2009年 8月号back

夏真っ盛り、夏休みはこれからでしょうか?
旅行するも良し、ごろ寝で過ごしても良し、
映画館で過ごせばなお良し。
せめて1回は出かけましょう!
人生が変わるかも。


 

今月の映画

 6/26~7/25の間に出会ったのは24本、傑作、愚作取り混ぜての、言ってみれば曇り時々雨、時に晴天の梅雨空のような…
 こじ付けか!



<日本映画>

精神
選挙 
MWムウ 
エヴァンゲリヲン新劇場版:破
蟹工船 
台湾人生 
いけちゃんとぼく 
ごくせんTHE MOVIE
アマルフィ 女神の報酬 
サマーウォーズ

 

<外国映画>

それでも恋するバルセロナ 
トランスフォーマー リベンジ
扉をたたく人 
人生に乾杯! 
スティル・アライブ 
ウィッチマウンテン 地図から消された山 
サンシャイン・クリーニング
ノウイング 
セブンデイズ 
モンスターVSエイリアン 
湖のほとりで
ハリー・ポッターと謎のプリンス
セントアンナの奇跡、 
エル・カンタンテ

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① サマーウォーズ(試写会にて)
 わくわくしました。試写会会場ではラスト拍手。傑作です。今月のトピックス参照。

 

② 人生に乾杯!
 高齢者社会、年金の不安などと言えば、今の日本にあまりにドンピシャですが、この映画はハンガリー製。年金が少なく電気代払えず停電など厳しい状況ですが、老人ボニー&クライドののんびり度とがんばり度、○です。

 

③-1 扉をたたく人
 怠惰な日常に陥って生活をやり過ごす大学教授、とあることからシリアとセネガルからの不法滞在カップルと知り合う。ちょっとした変化が彼を目覚めさせていく。細かく、じっくり人はいつでも変われると教えてくれる。

 

③-2 サンシャイン・クリーニング
 アメリカ映画も大作・アクション・CG満載映画ばかりじゃない。上の「扉をたたく人」も、この作品もその代表例。特に、厳しい現実はきっちり描きながら、アメリカ的な明るさも忘れないサンシャインクリーニングはお勧めです。

 

 

 次の作品もオススメです。

 

選挙:現在「精神」がロードショー中の想田監督の前作、“外からの目”感でこちらの方がクリア。


台湾人生:日本が統治した51年間に生まれ育った日本語を母国語とする台湾人についてのドキュメンタリー、先月の「嗚呼、満蒙開拓団」に対応する台湾人の生き方。


それでも恋するバルセロナ:アレンの嘆き節がないだけでもうれしい。高いところから眺めようとした人間喜劇。


スティル・アライブ:ポーランドの映画監督キシェロフスキーについてのドキュメンタリー、ローカルでいることの難しさもあるんですね。


モンスターVSエイリアン:モンスターをエイリアン対策に使っちゃうというアイデア、面白い。


湖のほとりで:北イタリア、アルプス地帯の湖畔の静かな村の密やかな人間関係が静かに語られる。


★セントアンナの奇跡:2次大戦中イタリア・トスカーナ地方での戦いの記憶が40年近くたったニューヨークで立ち上がる。ちょっと長いけど、裏切り、差別、信念、黒人…詰まってます。

 

 

 

 

Ⅱ 今月のTV映画

 

ごくせんTHE MOVIE
 う~む、これも先月のROOKIESに続き、プンプンもののTV番組派生映画である。TVを見ていた人たちだけを相手にTVと同じことをやっているのだろう。
TVの番組を見たことがないので分からないが。原作が漫画で漫画的場面も多いが、映画ではかなりお寒い。こんな外側だけの人物描写では感情移入できない。こういう映画、「TV番組を見た人に限ります」としてほしい。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の3D映画

 

 今、アメリカは3D映画に力を入れている。今回「モンスターVSエイリアン」を500円余分に支払い3Dで鑑賞した。以前のものに比べれば随分見やすくなった。今回持ち帰っても良いメガネ自体がしっかりした作りになった。
例によりMADE IN CHINAのこのメガネ、元々メガネの私などは2重にかけるのがちょっと不安定だったが。

 

 3D効果もなかなかのものだった。手前からいろんなものが飛び出してくる。体を包み込むという効果でサウンドに随分先行されていた映像が、少し追いついてきたかなという感じ。

 

 アメリカと同様、日本でも3D映画に力を入れ始めている。製作の面でも、映画館という興業の面でも。1000万円を超える設備投資が必要だというが、3D上映可能映画館は増えている。この夏に公開されるハリウッド製アニメのほとんどは3D版も公開されるようだ。

 

 あえて、問題点は次のようなものか。
  *500円の追加は少し高い?
  *3D上映ではすべて吹き替え版になる?
 映画館に聞いたら「モンスターVSエイリアン」の3D字幕版はないとのこと。ひょっとして、字幕が読みづらくなるのか?
  *その効果ばかりに頼り過ぎ、いわゆる“飛びだす”映画ばかりが

   あふれるかも。

 

 物珍しさも加わって暫くは集客効果もあるだろう。が、CGが過剰でハリウッド映画が飽きられたという現実もあり、過ぎたるは及ばざるが如し…の認識もヨロシク。




トピックス:アニメの力&1000円&戦争

 

Ⅰ アニメの力

 

①最近のアニメの状況
 日本映画の興行成績ベスト10を2000~2008年の9年間で見てみると、アニメ作品が9回のうち7回のベスト1を取っている。そのうち6回はジブリ作品だからジブリの大きさが分かろうというもの。(「ハウルの動く城」は2004、5と2回も1位である。)しかしそれ以外に、ポケモン、ドラエモン、コナン、ONE PIECEと子供向けアニメもベスト10の常連である。その前の10年でも同じような状況となっている。

 

 外国映画の日本における興業では、流石にディズニー系のアニメ作品1本がベスト10にほぼ毎年入るという状況。日本における日本アニメと違い、本国アメリカにおけるハリウッドアニメは、興業ベスト10では1本入れば良いという状況だが、最近、アニメが安定的に収入を上げることが注目され製作本数は増えていると言われる。
シュレック(これは舞台ミュージカルにもなった)やアイスエイジなど、シリーズ化される作品もあらわれている。

 

 マンガ文化が日本だけでなく世界的にも注目される中、映画界におけるアニメ作品は日本でもアメリカでも安定的収入を上げるジャンルとしてとらえられている。

 

②エヴァンゲリヲン現象
 6/27に公開されたエヴァンゲリヲン新劇場版:破は、その週と翌週の2回興行収入ベスト1を記録した。公開された劇場数の割には大きな集客をしている。
私などオリジナルのTVアニメも知らず、現象と言われた人気のほどは全く分からないのだが、熱狂的なファンが多いことは確かだ。
初日の地元豊洲の映画館における騒動は開館以来のものだった。早朝興業08:00の回から、翌朝04:15の回まで1日10回興行、各回、少なくとも深夜以外の回はほぼ満席1日中列ができていた。

 

 人間操縦型ロボットの発展の先に、不条理的に現れる敵との戦いが良かったのでしょうか?主人公の父親との葛藤が身にしみたのでしょうか?私から見ると、観念的なテーマ展開と子供っぽさがいま一つなのだが、アニメがこうした現象を引き起こす力を持っていることは確かだ。


③サマーウォーズの力
 とんでもなくCPU的な、でも明るい解放感に満ちた画面から始まり、しばらくはその画調が続く。後から考えればこの導入が上手い。マイナスをプラスに転換してしまうような、作品のあり方としても、お話の運び方としても上手く使われている。

 

 主人公は高校生、大学生で、アニメという形態からも若い人向けと思われがち。確かに、試写会場を満員にしていたのは30才未満が圧倒的に多かった。
バーチャルな世界を展開するなど若い人にアピールしているのも確かだ。

 

 しかし、この作品はその世界だけでは終わらない。バーチャルではない現実の世界の方にキチンと力が入っている。今や崩壊しつつありながら、誰の心にも懐かしさがこみ上げる家族の絆、大家族の楽しさ、心地よさが丁寧に描かれる。バーチャルな世界はあくまで現実の人間の反映で、操っているのはあくまで生身の人間。その上でアクション的な場面は思いっきり派手なアニメだ。

 

 夏休みの間に若者は大きく成長する。それを支える大人たち、周りで遊ぶ子供たち、多くの人たちが一緒にいるのが当たり前の世界。バーチャルな敵との戦いに家族があらん限りの力を振り絞る。危機の後を救ったのは…。拍手が出るのは当たり前か、分かりやすい画面も良い。

 

 現実世界でも大きな出来事がわんさか。現実とバーチャルの世界が上手く絡み、お互いを分かりやすく、効果的に見せている。

 

 主人公たちの感情を表現する大胆で繊細な描写、気持ちをひきつけるストーリー運び、アニメだから表現できた楽しさを満載の作品。オススメです、どの年代の方にも。

 

 

 

 

Ⅱ 1000円の話題

 

①渋谷の映画館イメージ・フォーラム
 渋谷といっても青山側にある映画館イメージ・フォーラムは、以前、毎月1日の1000円日に出かけたのにもかかわらず、1800円を取られてしまった映画館。まあ、レディース・デイだって水曜日以外に設定している映画館あるし、仕方がないかと思ったものだ。
7/1「精神」を見に行った。もう、こちらはいつでも1000円の身分だから怖いものなし。なのに、イメージ・フォーラムも毎月1日は1000円にしていた。私の認識では都内唯一の非1000円館だったのに!!悔しいというか嬉しいというか。皆さん、イメージ・フォーラムも毎月1日は1000円です。


②TOHOシネマの毎月14日
 東宝の劇場をまとめているTOHOシネマズ、2年前に10周年を記念して2007/9/14~2008/8/14までの1年間、毎月14(トーフォー→東宝)日を1000円としてきた。それが1年延長されて2009/8/14までにされていた。
久しぶりに東宝の映画館に行ったら、“毎月14日1000円は2009/8/14で終わりです”と映像が伝えていた。と、その時、その画面を引き裂く鉄の爪が。
“許せん”と怒りの様相はXメン:ウルヴァリンのヒュー・ジャックマン。
続いて、“ウルヴァリン様の抗議により2010/8/14まで延長されました”。
9月公開のウルヴァリンの宣伝も兼ねて、これは上手い。東宝さんありがとう。

 

③水曜日は1000円日
水曜日の映画館は女性で混んでいる、もちろんレディースデイだからだ。(シネスイッチのレディースディは金曜日です。)水曜のレディースディに加えメンズディを木曜日に設定しているのは渋谷シネパレス。
これらに加えて、水曜日は男女どちらも1000円にしている映画館も増えている。次のような映画館です。
  *東京テアトル系映画館

   (銀座テアトルシネマ、テアトルタイムズスクエア、テアトル新宿、

    渋谷シネセゾンなど)
  *シネカノン系映画館

   (シネカノン有楽町1,2丁目、ヒューマントラストシネマ渋谷,

    文化村通り)
 *角川シネマ系映画館

   (恵比寿ガーデンシネマ、角川シネマ新宿)

 

 水曜日に映画を見ることができる人はご利用ください。

 

 

 

 

Ⅲ 戦争

 

 先月の「嗚呼、満蒙開拓団」(まだ上映しています)、今月の「台湾人生」(こちらも上映中)に続き、
来月は「花と兵隊」が公開されます。タイ・ビルマ付近で終戦を迎えるも日本に帰らなかった「未帰還兵」のドキュメンタリー。未見なのでどんな作品とは分からないのですが、太平洋戦争で日本が残してきたもの、キチンと回答が出ていなかったことを描いているのではと想像します。3年前の「蟻の兵隊」も含め、いずれの作品も、高齢で今聞いておかなければ永遠に聞けなくなる方たちのインタビューが中心です。しっかり見ておきたいと思います

 


  今月はここまで。
 良い夏休みを!

 



                         - 神谷二三夫 -


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