2017年 8月号back

東京の梅雨明けはほぼ例年並みだったらしいですね。
雨は少なかったようですが。
その後は一挙に夏の到来、暑い日が続きます。
これから猛暑日が何日あろうとも大丈夫、
快適に楽しめる場所がある限り、そう、それは映画館!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

6/26~7/25の梅雨明けを挟んだ30日間に出会った映画は32本、アニメーションからハリウッド大作、人生映画からレジスタンス、そして娯楽作まで、日本、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、アイスランド、ポーランド、インドとバラエティに富んだ作品を楽しみました。

 


 



<日本映画>

夜空はいつも最高密度の青色だ 
メアリーと魔法の花 
忍びの国 
いつまた,君と
昼顔 
銀魂 
丸 
細雪(古) 
霧笛が俺を呼んでいる(古)

 

 

<外国映画>

ハクソー・リッジ
  (Hacksaw Ridge) 
残像
  (Powidoki / Afterimage) 
パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊
  (Pirates of the Caribbean:Dead Man Tell No Tales)
しあわせな人生の選択
  (Truman)
20センチュリー・ウーマン
  (20th Century Women) 
ヒトラーへの285枚の葉書
  (Jeder Stirbt Fur Sich Allein / Alone in Berlin) 
ライフ
  (Life)
ジョン・ウィック チャプター2
  (John Wick:Chapter 2) 
裁き
  (Court)
コンビニウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団
  (Yoga Hosers) 
おとなの恋の測り方
  (Un Homme a La Hauteur / Up for Love)
甘き人生
  (Fai Bei Sogni / Sweet Dreams) 
ハートストーン
  (Hjartasteinn / Heartstone)
ダンサー セルゲイ・ポルーニン
世界一優雅な野獣

  (Dancer) 
ボン・ジュール,アン
  (Paris Can Wait) 
歓びのトスカーナ
  (La Pazza Gioia / Like Crazy)
アメリカン・バーニング
  (American Pastoral)、 
怪盗グルーのミニオン大脱走
  (Despicable Me 3) 
ビニー/信じる男
  (Bleed for This)
ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~
  (A Fond / Full Speed)
恋多き女
  (Elena et Les Hommes / Elena and Her Men) 
誘拐魔(古)
  (Lured)
深夜の告白(古)

  (Double Indemnity)


 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

①  甘き人生

マザコン男性が多いと言われるイタリア、母親がそそぐ無垢の愛がいつまでも男を包む。
主人公は9歳の時突然いなくなった母に対する喪失感から40歳になった今も
抜けきれない。立派なというか、普通に大人になった主人公でも心の中は晴れないのだ。個人の感情と社会の在り方、関わり方が渋く描かれるマルコ・ベロッキオ監督最新作。

 

 

②-1 ハクソー・リッジ
志願兵でありながら武器を持つことを拒否した上で戦場に出向いたアメリカ兵、第2次大戦の末期、ハクソー・リッジ(のこぎり崖)と呼ばれた前田高地の戦いだ。
これが実話であることと、メル・ギブソンの監督作の特徴であるリアル描写とが相まって力強い作品になった。地上戦でのリアルさは抜きんでている。

 

 

②-2 残像
ポーランド映画界の巨匠アンジェイ・ワイダは2016年10月9日90才で亡くなった。
遺作である今作は、抵抗運動、労働運動などを描いてきた彼らしく、社会主義政権の弾圧下に生きた実在の芸術家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキを描く。
2次大戦前はポーランド画壇で高く評価された彼が、戦後絵具さえ手に入れられなくなる様子を描く。悲惨な状況下健気に生きた一人娘は後年精神科医になったという。

 

 

③  夜空はいつも最高密度の青空だ
石井裕也監督と言えば、「川の底からこんにちは」でデビューの後、「舟を編む」「ぼくたちの家族」「バンクーバーの朝日」としっかりした組み立ての作品を作ってきた。
新作は少し違ったテイスト、不安定な若者たちの生き方同様かなりの揺れを見せる。
最後まで今の若者のリアルを描いていた。

 

 

 

お勧めしたい作品は他にも、お楽しみください。


◎メアリーと魔法の花:スタジオジブリの制作部門が解散し、米林宏昌監督のこの作品を作るために西村義明プロデューサーが設立したスタジオポノックの第1回作品。
ジブリテイストが多く見られる作品。2016年はアニメーションが大きく広がった年。
そんな時代にこのままの路線でいいのかどうか?
今後どんな方向を作り上げていくのか興味のあるところ。

 

◎しあわせな人生の選択:マドリードで俳優をしている主人公がガンになり、カナダから友人がやってくる。一緒に過ごす4日間を普通に描く。原題Trumanは主人公が飼っている犬の名前だが、その犬をもらってくれる人を探したり、今はアムステルダムにいる息子に会いに行ったりするのに友人は同行する。

 

◎忍びの国:和田竜の原作・脚本で新鮮さを確保、中村義洋監督で手堅さを確保した映画作りは、結構思い通りに面白い。大野君も「映画 怪物くん」(中村監督)が生きたか。

 

◎20センチュリー・ウーマン:60年代に青春を過ごした人には、私も含めてなんだか懐かしい人物・女性が生き生きと描かれていて面白い。

 

◎ヒトラーへの285枚の葉書:1940年ベルリンでのドラマはベルリンの外に出ることはない。1947年にドイツ人作家によって書かれた原作は2009年に英訳され世界的ベストセラーになったらしい。名もなき普通の人々による草の根反ナチス運動を丁寧に描く。

 

◎ライフ:火星での生命探査を終えた宇宙船は地球に向かって進んでいる。火星で発見した微小な生命体を調べながらの航海は予期せぬ出来事に見舞われる。
生命あるものが自分の命を守るために戦いを挑む姿も強い。

 

◎いつまた、君と:向井理の祖母の手記を映画化。中国から引き上げてきた家族の戦後の生活がどんなものであったか、懐かしさを一部感じながら見た。何でもやった、やれた時代。

 

◎コンビニウォーズ バイトJK vs ミニナチ軍団:ケヴィン・スミス監督と言えばオタク感満載の映画を作る。今回のあほらしくもバカらしい作品に対する入れ込み感も存在。

 

◎ボンジュール・アン:今年80歳になるというエレノア・コッポラの監督デビュー作は、夫フランシス・フォードコッポラ(「地獄の黙示録」とか)の妻として過ごしてきた経験が存分に生かされ、適度に心地良い作品になった。センスが良い。

 

◎ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣:こんなに凄いダンサーがこれからどうなっていくのか、心配と興味が入り混じる。今月のトピックス参照。

 

◎ハートストーン:人口31万人の国アイスランドの映画は年に1本見られればいいというところか。人間より羊の数の方が多いとか、厳しい自然環境の下、人間のプリミティヴな欲望がはっきり描かれるといった特徴が、この作品にもうまくいかされている。

 

◎銀魂:これが少年漫画誌に連載されていた漫画から映画化されたものだということから考えれば、日本の少年は進んでいるというか、進み過ぎというか。こんなに裏話が詰め込まれた作品が面白いと感じるのだから変なところだけ大人びているのか?
でも、小学生でスマホを操る世代はこうしたものを楽しんでいるのかもしれない。

 

◎丸:一つのアイディアがかなりのものだったので、新人監督ながら世界の注目を集めてしまった鈴木洋平監督、脚本・編集も兼ねています。確かにこのやり方は中の情報を伝えることができないという優れもの。ちょっと固い部分があるのが残念。

 

◎アメリカン・バーニング:ユアン・マクレガーが主演し初監督した作品はフィリップ・ロスの小説の映画化。60~70年代にアメリカで起こっていた出来事を現在の視点から振り返る俯瞰的視点で描かれ、あの時代の痛みを実感を持って伝えてくれる。

 

◎ビニー/信じる男:ボクシングは元々あまり好きではないのでこの映画で描かれたビニー・パジェンサは知らなかったのだが、凄い人がいたものだ。普通、やらないですよね、やらせないでよね、あの状態でのボクシング。戦う相手も怖かっただろうなあ。

 

◎ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~:面白かった、単純に。フランスのバカンスシーズン、コンピューター制御の新車メドゥーサで南に向かったコックス一家の運命やいかに?いい加減なお祖父ちゃんのパワーも凄く、笑えること必至。

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

 

今月は2本のトークショーを楽しみました。
詳しくは今月のトピックスをご参照ください。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の注目の人


その①ブレンダン・グリーソン


「ヒトラーの285枚の葉書」で主人公夫婦の夫を演じたブレンダン・グリーソンは、この後に出演した「夜に生きる」での主人公の父親役でも実に良い味を出していた。
62歳のアイルランド人俳優はこのところ良い顔になってきた。と言って、その顔は労働者層丸出しのジャガイモ顔だが、それに合った芯のある男を演じさせると輝きだす。
俳優になる前は中学校教師を10年もしていたという。教師をしながらダブリンで舞台に出たり、イギリスのロイヤル・シェークスピア・カンパニーに参加もしていたらしい。
映画への初出演は35歳のとき、それ以来多くの映画に出演している。多くはどこにでもいる労働者の一人、普通の人を演じていたのでは?
「夜に生きる」で注目した時、はっきり覚えていないが、どこかで見た顔という印象だったのはそのためだと思われる。これからの活躍に期待する。

 

 

 

その②リリー=ローズ・デップ


「コンビニ・ウォーズ バイトJK vs ミニナチ軍団」でJKの一人を演じるリリー=ローズ・デップはジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘で1999年5月生まれの18歳、デビューはこの作品と同じKスミス監督の「Mr.タスク」でこの作品が2作目。
この後に出たのが、日本では今年の6月に封切りされた「ザ・ダンサー」でイサドラ・ダンカンを演じた。(ただし、この映画はダンカンについての映画ではなく、ダンサー、ロイ・フラーについてのもので、デップは助演)9月には、ナタリー・ポートマンと共演した「プラネタリウム」が日本公開となる。
彼女はポートマンに似ているとも言われ、この映画では姉妹を演じる。
これで彼女が今まで出演した映画4本はすべて日本公開されることになる。
16歳の時シャネルの顔にもなっていて、モデル業もしているだろう。
最新作「プラネタリウム」は製作されたのが2016年、それ以降映画の新作はまだない。
Kスミス監督が「Moose Jaws」というコメディで三度使うとは発表されているが、まだ製作されていない。

 

 

 

 

 

Ⅳ  先月の懐かしい人

 

ドナルド・サザーランド


先月見たフランス映画「世界に一つの金メダル」は珍しくもフランスのスポーツ映画だったのだが、ロサンゼルスオリンピックの馬術で優勝したアメリカ人選手の父親役で、ドナルド・サザーランドが突然現れる。息子の方はほぼ出てこない(後で少し出る)のに。フランス語基本の映画に英語のみで登場、時間は5分もなかったろうが、何故ここにドナルド・サザーランドが?と、懐かしいよりびっくり感の方が強かった。
今年82歳になるサザーランドは「M★A★S★H」の印象が強い。
それ以前にも出ていたが目立ってはいなかった。その後はフェリーニ作品にまで出演、不思議な活躍をした。
最近は息子のキーファー・サザーランドの方が有名だ。
彼自身も「ハンガーゲーム」シリーズに出ていたので全く久しぶりとは言えないのだが、フランス資本のこの映画に何故?という印象で驚いた。

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●沖縄が舞台ながら敵兵として現れる日本人はほとんど顔が見えないのが「ハクソー・ リッジ」、この戦いに負けたことが分かった時、大将が切腹するのはきっちり描いているが。
切腹も不思議ではない状況だったし、影のような敵ということで仕方がない事ではある。

 

●主人公の画家は1次大戦で片足を失っていて、2次大戦後ソ連の締め付けによる共産主義政権の弾圧と闘う姿が哀れを誘う「残像」は、なんだかあまりにワイダ監督の遺作にふさわしすぎる(?)。権力の正に真綿を占めるような弾圧がリアルで怖い。

 

●ジャン・ルノワール監督作品の主人公たちはおおらかに自分の今を肯定する、それが現実だからと勇気づけてくれる。「恋多き女」のイングリッド・バーグマンはポーランド貴族の未亡人だが、恋と生きることを天秤にかければ生きることを選ぶ。明確だ。

 

●ヴァンサン・ペレーズという名前が監督として出てきたので驚いた「ヒトラーへの285の葉書」。彼はフランス映画で俳優として活躍していた。「インドシナ」ではカトリーヌ・ドヌーブと、「王女マルゴ」ではイザベル・アジャーニと恋に落ちる役だった。
その彼が脚本・監督をしてこの作品を作った。サイトで監督のインタビューを読むと、彼にはドイツとスペインの血が半分ずつ流れていて、ナチスとファシズムという体制にどちらもNoという立場の家族だったらしい。それが彼の背中を押してくれたとある。

 

●おばさまたちは“あのいやらしいフランス映画でしょ”と言い、若い人たちは“TVの続きですよね?どうなりました?”と言ったのが「昼顔」。TVドラマの後日譚とは私も知らなかった。それにしても、男性の妻の在り方が怖いですね。こういう人物を作る、それを見て楽しむ社会も怖いです。

 

 

 

 



今月のトピックス:トークショー 



Ⅰ トークショー 

 

映画館で行われるトークショーが増えているという話がある。
映画は本来映画自体に込められたメッセージがあるので、映画の終わった後に話をするのは邪道ともいえるのだが、興行でもある訳で、特に初日は舞台挨拶という名目のものも含め多く行われている。以前にもお伝えした通り映画の興行は初日を含めた週末の成績が興行力を示すバロメーターでもあるので、なるべく早い時期に集客したいという興行からの要請が大きな要因だろう。
見る方にとってみれば、思いもかけない話が聞ける場合などもあり、更に出演者や監督などの話であれば、その素顔を見ることもできるということで得した気になる。

 

今月は2つのトークショーを聞いた、一つは偶然に、もう一つは知っていて。

偶然だったのは7/08(土)「ヒトラーへの285枚の葉書」初日初回の終映後:トークショーがあるとは知らず、席を立って出口まで来たときトークショーの案内が聞こえ、出口付近にいたショーの係りの人に聞くと松尾貴さんと宇都宮健児さんのトークショーだという。時間的には大丈夫だったので、近くの空いている席に座り直した。
先ほどの係りの人が司会でトークショーが始まった。
この二人の組み合わせはどういう理由だったのか?ちょっと不思議な二人組ではあると思ったが、松尾さんが話し始めて驚いた。
松尾さんは安倍政府の在り方を過激にというか、語り口はソフトとはいえ内容はしっかり安倍政権の暴走ぶりを批判していた。映画がナチス時代に個人として地道に反対運動を繰り広げた夫婦についてのものだったのだから、勿論無関係ではない。共謀罪により過剰な取り締まりが行われる可能性は高い。自由に発言できなくなることへの不安をきっぱり表明されたのだ。これほどはっきり発言される方とは知らなかった。
宇都宮健児さんはご存知のように弁護士、普通の人々の側に立って多くの発言・行動などをされてきた方だ。最近では都知事選での辞退がマスコミでも取り上げられた。この映画に取り上げられたナチスに対する抵抗運動に関連して、やはり自由にものが言えなくなる恐怖について話をされた。世界の報道自由度ランキングで180か国中72位の日本は、何でも自由という表向きの顔とは裏腹に、既にかなり不自由になっている。自主規制という変な規制力が悪い方に働いて、マスコミが自らを不自由にしていたり、政府権力については正に“忖度”をして報道していないなどが起こっている。
ということで、お二人とも映画に関連して現在の日本について話をされたという、珍しくも新鮮なトークショーだった。

 

知って出かけたのは7/17(月)「ダンサー セルゲイ・ポルーニン」3日目初回の終映後:草刈民代さんのトークショーがあった。バレリーナ引退後本格的に女優業を始めた彼女は、演技の感もなかなか素晴らしく、結構好きなので見てみたいという気もあった。
トークショーの相手は舞踏評論家乗越たかおさん。
彼女はこの映画館(ル・シネマ)に時々映画を見に来るそうで予告編で見たセルゲイ・ポルーニンが気になってYou Tubeで何度もパフォーマンスを見、さらに、映画本編を見てその才能を確信したという。世界5大バレエ団の一つ英国ロイヤルバレエで19歳でプリンシパルになるという早熟性に関しては、元々の身体能力に加え日々の努力が可能にしたものだが、天才に時に見られる早期での完成で、踊りを見れば19歳でも十分その資格があることが分かるという。
確かに天才ダンサーに見られる動きの正確さ、速さは、先月「踊るニューヨーク」を映画館で観終わった後カップルが話していた“エレノア・パウエルは格が違う”と言う言葉通り、正に格が違うことを感じさせるのだ。
もう一つ驚いたのは、草刈さんは“痛み止めや栄養剤は私も飲んでたりしましたが、彼は心臓の薬まで飲んでいた。そこまでしないと自分の思う通りの踊りができないから平気で飲める”と言っていたこと。ダンサーはやはり厳しいものだ。
このポルーニンは今年12月に公開される映画「オリエント急行殺人事件」に出演している。
まだ、27歳、もっとあの凄い踊りを見せてほしいと思うのだが、これから彼はどの方向に行くのだろうか?
なお、彼の名前をネットで検索すれば「Take Me to Church」の曲に乗って踊る動画を見ることができ、凄さを実感できますが、今回の映画の方が踊りの素晴らしさはより楽しめます。

 

2つのトークショーとも映画製作者ではなく、その内容に関するプロの眼からの見方を教えてくれるものだった。

 

 

 

 

 

  

Ⅱ 真田広之

  

「ライフ」に宇宙船の乗組員6名の一人ショウ・ムラカミを演じていた真田広之が、朝日新聞の日曜版フロントランナー欄に登場していた。
56歳になる彼はロサンゼルスに拠点を移して12年になるという。そうだったのか、どうりで最近日本映画で見ない訳だ。その代わり、外国映画では時々見ている。
結構渋い映画も多く、彼もスター的な役をしていなかった。
その最新作が「ライフ」という訳だ。調べると映画以外にもアメリカのTVシリーズにもほぼ毎年出演しているらしい。インタビューでは日本映画にたまたま条件に合うものがなかったために日本映画の作品に出演していないと言っている。
彼が海外に目を開かれたのは、1999~2000年にかけ、イギリスのロイヤル・シェークスピア・カンパニーの「リア王」に唯一の日本人キャストとして参加したことだったという。
この公演は蜷川幸雄が演出に当たったものでイギリス・日本で行われた。この時、ベテラン俳優と新人が対等に意見を交わし、舞台で競い合う姿に俳優としての理想の在り方を見たという。自分たちの世代ががんばって海外進出し、道を開いておきたいという気持ちが強いらしい。年功序列がまだ残っている日本は、年を取ると楽になっていく部分があるが、米・英では大御所だからと特別扱いされることがないという。
その厳しい道に自ら身を投じて頑張っている姿が感じられた。
「リア王」の時には5人のコーチを付け英語の特訓をしたという。
海外で活躍するためには英語力が絶対に必要と、今もなお勉強を続けているという。
確かに日本人俳優の中では英語の発音がきれいだ。

 

 

 

 

 

Ⅲ キネマの神様


この見せよう会通信を読んでいただいている方から勧められた小説、原田マハの「キネマの神様」を一気読みしてしまった。
映画が好きだからという部分もかなり大きい。特に私的には主人公が活躍する雑誌名「映友」というのが直截に「映画の友」を想起させ、入れ込み方が増したと思う。
ただ、そのことを離れても、これは面白い話と言える。
原田マハさんの本は初めて読んだのだが、読むまでの印象としては美術関係の小説が多い
人というものだった。今回読後に調べてみると、マハという名前自体が「着衣のマハ」「裸のマハ」から来ている事を始め、美術史学を専攻し、複数の美術館に勤め、2002年にフリーのキュレーターとして独立したという事が分かり美術関係に間違いはなかった。
2003年以降にライターとしての仕事を始め、2005年「カフーを待ちわびて」で小説に進出、「キネマの神様」は2008年の作品だ。
映画好きが読むと、この部分はあそこのことだなとか想像できる部分はあるが、小説は完璧なフィクションだし、訴えようとしていることも映画についてということでもない。
思わぬ展開が読者を引っ張っていくし、最後には泣かせてくれる。
アメリカにお住いのDさん、教えていただきありがとうございました。
皆様にもお勧めします。

 

 

 

 

 

Ⅳ マーク・ハミル


今年のトニー賞授賞式を見ていたら、何故かマーク・ハミルがプレゼンターとして出てきた。
“何故か”と思ったのは、彼がブロードウェイの舞台に出ていたということを知らなかったからだ。調べるとブロードウェイでの上演作として5作品が挙げられていた。
「エレファントマン」とか「アマデウス」とかが含まれている。
これにはちょっと驚いた。舞台俳優というイメージがなかったから。
ブロードウェイの記録も1979~となっているので、「スター・ウォーズ」で成功した後ということになる。

 

 

 

今月はここまで。
次回はまだ真夏の暑さであるだろう8/25にお送りします。




                         - 神谷二三夫 -


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