2017年 9月号back

何日も雨の降る日が続いた今年の夏、
場所によっては日照時間が例年に比べて極端に少なく、
農作物への影響が心配されています。
人間の心身にも水分は必要、
心の水分補給に良いところ、それは映画館!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

7/26~8/25の不思議な天候が続いた31日間に出会った映画は46本、
最近仕事を辞め自由時間が多くなった私的理由と、
名画座の特集上映で見たいものが重なったため本数が多くなりました。
(古)の旧作が約半分を占めました。
新作日本映画をもう少し増やしたいと思っているのですが…。
見過ぎに注意、一日一本くらいを目指しております。

 


 



<日本映画>

彼女の人生は間違いじゃない 
君の膵臓をたべたい 
海辺の生と死 
禅と骨 Zen and Bones(試写会)
河内山宗俊(古) 
乱暴と待機(古) 
淑女は何を忘れたか(古) 
こころ(古)
超高層のあけぼの(古) 
喜劇 “夫”売ります!!(古) 
白い崖(古)

 

 

<外国映画>

天使の入江
  (La Bais des Anges) 
ダイ・ビューティフル
  (Die Beautiful)、
デ・パルマ
  (De Palma) 
バッカス・レディ
  (The Bacchus Lady) 
ローサは密告された
  (Ma’ Rosa / Mama Rosa) 
君はひとりじゃない
  (Cialo / Body) 
ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
  (The Mummy) 
ブランカとギター弾き
  (Blanka)
静かなる情熱 エミリー・ディキンスン
  (A Quiet Passion) 
スターシップ9
  (Orbita 9/Orbiter 9) 
夜明けの祈り
  (Les Innocents / The Innocents)
ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密
  (The Founder) 
静かなる復讐
  (Tarde Para La Ira / The Fury of a Patient Man)  
スパイダーマン ホームカミング
  (Spider-man:Homecoming) 
すばらしき映画音楽たち
  (Score A Film Music Documentary)
ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦
  (Anthropoid) 
少女ファニーと運命の旅
  (Le Voyage de Fanny / Fanny’s Journey)
ギフト 僕がきみに残せるもの
  (Gleason) 
カーズ/クロスロード
  (Cars 3) 
いつも心はジャイアント
  (Jatten / The Giant)
ジャック・ドゥミの少年期(古)
  (Jacquot de Nantes)
湖中の女(古)
  (The Lady in the Lake) 
桃色の馬に乗れ(古)
  (Ride the Pink Horse) 
扉の影の秘密(古)
  (Secret Beyond the Door) 
過去を逃れて(古)
  (Out of the Past) 
孤独な場所で(古)
  (In a Lonely Place) 
危険な場所で(古)
  (On Dangerous Ground)
殺人者(古)
  (The Killers)
アスファルト・ジャングル(古)
  (Asphalt Jungle)
都会の牙 D.O.A. (古)
  (D.O.A.) 
飾り窓の女(古)
  (The Woman in the Window)
明日に別れの接吻を(古)
  (Kiss Tomorrow Goodbye) 
脅迫者(古)
  (The Enforcer) 
裸の町(古)
  (The Naked City) 
拳銃魔(古)
  (Gun Crazy) 


 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

-1 天使の入江

「シェルブールの雨傘」の前年1963年に作られたジャック・ドウミの作品はニースの有名な海岸通り“プロムナード・デ・ザングレ”をこちらに向かってくる車から後ろを映すカメラにミッシェル・ルグランの軽快な音楽が流れるシーンで始まる。
その感覚は一度見たら忘れられない。

 

-2 ローサは密告された

フィリピンから届いた作品はドキュメンタリーかと思ったが、フィクションだと途中で分かる。マニラのスラム街で暮らす家族6人、貧しさから麻薬売買に手を染め、密告されて警察の手に…。ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅戦争が垣間見られる、フィリピン社会の、官憲の在り方も含めシビアに描いた傑作。

 

-3 禅と骨 Zen and Bones

京都嵐山の天竜寺の禅僧、ヘンリ・ミトワさんは知らなかった。2011年93歳で亡くなっている。アメリカ人の父、日本人の母の間に生まれた彼の一生を追ったドキュメンタリーだ。
第1作「ヨコハマメリー」以来、中村高寛監督の1 1年ぶりの新作で、ドキュメンタリー+ドラマ+アニメと言われているが、その総ての面白さを備えた快作。9/02封切りです。

 

② 夜明けの祈り

ソ連という国家が第二次大戦終了前後に見せた見苦しい行いの一つに挙げられるだろう。
ポーランドの修道女に対するソ連兵の蛮行の結果、1945年12月多くの修道女の出産が始まろうとしているところから映画は始まる。ポーランドに派遣されていたフランス赤十字の女医が彼女たちを助ける実話の映画化。泣き男優ヴァンサン・マケーニュも出演。

 

 彼女の人生は間違いじゃない

廣木隆一監督が初めに小説を書き、次に映画化した作品は、自身の故郷福島を舞台に震災後に生きる人たちを描く。女性主人公に寄り添いながらも、家族、同僚、知り合いなどの人々の生きるさまを愛情込めて描いている。

 

 

 

お勧めしたい作品は他にも、お楽しみください。

 

◎デ・パルマ:ブライアン・デ・パルマ監督についてのドキュメンタリー。パルマファンにとっては彼のインタビューで様々な情報が出てきて面白い。ヒッチコックかぶれから大作監督に変身(成長?)したパルマの転換点は「アンタッチャブル」だっただろう。

 

◎バッカス・レディ:韓国の高齢売春婦を描きながら、その裏にある朝鮮戦争以来の韓国社会の表裏を静かに描き出す。言葉で書けば激しいテーマをこれほどまで静かに描き切ったイ・ジョエン監督に、韓国映画界の熟成を見る。

 

◎静かなる情熱 エミリー・ディキンスン:アメリカの詩人として有名なディキンスンの伝記映画。南北戦争の頃、マサチュ-セッツ州のアマストで隠れるように生活していた彼女の人生を、彼女の考え方をしっかり静かに描いたのはイギリスのテレンス・ディヴィス。

 

◎スターシップ9:スペイン、コロンビアの合作として作られたSF映画。スペイン人監督アテム・クライチェの下コロンビアで撮影された作品は、ハリウッド製SFとは違う感触。

 

◎ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密:マクドナルドがいかに出来上がってきたか、その真実を描いた作品。マクドナルド兄弟が作ったシステムにほれ込み、その名前までも奪っていく創始者レイ・クロックのやり方には、感心したり驚いたりで面白い。

 

◎ブランカとギター弾き:ヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭からの全額出資で日本人監督長谷井宏紀が作ったマニラを舞台にした感動作。盲目のギター弾きとストリートチルドレンのブランカの生活。ブランカの歌、上手い!

 

◎スパイダーマン ホームカミング:今世紀に入ってから3人目となるスパイダーマンの主演者はトム・ホランド。今までで最も若い主演者、動きもシャープでお話もそれに合わせて高校生スパイダーマンに合っていて、屈託なく楽しめる。本来のアメコミ映画?

 

◎すばらしき映画音楽たち:今年も行われた新宿シネマカリテの映画祭“カリコレ”の1本、映画音楽についてのドキュメンタリー。メインに取り上げたのは70年代以降の作曲家、中ではやはりジョン・ウィリアムスの大きさが抜きんでているが、ハンス・ジマー、ダニー・エルフマン、ハワード・ショアなど多くの作曲家、映画が紹介される。

 

◎少女ファニーと運命の旅:ドイツ軍に侵入されていたフランスでユダヤ人の子どもたちを親から預かり守っていた児童組織の組織があった。しかし、そこにもドイツ軍の手が。クルーズ、ムジェーブと移動、更に子どもたちだけでスイスを目指すというお話。

 

◎ギフト 僕がきみに残せるもの:ニューオーリンズのアメリカンフットボールチーム・セインツのスター選手だったスティーヴ・グリーソンは引退から3年後の33歳の時ALSと診断される。筋肉が動かなくなる不治の病は、5~7年で死を迎えるとも言われる。同じころ妻が妊娠、動けなく、話せなくなる彼は、生まれてくる子供のためにビデオ日記を作り伝えたいことを録画していく。そこから作られたドキュメンタリーは臨場感にあふれる。

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

 

8/24に行われた「禅と骨 Zen and Bones」の公開前カウントダウン試写会に行ってきた。
9/02に封切りされる中村高寛監督の新作有料試写会がトークショーと共に行われた。
トークショーは福岡伸一さん、森達也さん、中村高寛監督で、司会は配給会社トランスフォーマーの石毛さんで行われた。
福岡さんは生物学者、森さんは映画監督・著作家という組み合わせで、森さん自身がどういう意図か分からないと言えば、石毛さんが自分の好きな人を集めましたと。
偶然にも私の好きな人でもある。ただし、話はそれほどかみ合っていた訳ではない。

 

福岡さんは出てくるなり前に置かれた透明なペットボトルを3度続けて飲み、少し後で、これはアルコールではないですよと言っていたが、よほど緊張していたのか?
3人の中では時間的に一番話すのは福岡さんではないかと思っていたが、大当たり。
書いたものを読んでいれば、流麗な理論をその繊細な文章に乗せて滔々と綴られている事から話の長さが想定されたのだ。
生物は細胞がいつも交代を繰り返しながら存在としての統一性を保つという動的平衡理論が、この映画でも見られるとのこと。骨もまた動的平衡を繰り返しているという。  

  

森さんは同じドキュメンタリー作家として、ドキュメンタリーとドラマについて話した。
確かにこの作品は俳優も多く使いヘンリ・ミトワの過去をドラマにしている。この部分も上手く作られ違和感がない。この作品はドキュメンタリーの中にドラマがあるのだが、「ローサは密告された」は殆どドキュメンタリーのように見えるフィクションで、両者の間の境界線はなかなかに難しい。

 

客席にいた赤坂真理(作家)さんに森さんが声をかけ、感想を求めた。
アメリカと日本の間でそれぞれに都合の良いように使われたヘンリさんは、両国の間でサバイバルされながら、母親の懐を求め続けたと言われた。

 

以上を読んで難しい作品かと思われるかもしれないが、実は中村監督の映画作りは明るくスピーディである。ラストにはコモエスタ八重樫と横山剣による「骨まで愛して」が流れる。
9/02から東京ではポレポレ東中野でロードショーされる。「人生フルーツ」に続くヒットになっても不思議はない面白い作品です。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人


☆キース・キャラダイン


「静かなる情熱 エミリー・ディキンスン」でエミリーの厳格な父親を演じていたのは、ロバート・アルトマンの群像劇の最初の作品「ナッシュビル」でフォーク歌手を演じていたキース・キャラダイン。
父ジョン、兄デイヴィッド、弟ロバートと俳優一家の出身、歌えることからブロードウェイミュージカルにも出演している。
「ナッシュビル」では女たらしの歌手、人妻リリー・トムリンに向かって歌う「I ‘m Easy」が見せ場になっている。自作のこの曲でアカデミー歌曲賞を受賞している。
1949年生まれの68歳、最近も結構作品に出ているようだが、私が見るのは久しぶり。
今回は厳格な父親を演じて、父ジョン・キャラダインに近くなったかもしれない。

 

 

 

 

Ⅳ  今月の旧作

 

◇日本映画:見た7本には共通のテーマはない。いずれも面白く、できも良い。
なかでは市川崑監督の「こころ」が意外に面白かった。
夏目漱石原作の「こころ」を後年の彼にもみられるゆったりと総てが開かれたようなペースで映画化している。ゆったりとは書いたものの、見ること、見せることにいつも工夫していた市川監督は見せ場を作るのも上手かったのだが、そうした手は使わず、実に丁寧に登場人物たちの心に密着している。普通に描いても物語の持っている暗闇が現れる。

TVを見ながら書いていたらNHKサラメシの特別版社長メシをやっていて鹿島建設社長が出てきた。「超高層のあけぼの」は霞が関ビル建設を描いたもの、鹿島建設傘下の日本技術映画社が製作。オールスターキャストの華やかさとまるで文化映画のような作りが同居。
社長メシでは建設現場でのランチが出てきたが、あの場所は私が昔働いていた日本橋室町。

 

◇外国映画:「ジャック・ドゥミの少年期」以外の14本はフィルム・ノワールの世界Ⅱ。
チラシによれば、第二次大戦中にアメリカで作られた犯罪映画をフィルム・ノワールとフランスの映画評論家が呼んだとある。多くは低予算のB級映画として製作、影やコントラストの強調、夜間ロケ多用のモノクローム映像、モノローグや回想による時系列が錯綜した物語展開が特徴。ファム・ファタール、私立探偵、警官、ギャングなど一筋縄ではいかない登場人物、彼らの相互の裏切り、殺人、主人公の破滅がしばしば物語の核となる。
この説明は完璧です。

 

上記の特徴のために脚本が良く練られている作品が多い。
人物も裏表じっくり書き込まれたものが多く、単純な人物は少ない。
基本的には男が主人公で、女は男を惑わす。
これはどう見ても見どころの多い作品が多いと思われるが特に印象深いのは次の通り。
殺人者:男は単純に信じ、女はそれを知ってもだます。
過去を逃れて:男はだまされても耐え、女はそれでも真実を言わない。
飾り窓の女:女に悪意はなかったが、男はそれでも追い詰められ…。
裸の町:死んだ女はだまし、男たちは様々に争ったが、老刑事が真相を見る。
拳銃魔:男は純真な心を持ったまま、女はきつい心のまま悪事に走る。

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●1963年の製作ながら今回の劇場公開が日本で初めての劇場上映となった「天使の入江」、翌年「シェルブールの雨傘」を発表するジャック・ドゥミの第2作だ。ニースの前に広がる湾が“天使の入江”(天使湾)だ。パリからやってきた銀行員がニースのカジノで金髪の女性(ジャンヌ・モロー)に出会う。ギャンブルで結ばれたふたりは、当然ながらモンテカルロにも出かける。有名なグランカジノだ。

 

●映画も随分ヒットした「君の膵臓をたべたい」は住野よるのベストセラー小説が原作だ。
さらに漫画化もされているらしい。どちらも読んでいないので大きな口はきけないが、今回の映画化には原作にはない12年後の主人公が加えられたらしい。
女子高生だけの恋愛ものであれば多分私は見なかったろうが、予告編で小栗旬、北川景子に気付き見る気になった。残念ながらあまり面白くはなかった、女子高生ラブを超えていないようで。2018年にはアニメーション映画が公開予定とある。

 

●インタビューの中で“ここ10年以上はアメリカで映画を撮っていない”と言うのは、「デ・パルマ」の中の監督自身。撮影場所がハンガリーなどアメリカ以外だったらしい。
父が外科医で子供の頃から血に慣れていた、「カリートへの道」が一番好きなど興味深い。

 

●ここまで描いてもいいのかと思った「ローサは密告された」はマニラのスラム街の現実と、警察の腐敗ぶりをリアルに描く。たくましく生きるおばちゃんローサを演じるジャクリン・ホセの演技も見もの。

 

●未来を舞台に描くSF映画は「ブレードランナー」が現れるまで汚れとか、古くなるとかとは無縁のピカピカ、すべすべ、キラキラが基本。「スターシップ9」はスペイン、コロンビア合作で汚く古くはないが、ピカピカ、キラキラでもなく、なんだか暖かい肌触りのある宇宙船だった。後でそうだったのかと合点がいったと思ったりもしたが。

 

●マクドナルドはアメリカの象徴の一つ、マニュアル文化の体現者でもある。そのアメリカの象徴が如何にして作られてきたかを描いているのが「ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密」である。如何に儲けるかを見つけてしまった者が、如何に速く作るかを考えた者を金の力でねじ伏せたという資本主義そのままの世界がシビアに表れる。

 

●ジョン・ウィリアムスが映画「ウエストサイド・ストーリー」でのピアノを弾いていたことを教えてくれたのが「すばらしき映画音楽たち」だ。ハンス・ジマーは実にエネルギッシュによくしゃべるとか、ダニー・エルフマンはなんだか静かなど、彼らの音楽そのものを思わせてくれるのも面白い。

 

●原題は「Anthropoid」、類人猿の意味らしいが、日本題名となると「ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦」となる。副題の「ナチの野獣」暗殺作戦 というのがどうなんでしょう?

 

●相変わらず人間以外の主人公が多いディズニーアニメにあって、車を主人公にする「カーズ」シリーズは生命体ではない主人公で一番異色と言っていいだろう。
今回の「カーズ クロスロード」も頑張っているが基本的にはやはり変?しかし、ディズニー及びピクサーはアニメの技術という点でこのシリーズ続けるのではないか?
レース途中で主人公自体を変えるという事でシリーズの継続を目指している?

 

 

 



今月のトピックス:8月の映画 



Ⅰ 8月の映画 

 

8月といえば、終戦記念日があり、その前の広島、長崎への原爆投下があり、さらに旧盆という事も重なり戦争による死者を弔うというイメージが強くあった。終戦後72年になる今年もTV、新聞などのマスコミで戦争に関連する特集が放映、掲載されていた。
映画界もそれにもれず戦争関連の作品を出してきた。
去年までの5年間に「見せよう会通信」に掲載された8月の戦争作品は次の通り。

2012年 なし
2013年 日本映画:少年H  
     外国映画:終戦のエンペラー、ヒロシマ・ナガサキ、

     ひろしま~石内都・遺されたものたち~
2014年 なし
2015年 日本映画:日本のいちばん長い日、この国の空、野火
     外国映画:ふたつの名前を持つ少年
2016年 日本映画:いしぶみ
このほかに名画座では戦争関連特集を組むのが通例になっている。
戦後70年になる2015年はさすがに本数が多かった。

 

今年はどうだったのか?次のようになっている。
日本映画:海辺の生と死  
外国映画:ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦、少女ファニーと運命の旅

 

外国映画の2本はナチス関連の映画であり、これは8月とは限らずに年1~2本は、必ず公開されている。7月には「ヒトラーへの285枚の葉書」も公開された。
それにしても「ハイドリヒを撃て」「ヒトラーへの285枚の葉書」共に英語ベースで作られていた(つまり英国資本)のは何故だろう?

 

「海辺の生と死」は第2次大戦末期の恋愛で、島にやってきた特攻艇に乗る日を待つ中尉と島の娘で小学校の先生がこうした状況下での恋に落ちる。後ろめたさが全編を覆う。
いかにも島言葉を使いました的使われ方とゆっくりペースでの描写が悲劇を想定させるが、ラストの明るさで逆転される。作り物めいた感じが私には今一つだった。

 

今年はむしろNHKの2本、「戦慄の記録 インパール」「なぜ日本は焼き尽くされたのか 米空軍幹部が語った“真相”」が圧倒的に訴えるものを持っていた。

 

 

 

 

  

Ⅱ ジャンヌ・モロー

  

初めてスクリーンで出会ったのは高校生の時に見た「突然炎のごとく」でだった。
奇妙な三角関係の中心にいたのはカトリーヌという女性、優しくて、突拍子もなく、しかし愛さずにはいられない可愛さのある女性だった。その不思議さに見せられた。

 

フランスの映画界でヌーヴェル・バーグと呼ばれる一派が1950年末から60年代にかけて活躍し世界の映画界に大きな影響を与えた。ジャン・リュック・ゴダールであり、ルイ・マルであり、フランソワ・トリュフォーなどの映画監督である。彼らより少し年上のジャンヌ・モローはルイ・マルの多くの作品に出演し、トリュフォーの「突然炎のごとく」でカトリーヌを演じたのだ。

 

パリ生まれだけれど、母親はイギリス人で影響を多く受けたとある。英語もできたのだろう。そのためか、1963年「審判」「勝利者」、64年「大列車作戦」「黄色いロールス・ロイス」、65年「オーソン・ウェルズのフォルスタッフ」、70年「モンテ・ウォルシュ」など英語圏の映画にも多く出ているし、世界の名匠・巨匠と言われる監督の作品にも多くクレジットされている。1960年代の名監督独り占めの感があったほど。
2番目の夫はウィリアム・フリードキン監督(フレンチ・コネクション、エクソシスト)で、その他にリー・マービンと同棲したりしてアメリカ人との関係も深い。

 

最後の作品は2012年の「クロワッサンで朝食を」、ここでも主演をしていた。
7/31日に89歳の生涯を閉じた。
ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

 

 

Ⅲ サム・シェパード


なぜかジャンヌ・モローと同じ紙面の隣にサム・シェパードの死が報じられていた。
実際に亡くなったのは7/27、筋萎縮性側索硬化症ALSが死因で、「ギフト」のグリーソン 選手と同じだ。
舞台の戯曲を多く書き、「埋められた子供たち」ではピューリツァー賞を受賞している。
1978年からは俳優として映画出演していて、代表作は「ライトスタッフ」だろうか。
渋く、知的な或いは肉体労働者的な脇役が多かった。勿論主役もあったが。
「女優フランシス」で共演したジェシカ・ラングと長く同棲していた。
ご冥福をお祈りします。

 

  

今月はここまで。次回は秋分の日の後9/25にお送りします。




                         - 神谷二三夫 -


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