ご無事ですか?運動してますか?マスクしてますか?
コロナ禍に立ち向かうため暫くは我慢の時が続きます。
GWと書いて、今は“我慢ウィーク”と読み替えましょう。
光が見えたら、まず行きたいのは、そう、映画館!
3/26~4/25のコロナウイルスに襲われた31日間に出会った作品は14本、
実際に映画館に行けた日は9日間、東京都が外出自粛要請をした2度の週末(3/28、29、4/04、05 多くの映画館が休館)と総ての映画館が休館となった4/08~は映画館には出かけていない、行けない。
今月のトピックスを参照してください。
【新作】
エキストロ
ダンシング・ホームレス
一度死んでみた、
カゾクデッサン
【旧作】
<若尾文子映画祭>
刺青
【新作】
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒Birds of Prey
(Birds of Prey: And the Fantabulous
Emancipation od One Harley Quinn)
スウィング・キッズ
(Swing Kids)
デッド・ドント・ダイ
(The Dead Don’t Die)
馬三家からの手紙
(Letter From Masanjia)
世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男,ホセ・ムヒカ
(El Pepe,Una Suprema / El Pepe:A Supreme Life)
在りし日の歌
(地久天長 / So Long, My Son)
恐竜が教えてくれたこと
(Mijn Buzonder Rare Week Met Tess
/ My Extraordinary Summer with Tess)
ようこそ,革命シネマへ
(Talking About Trees)
【旧作】
<ソヴィエト&ジョージア映画特集>
戦火を超えて
(Soldier's Father Otets soldata)
(新作だけを対象にしています)
① 在りし日の歌
中国が一人っ子政策を実行していた1980年代中頃からの30年間、ある家族の在りようを追った物語。少年だった息子を亡くし、国の一人っ子政策故に悲しみが消えない夫婦、後に養子として男の子を受け入れるのだが…。長い年月をゆったり描いて感慨深い。「蛍の光」(元はスコットランド民謡)のメロディが優しく流れる。
② カゾクデッサン
総てが分かりやすいのがいいとは限らない。この映画で言えば、初めに映される過去のある出来事が長く謎として残りつつ物語が進む。母が交通事故で意識不明になった高校生の息子がバーに訪ねてくる、母の前夫に会うために。そこから始まる家族のストーリーが深い色調の画面で語られていく。様々な人の思いを秘めた作品の脚本、監督は今井文寛。自己資金で製作を始め、徐々に仲間を集めて完成させたデビュー作。
③ 恐竜が教えてくれたこと
オランダの児童文学「ぼくとテスの秘密の七日間」(アンナ・ウォルツ作)を映画化したのはステフェン・ワウテルロウト監督、長編デビュー作だ。“地球最後の恐竜は自分が最後の恐竜だと知っていたのかな?”という11歳の男の子の疑問から、最後の一人になるための練習とか大人にも役立つ知恵(?)も学べる楽しい作品。
楽しめる作品は他にも、映画館でお楽しみください。(既に上映が終了しているものもあります。)
◎スウィング・キッズ:韓国からやってきた映画は朝鮮戦争の時代、韓国で捕虜になった北朝鮮兵の収容所で、管理する黒人のアメリカ兵と北朝鮮兵、中国人、慰問に来る韓国人女性などがタップダンスで結ばれるという面白いアイディアの作品。
◎エキストロ:殆どドキュメンタリーのような始まりだが見ている内に、それにしては華のあるスターが結構出ていて、これはひょっとして「カメ止め」線狙いかと思いはじめる。まあ、初めに大林宣彦監督が出てくるあたりで警戒すべきだったんでしょうね。製作したのが吉本興業と知ってなるほどねと納得。
◎デッド・ドント・ダイ:ジム・ジャームッシュ監督が何で今さらゾンビ映画なんだろう。確かに元々こだわらないところのある監督だとは思うけれど、ゾンビ映画自体がここまで拡張している現在、何故彼が作ったんだろうという疑問が消えない。彼らしい面白さはあるにしても。
◎馬三家からの手紙:中国にあった馬三家(マサンジャ)労働教養所という収容所で政治犯等が拷問・洗脳されてきたことを明らかにするドキュメンタリー。それが明らかになったのが、アメリカの主婦が買ったサンクスギビングの飾りに隠された手紙という発端から面白い。
◎ダンシング・ホームレス:人は何故踊るのか。この映画はホームレスの人たちを集めたダンスチーム「新人Hスケリッサ」の活動を追ったドキュメンタリー。チームを率いるアオキ裕キさんは表舞台で活躍していた振付師。表舞台の踊りでは多くの縛りがあったものを解き放ち、あくまで踊り手の感情に沿って踊るように指導する。体の内から出てくるものに正直に踊ることで、人に訴えるものがある。芸術の在り様を伝えてくれる。
<日本映画>
刺青:原作/谷崎潤一郎、脚本/新藤兼人、監督/増村保造、撮影/宮川一夫、主演/若尾文子のベストメンバーによる1966年の作品。谷崎らしく、ちゃっかりハードな関西のお嬢の生き方がきっちり魅惑的に描かれる。
<外国映画>
戦火を超えて:息子が戦場で怪我をしたと聞いて戦場に見舞いに行った(ナチスとの闘いはソ連の場合地元が戦場になっていた)父親が、最終的にベルリンにまで行ってしまう物語。笑いますね。
映画館が休業中で新作の封切りが無くなってもうじき1か月。朝日新聞の金曜夕刊にはいつもは新作映画の評論が載るのだが、このところテレビでの旧作放映や、配信会社の作品を取り上げている。それをまねた訳ではないが、4月17日にNHKBSで放映された映画を偶然見てしまい、ちょっと驚いたので取り上げてみた。
アパッチ(1954年作品):監督/ロバート・アルドリッチ、製作/ハロルド・ヘクト
主演はバート・ランカスターで最後のアパッチ、マサイを演じる。ランカスターは製作者のヘクトとヘクト・ランカスタープロを組んで映画を製作していて、これもその1本。前年には「地上より永遠に(ここよりとわに)」でデボラ・カーとの浜辺のラブシーンが評判になり、「アパッチ」の次には「ベラクルス」でクーパーと共演、翌年には「マーティ」をプロとして製作(出演はしていない)しアカデミー賞作品賞を取っている。「アパッチ」はランカスター40歳の時の作品、色々な意味で彼のピーク時の作品の1本だ。
西部劇の黄金期でもあったが、その時期にアパッチ側に立った映画を作ることも凄い。ロバート・アルドリッチ監督とは「ベラクルス」でも組むが、アルドリッチの最後まで反権威を貫いた姿勢は3作目で初のカラー映画となる「アパッチ」でも明確だ。原作とは違いハッピーエンド(?)にしているらしいのは、これも一面アルドリッチらしい。勇気をくれるという意味で。
4/07 「カゾクデッサン」K’sシネマ 今井文寛監督
今のところ最後の映画館での映画鑑賞となった「カゾクデッサン」の上映前、突然今井監督が現れ、挨拶された。トークショーというほどの時間は取れず、“今の状況下、お越しいただきましてありがとうございます”との言葉を発された。スリムな若者という印象。
後で調べると、自己資金での製作開始だったらしい。この後映画館は休館となり映画の上映もできなくなったことを思うと、彼にとっても最後の挨拶だったのだ。上映後にも出口に立っていられたので、お礼だけは伝えたのだがもっと激励してあげればよかった。
●MeToo運動の原因(?)となったハーベイ・ワインスタインは映画のプロデューサーであったことを持ち出すまでもなく、映画界における女性の地位は低かった。それへの反省からハリウッド発のアメコミ映画でも女性を主人公としたものが増えている。「ワンダー・ウーマン」「キャプテン・マーベル」等だが、その最新作が「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒Birds of Prey」だ。昨年話題にもなり、ヒットもした「ジョーカー」は「バットマン」からのスピンオフ作品だが、その恋人だったのがハーレイ・クインだ。前作「スーサイド・スクワット」からさらに進化、監督も女性のキャシー・ヤンとなった。ただ、アクション場面はあまりに速すぎ(コマ落とし)ていただけない。
●コロナウイルスの蔓延で多くの作品が公開延期となり、突如封切り前特別上映されたかのような印象のあった「デッド・ドント・ダイ」は、3/27、28の先行上映だけで、4/03からのロードショーは公開延期となってしまった。先行上映の先行度合いが記録的になるか。
●やたらスターが出てくるなと思った「一度死んでみた」はフジテレビの製作と知り、まるでスターをいっぱい使いまわしているテレビのようなコメディだと思った。それほど面白くもないのに、面白がっている製作者たちの姿が見えるような。
●映画館が無くなってしまったスーダンで映画上映をやり遂げようとする初老の映画人たちを追ったドキュメンタリー「ようこそ、革命シネマへ」。最近アフリカのドキュメンタリー等を見ると、昔自分が子供の頃に見たアフリカの風景とそれ程変わった風景ではなく、携帯電話は手にしていても埃まみれの風景などに哀しくなる。あまり進化していないようで。そう思うこと自体が傲慢なことだろうか?
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために3密(密閉、密集、密接)を避けることが重要だと叫ばれ始めたのは2月末頃だったろうか?密閉された場所に多くの人が集まり、濃厚接触するのを避けるというものだ。ウイルスの感染は飛沫及び接触感染ということで、3密がすべて実現してしまう場所の一つとして映画館も考えられたようだ。確かにそのイメージですよね。私も3月末から4月7日までの間は、なるべく混んでいない作品(ヒットしていない、或いは封切りから暫く経った作品等)を選び、混んでいない時間(平日の昼間等)を極力狙っていた。
コロナが騒がれ始めた2月末から映画館に来る人の数はどんどん減っていった。密集ではなくなっていた。単館系の映画館に行く時はいつもそれが気になった。思ったより人が入っているとホッとした。外出自粛要請が出た3月27日以降の平日は10名前後のお客様しか入っていない映画館が多くなった。これで映画館はやっていけるのかと心配になった。
やっていける訳ないですね。
映画は人に見られて初めて作品として成立する芸術だ。芸術は接する人に様々な感情を体感させてくれる。芸術だけではないが、人のそれぞれの感情に訴えるものは、色々な人間が存在するのと同じように多様性に富んだものになる。映画で言えば、大作、話題作、ヒット作ばかりでなく、そっと心に寄り添う小さな国の作品や、素直には共感できない人物を描いた作品などの存在が、映画全体を大きなものにしている。
今や日本のスクリーン数の90%以上を占めると言われるシネコンは、多くの人に受け入れられやすい作品上映を目指し、ミニシアターや個人経営の映画館はそれ以外の作品を上映することが多いと大まかには言えようか。
映画館の中小企業と言えるミニシアターあるいは個人経営映画館はコロナウイルス感染による休業要請で経営の危機に瀕している。
この危機に映画人が発起人になってSave The Cinema「ミニシアターを救え!」運動が立ち上がったことを知ったのは、4/07に各映画館のサイトをチェックしていた時、渋谷シネマヴェーラのサイトでだった。この時点で求められていたのは、署名だった。私が見た時点では30000名の署名を目標にしていたのではなかったか?すぐ署名したのだが、今その署名は150000名目標、実際は77,246名となっている。署名を集めて政府への要望書を出そうというのだ。
そのサイトには現在クラウドファンディングを準備中とあったが、4/13には別サイトが出来上がった。そこでは1億円を目標に寄付を呼び掛けていた。参加したミニシアターはその時点で91、集まった金額から各シアターに配布されるというものだ。こちらにもその日に30000円(毎月映画に使う金額に近い)コースで寄付をした。3日目には1億円を突破、4/25日現在で185,532,427円(17203名)となっている。参加ミニシアター数111、参加運営団体数95となっている。
当初この2つのサイトがあったのだが、最近まとめたサイトが立ち上がったようだ。
http://savethecinema.jp/#home-map
このサイトを見ていただければ、署名、グラウドファンディングのサイトにも飛んでいけるようになっている。
興味のある方はどうぞサイトをご覧ください。志のある方はどうぞ署名や寄付をしてください。映画の存続を願う人、幅広い映画の存続を願う人はどうぞご協力ください。
参加の劇場を見ていたら刈谷日劇が出ていてびっくり。通った高校が刈谷(愛知県です)にあり当時は洋画専門館だったが、サイトを見ると“2012年から単館系ミニシアターとして営業しています”とあった。通った高校では映画館は申請後許可を得てから行く決まり。何度も申請したものだ。近日公開作品には「星屑の町」「初恋」等も含まれていた。
東京が北海道を抜いてコロナウイルス感染者数で全国1位になったのは、先月号をお送りした前後ではなかったか。調べてみると、3/24だったようだ。その後すぐに1日の新規感染者数が40以上となり、4/17には201となり、感染者総数は3000名を超え圧倒的に1位になった。人口10万人当たりの患者数でも全国1位となってしまった。
東京都は感染者数が全国1位になったあたりから、不要不急の外出を控えるように要請し始めた。外出自粛要請である。特に、その週の週末3/27、28には自宅にいるようにと要請した。その前の週が3連休で、ウイルスに対する警戒心に緩みが出たのではとも言われていたのだ。
この要請に呼応して東京の多くの映画館が臨時休館を決めた。全シネコンチェーンも含まれていたので、上映を続けたのはごく一部の映画館となった。さらに次の週末4/03、04も同様の要請が行われ、多くの映画館は前週同様に休館となった。
週末2回の休館にあたっては、その週末に封切り予定作品が突然公開延期され、作品の新聞広告は掲載されてしまったが、実際には封切りはされなかったという事例が2例あった。
3/27封切り予定だった「ハリエット」と4/03封切り予定だった「ポップスター」だ。「ポップスター」は4/03の夕刊にかなり大きな広告が載っていた。ナタリー・ポートマンの大きな写真が目を引いた。勿論4/3本日公開の文字は消え、近日公開予定となってはいたが。
先月号でお伝えした通り、春休み用の子供作品も含め3月初めの封切り作品から延期がされていたが、現在のコロナウイルスの感染状態からこうした公開延期はどんどん広がった。
3月末あたりから公開される新作がどんどん少なくなった。多くの映画館の休館もあり、仕方がない状況だった。
政府と東京都の間で緊急事態宣言をめぐって戦いがあったようだ。4/06になると、明日の夜には翌日からの緊急事態宣言が出されるという状況になってきた。それと軌を一にするように、ある映画館の情報メールが4/08から暫く休館しますと知らせてきた。明日見ておかないと暫くは映画館に行けなくなるかもしれないと、4/07には渋谷、新宿の映画館で1本ずつ計2本の映画を見に出かけた。
4/07の夕刻、政府が緊急事態宣言を発した。帰宅して、インターネットで東京の映画館のサイトを次々にチェックすると、多くの映画館で“4/08より暫く休館”の案内がされていた。4/08の朝に調べ直してみると、情報のなかった映画館でも“本日より休館”と告げていて、結果、全映画館が休館となった。
この時点での緊急事態宣言は7都市について行われた。緊急事態宣言は強制力を持っている訳ではない。個人が外出することも、映画館が営業することも禁止される訳ではなく、要請されるのだが、映画館は要請に応じて全て休館となった。
緊急事態宣言は4/16には7都市から全国に拡大された。これ以降全国すべての映画館が休館となったのかは確認していない。
コロナ感染者、死者が世界一のアメリカでもほぼ全ての映画館が閉まっているらしい。そのため当初公開予定していた大作が良い時期を外し、大きく公開延期になることもあるようだ。先月号でお伝えした通り「ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク」は既に2021年公開に変更している。日本でも予告編が上映されていた大作、話題作がずっと先に公開延期されたということも珍しくない。
まだ感染の渦中で今後のことははっきりしない。いつ映画館の営業が始められるのだろうか?再び映画館で映画に出会えるのはいつだろうか?
Stay Homeが各国でも奨励されていて、映像の配信業者は申し込みが増えているようだ。Netflixはニュースでも報じられていたが、企業価値の時価総額がディズニーより上の20兆円になったという。
次号までに見ることのできる映画はあるのか否かはっきりしない。こんな時はすっきり諦めて、本でも読んで過ごそうかと思うのだが、本屋さんも休業しているところも多く、それ以前に買いに行くこと自体が難しい。
遂に通販で買ってしまった。「映画があってよかったなあ 監督・武正晴の洋画雑記」という厚めの本。「百円の恋」「嘘八百」の監督(1967年生まれ)が若い頃に見た洋画について書いたもの。只今読んでいる最中だ。
今月はここまで。
次号は感染が少しでも沈静化していてほしい5月25日にお送りします。