2021年 12月号back

 

今年の忘年会は昨年よりは増えるだろうか?
昨年はゼロに近い数字だったので多分増えるだろう。
久しぶりに連絡を取り合う仲間たち。
あまりに増えて忘年会疲れになったら、
ゆっくりしてください、映画館で!

 

 

 

今月の映画

 

10/26~11/25のコロナの感染縮小が進んだ31日間に出会った作品は41本、邦/洋画は9/32、新/旧は33/8という実績でした。
試写と映画祭の映画は新作としてカウントしています。



<日本映画>

   9本(新9本+旧0本)

【新作】
老後の資金がありません! 
そして,バトンは渡された 
劇場版 きのう何食べた? 
梅切らぬバカ 
西成ゴローの四億円 
西成ゴローの四億円 死闘編 
恋する寄生虫 
SAYONARA AMERCA 
信虎

 

 

<外国映画>

   32本(新24本+旧8本)

【新作】
G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ
  (Snake Eyes: G.I.Joe Origins) 
モーリタニアン 黒塗りの記録
  (The Mauritanian) 
MONOS 猿と呼ばれし者たち
  (Monos) 
グレタ ひとりぼっちの挑戦
  (I Am Greta)  
リスペクト
  (Respect) 
エターナルズ
  (Eternals) 
アンテベラム
  (Antebellum) 
ほんとうのピノッキオ
  (Pinocchio) 
スウィート・シング
  (Sweet Thing) 
ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野
  (The Harder They Fall) 
皮膚を売った男
  (L’Homme Qui Vendu Sa Peau

   / The Man Who Sold His Skin) 
ファイター 北からの挑戦者
  ( Fighter) 
ボストン市庁舎
  (City Hall) 
チック チック…ブーン!
  (Tick Tick…Boom!) 
アイスロード
  (The Ice Road)
花椒(ホアジャオ)の味
  (花椒之味 / Fagara) 
ドーナツキング
  (The Donut King) 
フォーリング 50年間の想い出
  (Falling) 
パワー・オブ・ザ・ドッグ
  (The Power ob The Dog) 
モスル あるSWAT部隊の戦い
  (Mosul)
これは君の闘争だ
  (Espero Tua (re)Volta / Your Turn)

 

 

【試写】
天才ヴァイオリニストと消えた旋律
  (The Song of Names)(12月3日封切り)

 

【映画祭】
四つの壁
  (The Four Walls) 
復讐
  (Payback)

 

【旧作】
<神話的女優>
イブの総て
  (All About Eve) 
上海特急
  (Shanghai Express) 
ストロンボリ
  (Stromboli, Terra Di Dio) 
熱い夜の疼き
  (Clash by Night)
山羊座のもとに
  (Under Capricorn) 
ヨーロッパ一九五一年
  (Europa’51) 
大雷雨
  (Manpower) 
舞台恐怖症
  (Stage Fright) 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

①-1 モーリタニアン 黒塗りの記録
キューバに米軍基地がある事は、その中にあるグアンタナモ湾収容所がメディアで情報が流されたり、イギリスのドキュメンタリー「グアンタナモ、僕たちが見た真実」が日本でも2007年に公開されたりするまで知らなかった。2001年の9.11テロに関連する容疑者を収容する場所として開設されたのが2002年、アメリカでもなくほぼ治外法権という中で様々な虐待等が行われてきた。そこに14年間も収容されるも、最終的に起訴されることもなく釈放されたモーリタニア出身の青年が書いた原作を基に映画化された作品。彼がアメリカ政府に対して起こした裁判の弁護を引き受けたアメリカの女性弁護士を軸に描く。ジョディ・フォスターが適役。

 

①-2 ボストン市庁舎
初めの場面は女性同士の結婚式を執り行っている場面だ。その後、実に実に様々なテーマが取り上げられ、それについて議論する市民、職員、市長等の会話が続く。勿論議論総てを収めることはできないが、よくあるこんな風でしたという紹介型の画面ではなく、重要部分の発言を結構長く映している。作った側のナレーションは一切ないという、いつものフレドリック・ワイズマン監督の方法で、少し長めの4時間32分の作品となった。

 

②-1 チック チック…ブーン!
ブロードウェーミュージカル「レント」の作者ジョナサン・ラーソンが自伝的ロック・モノローグ「30/90」(1990年に30歳になる自分)を1991に書き、題名を「Boho Days」→「Tick,Tick…Boom!」としてオフ・ブロードウェーで演じた。この作品を基に、「ディア・エヴァン・ハンセン」の脚本家スティーヴン・レヴェンソンが脚本を書き、「ハミルトン」のリン=マヌエル・ミランダが監督した新作ミュージカル。共に現在ブローウェーミュージカルで活躍する二人が協力して作ったラーソンの自伝ミュージカルは、ワクワク感が溢れている。主役のラーソンはアンドリュー・ガーフィールドが演じているが、その他はブロードウェーの実力者が揃い、歌唱力の迫力が素晴らしい。ニューヨークのミュージカル舞台を、何の作品であれ見たくなってしまう。

 

②-2 アイスロード
1952年生まれだから中年というより初老のおじさんのリーアム・ニーソンが今もってアクションスターとして活躍している。渋い、ぶらない、ぶれない、そんな人物の佳作がまた登場した。危険な路を通り重要(危険)なものを制限時間内に運ぶと言えば「恐怖の報酬」が思い浮かぶが、「アイスロード」もそんな作品だ。崖ではなく氷の道、何時氷が割れてしまうかというサスペンス。この撮影(カナダで)が凄い。本当にこんな道があるのに驚き。

 

③-1 フォーリング 50年間の想い出
ヴィゴ・モーテンセンの初監督作品。製作、脚本、作曲も彼が行っている。自分の父親との関係から物語を創作したという。認知症の症状が見られるようになった一人暮らしの父親と同居しようとする息子という、普遍的な物語。更に父親の時代の人に見られる男らしさという基準が描かれ、見る価値のある作品になっている。

 

③-2 パワー・オブ・ザ・ドッグ
ニュージーランドの女性監督ジェーン・カンピオンの12年ぶりの新作。1993年の「ピアノ・レッスン」がカンヌ映画祭のパルム・ドールをはじめ世界の映画賞を受賞して世界の最前線に躍り出た監督だ。今回も硬質な画像で、1920年代のモンタナ州で牧場経営する兄弟を中心に、人間関係を追い詰めていく。

 

 

 

 

他にもおもしろい作品を映画館でどうぞ!(上映が終了しているものもあります。)


老後の資金がありません!:原作小説と同じにした題名が一番の売りかなと思われるこの作品、今一つ感のあった前半を覆し後半に至って、やっと笑うことができた。天海祐希も頑張ってはいるが、草笛光子が動き出してから俄然面白くなったのはキャリアの差か。

 

MONOS 猿と呼ばれし者たち:コロンビアの内戦は50年以上も続いたという。その戦いを下敷きに作られた映画は異様な迫力に満ちている。捕虜のアメリカ人女性科学者の監視という役目の8人の若い兵士だが、男5人女3人の中では恋愛関係の者(それを指導者に申し出るあたりが面白い)もいて安定しない。不安定な熱量を感じさせる映画。

 

きのう何食べた:よしながふみの原作漫画で先に実写のテレビドラマ化された作品が、同じメンバーで映画化されたもの。主人公たちが同性愛のドラマにしては、食がメインの風をとっていて、結構中年夫婦で見に来ていたりという客層だった。料理方法もばっちり説明。

 

グレタ ひとりぼっちの挑戦:スウェーデンのグレタ・トゥーンベリは、15歳で中学校を休み気候変動に対するストライキを始め有名になった。国連での演説や、ヨットでの大西洋横断移動の状況(かなり荒れている)、好きでやっているのではないという独白など、グレタの真実に迫るドキュメンタリー。

 

リスペクト:アレサ・フランクリンは7月号でお伝えした「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」(半世紀近く前の教会での録音を追ったドキュメンタリー)が今年公開された。「リスペクト」は彼女の半生を追ったドラマで、この教会での録音場面が最後のエピソードだ。1942年生まれの彼女には、思った以上に黒人環境の中で育ったことが大きな影を落としていることを教えられる。単純に成功に至った訳ではないことも。

 

ほんとうのピノッキオ:イタリアの児童文学の映画化。監督はカンヌ映画祭で2度グランプリを受賞しているマッテオ・ガローネ、「ゴモラ」や「ドッグマン」が日本で公開されているが、それらの作品が持つリアルさではなく、まるで紗をかけたような優雅な画面でゆっくり、幻想的に描かれる。撮影監督ニコライ・ブルーエルの功績ともいえる。

 

スウィート・シング:監督アレクサンダー・ロックウェルの作品として「イン・ザ・スープ」以来25年ぶりに日本で公開された作品。ジム・ジャームッシュなどと共に米インディーズの一人として活躍していた。自分の子供たちを使って15歳の姉と11歳の弟が、優しいけれどアル中の父など大人の世界に衝突しながら自分たちの世界を見つけていく様子を描いている。

 

ファイター 北からの挑戦者:韓国で脱北者はどんな風に思われているのかと時々思っていた。この映画を観ていると、やはりちょっと差別的なものがあるなあと感じる。主人公は脱北して一人ソウルで暮らす女性ジナ。食堂で働きながら、父を呼ぶための資金を貯めようとさらなる働き口にボクシングジムの掃除係をしていてボクシングに出会う。

 

梅切らぬバカ:監督・脚本の和島香太郎は、以前自閉症のドキュメンタリーの編集に関わった時に地域の中で孤立していた自閉症の人を見ていて、近隣住民との軋轢を含めフィクションで作品を作ろうと思ったと、共生の思いも込めてと話している。ものをはっきり言う占い師役の加賀まりこが、自閉症の息子への思いを込めて母親を好演している。

 

天才ヴァイオリニストと消えた旋律:ユダヤ人はキリスト教誕生以来、2000年近く中傷、迫害を受けてきた。その文化、生き方には口伝えで物事を記憶していく口頭伝承という伝統があり、この映画ではナチスのトレブリンカ強制収容所で犠牲となった人たちの名前を歌にして忘れずにいるというのが感動的。UK Walker(https://ukwalker.jp)もご参照ください。

 

花椒(ホアジャオ)の味:父が亡くなった時、どちらかといえば反発していた娘は、父のスマホから二人の異母妹を発見、重慶、台北に住む彼女たちに連絡し、香港での葬式に来てもらう。三人それぞれの生き方をピリッと、しかし優しく描いた香港映画。脚本・監督のヘイワード・マック、製作者のアン・ホイと女性で映画を作っている。

 

信虎:武田信玄の父親、武田信虎を描く。監督は金子修介と歴史美術研究家の宮下玄覇が共同で行っている。脚本・美術・装飾等も担当した宮下の影響か、様々な歴史書物からそのまま引用されたような台詞も多く、それが不思議にも物語に上手く溶け込み妙にリアルに感じられる。80歳で亡くなるまで、武田家の存続のために末々までを考慮し策を練った信虎。寺田農が乗り移ったように演じている。

 

 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<外国映画>

渋谷シネマヴェーラでの<神話的女優>はグレタ・ガルボ、マレーネ・ディートリッヒ、イングリッド・バーグマン、マリリン・モンローを取り上げている。見た作品、その感想は次の通り。ガルボ作品は見ていない。


マレーネ・ディートリッヒ:「上海特急」「大雷雨」「舞台恐怖症」
出会いの一瞬で男を惹きこんでいくディートリッヒの魅力を生かした作品群。ジョセフ・フォン・スタンバーグの「上海特急」が最も妖艶に見える。男の世界の「大雷雨」も魅力あり。


イングリッド・バーグマン:「ストロンボリ」「ヨーロッパ一九五一」「山羊座のもとに」
前の2作は当時夫であったロベルト・ロッセリーニの作品。ネオリアリズモの有名監督としてバーグマンを魅了したロッセリーニもこのころはスランプで、どちらもバーグマンにとっては残念な作品に終わっている。むしろロッセリーニのダメぶりが興味深い。


マリリン・モンロー:「イブの総て」「熱い夜の疼き」
2本ともモンローが主役ではない作品。主人公たちの周りで無邪気に存在する人物を可愛く演じている。

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月のつぶやき

 

山崎ハコの「気分を変えて」で始まる映画「西成ゴローの四億円」と、終わり間近に「飛・び・ま・す」が流れる「西成ゴローの四億円 死闘編」の2作品は、大坂先行上映が2022年1月29日、全国公開が2月12日と公式サイトではなっているが、何故か11月中旬の1週間有楽町のTOHOシネマズシャンテで特別上映された。なんとも不思議な先々行上映だったのだが、確かなことは監督・主演の上西雄大が山崎ハコのファンだということだろう。


●こんな市長であれば、その町に住んでいる人たちは幸福だろうなと思われる「ボストン市庁舎」に出てくるマーティン・ウォルシュ市長は、どんな案件でも市民サイドに立って話し合いに応じているように見える。ポーランド移民のルーツを持つ労働者階級出身の市長の真面目さ、熱心さには感心する。2期8年の満期期間を務めあげた彼は、2021年3月23日からアメリカ合衆国労働長官に就任している。後任市長にはアジア系の女性が当選した。

 

●ブロードウェーの愉しさと共に、厳しさも教えてくれる「チック チック・・・ブーン!」だ。ジョナサン・ラーソンがこの作品を作り上げていく過程で、その曲を2人のプロに聞いてもらい、評価してもらう場面がある。初めに発言したちょっといかつい男性はかなり厳しい評価を下す。しかし、次の人がラーソンの才能を認める発言をすると、その男性は急に発言内容を変更し、言い訳めいた言葉を口にする。あまりに対照的で笑ってしまうが、次の人がスティーヴン・ソンドハイムという天才クリエーターだと知れば・・・仕方がないか。

 

●アンディ・ラウが友情出演している「花椒の味」を製作したのはアン・ホイだった。彼女についてのドキュメンタリー映画「我が心の香港 映画監督アン・ホイ」が今公開中だ。まだ見に行けていない。調べていたら彼女は中国人の父と日本人の母の間に1947年に生まれたと知った。早く見に行きたい。

 

 

 

 

 

 

 



今月のトピックス:続き   

 

今月のトピックスは”続き”特集。Ⅰ、Ⅱは見せよう会通信の前月号の続き、Ⅲは見せよう会通信2021年1月号の続き、Ⅳは2021年8月号の続き、Ⅴは2018年8月号の続き、Ⅵは大島新監督の続きとなる。

 

 

Ⅰ 国際化?

 (見せよう会通信の前月号の続き)


東洋の魔女といえば、1964年の東京オリンピックを前に人気となり、オリンピック目指して頑張る女子バレーボールチームに名付けられた名称と思われている。しかし、オリジナルは日紡貝塚チームに付けられたものだ。(チーム名はニチボー貝塚→ユニチカ→東レアローズと変遷)
日本では長らく9人制バレーが行われていた。現在では主にママさんバレーで使われている9人制が1950年代末までは多くの大会でも行われていたのだ。大日本紡績貝塚工場に日紡代表女子バレーボールチームが作られるのが決定したのは1953年11月27日だったという。大松博文監督のもとに通称日紡貝塚と呼ばれたチームが実際に結成されたのは1954年3月15日、当然ながら9人制がメインだった。練習の成果が出始めたのは1年後の1955年、国内の3つの大会で優勝している。1958年には国内の9人制、6人制合わせて5つの大会で優勝、総てのタイトルを獲得した。国内を制覇した大松監督は海外に目を向け始める。当時、世界のほとんどの国では6人制バレーが行われていた。1958年にはチームを6人制に切り替え、1960年にブラジルで開催される第3回世界バレーボール選手権を目標にさらなる猛練習に進んでいく。残念ながらこの大会ではソビエト連邦に敗れ準優勝に終わった。
1961年には欧州遠征をおこない、そこで24連勝を達成する。その強さから、「東洋の台風」「東洋のまほうつかい」の異名で呼ばれていたという。そして1962年の世界選手権では「東洋の魔女」と呼ばれて恐れられ、宿敵ソ連にも勝ち優勝する。その勝因の大きなものは回転レシーブと変化球サーブだった。日本の団体球技が世界大会で優勝するのはこれが初めてであり、社会的にも大きなニュースとなった。
そんな時、1964年の東京五輪から女子バレーボールが正式種目として採用されることが決定される。1962年世界選手権の優勝後、選手及び大松監督は引退を表明していたが、周りの声の高まりに監督、チームは2年後のオリンピックに向けてチーム続行を決意する。この結果、東京オリンピックでは最も多くの人に観戦された決勝戦でソ連に勝ち金メダルを獲得したのだ。
ここまで、興奮しつつWikipediaのデータをもとに書いてきてしまったが、当時の盛り上がりは大きなものだった。1963年には彼女たちの猛練習ぶりを追ったドキュメンタリー「挑戦」が作られている。これを見た覚えがあるが、何処でだったのか、多分中学校の講堂ではなかったかと思うのだが、はっきりとは覚えていない。調べると33分の映画だったようだ。
その「東洋の魔女」というドキュメンタリーがフランスからやってきた。2021年に製作されたフランス人監督、フランス人製作者によるフランス映画だ。現在の彼女たちを撮ったのは山崎裕カメラマン、ドキュメンタリージャパンが製作協力している。12月11日の封切りのためまだ見ていないが、どんなものになっているか、興味のあるところ。
先月号で紹介した「ONODA一万夜を越えて」もフランス映画だった。何故フランスからこうした作品が出てくるのかはよく分からない。

 

 

 

 

Ⅱ 続き:映画祭

 (見せよう会通信の前月号の続き)


10~11月に行われた2つの映画祭、東京国際映画祭と東京フィルメックス。例年それ程参加したという感覚はなく、映画祭の全貌を掴んだと感じたことは一度もないが、多い時で東京国際映画祭で4~5本(しかも必ずしもコンペティション部門ではない)、フィルメックスで2本くらいを見たのがせいぜいなので、隅をかじっただけだから当然だ。さらに今年は出遅れてしまい、予約が取れた東京国際のコンペ部門の2本しか見ていない。
チケット発売開始日時をかなり過ぎてから予約をトライしたのは、それほど盛り上がりを感じていなかったからだが、実際に予約してみると、他に3本ほど見たいと思った作品は満席で取れなかった。東京国際は2年前までの六本木から会場を有楽町、銀座に移し、使用する映画館の座席数が減ったかなという事情はあった。2年ぶりに劇場で開催された映画祭は、思った以上に人気があったのだ。映画祭ファンは2年間待っていたのだろう。
2つの映画祭は共に作品選定者が今年交代している。昨年までフィルメックスで選定に関わっていた市山尚三さんが東京国際のプログラム・ディレクター(PD)となり、フィルメックスは新たに神谷直樹さんがPDに就任している。神谷さんは市山さんの助手として20年近くフィルメックス働いてきた人のようだ。
私自身は思ったより人気があるのだなくらいにしか感じなかったのだが、このプログラム・ディレクターの交代はコンペティション部門に集まった作品の変化に現れたらしい。朝日新聞の文化欄では「世界標準への変身 東京国際映画祭」との表題で、芸術性重視という世界標準に近づいたと評している。

 

 

 

 

 

 続き:Netflix

(見せよう会通信2021年1月号の続き)


この時期になるとNetflix作品で映画館公開される映画が何本か現れる。基本的に宣伝しないことが多く、突然映画館で上映が始まるという印象の公開方式だ。チラシやポスターもあまり目に付かない。昨年同様、チラシは裏が白紙のようであり映画館名は一切書かれていない。映画館で上映したという実績があればいいと考えられているようだ。彼等の本業は配信だから、当然と言えば当然だが、それなら配信に徹底すればいいものをという気にもなる。なんだか賞狙いで、うまく取れれば話題になるしというスケベ根性が垣間見える。年度内に公開しないと賞レースに加われないから、この時期での公開が多くなるのだろう。
先月くらいから公開(予定)されている作品は次の通り。
「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野」
「チック チック・・・ブーン!」
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
「消えない罪」

「ボクたちはみんな大人になれなかった」はNetflix映画だが、日本映画でもあり、また配給会社ビターズ・エンドが配給していることもあり、普通の映画同様にチラシもポスターも予告編も見たことがある。映画の公式サイトも他のNetflix映画とは違っている。
外国映画についてもこの方式は取れないものだろうか?
映画館は、東京では主にイオンシネマ、アップリンク、ヒューマントラストシネマが使用されている。

 

 

 

 

Ⅳ 続き:東京23区で封切り公開されない映画

(見せよう会通信2021年8月号の続き)

 

ヴィゴ・モーテンセンの監督デビュー作「フォーリング 50年間の想い出」を知ったのは、新聞に載った映画評でだった。それまで、チラシ、ポスター、予告編などを見たことはなく、この映画評が無ければ見逃すところだった。やってしまったかと調べてみると、想像通りキノシネマ配給作品で、東京では立川キノシネマのみでの上映だった。
渋いモーテンセンは好きな俳優の一人だ。何十年ぶりかに立川まで出かけた。凄い人波にも驚いたが、駅前の一定区域が空中でつながれていたのには驚いた。信号に煩わされることなく目的場所に行くことができる。ちょっと未来都市のよう。
キノシネマは木下グループの映画館で、全国に3館(札幌、立川、横浜)あり、キノシネマが配給する作品は必ずここで上映される。今回ついでに配給作品をチェックしてみると、10月以降毎月1~2本の映画が公開されていた。
10月:「ビースト」「ジョゼと虎と魚たち(韓国映画)」
11月:「フォーリング 50年間の想い出」
12月:「グロリア 永遠の青春」(ジュリアン・ムーア主演、セバスティアン・レリオ監督)
1月:「弟とアンドロイドと僕」(豊川悦司主演、阪本順治監督)
10月の2本は完全に見逃している。
来月以降も結構重要な作品が続きそうで、要注意というところ。
それにしても、東京駅~立川駅を往復すると1298円かかり、映画館のシニア料金以上の交通費が必要となる。何とか、山手線近く、或いは地下鉄で行ける範囲くらいのところにもう1館キノシネマを作るか、23区内の他の映画館でも上映をしてほしいと木下グループにお願いしたい。

 

 

 

 

Ⅴ 続き:ディズニー/Fox 

(見せよう会通信2021年8月号の続き)

 

ディズニーが20世紀フォックスを傘下に収めるようだと3年近く前にお伝えした。正式にディズニーが買収したのが、2019年3月20日、2020年1月17日には社名を20世紀スタジオに変更した。旧20世紀フォックス日本支社は無くなり、ウォルト・ディズニー・ジャパンが配給、宣伝等を行っている。
20世紀スタジオの作品では、日本の映画市場でずっと作られ続けてきた有料の映画プログラムが作られていないらしい。私自身はプログラムを買うことはしていないので知らなかったのだが、「ノマドランド」「フリーガイ」などの作品にはプログラムが作られていないという。プログラム・コレクターにとっては残念なことだろう。また、お正月作品として12月10日封切りが予定されていたスピルバーグ監督の「ウエスト・サイド・ストーリー」が突然2022年2月11日に延期されたりすると、20世紀スタジオ作品がちょっと冷遇されているかなあと感じてしまう。ディズニーはしっかりビジネスを考えている会社なので、全体を考えての事だろうが。

 

 

 

 

 

Ⅵ 続き:なぜ君は総理大臣になれないのか → 香川1区 

(大島新監督の続き)

 

立憲民主党の代表選挙が11月30日に予定されている。4人の立候補者の中に小川淳也氏がいるが、彼は2020年に公開された大島新監督の「なぜ君は総理大臣になれないのか」で取り上げられた政治家だ。岸田内閣発足後に行われた衆議院議員選挙では香川1区で自民党の平井卓也氏(初代デジタル大臣)を破って当選している。この時の選挙戦を追ったドキュメンタリー「香川1区」が大島監督の作品として12月24日に公開される。前作の続編だ。

 

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、例年通りクリスマスの12月25日にお送りします。


                         - 神谷二三夫 -


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