2010年 6月号back

切れていたパスポートを取り直し、
5年半ぶりに海外に出かけました。
見せよう会通信を始めたのが2005年の元旦送信分から、
ということは、この通信のために海外旅行を自粛していた…なんちゃって!!
Eチケットで航空券はなし、日本の出入国カードもなしと、
まるで新人のお客様のように,初めての経験を楽しみました。

 

映画はGWを中心にたっぷり堪能。


 

今月の映画

 4/26~5/25、GWの休みを挟んだ30日間に楽しんだ映画は28本、先月に引き続き昔の日本映画を多く見てしまいました。(12本)
 中でも若尾文子と増村保造監督のコンビ作6本(古・若)は、ドラマの濃さにも驚き、今月は新作にここまで強いものがあったかなあ?と思うほど。
 例によって、(古)はベストに入れていません。

<日本映画>

弥次喜多道中記(古) 
ただいまそれぞれの居場所 
春との旅
爛(古・若) 
妻は告白する(古・若) 
ドドンパ酔虎伝(古) 
刺青(古・若)
卍(古・若) 
武士道シックスティーン
赤い天使(古・若) 
清作の妻(古・若)
のだめカンタービレ 最終楽章後篇 
お母さん(古) 
安宅家の人々(古)
鞍馬天狗 黄金地獄(古) 
番場の忠太郎(古) 
川の底からこんにちは

 

<外国映画>

タイタンの戦い 
ノンあるいは支配の虚しい栄光
ウルフマン
ボーダー 
月に囚われた男 
ドン・ジョヴァンニ~天才劇作家とモーツァルトの出会い~
パリより愛をこめて 
9~9番目の奇妙な人形~ 
冷たい雨に撃て,約束の銃弾を
グリーン・ゾーン

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① グリーン・ゾーン
 2003年のイラクを舞台に、アメリカとイラクの戦争(?)とともに、アメリカ軍内部の対立を描いて、その緊迫感が見るものを虜にする。戦争の原因となった破壊兵器は今ではなかったと分かっているが、偽の情報がどのように作られ、維持されたのかというのが最高のサスペンス。

 

② ウルフマン
 狼男伝説をじっくり描いて見せ場の多い作品。1941の「狼男」のリメイク。前作は見ていないが、子供の頃の父親との関係が主人公のトラウマになっていて、イギリスを離れアメリカで育てられていたという設定が新しいか。

 

9~9番目の奇妙な人形~
 最後の人間だった博士が残した人形9の冒険を描いたアニメーション。人間の失敗を正そうとする健気な人形のアクション、生への行脚、そこで出会う1~8の人形たちの性格も鮮やか。

 

 次の作品もお勧めです。

 

ただいまそれぞれの居場所:小さな介護施設を運営する若い人たちがいることだけでも勇気づけられるドキュメンタリー。

 

春との旅:老人が自分の居場所を探して孫娘と放浪し…リヤ王のような孤独な旅を温かく見守る。

 

武士道シックスティーン:漫画原作のこの作品、主人公の女子高生が変に可愛くならないのがすっきり気持ちいい。

 

月に囚われた男:月に単身赴任する主人公の裏に潜む真実をなかなかリアルに描く。

 

川の底からこんにちは:クールに開き直る「私は中の下の女ですから」は、今の日本の状況か?

 

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を:香港・マカオのやくざな世界で男たちの生きる姿をたっぷり。

 

 

 

Ⅱ 今月のお久しぶり

 

イライジャ・ウッド

 9~9番目の奇妙な人形~で主人公9の声をしていたのはイライジャ・ウッド、あの「ロード・オブ・ザ・リング」のフロド役で有名です。29歳と若く、長らく出演していないという訳でもないウッドを久しぶりとするのは、ちょっと申し訳ないが、フロド役の大成功の後、そうした大作の主演者とは思えないほど作品が少なく、時々どうしたんだろうと思っていた。今回はアニメ作品だから姿は見せず声の出演。3年前にも「ハッピー・フィート」でペンギンの声をしていた。「ロード~」の成功の前にも長い芸歴を誇る彼にしてみれば、成功で浮足立つなんてことはないのかもしれない。

 



 


今月のトピックス:ニューヨーク・スペシャル

 

 3月に見た「ニューヨーク アイ・ラブ・ユー」のせいではないですが、
久しぶりにニューヨークに行ってきました。前回訪れたのは2003年9月でしたから6年8カ月ぶり。旅行中は1本の映画も見ませんでしたので、映画については書けません。泊まったヒルトンの横にジーグフェルドという映画館があり、
「アイアンマン2」を上映していました。見てはいませんが料金だけ確認しました。大人12ドル、シニアは62歳からで9ドルでした。映画についての話題はこれくらいですが、旅行の目的ミュージカルや舞台には映画人がかなり関わっていました。

 今回は見せよう会通信番外編として、ミュージカルを中心にお伝えします。


1.ミュージカルの予約と値段

① 今回の旅行中見ることのできるミュージカルでチケット入手が難しいかなと思われたのは、4/8に初日を迎えた「アダムス・ファミリー」だった。
インターネットにはブロードウェイミュージカルを予約できるサイトがいろいろある。
 Broadway.comは手数料が30%くらいかかるが、この作品に関しては仕方がないと、サイトでの申し込みを行った。(出発の10日ほど前)5/13(木)をリクエストしたが席がないとの回答に、他の日でと再リクエスト。
翌日帰宅すると留守電ランプが点滅していた。ニューヨークBroadway.comから電話が入っていたのだ。これには驚いた。確かに手数料は高いが、国際電話までしてくるほどか?
 メールで回答してくれればいいのにとメールをチェックしたが回答なし。仕方なくニューヨークに電話をして、5/14(金)のチケットを確保した。平日であれば$126.50+手数料$38.00のところ、金・土・日の週末料金

$136.50+手数料$40.00を払うことになった。前回来た時は週末料金などなかったはずなので、最近変わったものと思われる。

 

② ブロードウェイは基本的には月曜日が休演日、
 水曜日、土曜日は夜(20:00~)に加えマチネ興業(14:00~)があり、
日曜日は夜がなくマチネ(15:00~)のみというのが永らく基本だったが、最近少しずつ変わっている。月曜日も上演する演目が少し出てきているのと、日曜日の夜も上演するものがあるという点だ。
 今回は火~日曜日と6泊するので、水・土曜は2本を見ることができ日曜もその可能性がある。5/16の日曜夜に「ビリー・エリオット」が上演されていたため、これを押さえておきたいと、同行の友人が連絡してきた。
 Looktour.netが安いという。(出発の1カ月以上前)確かBroadway.comであれば$126.50+手数料$38.00のところ手数料なし

$109.00でOKとなった。両者の違いは、前者は予約とともに席が具体的に分かり、後者は具体的な席は分からずオーケストラ席(1階)とかメザニン席(2階)とかの範囲のみ分かるという点だ。

 今回両者を利用してみての感想でいえば、早く申し込むほど良い席になるということでした。つまり、ビリー・エリオットの方がアダムス・ファミリーよりずっと良い席だった。Looktour.netはすべての作品を扱っているわけではない(アダムスファミリーはなし)が、見たい作品があればこちらを利用した方が得。


③ 現地で安くチケットを売るTksという売り場がタイムズスクエアにある。
売れ残っている席を、当日の夜公演であれば15:00から昼公演であれば

10:00から売り出す。金額は、作品によって50%引き、40%引きなどとなり他に手数料$4が必要。毎回長蛇の列ができるがこれも早いほどよい席になる。90%位の作品はここで買うことができるが、作品、曜日によっては売り出されないこともある。

 

 

2.今回見たミュージカル

 8本のミュージカルを見ました。その内3本が再演の作品でした。演劇は日本でもそうですが、傑作、人気作は何度も再演されます。何度もといっても、舞台にかけるというのは大きな費用がかかるので、簡単にできるわけではありません。また、演出家や出演者によって大きく違う作品になったりしますので、
再演といっても新作と同じように見た方がよいといえましょう。再演の方が初演の時よりずっと長く公演されている「シカゴ」(現在も続演中)などという作品もあります。さらに、4本は映画からのミュージカル化作品でした。良かった順に並べます。

 

① ビリー・エリオット:映画日本題名「リトル・ダンサー」のミュージカル化ロンドンで作られ、その後ブロードウェイに来て4年、映画と同じスティーヴン・ダルドリーが演出しています。
音楽はエルトン・ジョンですが、ヒット性の曲想ではなく作品にあった手堅い曲作り。バレーに目覚めていく男の子と、取り巻く環境・社会との関係が小気味よく描かれたミュージカル。主役をはじめ子役たちの踊りのうまさにも感激です。

 

② アダムス・ファミリー:日本では映画でおなじみのあのアダムス・ファミリーがミュージカルになりました。オーバーチュアで映画でも使われたあの主題歌が流れると客席からすぐ指が鳴ります。アダムスファミリーのおかしな人々を芸達者な出演者がくっきり演じて歌や踊りのナンバーごとに大盛り上がり。

 

③ 南太平洋:2次大戦の南太平洋を舞台にしたジェームズ・ミッチェナ―原作のミュージカル、リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞の美しいナンバーが有名だ。今回の舞台は思いっきりの良さが成功し、奥の深い印象になった。

 

④ リトル・ナイト・ミュージック:ベルイマンの映画「夏の夜は三たび微笑む」のミュージカル化の再演。ミュージカルにしたのは曲者ミュージカルが多いソンドハイム。フェリーニの「8 1/2」が「ナイン」になったように「リトル・ナイト・ミュージック」になった。生と死を感じさせるのは流石。

 

⑤ メリー・ポピンズ:ご存知ディズニーの映画ミュージカル「メリー・ポピン
ズ」の舞台ミュージカル化。映画自体が楽しめるミュージカルだったが、新曲を加えてもその味を保った。360度(舞台のふちを天井まで含めて一周)のタップダンスや劇場の天井に去りゆくポピンズも売り。子供観客も多い。

 

⑥ ジャージー・ボーイズ:「シェリー」のヒット曲で有名なフォー・シーズンズの伝記ミュージカル。メンバーの一人、フランキー・バリの生き方を彼らのヒット曲でつづる、バックステージものの一種。
こちらの想像以上にアメリカ人には人気のようで、最後は総立ちでした。

 

⑦ カム・フライ・アウェイ:フランク・シナトラの持ち歌にのせて踊りまくるダンスミュージカル。
素晴らしいダンサーたちの中に日本人ダンサー、オカモトリエさんがいて、踊りの上手さとともに手足の長さにも感嘆。

 

⑧ ヘアー:60年代後半、フラワーチルドレンの時代にオフブロードウェイから発したミュージカルの、初めての再演。我々の世代には懐かしく、期待も大きかったのだが、多分オリジナルと大きくは変えていない上演は、古さばかりが目についてしまった。

 

3.この時期のブロードウェイの映画人

 舞台→映画の人も多いアメリカ映画界、ブロードウェイには常に映画人がどこかにいるようです。

*今回舞台で演じているのを見た人

・キャサリン・ゼタ=ジョーンズ:「リトル・ナイト・ミュージック」に恋多き女優役で主演、映画通りのハスキーボイス。

・アンジェラ・ランズベリー:「リトル・ナイト・ミュージック」でキャサリンの母親役、流石の貫録で作品を締めていた。

・ネイサン・レイン:「アダムス・ファミリー」のお父さん役、元々舞台人の芸達者ぶりで笑いに引き込む。

 

*舞台終演後に見かけた人

・ヴィオラ・デイヴィス:「フェンス」終演後取り囲むファンの一人ひとりにサインしていた。映画「ダウト」での母親演技を思い出す。

・デンゼル・ワシントン:別の日「フェンス」終演後、道を完全に塞ぐ人だかりの中心にいたのだが、あまりにすごく見ることができず。

 

*他にもこんな人が活躍中

・クリストファー・ウォーケン:古くはディア・ハンターのウォーケンは「ビハンディング・イン・スポケーン」に主演中

・ダイアン・ウィースト:やさしい語り口が特徴のウィーストはロシアの脚本家オストロフスキーの「森」に主演中。

・アビゲイル・ブレスリン:「リトル・ミス・サンシャイン」の天才子役ブレスリンは「奇跡の人」でヘレン・ケラーを演じています。

・スタンリー・トゥッチ:「ジュリー&ジュリア」のジュリアの旦那トゥッチは「レンド・ミー・ア・テナー・オペラ」を演出中。

・ジェームズ・スペイダ―:最近映画にはご無沙汰の「セックスと嘘とビデオテープ」のスペイダーは「レース」というドラマに主演中。

 

 今月はミュージカル話が多くなりました。

 

 「ビリー・エリオット」はロンドンでも上演中です。NYC、LONどちらでも機会があればご覧ください。そういえば、3年ほど前ロバート・アルトマン監督特集で上映された「BIRD★SHIT」が、今年7月にリバイバル上映されることになりました。ぴあフィルムフェスティバルの人の挨拶で、今後映画館で見ることはできないでしょうとも言われていましたが、その予想を裏切っての上映です。
 今回は‘70年代アメリカ映画伝説と銘打って、「バード★シット」と「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」が連続上映されます。両作に主演したのはバッド・コートですから、彼のファンが企画したかもしれないですね。東京は新宿武蔵野館で7/3から「バード★シット」(39年ぶり)、7/17から「ハロルドとモード」(38年ぶり)です。

 残るリバイバル希望作は「ボーイフレンド」、ケン・ラッセル監督、ツィッギー主演のミュージカル。どなたか輸入してください。

 

 

 では、また来月。

 


                         - 神谷二三夫 -


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