五月晴れという日が比較的少なかったかな
との印象の今年の5月。
そんな時でも気分爽快になるのは、
そう、映画館!
4/26~5/25のゴールデンウィークを挟んだ30日間に出会った作品は49本、
邦/洋画は7/42と洋画の圧勝となった。
旧作だけでは0/18と旧作の多さがその原因だ。
なお、日本映画のMIMIは15分の短編映画。今回、今月のトピックスで紹介している短編映画特集MIRROR LIAR FILMSについて知っていただくためにリストに入れているが、本数にはカウントしていない。
7本(新7本+旧0本)
【新作】
パリピ孔明
花まんま
MIMI
わたのまち,応答せよ
裏社員。スパイやらせてもろてます
真相をお話しします
金子差入店
かくかくしかじか
42本(新24本+旧18本)
【新作】
異端者の家
(Heretic)
マインクラフト ザ・ムービー
(A Minecraft Movie)
JOIKA 美と狂気のバレリーナ
(Joika )
サンダーボルツ*
(Thunderbolts*)
ロザリー
(Rosalie)
来し方,行く末
(All Ears)
血戦 ブラッドライン
((Pri)sons)
けものがいる
(La bete)
訪問,あるいは記憶,そして告白
(Visita ou Memorias e Confissoes)
トレンケ・ラウケン
(Trenque Lauquen)
IT’S NOT ME イツ・ノット・ミー
(IT’SNOTME)
KIDOO キドー
(Kiddo)
新世紀ロマンティクス
(風流一代 / Caught by the Tides)
アブラハム渓谷 完全版
(Vale Abraao)
バロウズ
(Burroughs: The Movie)、
クィアQUEER
(Queer)
未完成の映画
(⼀部未完成的電影 / An Unfinished Film)
ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング
(Mission: Impossible - The Final Reckoning)
サブスタンス
(The Substance)
ノスフェラトゥ
(Nosferatu)
ミステリアス・スキン
(Mysterious Skin)
ガール・ウィズ・ニードル
(Pigen med Nalen / The Girl with the Broom)
リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界
(Lee)
【試写】
WE LIVE IN TIME この時を生きて
(We Live in Time)(6月6日公開)
【旧作】
<プレコード・ハリウッドⅡ>
特集社会面
(Five Star Final)
ブロンド・クレージー
(Blonde Crazy)
麦秋(むぎのあき)
(Our Daily Brad)
街の風景
(Street Scene)、
独裁大統領
(Gabriel Over the White House)
恐怖の四人
(Four Our Frightened People)
<SURWESTERN 超西部劇>
復讐の荒野
(The Furies)
ならず者
(The Outlaw)
大砂塵
(Johnny Guitar)
片目のジャック
(One-Eyed Jacks)
星を持つ男
(Stars in My Crown)
拳銃王
(The Gunfighter)
死の砂塵
(Along the Great Divide)
血ぬられし爪あと
(Track of the Cat)
廃墟の群盗
(Yellow Sky)
秘境
(Lust for Gold)
インディアン渓谷
(Canyon Passage)
私刑(リンチ)される女
(Woman They Almost Lynched)
(新作だけを対象にしています)
1-1 リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界
リー・ミラーは1907年生まれのアメリカ人、1925~6年にパリで衣装、舞台美術を学んで帰国、モデルとして活躍した。1929年ヨーロッパに再度渡り、マン・レイのところに押しかけ弟子かつ愛人となったとWikipediaにある。その後も波乱の人生を送った人のようだ。映画は1937年に美術評論家のローランド・ペンローズ(のちに結婚)と出会うあたりから始まる。当時彼女はカメラマン(マン・レイの弟子です)として活躍を始めていた。写真はイギリス版『ヴォーグ』に掲載されていた。第二次大戦がはじまると従軍記者として前線へ。『ライフ』のカメラマン、デヴィッド・シャーマンと一緒に多くの取材を行う。最も有名なヒトラーの浴室で入浴している彼女の写真は、デヴィッドが撮ったものだ。この写真はこの映画のポスターでも使われている。バスタブの左端にはヒトラーの写真が置かれている。これを撮影した日、ヒトラーとエバ・ブラウンは自殺したという。
この映画を監督したのはエレン・クラス、「エターナル・サンシャイン」などで撮影をしてきた彼女の初めての監督作品だ。映画の公式サイトではエレン・クラスは製作とされているが、監督が正しい。
2-1 クィアQUEER
ウィリアム・バロウズの未完と言われる同名小説からの映画化。1950年代のメキシコシティが舞台。そこで恋に落ちる男が主人公、相手は若い男だ。題名そのままにクィアな恋を描いたのはルカ・グァダニーノ監督、2018年に日本で公開された「君の名前で僕を呼んで」が同じように恋に落ちる男たちを描いていた。それにしても随分繊細な表現には感心した。
2-2 ノスフェラトゥ
ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」を非公式に映画化したF・W・ムルナウのサイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」のリメイク。幼いころにムルナウ作品に魅せられたというロバート・エガースが脚本・監督で手掛けた。さすがに丁寧な映像化で吸血鬼の世界をよみがえらせている。
3-1 アブラハム渓谷 完全版
2015年に106歳で亡くなったマノエル・デ・オリヴェイラ監督の1993年の作品で、代表作でもある。1998年に監督自らが再編集し15分の未公開シーンを追加して完全版とした作品。日本では以前のものが1994年に公開されているが、完全版は初めてなので新作扱いとした。フロベールの「ボヴァリー夫人」をポルトガルに置き換えて書かれた小説から、オリヴェイラ監督自身が脚本を書き、監督している。完全版さえ4半世紀前の作品で、時代は随分速いスピードで変わっていると感じさせるという意味で、古さを感じさせる作品ではあった。
3-2 かくかくしかじか
東村アキコの自伝的漫画の実写映画化。現在の漫画の知識は全くないので心配したが、これはそんなこと関係なく楽しめる映画だった。脚本を原作者の東村アキコ(伊達さんと共同)が書き、原作の持つ大事な部分をなくすことなく描いている。監督は多くのミュージックビデオやテレビドラマの演出を手掛け、カメラマンとして写真集も出している関和亮で、邪魔をすることのない素直な演出で楽しめた。
他にも映画館で楽しめる映画が今月も沢山。(上映終了済作品もあります。)
◎マインクラフト ザ・ムービー:ゲームはほとんどしないので、マインクラフトなるゲームがあることも知らなかった。予告編で見る限り、四角いブロックの形状が特徴のようで、面白いとは思えなかった。この映画がアメリカで大ヒットという情報が流れてきても、あまり見る気がしなかったが、見ると結構工夫されていて、それなりに楽しめた。
◎JOIKA 美と狂気のバレリーナ:まるで少女漫画の実写化かと思うような映画だった。1960年前後の少女漫画界ではバレエは一つの重要アイテム。それにバレエ界の争いのえげつなさをぶち込んで、本当に少女漫画のような作品になった。
◎サンダーボルツ*:予告編から、彼らは能力のない者たちの集まりと強調されていた。まあ、何でもできてしまう今までのマーベルの登場人物たちに比べれば、その分人間味があるが、まさかこれがニューアベンジャーズですと最後に言われるとは思ってもいなかった。スカッとはしないですが、時代が変わったんでしょうか?
◎来し方、行く末:主人公の職業は弔辞の文面を作ること。亡くなった人のことを調べて、その人に合った文章を書く。こんな職業が中国にはあるんでしょうね。亡くなった人の人生を挟みながら、本当は脚本家になりたかった主人公を描く。この設定なかなか便利。
◎訪問,あるいは記憶,そして告白:2015年に106歳で亡くなったポルトガルの映画監督マノエル・ド・オリヴェイラが、自分の人生等について語ったドキュメンタリー。作られたのは1982年だが、自分の死後に公開するようにとあり、2015年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも公開されたが、日本で劇場公開されるのは今回が初めて。教授のような風貌のオリヴェイラ監督が冷静に語っている。
◎トレンケ・ラウケン:アルゼンチンの女性監督ラウラ・シタレラの4時間を超す作品で、途中に休憩がある。アルゼンチンの田舎町トレンケ・ラウケンから女性の植物学者が姿を消す。彼女を探す二人の男、恋人と同僚。なぜ彼女は消えたのか、謎を追ってゆく映画だが、ちょっと長すぎ。
◎新世紀ロマンティクス:いまや中国を代表する監督といえる55歳のジャ・ジャンク―監督の新作。2001年。2006年、2022年と3つの時代を取り上げ、21世紀の中国の変貌を描く。各時代のドキュメンタリー的な部分と、一人の主人公を中心に描かれるフィクション部分が混在して描かれる。中国の速い変わり方はすごいが、結構ステレオタイプ的な感じもする。
◎WE LIVE IN TIME この時を生きて:ともに30歳を過ぎた男女の出会いは交通事故からだった。この映画は出会いの時代、出産直前の時代、3歳の娘がいる時代という3つの時代が様々に混ぜて描かれる。そのポップでキラキラ輝く描き方で楽しく見せてくれるが…。男はアンドリュー・ガーフィールド、女はフローレンス・ピューが演じている。ピュ―にとっては代表作になるのでは?今月は「サンダーボルツ*」でも主演している。6月6日に公開される。
◎金子差入店:差入店という店があることは知らなかった。差入れをしたことはなく、なかなか勉強になった。この特異な店を叔父から引き継いで経営している主人公と、収監中の人物の事件等を描きながら物語が進む。
◎ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング:この映画の東京都庁でのジャパンプレミアのために、トム・クルーズが3年ぶり25回目の来日をしたことは随分報道された。それにしてもテレビの「スパイ大作戦」から随分成長したものだ。今回の第8作目は169分で派手なアクション満載といったつくり。現在、唯一で最後のスターと言われるトム・クルーズの超過酷スタントも必見です。
◎ガール・ウィズ・ニードル:第一次世界大戦後のコペンハーゲンを舞台に、お針子として働くカロリーネの悲惨な人生を描く。勤め先の工場長と恋に落ちるも身分の違いで捨てられ、子供をおろそうとした時に近づいてきた女性にはかなり助けられるも最終的には裏切られ…。監督・脚本はマグヌス・フォン・ホーン、モノクロの美しい画面の撮影はミハウ・ディメク。
<外国映画>
<SURWESTERN 超西部劇>
渋谷シネマヴェーラでの西部劇特集。超西部劇の超が何を意味するかははっきりしないが、どちらかといえばそれほど有名でない作品も結構含まれていたのではないか?30作品が上映されているが、次の12本の作品を今までに見た。上映は5月30日まで続いている。これからも数本を見る予定。
「復讐の荒野」「ならず者」「大砂塵」「片目のジャック」「星を持つ男」「拳銃王」「死の砂塵」「血ぬられし爪あと」「廃墟の群盗」「秘境」「インディアン渓谷」「私刑(リンチ)される女」
西部劇はほとんど見ていなかったので、知っていた題名は「ならず者」「大砂塵」「片目のジャック」の3作のみだった。西部劇については今月のトピックスも参照宜しく。
●題名の後ろにアスタリスクがついているのが正式名らしい「サンダーボルツ*」。英語題名に付けられているので、日本語題名にも付けられたのだろう。アスタリスクが何を意味するかはよく分からない。分かる方教えてください。
●蒲郡は子供のころから慣れ親しんだ名前だ。行ったことはあるが、たぶん小学校低学年の頃で、何も具体的には憶えていない。「わたのまち、応答せよ」を見るまで、繊維産業の街という印象はなかった。蒲郡は日本で初めて綿花を栽培し、明治には「三河もめん」は全国に知れ渡ったようだ。蒲郡市から町の繊維産業に光を当てる映画を作ってほしいという依頼を受け、蒲郡に行った岩間玄監督は愕然とする。繊維の街という雰囲気は全くなかったのだ。やがて、わたを種から育て紡ぐ80歳の職人と出会い、やっと糸口を見つけ、そこから最終的にはロンドンにまで出かけていく。こんな地味なドキュメンタリーが封切り映画館で上映されたのには驚いた。蒲郡は三河の町ということで見に出かけたのだが、ある程度席が埋まっていたのにも驚いた。まさか、来ていた人全員が三河出身なんてことはないよね。例によって、私も封切り直前に蒲郡が舞台ということを知り出かけた組ではあるが。
●5月23日(金)公開としていたのが、突如5月17日(土)より先行上映と発表されたのは、トム・クルーズが来日した後だったと記憶している「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」。こんな間際に先行上映が発表されたことは初めてでは?なぜこうなったのかは知らないが、トム・クルーズ来日が話題になっている間に始めてしまおうということなんだろうか?
●デミ・ムーアが復活とかで話題になった「サブスタンス」。確かにどぎつい映画で話題になっても不思議はない。超クローズアップ、遠近のある画面などを多用し、印象深い映像を作っているが、やりすぎが嫌味になるところまで行っているような。脚本・監督はフランス人女性でコラリー・ファルジャという人だ。この映画の話題もあって、2017年の長編デビュー作の「REVENGE リベンジ」が日本で公開されるようだ。チラシを見る限り、これまたどぎつい映画のようだ。
●“針を持った女”ってどんな映画、しかもモノクロらしいしと思った「ガール・ウィズ・ニードル」。デンマーク語の原題の意味はGoogle翻訳では「ほうきを持った少女」らしい。魔女のことかな?あえて英語にした意味は?結構わからないことが多い。
洋画を見始めた中学2年生の頃(1962~3年)、西部劇はすでに退潮に入っていた。50年代は映画の黄金期と言われ、様々な映画が多くの人を集めていた。60年代に入り映画人口はどんどん減っていった。西部劇も同様の動きだったということだろう。
映画雑誌を読んでいると西部劇ファンの熱さが感じられたのだが、それもどんどん減っていった。
西部劇は、ヨーロッパから来た人たちがアメリカの国土を広げるために西に向かって進んでいったことに関連している。アメリカを西進し、過酷な自然や先住民と闘いながら国土を広げ、フロンティアを開拓してきた。この開拓者精神を描いたのが西部劇だ。時代的には南北戦争後の1860年代後半から20世紀の頭、未開拓地を舞台に人々の生活、戦いなどを描いてきた。19世紀末にできた映画が20世紀前半に隆盛となり、そこで描かれる西部開拓物語は人気を得て一つのジャンルとして確立されてきた。1930年代には年間100本、1935年には150本、1950年ころも140本が製作されたという。
西部が開発されつくすと西部劇に対する要求も減退し、今や年に1~2本あればいい方という状況になっている。
今月の旧作で紹介している<SURWESTERN 超西部劇>では1933~1961年に作られた30本が上映されている。ぱっと見、超有名作品はほとんどない。年間100本以上の作品が作られていたころ、その作品群の中に埋もれてしまっていたのだろう。だからこそ、この特集ではあの当時の普通の西部劇を見ることができるといえるのでは?
なお、西部劇という日本語の名称はWesternという英語からきている。
今回12本の西部劇を見ていろいろなことに感心した。
ミステリー、サスペンスとか、ラブコメとか、コメディとか今もジャンルがあるが、かつての西部劇ほどの広がりを持つものはないような気がする。
今後ジャンルとしての西部劇はどうなっていくのだろう。日本映画における時代劇と同じように細々と生きていくのだろうか?
以前から短編映画はどんなところで上映されているのかと思っていた。監督になりたい人が初めから長編映画を作ることができればいいけれど、とりあえず短編で練習するという状況も多いはず。映画作品は作っても、上映されなければ作品としては完結しない。それは長編でも短編でも同じではないか?作品として作るのは、自己満足だけのために作るのとは違うのだから、上映して、他人の目で見てもらうことが必要なのだ。
最近MIRROR LIAR FILMSのチラシを見た。そこにはSEASON7とあり、これが7回目の開催のようだ。“短編映画の旅が、あなたの世界を広げる”とも謳われていて、短編映画をまとめて上映しているようだ。さらに、“ミラーライアーフィルムズとは”とあり、“2020年より始動したメジャーとインディーズを超えた多彩なクリエイターによる短編映画制作プロジェクト。”と説明がある。5年前から行われているので、今までにもチラシはあったのだろうが、こちらの守備範囲には入っていなかったので見逃したのだろう。今回も加藤シゲアキ、加納浩次などが作った短編が5本ラインアップされている。ただ、5/9より2週間限定とあり、上映はすでに終わっている。
MIRROR LIAR FILMSのサイトを見ると、Season1~4までの作品は2023年7月~2024年3月までカラオケ店で見ることができたようだ。ただし、このサイトではSeason5以降の上映については分からない。今回見た「MIMI」はSeason5に含まれていた1本だ。今回この作品がロードショー館アップリンク吉祥寺で上映された。5/9から2週間限定でSeason7の5作品がロードショー公開されたので、その前哨戦として「MIMI」が上映されたのではないかと想像する。MIRROR LIAR FILMSの配給をアップリンクがしているので、この映画館であるとき突然上映される可能性はある。
色々調べていても非常に分かりにくい。すっきりした情報が欲しいところ。
次号は、鬱陶しい梅雨が早く終われと祈っているだろう6月25日にお送りします。