2009年 6月号back

最近は5月病が有名な5月、
五月晴れの5月を思っていたら、
本来は、旧暦の5月は新暦の6~7月で梅雨の時期、
その合間の晴れ間が五月晴れというのだそうですね。
いずれにしても、心はいつでも五月晴れで、
そう、映画館ではね。


 

今月の映画

 GWを挟んで4/26~5/25の間に楽しんだ映画は23本、世間一般的には日本映画の方が人気のある最近の日本ですが、今月の見せよう会通信は極端に外国映画となりました。



<日本映画>

GOEMON 
鈍獣 
余命1カ月の花嫁 
重力ピエロ
60歳のラブレター

 

<外国映画>

グラントリノ 
レイチェルの結婚 
イル・ディーヴォ
ミルク 
ウェディングベルを鳴らせ 
四川のうた
ゴモラ 
デュプリシティ スパイはスパイに嘘をつく
ベルサイユの子 
子供の情景 
新宿インシデント
ウォーロード 男たちの誓い 
チェイサー
ミーシャ ホロコーストと白い狼
天使と悪魔 
ブッシュ 
消されたヘッドライン、
夏時間の庭

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① 重力ピエロ
 現代の家族の在り方、今の若者たちの生き方、などヴィヴィッドに今の時代を感じさせつつ、謎解きは進む。最近映画化の多い伊坂幸太郎の原作も素晴らしいのだろうが、細かい配慮に満ちた映画も素晴らしい。


② チェイサー
 かつて刑事、今デリヘル斡旋業の主人公、あくまで勘違いのままどんどん事件は進んでいく。犯人は一度つかまりながら…、最後まで息を抜けない追っかけが続く。


③ グラントリノ
 最近のクリント・イーストウッド作品に駄作はない。ごく普通の何げない描写にも無駄がない。少年の成長を見ながら、気に食わないアジア人や若者たちをぶったぎる、一面快適な老人生活。

 

 

 今月はお勧め作品も多い。


余命1ケ月の花嫁:お涙実話ではありますが、廣木監督は抑えてじっくり描きます。


60歳のラブレター: 60歳くらいになれば甘いことだけで話が進むわけが

ない。


ウェディングベルを鳴らせ:あきれるほど無鉄砲ハチャメチャぶりが痛快。


新宿インシデント:90年代の新宿を舞台に、これほどシリアスなジャッキー・チェンは見たことがない。


ウォーロード 男たちの誓い:清朝末期の国取り合戦での男たちの戦い。


天使と悪魔:原作はこちらが先の「ダヴィンチ・コード」第2作、原作の故か1作目よりすっきり分かりやすい。


ブッシュ:オリバー・ストーンはもっと戯画化して描くと思いきや、案外おとなしい。それにしても会議の後のお祈りは本当ですか?


消されたヘッドライン:最後まで真実を追求する主人公ジャーナリスト、う~む、日本にいるのか?

 

他に、トピックス“子供の時間”の作品も見る価値あり、ご参照を。

 

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

1.峰岸徹
 ジャッキー・チェンのまるで漫画→劇画のような「新宿インシデント」で、
やくざの親分を演じていた峰岸徹。「おくりびと」が公開された2008年9月の翌10月、帰らぬ人となってしまった。その後も大林監督のレギュラーとして「その日のまえに」に出てきたが、今回の「新宿インシデント」は事前知識無く見たので、驚いた。これからどんどん味が出てきそうな、惜しい人をなくしました。

 

2.ステイシー・キーチ
 「ブッシュ」であやしいTV牧師アール・ハッド師を演じていたのは、ステイシー・キーチ。70年代に「ドク・ホリディ」、「ロイ・ビーン」などで強面で目立っていた。私の映画人生でホアキン・フェニックス(先日引退して歌手に…の人)が2番目の人、ステイシー・キーチがその最初の人だった。それは三つ口(と言っていいのでしょうか?)の俳優ということ。「ブッシュ」を見ていて、あれ、この牧師俳優は3番目?と見ていたら、いや~、これは1番目の人だと気がついた。随分太って、昔の鋭さはなくなったが、なんか、生きていてくれるだけでうれしい。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の日本映画

 

 5本しか見ていないのに、日本映画は充実していると感じたのは、「余命1カ月の花嫁」「60歳のラブレター」の2本が、言ってみればヒット狙いの、昔であれば感情狙いの甘~い作品であるはずなのに、きっちり作られていたからだ。どちらもTV局が絡んでいたとはいえ、東宝、松竹の映画でもあり、ひと昔前であれば悪い意味でのプログラムピクチャーのような番組だ。

「余命1カ月の花嫁」などてっきりその手の映画と思い、しばらくは放っていたのである。よく見れば監督が廣木隆一だ。驚いた。現代の女性を描いては随一の人ではないか。

「60歳のラブレター」は予定調和的にハッピーエンドにはなるのだが、それまでの持って行き方が上手くできている。気楽にハラハラしながら見せてもらった。監督は33歳と若い人(深川栄洋)だ。

監督の在り方がかなり自由になってきた。昔のように、映画会社の中でたたき上げていくという道はなくなって久しい。メジャーが旬の監督を使い始めたのはいつごろからか。こうした状況が上手く続きますように。




今月のトピックス:子供の時間

 

Ⅰ 子供の時間

 

 今月見た映画に、3本の子供が主人公の映画があった。

 

*ベルサイユの子
 母親に置き去りにされたエンゾ、ベルサイユの森で出会った放浪者ダミアンの下で生活する。5~6才だろうか、自分の名字さえ言えない幼子。自分を守ってくれる人についていく。エンゾを育て、学校にも入れるため、ダミアンは避けていた実家に帰り、働き始めるのだが。子供の無垢さが大人の保護者意識を覚醒させるというパターンは、今までの子供作品にもよくみられた。子供の可愛さが観客にもアピール、ラストのハッピー(時にはアンハッピー)エンディングに向けて、観客の心をひきとめ、感動を与えてくれるという作り方だ。

ベルサイユの子は少し変わっている。ラスト、エンゾを家に置いたままダミアンは再び家を出てしまい、(多分)放浪生活に戻る。エンゾは母親が現れ引き取っていく。放浪生活に戻ってしまうダミアン、この厳しいラストは子供映画の甘さを吹き飛ばす。

 

*子供の情景
 アフガニスタンの映画。主人公は6歳の少女、学校で勉強したいと思っている。その彼女の1日を、まるでぶらり街歩きのようにゆったり描く。彼女が学校(外にいすを並べただけの青空学校)に行ってみると、そこは男の子の学校で、先生から“早く出て行け、女の子の学校は川向こうだ”と言われる。学校を探して歩いているとタリバンの男の子たちにつかまってしまう。男の子たちは、彼女が卵と交換に手に入れたノートを破り取り、書くものの代わりに持っていた母親の口紅を見て、化粧などするなと責める。彼女は捕虜となり、紙の袋を顔にかぶせられ、敵国アメリカの捕虜のように拘留されてしまうのだ。これがアフガニスタンの現実なんだろうか。初めに見られる石仏破壊も怖いが、無垢のはずの子供が大人のタリバンと同じに染まっているのは、もっと怖い。
のんびりした映画の時間の中で強烈なメッセージだ。

 

*ミーシャ ホロコーストと白い狼
 ベルギーのユダヤ人少女ミーシャ、1942年8歳だった彼女は、拉致されていなくなった両親、東の方のどこかに居るはずの両親を探して、歩いて長い旅に出る。1年以上にわたった旅は、ドイツ、ポーランドを経てウクライナまで続いた。空腹との戦いでもあり、ミミズを食べ、人家に押し入り食べ物を盗んだ。
途中、オオカミの群れに入り、うさぎ等の生肉さえ食べた。まるで、本能のように生き延びることに、そして両親に会うことに総てを捧げてきた。しかし、ウクライナの映画館で見たものは解放されたブリュッセルの映像だった。

両親はベルギーに戻ったに違いない、彼女はウクライナからUターンでブリュッセルに向かうのだった。帰路は殆ど描かれないが、思えばもっとつらい。
ミーシャ自身が書いた原作をもとに映画化された。※3人の主人公はいずれも10歳以下、低学年の小学生だ。無垢である子供たちは、自分たちのしたいことに一直線。それが良いか、悪いかは二の次だ。タリバンに乗っ取られてしまうことだってある。いずれにしても、子供たちの命がけの行動に心動かされた。

 

 

 

 

Ⅱ 飲み物の席

 

 最近の映画館の座席には飲み物受けがひじ掛けの先についている。飲み物受けがない映画館は珍しくなってきた。映画館の利益はコンセッションで出ていると言われるくらいだから、コンセッションで売った飲み物が置けるようにするのは当然か。

 

 先日、「ミルク」を見に有楽町シネカノン2丁目に。全席指定の席に着き、右側の飲み物受けにペットボトルを立てた。上映開始2分前頃、女性が右側の席に来た。“あの、そこは私のです”席を間違えて座ってはいないよなと席番を確認すると、

“席ではなく、飲み物です”
“えっ?”
“その置き場は私のです。ほら、飲み物受けの手前に席番が書かれてるでしょ”

 

う~む、確かに。
 そういうふうに考えたことは一度もなかったが。右利きの人にとっては飲み物は右側にあった方が便利で、無意識に右側に置いていることが多い。矢印と共に書かれた席番は飲み物受けの手前に付いていることが多い。でも、席番は席の番号だけのはず…ですよね。

 


 では、また来月。



                         - 神谷二三夫 -


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