2018年 5月号back

夏日が急にやってきた、ところによっては真夏日も。 

GWも間近だから当然とも言えるが、ちょっと早い。 

頭の中ではもう夏の暑さと分かっても、肉体が付いていかない。 

そんな急な変化に備えて、様々な驚きに出会えるのは、 

そう、当然ながら、映画!!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

3/26~4/25の夏日を含む31日間に出会った作品は45本、 

先月試写会で見た「トレイン・ミッション」を入れ忘れたので今月に入れました。 

見る価値ありです。 

今月の旧作等で取り上げている大映の男優特集があり、(古)の旧作が3割越え、 新作は邦洋合わせて29本となりました。傑作、秀作、佳作、良作、話題作等が揃いました

 


 



<日本映画>

曇天に笑う  

孤狼の血(試写会)  

獄友  

クソ野郎と美しい世界 

娼年 

港町  

新・平家物語 義仲をめぐる三人の女  

現代インチキ物語 騙し屋(古)  

牡丹灯籠(古) 

大阪の女(古)  

大江山酒天童子(古) 

斬る(古)  

雪之丞変化(古) 

銭形平次捕物控 美人鮫(古) 

黒の試走車(古)  

私は二歳(古)  

おとうと(古)  

悪名(古)  

野火(市川崑)(古)

 

 

<外国映画>

トレイン・ミッション 

  (The Commuter) 

BPM ビート・パー・ミニット 

  (120 Battements par Minute / Beats per Minute) 

ボス・ベイビー 

  (The Boss Baby)  

大英博物館プレゼンツ北斎 

  (British Museum Presents:Hokusai) 

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 

  (Darkest Hour)  

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 

  (The Post)  

ヴァレリアン 千の惑星の救世主 

  (Valerian and The City of A Thousand Planets)  

彼の見つめる先に 

  (Hoe eu Quero Voltar Sozinho
   / The Way He Looks)
  

レッド・スパロー 

  (Red Sparrow)  

ラブレス 

  (Loveless) 

ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル 

  (Jumanji:Welcome to The Jungle)  

ダンガル きっと,うまくなる 

  (Dangal)  

ワンダーストラック 

  (Wonderstruck) 

女は二度決断する 

  (Aus Dem Nichts / In The Fade)  

さよなら,僕のマンハッタン 

  (The Only Living Boy in New York)  

心と体と 

  (Testrol es Lelekrol / On Body and Soul) 

パシフィック・リム アップ・ライジング 

  (Pacific Rim:Uprising) 

ラッカは静かに虐殺されている 

  (City of Ghosts)  

アンロック 陰謀のコード 

  (Unlocked)  

レディ・プレイヤー1 

  (Ready Player One)  

ロンドン 人生はじめます

  (Hampsted)  

タクシー運転手 約束は海を越えて 

  (/ A Taxi Driver) 

さすらいのレコード・コレクター~10セントの宝物 

  (Desperate Man Blues) 

セカンド・サークル(古) 

  (Krug Vtoroy)  

牡牛座 レーニンの肖像(古) 

  (Telets)  

孤独な声(古) 

  (Odinokiy Golos Cheloveka) 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

① ラブレス 

ロシアは離婚率80%で世界一。そのロシアでそれぞれ再婚しようと離婚を目指している夫婦には一人息子がいた。ロシアの厳しい現実を容赦なく描き、子供を心配する観客の心を引っ張りながら…。「父、帰る」でデビューのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の5作目、相変わらず冷徹な目がさえる。 

 

②-1 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 

「ジョーズ」でスピルバーグが我々に教えてくれたのはワクワク感だったが、久しぶりにそのワクワク感を感じさせてくれる作品になった。ベトナム戦争の真実について書かれた政府報告書をめぐる攻防は、現在の日本の状況にも参考になるところが多く、アメリカの奥に秘めた強さも感じさせる。 

 

②-2 ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 

チャーチルは必ずしも好かれていなかった、本人もそれを自覚していたことを教えてくれるこの映画、“ダンケルク”は首相就任してすぐに直面したヒトラー・ナチスとの闘いで、これを挙国一致体制で乗り切ることで信頼を得ていく様を描いている。ジョー・ライト監督作。ゲイリー・オールドマンの主演男優賞、辻一弘のメイクアップ賞とアカデミー賞受賞。 

 

②-3 タクシー運転手 約束は海を越えて 

1980年の光州事件、戒厳令下の光州で大学を封鎖した軍と学生の衝突、更に一般市民との衝突に至った事件をドイツ公共放送の東京特派員ユルゲン・ヒンツペーターが取材に出かけた実話の映画化。しかし、主人公はソウルのタクシー運転手キム・マンソプ、11歳の娘と二人で暮らしている。いい加減さ一杯のソン・ガンホ演じる運転手が、硬い、政治的な題材をとっつき易くしている。韓国映画の力を感じさせる。 

 

③-1 獄友 

ゴクトモ、監獄の友達として次の4組5人を追ったドキュメンタリー。「布川事件」桜井昌司と杉山卓男(獄中29年、無罪確定)、「足利事件」菅谷利和(獄中17年6か月、無罪確定)、「狭山事件」石川一雄(獄中31年7か月、第三次再審請求中)、「袴田事件」袴田巌(獄中48年、検察が抗告のため死刑囚のまま)。いずれも出所はしているが…。 

 

③-2 ラッカは静かに虐殺されている 

シリアはますます混迷を深めている。アサド大統領の圧政に対抗する反政府軍と政府軍の混乱に乗じISが入り込み制圧した北部の町ラッカ。ISに対抗する市民ジャーナリスト集団RBSS(Racca is Being Slaughtered Silentlyの頭文字)がスマホで撮った「街の真実」がSNSに投稿された。トルコ、ドイツと基地を移しながら厳しい現実を伝えるドキュメンタリー。 

 

③-3 港町 

想田和弘監督の観察映画第7弾は、岡山県牛窓を舞台に、漁港の近くにいる老人たちに目を向ける。耳の遠い漁師のワイちゃん、ずっと話す一人住まいのクミさんなど、今回は叙情性がぐっと強まった。 

 

 

 

 

おもしろい作品は他にも盛沢山!娯楽作にも佳作が多い。お楽しみください。

 

トレイン・ミッション:先月試写会で見たのに書き忘れていました。今や高齢者の星、65歳のリーアム・ニーソンは2008年の「96時間」以来中年のアクションスターになっているが、いまや高齢者。「ザ・シークレットマン」など最近の作品も好調で、この作品も快調。 

 

ボス・ベイビー:今やハリウッドのアニメは分野を広げつつある。惹句“赤ちゃんなのにおっさん?!”の通りに暴れまくる赤ん坊のアニメ。 

 

大英博物館プレゼンツ北斎:北斎は天才です。この数年北斎に関する情報が多く見られますが、この映画は2017年5~9月にロンドン大英博物館で行われた展覧会“Hokusai: Beyond the Great Wave”に関連して作られた北斎に関するドキュメンタリー。必見です。 

 

彼の見つめる先に:2005年に始まったブラジル映画祭はあるが、普通の映画館で公開されるブラジル映画はごく少ない。この作品は2015年のブラジル映画祭で上映、今年3月10日に一般公開された。目の見えない男子高校生が主人公の青春映画。LGBTの要素もあり。 

 

レッド・スパロー:怪我のためバレリーナを引退せざるを得なかった主人公が、叔父の誘いでスパイの道へ、ハニートラップ満載のスキャンダラスサスペンス。 

 

ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル:元々ジャングルをテーマにしたボードゲームについての絵本が1995年に映画化、今回はその続編、ボードゲーム感覚満載。 

 

ダンガル きっと、うまくなる:5年前インド映画異例のヒット「きっと、うまくいく」のアーミル・カーンが主演、娘の父を演じる純粋スポ根ドラマ。通常体重70キロを97キロに増やして撮影、その後70キロに戻して若い時を演じたという53歳のスーパースター。 

 

娼年:石田衣良の原作は今回と同じ松坂桃李主演、三浦大輔演出(監督)で舞台化されていたらしい。半分くらいはベッドシーンという舞台も、映画も異様な人気。黒基調の映画。 

 

女は二度決断する:トルコ移民の子としてハンブルクに生まれたファティ・アキン監督の新作は、トルコ系移民の夫と息子が爆弾テロによって殺され、その復讐に立ち上がるドイツ人妻を主役に据えた作品だ。目には目を的内容に疑問もあるが、ダイアン・クルーガーの熱い演技は凄い。 

 

さよなら、僕のマンハッタン:主人公は大学を卒業して、家を出て同じニューヨークではあるが一人住まいを始めたばかり。同じアパートには不思議な老人も居たりして、大人の世界に触れあっていく様をマンハッタンを舞台に描く。原題はS&Gの曲名から。 

 

心と体と:ハンガリーの女性監督イルディゴー・エニュディは初めてお目にかかる。かつて共産圏で一番自由と言われていたハンガリーから、一見冷たく、杓子定規な人物像的作品が出てきてちょっと驚くが、昔からハンガリー映画は知性を武器にしていたと思い当たる。 

 

アンロック 陰謀のコード:イスラム勢力のテロが絡んだスパイ合戦もの。舞台はイギリスだがアメリカのCIAをめぐる話、イギリスのMI5も絡み多くのドンデンもあるが分かりやすく、主演ノオミ・ラパスを中心としたキレのいいアクションで見応え十分。おススメ。 

 

レディ・プレイヤー1:スピルバーグ監督のもう1本の新作は2045年が舞台。誰もがゴーグルをかけヴァーチャル・リアリティ(VR)の世界を楽しんでいる。現実とVRの世界を行き来しながら進行するゲーム感覚の映画。新ジャンルでは初作にして最高作的な作品を出してきたスピルバーグの面目躍如。 

 

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

4/01 「獄友」 東中野ポレポレ上映後トークショー 鎌田慧+金聖雄監督 

4/19 「獄友」 東中野ポレポレ上映後トークショー 松元ヒロ+金聖雄監督 

「獄友」上映中の東中野ポレポレでは毎日のように監督+誰々のトークショーが行われている。4/01は映画を見に行ったら偶然、上映後にルポライターの鎌田慧さんが登壇された。鎌田さんは「自動車絶望工場」など弱者の立場に立ったルポで有名なライター、79歳になられる。冤罪により長く収監されていた人たちへの運動にも長くかかわっていたらしい。小さくて、一見弱々しい鎌田さんが正しいことを目指して戦う姿に打たれた。 

4/19は「獄友」の次に上映される「ラッカは静かに虐殺されている」を見に行った時、「獄友」上映後に松本さんのトークショーがあるのを知り、少し早目に行きカーテンの外で聞いていたもの。名前や評判はよく知っているが、その実体(?)を聞くのは初めて。政治ネタ満載で、ゴクトモから連想される森友問題、更に財務省のセクハラ問題から、麻生大臣の物まねをされていた。口をひねりながら演じていた(らしい)。 

 

4/15 「斬る」(大映男優祭) 角川シネマ新宿上映後トークショー 佐藤忠男+司会者 

佐藤忠男さんは有名な映画評論家、現在87歳だ。労働者の立場からの評論が有名。 

戦後、GHQからは映画社2社のみが認められるという時、群小会社を集め大映は3番目の映画会社として名乗りを上げたと話された。松竹、PCL(のちの東宝)に先行されていた大映は、永田雅一という個性的な経営者がトップに立ち、彼の戦略によって成長していった。自分の会社には有名な監督・俳優がいないので、黒澤明、市川崑、溝口建二などの有名監督に頼み、賞狙いの作品を作った。カンヌでグランプリを取った「羅生門」は黒澤に、俳優は三船敏郎を呼んできて作ったもの。誰もが想像していなかったグランプリを初めて獲得することで、日本映画界全体に活力を与えた。さらに、有名でない子飼いの監督や俳優を多くの作品に使い、彼らが徐々に力を付け、独特の魅力的な作品を生み出す素地を作った。実際「斬る」を見ると、その美しさに打たれる。まるで美術品を見ているようだと語られた。 

さらに、大映の男優について話しながら、50年代から60年代にかけておこった新しい男性像として、じっと真直ぐに立っていられない男たちを挙げられた。マーロン・ブランドやジェームズ・ディーンなどで、大映で言えば勝新太郎だという。じっと立っているだけで美しい市川雷蔵に比べ、勝は動くことで存在感を見せそこに生きる躍動を感じさせる。 

今や映画評論家と言える人はぐっと少なくなった。87歳の映画評論家の話を1時間にわたって聞き入った。

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月の惹句(じゃっく)あれこれ

 

今月気になった惹句は「さよなら、僕のマンハッタン」だ。4/13夕刊に広告があった。 

『映画「卒業」を思い出さずにいられない!CBS Philly 

サイモン&ガーファンクルの名曲に乗せて贈るニューヨーク青春物語』 

惹句には時に有名人や海外メディアの言葉が使われる。「卒業」はCBSフィラデルフィアのコメントらしいが、下のサイモン&ガーファンクルと併せて、見てみたいという気を起こさせるのには成功している。 

おもしろい味の映画で楽しんだが、「卒業」とは違い過ぎ。

 

 

 

 

 

Ⅳ  今月旧作

 

<日本映画>劇場はいくつかに分かれるが、すべて大映男優祭の映画。女優に続いて男優祭。 

今回見た男優は長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二、田宮二郎、川口浩、本郷功次郎の面々。大映の男優祭は2/17からの渋谷シネマヴェーラに始まり、神保町シアターを挟み、今は本家角川シネマ新宿で行われ、最後は阿佐ヶ谷ラピュタで7/07まで行われる。 

監督では市川崑が目立った。今回「雪之丞変化」「私は二歳」「おとうと」「野火」の4本を見たが、題材の幅広さは凄い。歴史絵巻から、変形ホームドラマ、文学的作品、そして悲惨な戦争映画と同じ傾向の作品がない。市川作品の常として映像の作り込みにも手抜きがない。華やかなカラーの「雪之丞」、つや消しカラーの「おとうと」、団地ができた当時の落ち着いたモノクロの「私は」とレイテ島の森の感じを出すモノクロの「野火」で、構図もそれぞれに工夫されている。 

 

<外国映画>イメージフォーラムで特集されたアレクサンドル・ソクーロフの3作。 

この3作はいずれもぼやけた画面が特徴だ。古いからぼやけている訳ではない。2001年の「牡牛座」でさえ、ぼやけたレーニンとスターリンだ。1990年の「セカンド・サークル」もはっきりしない画面ながら、あの当時のソ連という国がどういう状況であったかがよく分かる。 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●北斎は何歳まで生きたのか?「大英博物館プレゼンツ北斎」やNHKの番組等では90歳という情報が出てくるが、色々なサイトで調べると1760年9月23日-1849年4月18日と満年齢で言えば88歳となる。90歳は当時用いられていた数え年での年齢だ。確かに当時の人は総て数え年で計算されていたので正しいとも言えるが、世界的に比較とかの文面では満年齢に直した方がいいのかもしれない。 

 

●ワシントン・ポスト紙が個人経営であることを改めて教えてくれたが「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」だ。夫の死後、発行人、社長、会長を32年に渡って務めたキャサリン・グラハムをメリル・ストリープが上手く演じていた。今、ポスト紙はアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの持ち物、アマゾンという会社ではなく彼の個人投資会社の傘下にある。 

 

●息子の失踪後、警察に連絡すると刑事が来てチェックはするがNPO組織に捜索を依頼した方がいいという。確かに家出か事件か分からない時点では労力が無駄になる可能性がある。このあたりの刑事の実務的事の運び方が凄い。「ラブレス」では息子を探している時、夫も妻もパートナーの家に行ってしまい、息子が帰る家が空っぽというのは驚いた。 

 

●SMAP人気が分からなかったので、解散事件(新聞一面トップ)にも興味はなかったが、新しい地図から発表された「クソ野郎と美しき世界」は見に行った。あまり面白くはなかったが、何故クソ野郎などと露悪的にしたんだろう?草彅剛が一番映画俳優らしかった。 

 

●平日の昼間の回だったにもかかわらず「娼年」は満席だった。ここまでやらないと描けない内容の作品だったことも確か。女性客の多さは松坂桃李の故? 

 

●1960年代初頭に作られた「おとうと」「黒の試走車」を見ていると、あの時代を感じさせる。「おとうと」の田中絹代の義母役は、昔私が日本映画を見たくないと思ったいかにも陰湿な人物像だった。猛烈な企業戦士を描く「黒の試走車」は、あの当時多く見られたサラリーマン像だった。それに代わるサラリーマンのイメージが今もって定まっていない現在、それで働き方改革はできるのか? 

 

●中国企業を悪役にしない「パシフィック・リム アップ・ライジング」やイスラムを敵にしない「アンロック陰謀のコード」などを見ていると、製作者の細かい配慮を感じさせる。 

 

●ロンドンのハムステッドヒースにあった老人ホームの跡地にホームレスの人が掘っ立て小屋を建て、21年間誰からも土地の所有権を主張されなかったという事で、その土地の所有者として認められ100万ポンドとも200万ポンドとも言われる土地を手にしたという事が2007年にあったらしい。これをヒントに作られた「ロンドン 人生はじめます」には、この事件の主人公ハリー・ハローズ氏の名前もクレジットされていた。

 

 

 

 



今月のトピックス:99.9% → 冤罪?


Ⅰ 99.9%


日本の刑事事件の裁判は有罪率が99.9%になっている。TVドラマの題名にもなったこの数字を見ると、何かがおかしいと思わざるを得ない。日本の検察が圧倒的に有能なのか、あるいは裁判長が無能で検察の言いなりなのか?さらに弁護士という職業はどうなっているのか?とまで思う。弁護士と言えば、真犯人を見つけ出すなどと言うのは映画やTVの見過ぎとは思うが、無罪を勝ち取るために闘うということはないのだろうか? 

NHKで突然「冤罪弁護士」というドキュメンタリーが“ブレイブ”と言うシリーズ名で流されたのは2年ほど前だったか。驚いた。今村核弁護士は今まで14件の無罪を勝ち取ったという。他の弁護士が生涯1件でも無罪を勝ち取れればという中、14件もの無罪を勝ち取ったのだ。しかし、刑事事件で生計を立てるのは至難の業だという。 

 

獄友」は冤罪で長く収監されていた人たちを追ったドキュメンタリー。いずれも追い込まれての自白により逮捕されている。警察の尋問もオープンではなく、自白を迫られた状況が外に漏れることはない。そんな中で追い込まれれば、罪を認めた方が楽だとなってしまうのが人間だ。警察、検察、裁判所にいる人たちが人間に罪を認めさせるためだけにいる限り、冤罪は無くならない。特に裁判所が最後のチェックをする場所でありながら、一番安易な方向に動いていないか? 

この映画を見ていると、48年もの間収監されていた影響が袴田さんにみられることが分かり胸を突かれる。罪を犯してもいない人をそうした状況に置いてしまうことをどう考えているのだろうか? 

安倍政権下おかしなことが多く見つけられ、行政が機能不全に陥っているような日本で、更に普通の人を監獄に入れてしまうかもしれない司法は戦後ずっと同じ状態ではなかったか?しかも、今や行政に色目を使っているように見える。分からないことが多い司法の世界。その意味で「裁判所の正体」(瀬木比呂志、清水潔著)は必読だ。 

本当に大丈夫か?日本。 

 

 

 

 

 

Ⅱ TOHOシネマズ日比谷 


日比谷に35階建ての東京ミッドタウン日比谷がオープン、その4階にTOHOシネマズ日比谷が開館した。13スクリーンで約2800席の都内最大級のシネコンだ。正確に言えば、今までスカラ座、みゆき座であった東京宝塚ビル地下2階にあった2つの劇場が、TOHOシネマズ日比谷12、13として生まれ変わりシネコンの一部として加わっている。この2つの劇場は全シートを取り換えただけではなく、椅子の配置自体も変えている。基本的には、座席数を減らし座席間のピッチを広くしている。みゆき座は今まで前部分と後ろ部分に分かれ(つまり中間に通路があり)、後ろ部分はさらに縦通路があったものが、前後の分けは無くなり総て階段状の1つのセクションになっている。スカラ座は一見変化が分かり難いが、階段状の椅子の段数を少なくし椅子も青→濃い目のグレーっぽい色に変更された。流石に東宝は金持ちだ。(スカラ座の青色椅子はカメラ男のNo More映画泥棒のキャンペーンフィルムで確認できる。) 

スカラ座、みゆき座という長く使われてきた映画館の名前が消えてしまうのは残念だ。TOHOシネマズで言えば、日比谷映画も今年の2月で消えたばかり。映画館自体の個性がそれとともに消えてしまう。勿論その個性はかけられる映画番組にあったのだが、シネコンはどこも同じような番組となり個性がない。個性がある方が面白いのは当然だ。 

TOHOシネマズ日比谷には映画のチラシが置かれていない。上映中或いは上映予定のポスターもない。ここに来れば観たい映画はありますよという事だろうか?次にどんな映画を上映するか、見てみたい気持ちを起こさせる必要はないという事だろうか?きれいで見やすい映画館はありがたいが、映画を見るワクワク感がどこかに感じられるといいのだが。 

 

3/29のオープン以来、東京ミッドタウン自体が混みあっていて、土・日曜日にはビルに入ってエレベータに乗るまでに長い列ができている。4階のシネコンに着くまで少し時間がかかるので要注意。 

 

 

 

 

 

 

Ⅲ やくざ世界


今月試写会で見た「孤狼の血」の主人公は刑事だが、殆どやくざのように行動している男。意識していなければやくざ映画かと思う。またしてもと感じた。映画自体はかっちり作られていてよいと思うのだが、まともに見ようという気が起きない。 

北野武の「アウトレイジ」シリーズも初作以外は見ていないのは、その気が起きないからだ。安易にやくざを描き過ぎないか?殺し合いが目的のようになり、敵を欺くだまし合いだけが強調される。どんどん過激さだけが前に出てきて、作り手の意図がどこにあるのか?もういいよと感じるのは私だけだろうか? 

激しい暴力描写が許される世界をそこにしか見出していない安易さを感じてしまう。今の韓国映画の幅広さを見習ってほしい。

 

 

 

 

 

 

Ⅳ 柴又


4月の頭、姉夫婦と柴又に出かけた。急に寒くなった日だったが楽しめた。 

帝釈天への参道にはお店が並んでいる。「とらや」はすぐに見つかった。男はつらいよシリーズは始まった当初は見ていたが、後半は見ていない。そのため、映画の中での店の名前も「とらや」と思っていたが、調べてみると40作目~は「くるまや」に変更されていたという。 

シリーズ開始当初、撮影に使用されたのは「柴又屋」の建物。1~4作目まではここで撮影したらしい。しかし、その後この店が「とらや」という名前に変更したため、映画では「くるまや」に変更したという。 

今回実際に草だんごを食べたのは「高木屋老舗」だった。ここについて調べるとWikipediaには次の文章が。 

『髙木屋老舗は映画「男はつらいよ」の撮影の度に、休憩や衣装替えに部屋を貸していたのがきっかけで、出演者などと親しくなったという。その後「とらや」のモデルとされるようになり、店の外観が映画でもしばしば登場するほか、髙木屋の店内には主人公・車寅次郎を演じた渥美清や監督の山田洋次から贈られたお土産や記念写真が飾られている。また店内の一角には車寅次郎が座る事を想定した「予約席」がある。』 

う~む。 

 

 

 

今月はここまで。 

次回はさわやかな(希望)五月晴れの5/25にお送りします。 

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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