コロナ禍と並行して暑い日が続いた。
真夏日が続き、エアコン使用が奨励された。
コロナとの闘いもまだまだ続く。
時に心をチェンジして気持ち新たに向かいあう。
そんな気分転換ができるのは、そう映画館!
7/26~8/25の真夏日が急増した31日間に出会った作品は43本。
本数だけは通常レベルだが、新作/旧作は21本/22本と旧作の方が多い。
特に外国映画では作品不足が目立つ。大作の多くが公開延期となった影響だ。
13本(新8本+旧5本)
【新作】
日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人
ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶
海辺の映画館 キネマの玉手箱
コンフィデンスマンJP プリンセス編
ドロステのはてで僕ら
はりぼて
僕は猟師になった
糸
【旧作】
<松竹第一主義 松竹映画の100年>
嵐を呼ぶ十八人
さらば夏の光よ
キネマの天地
黒い河
悲しき口笛
30本(新13本+旧17本)
【新作】
WARウォー‼
(War)
誰がハマーショルドを殺したか?
(Fallet Hammarskjold / Cold Case Hammarskjold)
ぶあいそうな手紙
(Aos Olhos de Ernesto / Through Ernesto’s Eyes)
悪人伝
( The Gangster, The Cop, The Devil)
マルモイ ことばあつめ
( Mal-Mo-E:The Secret Mission)
17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン
(Der Trafikant / The Tobacconist)
グランド・ジャーニー
(Donne-Moi des Ailes / Spread Your Wings)
プラド美術館 驚異のコレクション
(The Prado Museum, A Collection of Wonders)
ジョーンの秘密
(Red Joan)
ファヒム パリが見た奇跡
(Fahim)
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
(Mr. Jones)
大草原のソングライン
(Small Island Big Song)
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
(Booksmart)
【旧作】
<ナチスと映画Ⅲ>
鬼戦車T-34
(Zhavoronok / Tank T-34)
最後の億万長者
(Le Dernier Milliardaire / The Last Billionaire)
サハラ戦車隊
(Sahara)
ヒトラーの狂人
(Hitler’s Madman)
潜水艦轟沈す
(49th Parallel)
自由への闘い
(This Land is Mine)
戦慄のスパイ網
(Confessions of a Nazi Spy)
第七の十字架
(The Seventh Cross)
私が結婚した男
(The Man I Married)
ラインの監視
(Watch on the Rhine)
ベルリン特急
(Berlin Express)
恐怖への旅
(Journey into Fear)
山河遥かなり
(The Search)
<フェデリコ・フェリーニ映画祭>
甘い生活
(La Dolce Vita )
フェリーニのアマルコルド
(Amarcord)
魂のジュリエット
(Giulietta degli Spiriti / Juliet of the Spirits)
青春群像
(I Vitelloni )
(新作だけを対象にしています)
①-1 日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人
残留邦人といえば中国が思い浮かぶが、同じような状況にあった国は他にもあり、その一つがフィリピンだ。フィリピン女性と結婚し子供もいた日本人男性が、戦争と共に召集され兵隊として終戦を迎え、強制的に帰国させられる。現地の子供たちは日本人の子としていじめられ、隠れるように生きてきた。
①-2 はりぼて
富山のチューリップテレビからのドキュメンタリーは、富山市議会を舞台に、政治活動費の不正使用によって14人の市議が辞任に追い込まれる様を伝えている。自民党のドンと呼ばれる市議の政治活動費を丁寧にチェック、逃れようのない状況に追い込んでいく。それにしてもあまりに安易な不正領収書の作り方に驚く。最後まで誠実に事に向かう製作者たちだった。
②-1 ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶
太平洋戦争で日本唯一の地上戦が行われた沖縄。その時の状況を詳しく追ったドキュメンタリーは、日本軍(あるいは政府)は沖縄を本土に対する防波堤として考えていたこと、アメリカ軍に投降して情報を教えないよう追い詰められたら自決するように仕向けていたことを教えてくれる。
②-2 誰がハマーショルドを殺したか?
1945年に創設された国連の第2代事務総長ダグ・ハマーショルド(在任:1953年4月~1961年9月)が謎の飛行機事故で亡くなった、その謎を探るドキュメンタリー。ハマーショルドと同じスウェーデン人で父の跡を継いで謎を追ってきたヨーラン・ビョークダールの調査に参加する形で撮影・監督をしたのがデンマークのジャーナリスト、マッツ・ブリューガー、不思議で面白いテイストのドキュメンタリー。
③-1 グランド・ジャーニー
フランスの実話から作られた作品は、南フランスとノルウェー北部の間を飛ぶ渡り鳥に改善飛行ルートを教えようという驚きの内容。空を飛ぶ鳥たちの美しい姿や空から見えるノルウェーの森林や湖、フランスの平野などの美しい風景が、ドラマと共に目を楽しませてくれる。
③-2 ジョーンの秘密
イギリスからやってきた実話の映画化は、2000年に突然公務秘密法違反として逮捕された老婦人の話だ。ケンブリッジで物理を学んだ彼女がその先に絡んでいくのは…。監督はトレヴァー・ナン、舞台の演出家として超有名な人、キャッツやレ・ミゼラブル等のミュージカルからシェークスピアの作品迄手掛ける。今回ジュディ・デンチは彼が監督だから出演したという。
他にも楽しめる作品が!映画館でどうぞ。(上映が終了しているものもあります。)
◎ぶあいそうな手紙:隣国ウルグアイからブラジル南部のポルトアレグレの町にやってきて46年、妻に先立たれた78歳のエルネストは最近目がよく見えない。偶然出会ったブラジル娘に手紙を読んでもらい、返事の代筆も。ポルトアレグレ出身の女性監督アナ・ルイーザ・アゼヴェードの作品(脚本も)は、人間味あふれる面白い作品。
◎悪人伝:やはり現在の韓国はアイディアが面白い。惹句“極悪組長X暴力刑事VS無差別殺人鬼”の通り、3つ巴の力がガチンコ勝負、組長と刑事がタッグを組むという超変化球。違和感なく楽しめた。
◎マルモイ ことばあつめ:1940年代日本統治下の韓国で、朝鮮語の辞書を作ろうとする人たちの闘いを描く。名前だけでなく、言葉までも変えようとした日本は辞書作りを妨害する。
◎17歳のウィーン フロイト教授 人生のレッスン:この作品は昨年の7月号で一度紹介している。映画祭で上映されたもので、その時のタイトルは「キオスク」、予告編を見た時から見たと確信していたが題名が思い出せなかった。フロイトに扮するブルーノ・ガンツの遺作となった。
◎海辺の映画館 キネマの玉手箱:コロナが無ければこの映画の封切りが予定されていた4月10日夜、肺がんのため大林宣彦監督は82歳で亡くなった。思いのたけを総てつぎ込んだように目まぐるしく画面が変わる前半、少し落ち着いた後半、いずれにしろ稀有な遺作だ。
◎コンフィデンスマンJP プリンセス編:コンフィデンスマンJPの2作目は例によってあふれる有名スターがちょこっと出てきて、古沢良太の脚本でだましまくる。楽しむのみ。
◎ファヒム パリの見た奇跡:こちらもフランスの実話から作られた作品。バングラデシュから逃げるようにパリにやってきた父と8歳のファヒム、得意のチェスをフランスのマスターから学ぼうとするのだが…。今やロシア国籍のジェラール・ドパルデューがマスター役。
◎赤い闇 スターリンの冷たい大地で:ヒトラーにインタビューした経験を持つ英国人記者ガレス・ジョーンズは、世界恐慌が吹き荒れる中なぜソ連のみが繁栄しているのかに疑問を持ち、現地に出かける。秘密はウクライナにあるとの情報に、当局の目をかいくぐってウクライナを訪ねた彼の眼に入ってきたのは…。アグニェシュカ・ホランド監督作品。
◎大草原のソングライン:イースター島からマダガスカルまで16の島国を訪ね、オーストラリア先住民の“ソングライン”と言う思想/信仰に基づき、100名を超す島々の音楽家たちと共同で島々の歌を集結させる音楽プロジェクトから生まれたドキュメンタリー。そんな能書きはどうでもよく、音楽の心地良さに何度も見返したくなる。
◎ドロステのはてで僕ら:出自は京都の劇団ヨーロッパ企画と違うのだが、テイストは「カメラを止めるな」と同じなのは、アイディア勝負の作品だからだろう。2分時差のある1階と2階のテレビ画面を駆使しての“時間SF映画”、楽しめます。
◎僕は猟師になった:NHK発のドキュメンタリーは京都郊外に住むわな猟師千松信也さんと家族の生活を追っている。猟は自分達が食べる分だけにしていて職業にしている訳ではない。山を歩き、けもの道を探り、わなをかけ、その後を見回り、わなにかかれば殴打して気絶させ、ナイフでとどめ、家まで運び解体する。命に感謝しながら頂く。
◎糸:中島みゆきの「糸」に想を得て作られたラブストーリー。平成元年生まれの主人公を軸に30年間の様々な出会いを描いたもの。北海道美瑛、東京、沖縄、シンガポールと歌謡映画のような画面に4回も使われる「糸」や他の中島みゆきの音楽も流れるが、そうした表面以上に物語がしっかりしている。
◎ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー:高校をがり勉で過ごし一流校への進学を決めた女子高生二人が卒業式前日に知った驚愕の真実。遊びまくっていた奴らもそれなりの一流校に受かっていたこと。見返すためにがり勉し、今に見てろと進学先は秘密にしてきたのに!高校生活で楽しめたはずをその夜総てやりつくすコメディはぶっ飛び度100%。
<日本映画>
国立映画アーカイブで行われている<松竹第一主義 松竹映画の100年>は9月6日まで継続中。今月は5本見ました。歌手を主演に迎えた2本の映画がありました。
さらば夏の光よ:郷ひろみがロッテリアでアルバイトする青年役で主演する1976年の作品。遠藤周作の原作をジェームス三木が脚本化、山根成之が瑞々しい青春映画に仕上げた。
悲しき口笛:美空ひばりが12歳で初主演した1949年の作品は、戦後日本の貧しさを思い出させてくれる。そこにひばりの図太い低音が、リズミカルな歌唱が人々に希望を与える。
<外国映画>
<ナチスと映画Ⅲ>:
ナチスに関連する映画は現在もなお数多く作られている。それだけ大きな影響を残しているナチスだが、勢力を持っていた1930~40年代にはもっと多くの作品が作られていた。今回の特集では1933~1985年に発表された作品が集められている。今回は13本を見た。印象に残ったのは次の通り。
鬼戦車T-34:1965年作品。昨年ヒットした「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」の元作品。
サハラ戦車隊:1943年作品。北アフリカ戦線、サハラでの水の戦い。H・ボガートが良い。
潜水艦轟沈す:1941年作品。Uボートが撃沈され、カナダを横断して逃げるナチス兵。
自由への闘い:1943年作品。ナチスに占領されたとある国、臆病な教師が立ち上がる。
戦慄のスパイ網:1939年作品。全米にはびこるナチのスパイ網との闘いを描く。
第七の十字架:1943年作品。反政府運動の7人がドイツ収容所から脱走、その戦い。
ラインの監視:1943年作品。反ナチス活動家の家族を描くリリアン・ヘルマン原作映画化。
ベルリン特急:1948年作品。戦後のドイツ、ドイツ統一派の教授暗殺計画を巡る戦い。
恐怖への旅:1942年作品。トルコを舞台にナチスとの闘いを描く。E・アンブラー原作。
山河遥かなり:1948年作品。終戦後ナチス収容所にいた子供たちの親探しを描く。
<フェデリコ・フェリーニ映画祭>:
生誕100年として世界の映画館・美術館で行われているツアーの一部。「道」以外はツアーに合わせデジタル復元されたもの。9本が上映された。1973年の「アマルコルド」以外は1952~65年と彼の前半の作品だった。6本見ようと計画していたが、「崖」「カビリアの夜」は満席にて席が取れず4本に終わってしまった。特集上映好評のため9/11~24に延長上映が決まったが、「白い酋長」「崖」「カビリアの夜」の3本は外されてしまった。残念!
甘い生活:主人公マルチェロは当時のフェリーニと同年代、「8 1/2」へ続く同年代映画。
フェリーニのアマルコルド:ファシスト党が力を増しつつある30年代、リミニでいたずらに熱中する中学生と街の人々の1年、すべてを笑い飛ばすフェリーニの一番幸せな作品。
青春群像:30歳でもバカなことをしている主人公たち、これまたフェリーニの同年代映画。
7月30日 東中野ポレポレ 「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」 小原浩靖監督
上映開始前に監督が短い挨拶をされた。その第一声は“この映画は事実を人に知らせるために作りました”というものだった。いわば普通の映画ではありませんと言われているようなものだったのだが、とりあえず知ってもらいたいという意思が伝わってきた。残留といえば中国しか思いつかない我々普通の日本人に、今までテレビCMを中心に主に広告映像を手掛けてきた56歳の監督は忘れ物を思い出させてくれようとしていた。
8月22日 ユーロスペース 「僕は猟師になった」 千松信也 川原愛子監督
千松さんはこのドキュメンタリーの主人公、監督の川原愛子さんと2人が京都からZOOMでのオンライントークショーとなった。当初は東京に来る予定だったらしいが、コレラの勢いにZOOM使用となった。
千松さんは「けもの道の歩き方」という本を出した後、メディアからの取材依頼には、特にテレビにはあまり応じなかったらしい。川原さんは“話だけでも聞かせてください”とビールで誘ったという。2年前にNHKでノーナレ(ノーナレーション)のドキュメンタリーとして放映、反響はかなりあり、その後の撮影を加え映画として作成を決定。今回は池松壮亮によるナレーションを加えている。映画の中で解体などで活躍する二人の息子さんたち、中学生になった長男は獣医を目指しているそうだ。
●IT技術が進んでいるインド、そのためかCG画面が速すぎてアクションが見えないという印象の「WARウォー」、同じ印象だったのがしばらく前に封切られた「サーホー」だった。早ければ良いとは言えないのだ。
●国連事務総長暗殺以上に大きな陰謀がと話が進む「だれがハマーショルドを殺したか?」は、それとは裏腹にゆったリズムで描かれる。その奇妙な面白さは類を見ない。
●日本統治下とはいえ日本が悪役としてだけ登場する「マルモイ ことばあつめ」は、日本でよく公開したなという印象。
●先月紹介した「ワイルド・ローズ」は出所時足首にわっかをはめられるのだが、同じようにされたのを恥ずかしげに見せるのが「ジョーンの秘密」だ。どうやらイギリスではこうした方法で人のいる場所を確認するらしい。
●バングラデシュの人たちが時間に遅れるのは、どんなに混んだりしていてもいつもの時間に出発したんだから自分は悪くないと考えることを教えてくれたのが「ファヒム パリの見た奇跡」。息子のチェス対戦で大事な日なのに、父親のこの考え方で遅れてしまう。
今年、75回目の終戦記念日を迎えた。かつて8月は戦争映画が大作として作られていた時期がある。勿論それなりにヒットして毎年作られていた。1980年代までは、映画会社は変わっても作られた。実際に戦争を経験した映画人が作っていて、それなりの思い入れがあって作られた作品が多かったのだ。
8月は戦争ではなくなって久しい。終戦後3/4世紀も経過しているので仕方がないことかもしれない。それでも戦争の真実は知っておくことが必要だろう。
<日本映画>
今年は2本のドキュメンタリーが公開された。戦争が我々に残したものについて教えてくれる「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」と、沖縄戦の実際を見せてくれる「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」で、共に力作だ。
劇映画では「海辺の映画館 キネマの玉手箱」で、大林宣彦監督の戦争に対する思い・警告があふれるばかりに描かれている。
<海外映画>
旧作の特集<ナチスと映画Ⅲ>がナチス関連の映画見せてくれた。
新作では「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」がオーストリアに侵攻したナチスが人々を苦しめるのを主人公の成長と併せて描く。
<書籍>時代劇・映画史研究家として活躍している春日太一さんが、7月に文春新書から「日本の戦争映画」という新刊を出された。敗戦後に作られた作品から現在に至るまでの戦争映画を網羅して解説している。最後には「この世界の片隅に」の片渕須直監督との対談も収録している。
映画館は6月からオープンしたものが殆ど、もうじき3か月が経過することになる。コロナ対策で座席の半分を不使用としているところが殆どだ。満員になったとしても売り上げは最大でも従来の半分となる。しかも6月、7月と半分になった座席が埋まらない日が続いていた。混んでいないことは見る方にとっては嬉しい面もあるのだが、映画館にとっては死活問題だ。
最近は時々満員が出る状況になってきた。この1か月の間に経験した満員は次の通り。
①8月14日(金)14:05~ TOHOシネマズ日比谷「ドロステのはてで僕ら」
この日は前もって予定が立てるのが難しく、映画館に直接行ったら満員だった。
②8月15日(土)10:30~ 恵比寿ガーデンシネマ「カビリアの夜」
③8月16日(日)13:30~ 恵比寿ガーデンシネマ「崖」
この2本はフェデリコ・フェリーニ映画祭の2本。②はサイト予約で3日前の午後3時頃にトライしたが満席、③は朝6時にトライしたのだが満席。サイト予約は3日前の午前0時から可能だ。8月17日(月)の「青春群像」は午前3時頃起きてトライ、空席は6席ほどであわてて予約。7月31日から始まっていたこの映画祭では8月12までに3本を見ていたので、気の緩みがあったのかもしれない。確かにかなり混んでいたが満席とはなっていなかったからだ。実は最後の週だけスクリーンが1から2に変更になっていたのだ。定員数が約半分のスクリーンになっていた。
④8月16日(日)11:00~ ユーロスペース 「はりぼて」
2日ほど前にサイト予約したが満席。この日が初日で監督等のトークショウ―が上映後に予定されていた。やはり満席か!仕方なく13:20~の2回目で予約、上映時にはほぼ満席。
以上、徐々に映画館に人が来ている状況が確認できた。嬉しかったが、最終的に見られなかったフェリーニの2本は哀しかった。
7月号でジブリの3作品がシネコンにかけられると書いたのだが、この3作品は6月第4週~7月第2週の3週連続で1位:千と千尋の神隠し、2位:もののけ姫、3位:風の谷のナウシカと、ベスト3を独占したのである。宮崎作品の偉大さを再認識という感じだ。
その後、8月第2週の集客ベスト10は総てが日本映画で占められるという事態が発生した。この中にはジブリ3作品も7~9位にランクインしていた。
8月第1週では外国映画は2本入っているが、うち1本は旧作の「ダンケルク」、第3週は1本のみで作品は旧作の「インセプション」、第4週も1本でやっと新作の「2分の1の魔法」となっている。
これから明らかなように、外国映画の作品不足が原因だ。アメリカで映画館がまともにオープンしていないので、新作がなかなか公開されない。裏には新作の製作ができないという問題もあるのだろうが、この状態がいつまで続くのだろうか?
最新のニュースとして、ディズニーが3月に公開予定していた「ムーラン」をついに配信(ディズニープラス)で公開し、日本では劇場公開しないと決めたという。現在のハリウッドで圧倒的な力を持っているディズニーが、ディズニープラスの宣伝のためもあるだろうが、劇場公開しないというのは残念だ。作品を公開しない限り収入がないという事情も分かるのだが。
今月見た新作は邦洋画併せ21本だったが、その1/3にあたる7本がドキュメンターだった。いずれも力作だ。
<日本映画>「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」「ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶」「はりぼて」「僕は猟師になった」
2本の戦争関連作品と、後ろの2本はテレビ局による作品。
<外国映画>「誰がハマーショルドを殺したか?」「プラド美術館 驚異のコレクション」「大草原のソングライン」
まるで劇映画のような、不思議なはじまり方を見せる「ハマーショルド」は最後までフェイクなのか真実なのか不明のまま大きなテーマを発見する。「ソングライン」は島々の人々が歌で結ばれていくのが何とも心地よく描かれる。
今月はここまで。
次号は普通の天高く馬肥ゆる秋であってほしい9月25日にお送りします。