2017年 7月号back

今年の梅雨は今のところ雨が少ない。
季節季節にそれなりの役割があり、それがきちんと果たされないと、
少し先の未来に何か影響が出てくるかもしれない。
人間の一生にもどこかでする必要がある経験というものがあるかも。
全てを経験できる人間はいない。
楽しみながら経験させてくれる、それは映画館!!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

5/26~6/25の梅雨入りを挟んだ30日間に出会った映画は33本,
最近になく日本映画の新作も多く入りました。
かなりバラエティに富んだ作品群です。
TAPの映画もありました。

 


 



<日本映画>

光 
ちょっと今から仕事をやめてくる 
家族はつらいよ2 
笑う101歳x2 笹本恒子 むのたけじ 
花戦さ 
武曲 MUKOKU 
美しい星
22年目の告白― 私が殺人犯です― 
海辺のリア 
TAP THE LAST SHOW
音楽喜劇 ほろよい人生(古)

 

 

<外国映画>

皆はこう呼んだ,鋼鉄ジーグ
  (Lo Chiamavano Jeeg Robot /

  They Call Me Jeeg Robot)  
オリーブの樹は呼んでいる
  (El Olivo / Olive Tree) 
光をくれた人
  (The Light Between Oceans)
赤毛のアン
  (L.M.Montgomery’s Anne of Green Gables) 
VIVA公務員
  (Quo Vado? / Where am I Going)
草原の河
  (河 / River)
ローマ法王になる日まで
  (Chamatem Francesco –

  Il Papa della Gente / Call Me Francesco)
ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー
  (Harold and Lilian A Hollywood Love Story)
素敵な遺産相続
  (Wild Oats) 
ザ・ダンサー
  (La Danseuse / The Dancer)
マフィアは夏にしか殺らない
  (La Mafia Uccide Solo D’Estate /

   The Mafia Kills Only in Summer) 
パトリオット・デイ
  (Patriots Day) 
ローガン
  (Logan) 
ゴールド/金塊の行方
  (Gold) 
怪物はささやく
  (A Monster Calls) 
キング・アーサー
  (King Arthur:Legend of The Sword) 
セールスマン
  (Forushande/The Salesman)
ありがとう,トニ・エルドマン
  (Toni Erdmann)
ジ―サンズ はじめての強盗
  (Going in Style) 
世界に一つの金メダル
  (Jappeloup)
有頂天時代(古)
  (Swing Time) 
踊るニューヨーク(古)
  (Broadway Melody of 1940)


 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

①  ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー

ハリウッドで絵コンテ作家とリサーチャーとしてそれぞれ活躍してきたハロルドとリリアン、2007年87歳でハロルドは亡くなってしまったので、現在も元気なリリアンがインタビューに答えてふたりの生活を教えてくれる。
リリアンが孤児院で育ったことや、話の元気さが今月見た「赤毛のアン」を思わせた。

 

②-1 ローマ法王になる日まで

現法王フランシスコの今までの生きてきたことを描く映画。初のアメリカ大陸出身、南米アルゼンチンからの法王となった。
アルゼンチンは長く軍事独裁政治が続いていた。映画にも描かれているが、同じ聖職にいた仲間が爆発抵抗運動にかかわったとして銃殺されていた時代。
そんな時代を抜けてきた法王の妙にやさしい顔が最後に映される。

 

②-2 ローガン

X-MENシリーズは他のアメコミの映画化作品と同じように派手なアクションを売りにしてきたが、普通の環境では迫害されるミュータントたちを集めたものだった。
自分と違う存在は普通の人間には恐れを抱かせる。2029年、ミュータントは存在範囲をどんどん狭められ、ローガンは身分を偽ってリムジンの運転手として働いているのだ。
変わりゆく世界を厳しく描いた作品。

 

②-3 武曲 MUKOKU

日本人は多くのことに精神性を突き詰めていく習性があるようだ。
剣の道を追求する父親の下で、子供の頃から厳しい練習を強いられてきた主人公の事件後の生き方を描いている。
人間に大きな縛りを与えてしまう求道精神は好きではないが、熊切監督は今までの作品と同様に厳しくその生き方を突き詰めていく。

 

③-1 VIVA公務員

久しぶりに腹の底から笑ったのはイタリア映画だった。
父親の姿を見ていたためか小学生になった頃から将来の夢は公務員という主人公が、幾多の困難にもめげず公務員という地位にしがみつく姿を徹底的に追求、イタリアにとどまらず北極圏からアフリカまで行ってしまうイタリア喜劇。楽しめます。

 

②-2 世界に一つの金メダル

日本のオリンピック放送は日本人ばかり映しているとはBSクールジャパンに出ている外国人の皆さんが言っていたこと。だから、フランスの馬術のピエール・デュランとその馬ジャップルーのことを知らなかったのだろうか?いい話じゃないですか。
フランス映画のオリンピック感動作ということには新鮮な驚き。

 

 

 

他にもお勧めの作品が、お楽しみください。

 

 

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ:この安っぽい作りはどうだ。気軽にバカなことができる。
そこで話の背骨になるのは日本の漫画、主人公たちに夢と希望を与えている。

 

オリーブの樹は呼んでいる:オリーブの樹には2000年を超えるものがあるとは驚き。
しかも、そうした古木を売ることを商売にしている人たちがいるというのにもびっくり。

 

赤毛のアン:ご存知モンゴメリーの原作の映画化は変な飾りがなく、孤児院出身のアンが逆境にもめげず明るく、養子として受け入れてくれた家と周りの人々との生活に育まれていく様を素直に描いて心地良い。原作を読んでいない私は知らなかったが、受け入れるのが夫婦ではなく、兄妹だというのも意外だったが、厳格さとユーモアがあって良かった。

 

花戦さ:華道池坊を題材にした映画には、信長に好かれた池坊専好を中心に千利休、秀吉が出てくる。専好は花のことしか覚えていない、他のことは忘れてしまう。
芸術は人の感覚から生まれる。それを権力が統制しようとするのはあほなことである。

 

パトリオット・デイ:4年前のボストンマラソン時の爆発事件を映画化。
ピーター・バーグ監督、マーク・ウォールバーグ主演と言えば前作「バーニング・オーシャン」が記憶に新しいが、同じように実話からの作品。
登場人物が多い分、話が少し拡散している。

 

22年目の告白―私が殺人犯です―:まるでワイドショーを見ているような殺人犯の登場と、22年前の5件の殺人事件関係者の様々な事情は見る者を引き付ける。

 

美しい星:原作は三島由紀夫、火星人の父、水星人の兄、金星人の妹に地球人の母親が織りなすドタバタ劇、普通の地球人も同じことをしているよね。

 

海辺のリア:浜辺で俳優たちが朗々と台詞を述べる不思議な映画。会話劇ならぬ、独白劇に近い変なシェークスピアくずれ。仲代なしには考えられない。今月のトークショー参照。

 

ゴールド 金塊の行方:170億ドルの金塊が一晩で消えた!?という売り文句の映画は実話というから驚き。話にほれ込んだマシュー・マコノヒーは主演+製作で張り切っている。

 

怪物はささやく: イギリスの児童文学の映画化はなかなか厳しいお話だ。
初めから夢の中で母との別れを何度も経験する主人公。馴染めない祖母との生活も始まる。

 

キング・アーサー:ガイ・リッチ―監督(マドンナの元夫)と言えば「ロック、 ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」で有名になって以来アクション一筋だが、 アクションシーンのコマ抜きが激しすぎてついていけない。上手くはなっているが。

 

セールスマン:イランの監督アスガー・ファルハディの新作は米アカデミー賞外国語映画賞の受賞作。小さな謎がラストに向かって紐解かれていくのは今までの作品と同じ。
その間、夫婦の間に広がる心理的な溝など細かい描写が続く。
イスラム世界でこうした謎の解決が明かされるとはちょっと驚き。さすがの出来です。

 

ジ―サンズ はじめての強盗:この日本語題名だと、2回目のとか3回目のとかもできるんだろうかと思うが、出演者の命が続くかと心配になるような俳優陣。楽しめました。

 


 

 

 


Ⅱ 今月の懐かしい人

 

 

☆アン・マーグレット + マット・ディロン


「ジ―サンズ はじめての強盗」でアラン・アーキン演じるアルに猛烈アタック、その気のないアルを困らせていたのは、60年代に登場、輝いていたアン・マーグレット。
プレスリーと共演した「ラスベガス万歳」での強烈なセックスアピール、その後の「バイ・バイ・バーディ」でも発揮された子供の頃からレッスンを受けていたという踊りの見事さ、踊らなくなってからの「愛の狩人」など多くの作品に出演した。
今回4半世紀ぶりに再会した気がする。あまりに音沙汰がないのでひょっとして…と思っていたので、今回の登場にはビックリ。
人が良くて、思い込めば一途、料理も上手く家庭的といった彼女の美質が上手く役にはまっていた。
調べると彼女の夫は1967年に結婚して以来のロジャー・スミス、TV「サンセット77」で有名なロジャー・スミスでその後彼女のマネージャーになったという。
彼女は今76歳、昔と変わらずチャーミングでした。

 

「ジーサンズ・・」には刑事役でマット・ディロンも出ていた。80年代の若手スターではトップを走っていた人だ。コッポラ監督の2作「アウトサイダー」「ランブルフィッシュ」で人気爆発。その後一時低迷していたが、1989年の「ドラッグストア・カウボーイ」、2004年の「クラッシュ」などで演技賞を獲得、息の長い俳優になっている。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー


6/14 テアトル新宿の「海辺のリア」13:30の回にはトークショーがあることを知っていて出かけた。監督の小林政広さんとプロデューサーの宮川朋之さんのお二人が話すと新聞広告にあったので。
水曜日の昼間のトークショーということはちょっと集客が心配だと思ったが、満席とはいかなかったものの7割くらいは埋まっていたのではないか?
小林監督、例によって、のそのそと現れぼそぼそと挨拶をしたのだが、プロデューサーが突然“特別ゲストが皆さんと一緒に映画をご覧になっていました”と言って舞台に呼んだのは主演者の仲代達矢さんだった。なんだか町工場のおじさんのような服を着た仲代さんが登壇して、はきはきした口調で挨拶をされた。
今年84歳になる仲代さんは今回の映画のようにまだ主役を演じて活躍している。しかも、認知症の老人でほぼ大きな声での独白のような、会話にならない台詞を発声する一面難しい役だ。
仲代さんは小林監督が気に入っているらしく今回で3度目の付き合いになる。
監督は観客に媚を売らないから好きなんだとおっしゃった。
確かにこの作品を含め、見る人に気に入られようとしている描写はほとんど見られない。
そうでなければ「海辺のリア」のような変わった作品を作ることはできないだろう。
まるで大きな舞台でシェークスピアのせりふ劇を朗々と演じているような映画だ。
かみ合わない会話の果ては、一人一人の独白大会。阿部寛だって泣いていた。
黒木華だって悪態を叫んでいた。一人小林薫だけは殆ど台詞がないのだが。
そんな中で仲代さんは良く通る声で台詞を届けてくれた。
これからも元気で活躍してほしい。

 

 

 

 

Ⅳ 今月のタップ

 

今月はタップを楽しめる作品を3本見た。
うち2本は(古)にあげたアステア関係の「有頂天時代」と「踊るニューヨーク」で、どちらも再々見以上。渋谷シネマヴェーラのミュージカル特集での2本立て番組。
勿論目的は「踊るニューヨーク」、何度見ても感動しますね。
フレッド・アステアはどんな作品でも素晴らしいのは当たり前ですが、相手役のエレノア・パウエルとのコンビネーションが凄い。
誰かが書いていたと思うけれど、この二人が踊ると科学実験を見ているよう、一人一人の踊りが一緒になることによって化学反応が起き、とんでもない火花が見えてくる。完璧な踊りとはこのこと。

 

水谷豊が初めて監督したのは「TAP THE LAST SHOW」で、題名通りタップの映画だ。
彼自身がタップをするのか否かは知らない。映画では役柄から踊らないので。
40年ほど前にブロードウェーで出会ったタップに衝撃を受け、それ以来いつか映画を作ろうと思っていたという。公式サイトを読むと、サンディ・ダンカンが演じたピーターパンとインディアンとの踊りだったという。1979年のピーターパン再演時の公演だ。
この映画、タップの場面のみを見ていればかなり楽しめる。
宣伝でも大いに強調しているラスト24分間のショーは、なかなかのもの。
2時間くらいのショーを24分にいいとこ取りしているのだから当然という気もするが。
無駄にカット割りもせず、カメラもそれほど動かず、きちんと全身を捉えていて好感が持てる。画面の色調も落ち着いて美しく、無駄にカメラを動かさないのも良い。
しかし、残念なのは登場人物を含めお話があまりに古いこと。どこかで見た、聞いたストーリーが展開される。画面のセンスは良いのに、お話のセンスは陳腐。
でも、ここが面白くないと踊り以外の部分で飽きが来てしまう。う~む、残念。

 

それにしても、タップは心と体に効いてきて、ウキウキしますよね。

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●永井豪原作のアニメ「鋼鉄ジーグ」は1975~6年にかけ放映されたらしい。
私は全く知らない作品だし、このアニメがイタリアで人気だったことなど知る由もない。
しかし、「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」を見ると、ジーグ命の女性が登場するくらいにイタリアで見られていたことが分かる。すごい人気だったんでしょうね。

 

●スペイン・バレンシアからドイツ・デュッセルドルフまでオリーブの樹を求めて移動していく「オリーブの樹は呼んでいる」を見ていたら、主人公に同行していた叔父さんがドイツ人に対してコンプレックス丸出しで“ドイツ人は背が高いし、英語もできる”とか呟くのがおかしかった。叔父さんはきっぷはいいがちょっと小さい人だった。

 

●見えなくなっていくカメラマンが主人公だからやたらクローズアップで、後ろはぼやけた画面の多いのは河瀨直美監督の「」。河瀬監督は元に戻って自身の脚本・監督になって、「あん」にあった平衡感覚は減退、私にとっては今一つ面白くない作品でした。私には今一つ光が見えない映画でした。

 

●さすがに2作目となると出演者の息も合って来て、初作より随分スムースになった印象の「家族はつらいよ2」、ここで笑う人がいるんだと思う時と、自然に笑える時が混在。

 

●自分が若かった40~50年前頃、日本人は働き過ぎだと言われていた。朝早くから夜遅くまで身を粉にして働くというイメージがあった。いつかは働き過ぎ日本人も変わって行くんだろう、社会が変わって行くんだろうと思っていた。「ちょっと今から 仕事やめてくる」を見ていると、こんなにも変わっていないことに驚く。他人事ではなく、自分の問題として一人一人が取り組んでこなかったから、こんな風になったのだろうか?
このことが映画より大きく心にのしかかり、あまり映画を楽しめなかった。

 

●笹本恒子さんを知らなかったが日本初の女性報道写真家ということを教えてくれたのが「笑う101歳x2 笹本恒子 むのたけじ」だ。むのさんは昨年101才で亡くなってしまったが、102歳になった笹本さんはまだまだ元気。96歳の時初めて年齢を公表したというのは驚き。それにしてもむのさんの声は大きかった。これが元気の秘訣かも。

 

●普通で考えたらありえないことをそれらしく見せてしまうのは映画の力の一つ。日本では一時の人気はない韓国映画だが、こうした力は日本映画より強い。
その韓国映画をリメイクしたのが「22年目の告白―私が殺人犯です―」だ。
殺人犯が自ら名乗り出て、本まで出版…ありえない!
面白さを損なうことなく大きな違和感を感じさせずに日本映画として完成した監督たちに拍手。ただし製作は日本で最近力を増してきたワーナー映画だ。

 

●未来のことを描くSF作品、その世界に過去になること、薄汚れた世界になることを持ち込み、キラキラピカピカばかりが未来ではないということを教えてくれたのは「ブレードランナー」だった。1982年の作品だから35年も前に作られた。あの作品以来、SFの世界に奥行きが生まれ、SF世界も変わっていった。あの作品は2019年の未来を描いていた。そして今リメイクされようとしている。
ローガン」を見ていて、時代のあまりの変わりように衝撃を受けた。
バカアクションだけのアメコミという印象は「ダークナイト」で変わったが、主人公がこれほどに衰えていることに驚いた。
SF作品の「ブレードランナー」とアメコミ界の「ローガン」という印象だ。

 

●いくら入れ込んで、製作までしてしまったとしてもこんなに見苦しい姿(はげ、デブ)をさらしていいものかと思ったのは「ゴールド 金塊の行方」のマシュー・マコノヒーだ。
本当に見苦しいですよ。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:フィルムは強い? 



Ⅰ フィルムは強い? 

 

東京京橋にフィルムセンターがあるのはご存知だろうか?この通信にもほんの時に登場している。名前の如くフィルム・映画を集めているところだ。正式には「東京国立近代美術館フィルムセンター」で竹橋にある近代美術館の一部となっている。
映画好きには憧れの場所ではあるけれど、東京に出てきて以来ほとんど行くことができなかった(平日は仕事、週末は新作映画)私にとってみると、ちょっと遠い存在だった。
10年近く前に「映画美学校」で勉強していた頃、教室は京橋の片倉ビルにありフィルムセンターはごく近く、授業としてフィルムセンターの小ホールで映画を見たこともあり、初めてフィルムセンターを身近に感じたのだった。

 

ま、そんなことはいいとして、このフィルムセンターの職員の方が書いた本がキネマ旬報の年間映画本の第1位になった。
岡田秀則著「映画という《物体X》フィルム・アーカイブの眼で見た映画」(立東舎)

 

面白い本だった。気になることがいっぱい書かれていた。
その中に映画の保存のことが出てくる。19世紀末に生まれた映画はフィルムに映像が焼き付けられた。フィルムはセルロイドからできていた。セルロイドは爆薬の組成に近いこともあり、引火性のある物質だった。つまり、燃えやすいのである。
実は東京のフィルムセンター自体も保存していたフィルムからの発火が原因で火災になっている。1984年のことで、多くのフィルムが消失している。
その少し前にフィルム保存のために相模原に保管庫を作ることが決定していたという。
フィルムの発火は映画の中でも描かれている。1988年製作のイタリア映画
「ニュー・シネマ・パラダイス」ではシチリア島の小さな村の映画館が火事で焼失。
新しく立て直されたのが「Nuovo Cinema Paradiso」、つまり「ニュー・シネマ・パラダイス」だったのだ。

映画の保存については色々なことが言われていた。
可燃性のフィルムは1940年代末に登場した不燃性フィルムにとってかわられてきた。
50年代には急速に不燃性フィルムが普及し、フィルムが発火する状況は改善されてきた。
しかし、フィルム自体の組成は大きく変わった訳ではなく加水分解の進行に伴い酢酸ガスが発生、それによるフィルムの劣化は改善されていなかった。
デジタル映像が出現した時、これで映画の保存は万全かと思われた。
しかし、登場当時から全てを0、1に分解しているのがデジタルで、突き詰めれば分解不能の部分はどうしてもフィルムに劣るとも言われた。
技術的発達でこの問題は解決されつつあるが、反対に保存の面から言えば何かの都合で電気的変質が起これば、物質的存在ではないデジタル画像はむしろ危ういのではないかと言われている。
今や映画の保存という観点からは可燃性フィルムを最適な状況で保つこと、つまり発火せずガスの発生しない状況で管理することが長く保存するための最適な方法だということが常識になっているという。

 

新しいこと、現在多数を占めていることが必ずしも正しくないことは、今までの歴史を見てみれば当然な事と分かる。文明の進歩は必ずしも直線的に行われるものではない。ということがここでも明らかになってきている。

 

岡田さんの本はその他にもいろいろなことを教えてくれる。
書き出せば止まらなくなりそうなので、次の機会にまたいつか書きたいと思います。

 

 

 

 

  

Ⅱ 長いでしょ?

  

今回見た新作30本の内、120分、つまり2時間以上の映画が9本あった。

 

6/24ドイツ映画の期待作「ありがとう、トニ・エルドマン」を見に行った。
サイトで確認すると、10:00、12:15とあり、2回目の始まりが12:15なら、1回目の終わりは遅くとも12:00と考え、次に見る映画を13:25からの作品に決め、サイト予約の出来るこちらは予約をして出かけた。
「トニ・エルドマン」上映映画館はサイト予約ができないところだったので、少し早目の09:35にチケット発売の列に並んだ。列が進み、窓口に表示された時間を見て驚いた。
本編の上映時間が10:15~12:56となっていたのだ。
窓口の人に“終映時間違いますよね?”と言おうとした瞬間に気が付いた。
この映画館は2スクリーンあって、1回目と、2回目のスクリーンが違っていたのだ。
気が付かなかった自分が悪い、とすぐに思い直し何も申し上げずチケットを買った。
まあ、例によって10分くらいでランチを食べれば間に合うのだからと。
「トニ・エルドマン」の上映時間は162分だった。不思議な感覚の映画で面白いところもあるのだが、長すぎる。描写のちょっとちょっとが長い。

 

最近、少し長めの作品が多い気がする。内容が伴っていれば我慢できるのだが。
9本は、外国映画6本、日本映画3本で世界共通のよう。
説明が多すぎるというのが大きな要因だろう。
20~30分短くしてくれたらと思った作品は次の通り。
「光をくれた人」、「パトリオット・デイ」「TAP THE LAST SHOW」
これらに比べて「VIVA公務員」は86分、学ぶべし!

 

 

 

今月はここまで。
次回は7/25、梅雨は開けているだろうな。




                         - 神谷二三夫 -


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