2016年 新春特別号back

 あけましておめでとうございます。

 

 今年の東京の元旦は穏やかな一日でした。朝から雲一つない晴天が一日続きました。本来なら初日の出に向かって走るところですが少し足を痛めていて、
室内で足踏みしながら、ビルのガラス窓が日の出の光に輝くのを見るだけにしました。ちょっと残念ではありますが、この穏やかさが世界の在り方にも反映してほしいものだと思いました。

 

 今年の1本目はスケジュール的に岩波ホールに決めていました。Yahooの映画情報で見る限りずっと営業しているようになっていましたので、「ヴィオレット―ある作家の肖像」を予定していました。12/30に岩波ホールのサイトを開くと、12/30-1/02は休館とあるではないですか。そういえば、いつもお正月は休んでいたなあと思いだしました。突如変更、「ストレイト・アウタ・コンプトン」にしました。1980年代後半、カリフォルニア、コンプトンに生まれたラップグループ、N.W.A.のヒストリーをちょっとあきれながら見てきました。

 

 


 

2015年間ベスト10

 

 2015年中に映画館で観た映画の本数は368本になりました。これ以外にフライト中に見たものが6本ほどあります。やっと、1日1本の本数を達成できました。素直にうれしいですが、最近自由時間が少ないなあとも感じます。
 何を馬鹿な、自由時間に見ているんだろうと言われそうです。368本のうち旧作が80本でしたので、新作は288本ということになります。


 新作から選んだ2015年私のベスト10は次のようになりました。


<日本映画>

 1.バクマン。
 2.海街diary
 3.野火
 4.この国の空
 5.百日紅Miss HOKUSAI
 6.天空の蜂
 7.あん
 8.岸辺の旅
 9.お盆の弟
10.氷の花火~山口小夜子
次点 俺物語

 

 

 初めは「海街diary」がベストかと思っていたのですが、「バクマン。」の躍動感が思い出されて逆転してしまいました。どちらも漫画を原作にした実写映画化作品です。ちなみに次点に入れた「俺物語」も漫画の実写映画化作品、5位には漫画原作のアニメーション作品「百日紅」を入れました。今や日本映画界は漫画の原作なしには成り立ちません。上のリストには入ってきませんが子供向けや、若い女性向けの恋愛ものなどは興行的には常に上位を占め、日本映画界には興行的に欠かせないのです。ちなみに、「妖怪ウォッチ」は2週目も「スター・ウォーズ」に集客数で勝っているようです。

 

 3本の漫画実写映画で一番漫画らしいのは「俺物語」です。多分、原作に一番近い描写だったろうと思います。その方法はあくまで漫画に近づけるというものです。普通の作品では考えられない位にデフォルメされた描写が続きます。実写ながらある種の別世界を作り出していて、違和感がありません。

 

 漫画の世界を実写作品として一番咀嚼していたのは「海街diary」でしょう。
ここまでこなされていれば、原作は小説と言っても、或いはオリジナル脚本と言っても不思議には思わない。細やかな描写で映画自体としての世界を作り出しています。「細雪」のような4姉妹の物語、その現代版です。

 

 「バグマン。」は漫画家自身がいかに漫画家になったかを書いた原作です。
二人の高校生が一人は原作、一人は作画と決めて「少年ジャンプ」の新人賞に挑む。それまできちんと漫画を描いたことのない二人が夏休みの間に作品を完成させる。同じ高校生の天才漫画家も登場し、殆ど格闘競技のように戦いが始まる。それに合わせて映画の描写が生き生きと立ち上がる。こんなに若々しい力が日本映画にあるんだと感心しました。

 

 かなり遅れて年末にやっと見た「氷の花火~山口小夜子」は、彼女が最後までいろいろなことにチャレンジしていたのだと知って感心したし、ひとつの時代を作った人の覚悟のほども見えて楽しめました。

 

 

 

<外国映画>

 1.黄金のアデーレ 名画の帰還
 2.マジック・イン・ムーンライト
 3.ヴィヴィアン・マイヤーを探して
 4.アメリカン・スナイパー
 5.消えた声が、その名を呼ぶ
 6.悪党に粛清を
 7.顔のないヒトラーたち
 8.ぼくらの家路
 9.裁かれるは善人のみ
10.神々のたそがれ
次点 ピッチ・パーフェクト

 

 


 映画には具象と抽象が入り混じっている。ものすごく大雑把に言ってしまえば、ハリウッド作品とヨーロッパの芸術映画の違いと言えようか。勿論一つの作品の中に入り混じっているのが普通で、完全なる具象、抽象という映画はないだろう。黄金期のハリウッド映画は具象で描きながらそれを超えて、見えない何かを教えてくれる作品が多かった。

 

 なんだか抽象的なことを書いたのは、上のベスト10を見ながら少し前の自分なら上下逆にしたかもしれないと思ったからだ。どちらが良いということではないが。自分の感覚が少し変わったのかもしれない。物語をより求めるようになったのかもしれない。或いは、単に分かりやすいものを好むようになったのかも。

 

 「黄金のアデーレ 名画の帰還」「マジック・イン・ムーンライト」は、昔のハリウッドのような、分かりやすく楽しめ、多くのことを学べる作品だった。ドラマ自体もしっかりできていて、物語としてもすぐれている。アデーレは実話の映画化でもあり、2次大戦から現在に至るまでの主人公たちの生き方が歴史と合わせて伝えられる。話のうまいウッディ・アレンの「マジック・イン・ムーンライト」は、話の面白さに加え、アレン臭が希薄なのもよかった。

 

 改めてリストを見ると、なんとドイツ映画が3本(5、7、8位)も入っている。印象的にはフランス映画の方が作品は多く公開されていると思うのだが。私が特別ドイツ好きという訳ではない。ドイツ映画は戦前も隆盛だったし、70年代にはニュージャーマンシネマもあった。しかし、今特にドイツ映画が話題になっているとは聞いていないので、ちょっとした驚きだった。さらに、アジア映画が1本も入らなかったのも意外だった。

 

 韓国映画はどの作品もそれぞれ特徴がはっきりしていて面白かったのだがアジア映画自体は日本でメジャーになっていないということだろうか?


 一番楽しめたのは「ピッチ・パーフェクト」かな。


 人間の感覚は変わるもの、今年の結果は今年の自分だなと理解して、今年も、これからも情報を発信していこうと思っています。今年も多くの素晴らしい映画に出会えるように祈っています。



                         - 神谷二三夫 -


感想はこちらへ 

back                                                                         

copyright