いつものように梅雨の季節になり鬱陶しい上に、
収まらないコロナウイルスの脅威もあり、
なかなか平常心に戻れない日々。
そんな時落ち着くのは一人でいる映画館!
6/26~7/25のコロナ感染が収まらない30日間に出会った作品は42本。
松竹映画100年関係の旧作が多く、日本映画が外国映画を上回った。
コロナの終焉が見えない中、映画館は対策を講じながらオープンし、
徐々に普通に戻ろうとしている。営業しなければ映画館を続けることが難しい。
少しでも応援したいと思い、ほぼいつも通りに映画館に通った。
23本(新6本+旧17本)
【新作】
Motherマザー
なぜ君は総理大臣になれないのか?
一度も撃ってません
銃2020、
のぼる小寺さん
劇場
【旧作】
<源氏鶏太と大衆小説の愉しみ>
霧ある情事
<松竹映画100周年記念 ホームドラマの系譜>
この広い空のどこかで
適齢三人娘
結婚式・結婚式
明日は月給日
今日もまたかくてありなん
命美わし
橋
わが闘争
<松竹第一主義 松竹映画の100年>
路上の霊魂
マダムと女房
不壊の白珠(ふえのしらたま)
てんやわんや
カルメン故郷に帰る
新東京行進曲
陸軍
流轉
19本(新17本+旧2本)
【新作】
悪の偶像
( Idol)
ランボー ラスト・ブラッド
(Rambo: Last Blood)
ワイルド・ローズ
(Wild Rose)
アンティークの祝祭
(La Derniere Folie de Claire Darling
/ Claire Darling)
サンダーロード
(Thunder Road)
はちどり
( House of Hummingbird)
今宵,212号室で
(Chambre 212 / On A Magical Night)
カセットテープ・ダイアリーズ
(Blinded by The Light)
レイニーデイ・イン・ニューヨーク
(A Rainy Day in New York)
チア・アップ!
(Poms)
イップ・マン 完結
(葉問4 完結編 / Ip Man 4)
透明人間
(The Invisible Man)
グッド・ワイフ
(Las Ninas Bien / The Good Girls)
バルーン 奇跡の脱出飛行
(Balloon)
グレース・オブ・ゴッド 告発の時
(Grace a Dieu / By The Grace of God)
ブリット=マリーの幸せなひとりだち
(Britt-Marie Var Har / Britt-Marie Was Here)
パブリック 図書館の奇跡
(The Public)
【旧作】
<ヒッチコック監督特集Ⅱ>
見知らぬ乗客
(Strangers on a Train)
スキン・ゲーム
(The Skin Game)
(新作だけを対象にしています)
①-1 ワイルド・ローズ
グラスゴーでカントリー歌手を目指すローズ=リンの物語。主演ジェシー・バックリーの歌唱が素晴らしい。圧倒される。監督はイギリスの40歳トム・ハーパー、昨年日本で公開された「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり」の監督だ。日本では公開が逆になったが、「イントゥ…」より前の作品で、これら最新2作は共に必見。単純な成功物語にはしておらず、見る者の心をわしづかみにする。今月のトピックス参照。
①-2 一度も撃ってません
大人が楽しめる映画は結構少ない現在の日本映画界。確かに昔から映画は若者のためにあったのだが、それだけでは広がりが出ない。阪本順治監督の新作はまさに大人が楽しめる作品、その艶やかさを十分に味わってほしい。
② カセットテープ・ダイアリーズ
ロンドンから北へ40㎞ルートンに暮らすパキスタン人家族、主人公ジャベドは16歳、大学を目指すカレッジに進む。時は1987年、学校で出会った人物がジャベドに大きな影響を与える。イギリスのジャーナリストの自伝的小説からの映画化。監督は「ベッカムに恋して」という佳作を作ったグリンダ・チャーダ。ブルース・スプリングスティーンファンは必見です。今月のトピックス参照。
③-1 はちどり
ソウルオリンピック後豊かな社会を目指す韓国。設定は1994年、男尊女卑の観念が今なお強く残る中、両親、兄姉と5人で暮らす14歳の少女ウニに寄り添って描く女性監督のデビュー作。周りに溶け込めず孤独なウニ、塾の女性教師が話を聞いてくれる…。ゆっくりしたペースで丁寧に描かれる少女の物語。
③-2 パブリック 図書館の奇跡
シンシナティの公共図書館、朝の開館時間にはホームレスの人たちが列を作っている。寒波襲来で路上に凍死者が続出、市の緊急シェルターは満杯でホームレスの集団が閉館後も退出せず、占拠を宣言。図書館員とホームレス、政界進出を目指す検察官、危機をあおり視聴率を取りたいマスコミ、警察権力等々が絡み、ドラマが進む。
楽しめる映画は他にも、映画館でどうぞ。(上映が終了しているものもあります。)
◎今宵、212号室で:結婚20年の夫婦、子供を作らず二人で暮らしてきたのだが。大学で法律を教えるマリアは時に男子学生と火遊びしているが、それがリシャールにばれてしまい喧嘩に。夜家を出た彼女は道を挟んだ向かいのホテルの212号室へ。そこから始まるファンタジーはなかなか面白い。楽しめます。今月のつぶやき、トピックス参照。
◎Motherマザー:長澤まさみを主演にしたことは話題的(製作者的)には成功だ。マスコミが追ってくるのは当然だから。清順女優が汚れ役をするというのは昔から定番。その線で言えば、彼女が飛躍する一つの踏み台になるのかもしれない。彼女自身が言っているようだが、全く共感できない母親役だ。ファンとしてはこれを見たいだろうか?
◎レイ二―デイ・イン・ニューヨーク:ウディ・アレンの最新作は、田舎の大学在学中の二人がニューヨークにやってきてそれぞれに巡り歩く経験を描く。今回アレンはやりたい放題、NYの高所得者のみを描き、NY出身の男子学生だけがNYに残るという結論にもそれはあきらか。
◎チア・アップ!:20歳過ぎたら人は変わらないと大学の先生に教えられた。確かにウディ・アレンも、ダイアン・キートンも変わらない。彼女が製作総指揮の一人となっているこの作品では、実際の彼女と同じ年の女性を演じて、更に始まり部分のニューヨークの場面などで今までの作品が思い出される。
◎なぜ君は総理大臣になれないのか?:大島新監督は大島渚監督の次男。今までTVを中心にドキュメンタリーを作ってきたらしい。衆議院議員小川淳也に密着したこのドキュメンタリーは、政治家になることよりも人のため、社会のため、国のために尽くしたいと思っている小川と政治との関係を見せてくれる。
◎バルーン 奇跡の脱出飛行:1979年東ドイツから熱気球による飛行で脱出した人たちの実話を映画化。シュタージ(秘密警察)による監視が厳しく、気球のための布の大量購入自体が怪しまれるという状況の中、準備、実行、失敗、再度のトライと2回にわたって細かく描かれスリリング。10年後には壁が取り払われることになるのだ。
◎グレース・オブ・ゴッド 告発の時:カトリック聖職者による少年への性的虐待が世界的に騒がれるようになったのは21世紀になってから。アメリカでマスコミが大々的に取り上げたのが2002年。この映画はフランス、リヨンの神父から虐待を受けた男性が30年以上経ってからその犯罪を告発しようと立ち上がり、同様の被害に遭った人たちと闘っていく様を丁寧に描いている。
◎ブリット=マリー 幸せなひとりだち:結婚40年、料理、掃除に励むブリット=マリーが出張中に心臓発作で倒れたという夫を病院に訪ねると、知らない女性が…。63歳で職が得られたのは都会からかなり離れた小さな村ボリでの子供たちのサッカーチームコーチ。自分の生き方に目覚める主婦の物語が面白く、きっちり描かれる。今月のつぶやき参照。
◎のぼる小寺さん:高校1年生なのに、進路希望を書かされるというのはリアルなんだろうか?漫画原作からの映画化。誰もが不安定だったりする中、ボルダリングに邁進する小寺さんを主人公に、彼女を見上げる人たちなどの高校生ドラマ。
◎劇場:又吉直樹の小説の映画化。監督は行定勲。それにしても男性主人公の造形はこれでいいの?全く共感できない人物という意味ではMotherの母と双璧か。尽くしまくる女性もありですか?共感できない人物が多いのは単に私のずれだろうか?
<日本映画>
3つの特集で見た17本は、松竹映画100年ではない1本も偶然松竹作品だったので総て松竹映画となった。見た順に一言コメント。
霧ある情事:1959年、二号さんになる岡田茉莉子はきれいだが、後半は霧でよく分からず。
この広い空のどこかで:川崎銀座の酒屋さん一家、貧しさが残る1954年の作品。心温まる。
適齢三人娘:母と暮らす元華族の姉妹の恋愛話。代理見合いが生み出す笑い。
路上の霊魂:1920年松竹キネマ研究所の第一作。施しは幸いなりとのテーマが描かれる。
結婚式・結婚式:笠智衆が写真で登場、娘が紀子など小津に目配せだがテイストは違う。
マダムと女房:国産初の本格的トーキー作品だが、お話し的には今一つの印象。
不壊の白珠:姉妹の恋愛話、1人の男性を姉は慕い、妹は結婚後別れる。かなりモダン。
明日は月給日:1952年日本がまだ貧しい頃、月給を皆で喜ぶ楽しい作品。胴上げもあり。
てんやわんや:淡島千景がデビューし鮮烈な印象を残す1950年作品。獅子文六原作。
カルメン故郷に帰る:国産フィルムによる1951年の初のカラー作品。
新東京行進曲:東東京都知事がヘリコプターで空からの視察場面で始まる快調作。
今日もまたかくてありなん:1959年当時の中村勘三郎が出演、息子の勘九郎(上手い)も。
命美わし:自殺の名所近くに住む笠智衆と杉村春子の夫婦が、未遂者を助ける。
橋:大佛次郎の新聞小説を映画化。笠智衆演じる元提督の慎ましい生活、家族関係を描く。
わが闘争:かつてベストセラーになった堤玲子の自伝を映画化。監督、主演者とも合わない。
陸軍:1944年11月陸軍省の要請で作られた木下恵介作品。翼賛ではなく反戦を訴える。
流轉:歌舞伎の成田屋と三味線名手が芸をかけ意地を張合う芸根もの。高田浩吉懐かし。
<外国映画>
<ヒッチコック監督特集Ⅱ>
やっと見ることができた「見知らぬ乗客」(1951年)は面白かった。
多分パトリシア・ハイスミスの原作が素晴らしいのだろうが映画も凄い。交換殺人を押し付けてくる怖さ、最初はあれ?てな感じがどんどん恐怖に変わっていく。押し付け役のロバート・ウォーカーが怖い。
ロバート・ウォーカーについて調べていたら、Wikipediaにもっとドラマチックなことが書かれていた。
彼はこの作品の公開直後、次の作品の撮影中に32歳の若さで亡くなっていた。しかもジェニファー・ジョーンズの最初の夫であった。ニューヨークの演技学校で同期だった二人は、彼女がまだフィリス・リー・イスリー(本名)だったころに結婚、息子二人(長男のロバート・ウォーカーJrはこの名前で俳優になったが、それほど有名ではない。)を得ていた。ハリウッドでオーディションを受けたフィリスが製作者セルズニックの目に留まり、ジェニファー・ジョーンズの芸名で「聖処女」(1943年)という作品でデビュー、いきなりアカデミー賞を受賞する。この時すでにセルズニックとの不倫が始まっていた。不倫が公然となっていた中、セルズニックは「君去りし後」(1944年)を製作(脚本もセルズニック)、二人を恋人役で起用する。ロバートにとって妻とのラブシーンは苦痛だった。こうした状況下、元々精神的に安定していないロバートは酒におぼれるようになった。飲酒による興奮状態の時に、精神科医が与えた鎮痛剤がアルコールとの相互作用で急性アレルギーとなり亡くなったという。なお、1949年にセルズニックとジェニファー・ジョーンズは結婚している。
エミリオ・エステベスをここで取り上げていいものか迷うが、「パブリック 図書館の奇跡」は8年ぶりの新作、更にその前の作品は5年前と作品は少ないのだ。久しぶり。
マーティン・シーンの長男で、弟はチャーリー・シーンという俳優一家の一員。デビューした80年代には「アウトサイダー」「ブレックファスト・クラブ」「セント・エルモス・ファイアー」等の若者映画に出演、弟ほど体格、風貌には恵まれず派手さもないが、そのフレッシュネスで若者を感じさせた。
人気の出た80年代に既に監督・脚本・出演を始めていて、映画を作ることが好きなようだ。前作「星の旅人たち」と今回の「パブリック…」では製作も加わり一人4役、アイディアに満ちた作品を届けてくれる。
●実際にあるらしいグラスゴーのグランド・オール・オープリーが舞台の「ワイルド・ローズ」は、何故にアメリカのカントリーミュージックがスコットランドにと思わせるが、疑問をふっとばすジェシー・バックリーの歌は凄い。ナッシュビルまで行くのだが、グラスゴーの、そしてローズ自身のカントリーになっていくところには感激だ。
それにしても、主人公が出所するとき足にわっかをはめられて行動を規制されるというのも本当なんだろうなあ。
●212号室はモンパルナスにあるレノックスホテルにあるという設定の「今宵、212号室で」。道の反対側には夫婦のアパルトマンがあり、そのビルの1階にはシネマ7とかのシネコンがあり、ホテル側にはBar Rosebudがありと映画好きっぽい界隈。Hotel Lenoxは実在しているので、他のものも多分あるのでしょう。
●エル・ファニングが扮する田舎娘アシュレーがギャツビーとニューヨークに出かける「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」。彼等が泊まるのはカーライルだったか?アシュレーが忘れてニューヨークの超高級ホテル名をその時、その時に無責任に口にするのが笑いに。プラザ?ピエール?リッツ・カールトン?プラザ・アテネ?などあまりに出てきて本当はどれだったか分からなくなってしまった。
●3年半ほど前に日本でも公開された「幸せなひとりぼっち」と同じ原作者フレドリック・バックマンの小説から映画化された「ブリット=マリー 幸せなひとりだち」は、アラ還世代の孤独を暖かく描いて、再び元気づけてくれる。バックマンはまだ39歳だが、高齢者についての話が多いようだ。
松竹は現在も映画(映画館で上映されるもの)を製作している映画会社としては日本最古。映画会社と書いたが、その事業には舞台も含まれているのは東宝と同じだ。
松竹という会社のホームページを見ると、創業は1895年京都とある。映画が誕生したのが1895年と言われていて、日本ではまだ映画は作られていなかった。松竹の始まりは舞台の上演、劇場運営など舞台に関連するものだ。その後大坂の文楽座を手に入れ人形浄瑠璃を、東京の歌舞伎座も直営とし歌舞伎を営業項目に加えた。会社創立以降20年以上舞台のみをてがけてきた。
1920年に松竹キネマ合名会社を設立、蒲田撮影所(蒲田行進曲の舞台)もオープンする。1936年にはサイレントからトーキー移行のため蒲田撮影所を閉鎖し、大船撮影所を開所、後に大船調と呼ばれる作品群を生み出すことになる。1937年には舞台関係の松竹興業と松竹キネマが合併し、松竹株式会社となった。
サイレント時代から都会的で明朗な蒲田調(後に大船調)を目指し、小津安二郎作品に象徴されるホームドラマを中心に多くの名作を残している。監督で言えば小津をはじめ、木下恵介、成瀬己喜男、大曾根辰夫、中村登、川島雄三、渋谷実等があげられる。
1960年前後からほのぼのとしたホームドラマに反発する形で、松竹ヌーベルバーグと呼ばれる作品群が登場する。大島渚、吉田喜重、篠田正浩等の監督が挙げられるが、映画自体の退潮もあり、彼等は松竹を飛び出し独立プロでの映画製作をするようになる。
60年代末には「男はつらいよ」シリーズが開始となり、1995年で終了するまで松竹の大黒柱として経営を支えてきた。この時期、松竹、東宝などの大スタジオが映画を直接製作する形から、外部プロや製作委員会を設立しての映画製作に移行していく。そのため映画会社に所属する監督はいなくなった。山田洋次は最後の松竹監督といえるだろう。
2000年には大船撮影所を閉鎖、松竹として保有する撮影所は京都のみとなり、株式会社松竹撮影所と改称された。
松竹だけではなく映画会社の在り方が大きく変わっている現在、先を見通すのは難しいが、
見る側としては「東京物語」級の心に残る作品をお願いしたい。
今年生誕100年を迎える世界の監督二人の特集上映が行われる。
イタリアのフェデリコ・フェリーニと旧ソ連のセルゲイ・ボンダルチュクだ。
フェデリコ・フェリーニはアドリア海に面したリミニに生まれた。海水浴場として有名なリゾートに生まれたことは彼の作品にも大きく影響していると思われる。戦後の厳しい状況を描いたイタリアのネオレアリスモ隆盛の頃に映画界に入り、社会の波にもまれる人々の生き方、悲しみ、欲望、挫折、退廃を描いてきた。モノクロの最後の作品「8 1/2」以降は元々あった幻想的なものが大きく膨らみ、色彩と共に人を楽しませ、魅了するようになった。この幻想味はいつまでもリミニのやんちゃ坊主であったフェリーニの神髄と言えよう。
今回の特集では次の9作品が上映される。7/31~8/20 恵比寿ガーデンシネマにて。
「白い酋長」「青春群像」「道」「崖」「カビリアの夜」「甘い生活」「8 1/2」「魂のジュリエッタ」「フェリーニのアマルコルド」
URL: http://fellinifilmfesjapan.com/
セルゲイ・ボンダルチュクはソ連時代のウクライナで生まれたが、当時ウクライナはロシア・ウクライナ内戦の最中であり、一家はロシアに移住した。演劇を志したセルゲイは1937年に初舞台を踏んだ後、演劇学校、全連邦国立映画大学などで勉強した。1959年に「人間の運命」で初めて映画を監督するまでは、映画「オセロ」等に出演し俳優として高い評価を得ていた。彼は生涯俳優として出演し続け74歳で亡くなるまで40本以上の映画に出演している。監督としては「戦争と平和」四部作以外では7作品しか残していない。
今回の特集では5作品が上映される。9/18~10/08 UPLINK吉祥寺にて。
「戦争と平和 第一部~第四部」「人間の運命」「ワーテルロー」「祖国のために」「セルギー神父」
URL: http://www.pan-dora.co.jp/bondarchuk/
ちなみに生誕100年を迎える俳優には、原節子と三船敏郎がいる。
三船敏郎は新宿武蔵野館で、原節子は神保町シアターで特集上映が3~4月に予定されていたが、共に延期となってしまった。上映期日決定次第映画館のサイトで発表されるとのこと。なお、新宿武蔵野館は映画館自体が今年100周年を迎えた。
①キアラ・マストロヤンニ
カトリーヌ・ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニの娘がキアラ・マストロヤンニ。彼女が出演する作品を2本見た。
「アンティークの祝祭」はドヌーヴとの共演作、映画の中でも親子を演じている。認知症が入っている母は、田舎の豪邸で一人暮らしをしている。ある時家にある様々な品物をガレージセールで売りに出す。それらにはアンティークとしての価値あるものや、思い出の品なども含まれていた。それを見た知り合いが心配してパリに暮らす娘に連絡、久しぶりに母を訪ねる。人生の最後に近づきつつある母と娘の関係を描く。
「今宵、212号室で」は結婚して20年になる夫婦の物語。妻一筋の夫と、浮気する妻という設定、212号室にファンタジーが下りてくる作りなど、様々に工夫した脚本が面白い。
この作品で現在の夫を演じるバンジャマン・ビオレ(ベニチオ・デル・トロに似ている)は実生活ではキアラの元夫だ。
現在48歳のキアラ・マストロヤンニはドヌ-ヴの華やかさは持っていない。風貌、特に目元はマストロヤンニを思い出させる。女優になって25年以上、代表作は「今宵、…」となるだろう、多分。殆どみていないので何とも言えないのだが。
2番目の夫ビオレと別れた後は、ベルギーの俳優ブノワ・ポールヴールドと暮らしているらしい。この人、昨年日本でも公開された「今さら言えない小さな秘密」で自転車に乗れない主人公を演じていた、どちらかといえば目立たないおじさん(55歳)だ。このあたりの趣味もドヌーヴとは違うところ。
②音楽にあふれた映画
今月は2本の音楽にあふれた映画に出会った。「ワイルド・ローズ」と「カセットテープ・ダイアリーズ」の2本だ。
「ワイルド・ローズ」は何と言ってもジェシー・バックリーの歌唱に驚いた。1989年12月28日アイルランドのキラーニー生まれ。2008年にBBCのオーディション番組に出演したのがきっかけで芸能界入り、アイルランドやロンドンの舞台に立ち、2013年に王立演劇学校を卒業とWikipediaにある。公開された映画は全3本、日本ではその3本が今年公開されたが、イギリスでの公開では次の通り。
2018年ワイルド・ローズ、2019年ジュディ 虹の彼方に 2020年ドクタードリトル
「ワイルド・ローズ」は映画デビュー作といえる。驚くのは残りの2本では歌っていないこと。あの歌を聞いてキャスティングしたのではないということ?特に「ジュディ 虹の彼方に」はロンドンでのジュディの世話係。まあ、もし歌ったらレネー・ゼルウィガーが困ったかもしれないが。
「カセットテープ・ダイアリーズ」はブルース・スプリングスティーンの映画になっていた。1987年の設定なので、彼がレコードデビューしてから14年が経っている。映画の主人公たちもブルースを1時代前にデビューと言っているが、その後14年の間にはロック界のボスと呼ばれるようになっていたのだ。映画の主人公ジャベドが後に友人となるルーブスからかけられた言葉は“ボス!”だった。映画の原題「Blinded by The Light」はブルースのデビューシングルの曲名(日本名は“光で目もくらみ”)だ。映画にはこの曲をはじめ16曲が使われている。私は2枚目のアルバム「Born to Run」のみを持っている程度だが、それでもこれだけ乗れたのはあの時代を知っているからだろう。スプリングスティーンファンは必見です。
③ブルース
ブルース・スプリングスティーンが映画の軸になる映画がもう1本あった。それが「サンダーロード」だ。この題名もブルースの同名曲(日本での曲名は“涙のサンダーロード”)から取られている。
主人公はテキサス州の警察官ジム。彼の母親の告別式から始まる映画は、彼が母の好きだった“涙のサンダーロード”に合わせて教会で踊るところが映される。
監督・脚本・編集・音楽・主演と一人5役でこの映画を作ったのはジム・カミングス。何事にも少し外したコメディなのだが、笑っていいのかどうか迷うほど主人公の不器用さが切なくも描かれ、かなり中途半端なものになった印象。
いずれにしても「カセットテープ・ダイアリーズ」と合わせ、2本の映画でまるで主役のように取り上げられているブルース・スプリングスティーン関連の2本だった。
7月6日イタリアの作曲家エンニオ・モリコーネが91歳で亡くなった。
1960年代、マカロニウエスタンが登場すると、セルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」(1964年)の音楽を手始めに、多くの作品に音楽を付けた。モリコーネといえばマカロニウエスタンというイメージができあがった。レオーネ監督とのコンビはマカロニウエスタンの最後ともいえる「ウエスタン」(1968年)(最近「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」の名前で再公開された)は勿論、レオーネの遺作となった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984年)まで全作品で続くことになった。
モリコーネがマカロニというイメージから離れ、独立した映画音楽家として認識されだしたのはいつ頃だろうか?「テオレマ」から始まるピエロ・パオロ・パゾリーニとの5本の作品を経て、1976年のベルナルド・ベルトルッチ作品「1900年」あたりからだろうか。世界的に高い評価を得た作品の大きさもあり、これ以降はハリウッドへの進出も果たし国際的に様々な作品で活躍することになった。日本映画でも池田満寿夫が自身の原作を映画化した「エーゲ海に捧ぐ」を担当している。
最近では1988年「ニュー・シネマ・パラダイス」で世界的に評価されたジョゼッぺ・トルナトーレ監督の多くの作品でコンビを組んでいた。
2016年にはクエンティン・タランティーノ監督の「ヘイトフル・エイト」で米アカデミー賞作曲賞を受賞している。
作品数の多さと共に作品の幅の広さには驚くばかり。リストを見て驚いたのは、マカロニウエスタン最盛期の1966年に「アルジェの戦い」に音楽を付けていたことだ。
多くの素晴らしい映画音楽をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。
今月はここまで。
次号はコロナ感染が少しでも落ち着いていてほしい8月25日にお送りします。