までの18日間」。アフガニスタンに出向いてタリバンと韓国人グループの開放に向けて交渉する外務省の担当者は、タリバンに振り回され、何度も煮え湯を飲まされる。

 

●ゴジラ映画は第1作と海外で作られたもの以外は見ていなかったと改めて思った「ゴジラ -1.0」。ビキニ環礁での原爆実験によるゴジラ誕生とばかり思っていた。今回発生原因は描かれていないが、元々沖縄の島には存在していたといった印象だった。

 

●何ともつまらない印象だったのが「マーベルズ」だ。話がつまらない。何でこうなったのだろうか?このままではアメコミ映画は飽きられていくだろうか。

 

●イスラエル/ハマス戦争での死者は1400人/14000人と言われている。2018年の争いの時は60人/2000人の死者だったと知った「ガザ 素顔の日常」。戦力的には圧倒的な差があるのがこれを見てもはっきりする。

 

●ケネディ大統領の暗殺は事件未解決のままに終わるのかと改めて思わされた「JFK 知られざる陰謀」だった。オリバー・ストーンによる新作ドキュメンタリーでも、様々な面から検討されるが、決定的なものは出てこず、謎が深まった感もある。

 

●いくら題名に持ってきたとはいえ、首が飛び過ぎではないかと思った「」。もともと北野武監督は、その暴力描写の鋭さで注目され出てきた人なので、仕方がないことかもしれないが、ここまで首が飛んだ映画は初めて見た。ドラマの印象が薄れてしまうほどに。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:韓国映画の強さ  

 

Ⅰ 韓国映画の強さ

 

今月見た映画には4本の韓国作品が含まれている。「極限境界線 救出までの18日間」「トンソン荘事件の記録」「人生は、美しい」「PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ」の4本だ。いずれも見る価値のある、楽しめる作品だ。
驚くのはその4本が全くジャンルの違う作品であり、そのジャンルの中でも結構うまく作られているという点だ。


極限境界線 救出までの18日間」は冒険活劇ミステリーのジャンルの傑作であるが、実話に基づく物語というジャンルでもある。こうした実話物語は韓国に限らず日本を含め多くの国で作られている。この作品は2007年にアフガニスタンを訪れた韓国人グループ23人が、現地でタリバンに拉致された事件を描いている。タリバンは収監されている仲間の釈放を交換条件としてくるが…。韓国国内の描写(政府内の戦いとか)も含まれるが、殆どはアフガニスタンが舞台の映画だ。映画は残念ながらアフガニスタンロケはできていないが、代替ロケはヨルダンで、その砂漠の荒涼たる風景はこの作品の重要部分だ。
交渉に当たる外務省のお役人は現地の対応に振り回されるが、そうした描写もきちんと描き、世界で戦う韓国人の在り方をすべて描き切っている。
先月号のベスト1にした「ハント」も実話をヒントに作られていたが、世界を股に活躍する韓国のイメージが伝わってくる。


トンソン荘事件の記録」は前知識なしに見ればドキュメンタリーと思ってしまうのは間違いない。しかも徹底的に入れ込んで作られている。
K-Popは世界を席巻した。そして、最近は韓国製の舞台ミュージカルが人気になっているとか。「人生は、美しい」はそんな土壌から出てきた作品と言えようか?がんになり余命2ヶ月とされた主婦が、死ぬまでにしたい事として、初恋の人を探す旅に夫を連れて出かける物語。なんだか、何処にでもありそうな、結構気楽に考え出された物語のようだ。そこに歌と踊りをちょっと加えた映画なのだ。大げさな映画ではない、ちょっと可愛い作品だ。ちょっとしたミュージカルとでもいえばいいか。今の韓国の音楽状況から言えば、今後ミュージカル映画が増える可能性もある。


PHANTOM/ユリョンと呼ばれたスパイ」は1933年、京城の朝鮮総督府に潜む抗日スパイをあぶりだそうとする物語。驚くのは、この映画は日本統治の時代であり、日本語が強制されていたため、日本語での会話が非常に多いのだが、韓国人俳優が話す日本語が日本人のアクセントであるということだ。大変な練習が必要だったろう。勿論映画の内容の緊張度にも驚くが、俳優たちの日本語には本当に驚いた。

 

今月見た4本の韓国映画は、全く違うジャンルのもので、しかもそれぞれ面白い。今の韓国映画の実力を見せるものだった。韓国映画のジャンルの広がりはさらに進むだろう。

 

 

 

 

 

Ⅱ ミュージカルは嫌われている?


今月は2本のミュージカルに出会った。「人生は、美しい」と「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」である。


しかしどちらの映画のサイトを見てもミュージカルとは歌われていない。何故だろうか?どちらの映画も10曲前後の歌が歌われ、それに合わせて踊りも見られるのにである。「人生は、…」は余命2カ月と診断された妻が夫と一緒に自分の初恋の相手を訪ね歩く物語。「ウォンカ…」は「チャーリーとチョコレート工場」のはじまりの物語でウィリー・ウォンカの若い頃を描く物語。
どちらの作品もミュージカルにすることで、軽やかな楽しさを持つ作品になっている。


少し前までは、これらの作品はミュージカルと言われていただろう。それがどちらの作品もミュージカルとは謳われていない。何故だろうか?
タモリがミュージカルは嫌いと言ったからだろうか?それならまだいいのだが、今映画を見せる側がミュージカルと謳うことは集客に結びつかないと思っていないか、それが心配だ。

 

 

 

 

Ⅲ 漫画の影響

 

日本の一大文化、漫画の力は映画界においても大きなものを発揮している。漫画を原作とする映画はかなりの数に上っているだろう。かつては小説からの映画化が圧倒的だったが、漫画がそれと並ぶくらいになってからも既に4半世紀くらい経つのではないか。勿論アニメ映画がかつては子供向け中心に、最近では様々な観客向けに数多く作られているので、今や漫画が原作の方が多いのではないかと思われる。ただ、それらのデータをチェックすることまではしていないので、印象で言えばということだが。


かつてであれば小説家になった人が、今は漫画家になっている場合がかなりあると言われる。それだけ物語を映像的に構築している人が増えたともいえるだろう。


今月見た漫画原作の1本「コーポ・ア・コーポ」を見ている時、その“まぁええか”感覚が上手く出ているなと思ったのだが、反対にもうちょっと突っ込んだところもあっていかなとも思った。原作がある場合、小説でもそうだろうが、そこで語られていることを如何に映像化するかに映画を作る人たちは心を砕く。それが漫画であれば、既に絵があるのでそこから受ける影響はより大きい。「OUT」では映画のはじまりの方で漫画の絵をそのまま利用して出していた。漫画にそっくりなポーズをしている俳優に変わっていくという作り方だった。
漫画を映画化するということは初めからこうした影響を受けるということだ。下手をすると漫画以上の作品になることが難しいともいえる。アニメの単純な実写化と言うという枠に収まってしまうことも多いのでは。


韓国にも漫画はあり、さらに日本の漫画を映画化する場合もあるが、多くはオリジナル物語が多いように思う。そこに、今の日韓の映画力の差があると言えるのかもしれないなと思った。


いずれにしろ、脚本段階での深さに差があるような気もする。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、冬真最中のクリスマス12月25日にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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