2005年 9月号back


 8月も終わりに近づき、、もうすぐ長月となる今日この頃、四国方面では水不足と聞きました。秋の台風シーズンが雨を運んでくれるまで、じっと我慢の時でしょうか?

 

 7月末から8月の今日までの1ヶ月間といえば、映画業界にとっても夏のピークシーズンのはず。なのに、なぜか今ひとつ熱い夏になりきれていないのが今夏の映画環境と感じます。
 今回は少し趣を変えて、この夏を振り返ってみましょう。ま、アイディアの夏枯れということもありますが。

 

 今年の夏は、宇宙の戦いで始まった。「宇宙戦争」と「スターウォーズ エピソード3 シスの復讐」の宇宙対決だ。
 スピルバーグとルーカス、70年代からアメリカ映画をリードしてきた彼らが久しぶりに直接対決、「ジュラシックパーク」で始まった脅威のCG画面の集大成で話題の「宇宙戦争」と、いよいよ完結、久しぶりにルーカス自身が監督した「スターウォーズ」で、話題性は充分だった。
 勝負は作品的にも、興行的にも「スターウォーズ」の勝ちだったけれど、「宇宙戦争」もそれなりにがんばって、この2作品はほぼ想定の成績だったのではないか。

 

 洋物では3番手に来るべき「アイランド」がマイケル・ベイにしては良い出来なのに思うほど伸びなかった。理由の一つに宣伝期間の短さが挙げられている。海賊版DVDに敏感になっているハリウッドが公開時期を早めたというもの。全世界同時公開と銘打って、トム・クルーズまで呼んだ「宇宙戦争」程の宣伝をすれば別だが、普通はそれほどの宣伝費は使えない。配給会社の宣伝部が知恵を絞って地道に宣伝する、日本のマーケットはこれが必要のようで、その時間を取って普通アメリカより半年くらい遅れで公開される。

 

 8月中旬に封切られた「マダガスカル」は結構お客さんを集めたし、「皇帝ペンギン」「ヒトラー 最期の12日間」のスマッシュヒットはあったが、
前座を務めた「バットマン・ビギンズ」の今ひとつの成績など、宇宙以外の作品が伸び悩んでしまった。不思議なもので、成績が伸びなければ質も落ちる、見ごたえ充分作品も不足していた。

 

 日本映画は夏休みお子様向けアニメの花盛りで、これはそこそこなんでしょうが、大人向けでは「亡国のイージス」が一人気を吐いたのみ。福井敏晴原作・原案の今年3本目、自衛隊の全面協力の下、アメリカ風戦闘活劇を目指してなかなかの見せ場を作り出した。福井作品は思想性と関係なく、戦闘場面が出てきて確かにハリウッド的。

 

 夏はどうしても大作勝負を目指してしまう。大作は6月下旬か7月初めに封切られ、7,8月とロードショーが続けられる。大作は多くの映画館で上映されるため、大作以外の作品が減る。(アニメーションが多いのも普通の作品が少ない印象を与える。)大作も力を失い始める8月の中旬以降は秋風が吹き始める。経済界の秋風とは違って、映画界の秋風は芸術の秋で大歓迎。実の詰まった作品を期待しましょう。

 

 ということで、夏枯れの1ヶ月に見た映画は15本、ベストスリーは次の通りです。

 

① ヒトラー~最後の12日間~
 元秘書が明かしたというヒトラーの最後の日々、雇われた3年前、必ずしもヒトラー信奉者ではないとの言葉通り、ヒトラーの権力者にありがちな悪面(短気、小心、妄想癖・・)も描くが、周りの人々の存在感、中でもゲッペルス夫人の強さが光る。実録モノのお約束どおり、ラストで流れる”その後”にも、ナチの重みを感じさせる。

 

② ふたりの5つの分かれ路
 人生の中の5つのとき、何気なく過ぎていく日々、どこにでもありそうな話普通の夫婦の出会いから離婚までを描く。但し、5つの時は逆に置かれて。謎の原因が、また謎になるが、必ずしも解決はされない。フランス映画なのに、使われるのはカンツォーネのヒット曲の数々、ボビー・ソロの「頬にかかる涙」は圧倒的印象。


③ 運命じゃない人
 日本の新人監督の作品、始まりは妙に素人っぽい、演技もね。しょうがねーよなー・・・なんて思っていると、途中からどんどん面白くなる。真相が暴かれるに連れてどんどん楽しくなっていく。真相が分かるに連れ、人間の深い業に触れていく「羅生門」と対照的。この脚本も書いた内田けんじ監督に○。

 

 

 1月からお送りしている見せよう会通信も今回で9回目、月刊なので9月号としました。次号はスポーツの10月号です。

 

 6時間もあるイタリア映画「輝ける青春」は岩波ホールで上映中ですが、8月中は平日も予約マンで、まだ見ておりません。7/9からロードショー中なんですが、どうなっているんでしょうか?売り券でも3300円なんですけど。こういう映画もあるんですよ。岩波ホールファンも多いですからねえ。




                         - 神谷二三夫 -


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