2022年 6月号 最近の封切り映画館back

 

夏日が増え、ところによっては真夏日という最近、
夏になる前には梅雨という雨の季節があって、
既に突入している沖縄以外はこれから鬱陶しい日々が始まる。
鬱々とした時は、そう、迷わず映画館!

 

 

 

今月の映画

 

4/26~5/25のウクライナ戦争が3か月を超えた30日間に出会った作品は42本、映画の状況はどんどん平時に近づいている印象があり、邦/洋画:19/23本、新/旧:32/10本という数字も以前のものと同じようだ。



<日本映画>

   19本(新13本+旧6本)

【新作】
ツユクサ
劇場版ラジエーションハウス 
死刑にいたる病 
シン・ウルトラマン 
流浪の月 
教育と愛国 
マイスモールランド 
バブル 
ばちらぬん 
鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー 
ハケンアニメ
大河への道 
私のはなし,部落のはなし

 

【旧作】
明日は日本晴れ
<宮本武蔵 5部作>
宮本武蔵 
宮本武蔵 般若坂の決斗 
宮本武蔵 二刀流開眼 
宮本武蔵 1乗寺の決斗 
宮本武蔵 巌流島の決斗

 

 

<外国映画>

   23本(新19本+旧4本)

【新作】
マリー・ミー
  (Marry Me) 
メイド・イン・バングラディッシュ
  (Made in Bangladesh) 
インフル病みのペトロフ家
  ( Petrov’s Flu)
ハッチング―孵化―
  (Pahanhautoja / Hatching) 
手紙と線路と小さな奇跡
  ( Miracle: Letters to The president) 
KKKをぶっとばせ
  (Death Ranch) 
アンラッキー・セックスまたはいかれたポルノ 監督(自己検閲)版
(Babardeala Cu Bucluc Say Porno Balamuc / Bad Luck Banging or Loony Porn)
フェルナンド・ボテロ 豊満な人生
  (Botero) 
オードリー・ヘプバーン
  (Audrey) 
ドクター・ストレンジ マルチ・バース・オブ・マッドネス
  (Doctor Strange in The Multiverse of Madness) 
マイ・ニューヨーク・ダイアリー
  (My Salinger Year) 
バニシング 未解決事件
  ( Vanishing) 
ローレル・キャニオン 夢のウエストコースト・ロック
  (Laurel Canyon)、
ヨナグニ 旅立ちの島
  (Yonaguni) 
ドンバス
  (Donbass) 
ワン・セカンド 永遠の24フレーム
  (一秒鐘 / One Second) 
フォーエバー・パージ
  (The Forever Purge)

 

【試写】
君を想い,バスに乗る
  (The Last Bus) 
エリザベス 女王陛下の微笑み
  (Elizabeth: A Portrait in Part(s))

【旧作】
若草の頃
  (Meet Me in St.Louis)

<アメリカ映画史上の女性先駆者たち>
強く,速く,美しい
  (Hard, Fast and Beautiful) 
人生の高度計
  (Christopher Strong) 
恐れずに
  (Never Fear)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

①-1 ドンバス
ウクライナの監督セルゲイ・ロズニツァのこの映画は2018年に作られている。しかし、見ている限り、現在のドンバス地方からの中継のように感じられ、混乱する。それほどに先のことを見通して、これ以外にあり得ないとして作られたのだろう。この映画ではノヴォロシアという言葉がよく使われている。これはドネツク州とルガンスク州を中心に親ロシア派によって結成された自称国家、ノヴォロシア人民共和国連邦の事である。プーチンはこの自称国家を承認し、侵略戦争を開始したことになる。

 

①-2 私のはなし、部落のはなし
部落の問題をここまで丁寧に、分かりやすく伝えてくれるのに感心した。しかも、変に盛り上げることはしない、その冷静さが光る。監督したのは1986年生まれの満若勇咲。映画監督原一男が指導する記録映像コースでドキュメンタリー制作を学び、在学中に「にくのひと」を制作、劇場公開が決まるも、部落解放同盟とのもめ事があり公開を断念、今回の作品が初めて映画館で公開される作品となった。製作は大島新が担当している。

 

 マイ・ニューヨーク・ダイアリー
ジョアンナ・ラコフが自身の経験を書いた「サリンジャーと過ごした日々」からの映画化。出版エージェンシーという職業自体も面白いが、主人公が担当するのが、サリンジャー宛に送られてきた読者からのレターへの返信を書くというのだから面白くないはずがない。若者を通過した誰もがひきつけられてしまう「ライ麦畑でつかまえて」の作者なんだから。

 

③ マイスモールランド
埼玉県に住むクルド人一家(父と娘2人、息子1人)を描く。主人公は高校生の長女サーリャ。彼女が幼少の頃、難民として家族とともに来日した。それ以来10年前後、彼女は17歳になった。父は難民申請を続けているが認められず、隠れて仕事をして一家を支えてきた。多くの問題を変に盛り上げることなく、日常の生活の中に描く。

 

 

 

 

 

楽しめる映画は他にも沢山!(上映が終了しているものもあります。)


メイド・イン・バングラディッシュ:かつてのメイド・イン・チャイナの後、ベトナムなどと共にバングラディッシュが世界の工場、特に繊維産業で目立っている。縫製工場でジューキミシンを動かすのは女性ばかり、その管理者は男性ばかりの職場は日本の女工哀史を思い出させる。過酷な労働条件に組合を作って戦おうとする彼女たちの物語。女性監督ルバイヤット・ホセインの作品。

 

インフル病みのペトロフ家:1969年生まれのキリル・セレブレンニコフ監督は演劇をメインに活動、映画も作るという人のようだ。日本で劇場公開されるのはこの作品が2作目。アレクセイ・サリニコフの小説の映画化。監督が原作について“シュールで多層的で複雑”と評しているが映画もそのまま当てはまる。特に始まりから30分の跳びっぷりには驚く。反政府的な姿勢が目立った監督は2017年に演劇予算の不正流用を疑われ自宅軟禁の身に。その間にこの映画の脚本を書き、軟禁終了後、撮影は密やかに主に夜に行ったとのこと。ロシアは時々こうした天才を生み出してくる。

 

ハッチング―孵化―:フィンランドからやってきたホラーは、少女が秘密裏に卵を育てることから始まる。彼女は何を育てていたのか?なんだかひんやりと怖い映画を作ったのは、この作品が長編映画デビューとなる女性監督ハンナ・ベルイホルム。

 

ツユクサ:安倍照雄のオリジナル脚本を平山秀幸が監督した作品。主役のアラフィフ独身女性を演じるのは小林聡美、彼女ならではのおかしみのある強さを上手く発揮、見る人に受け入れられやすい形で主人公の生活を見せてくれる。

 

フェルナンド・ボテロ 豊満な人生:一度見たら忘れられない豊満な人物の絵、それを描いたのがフェルナンド・ボテロという画家だと初めて知った。印象に残っても覚えていなかったのは多分好きではなかったからだろう。90歳になったボテロのドキュメンタリー映画。

 

オードリー・ヘプバーン:ヘプバーンは3回来日したとWikipediaにあった。1983、87、90年とある。ということは83年だったのだろうか、彼女が渋谷公会堂だったかNHKホールだったかの舞台に登場したのを見に行った。会社を休んで見に行ったのだが、今や遠い記憶になってしまった。彼女が唯一出演したヘアウィッグのCMの関係で、70年代の事とばかり思っていたのだ。それくらいには好きな女優だったから、この映画の初日にも駆けつけた。過不足ないドキュメンタリーと言っていいかな。

 

ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス:サム・ライミ監督と言えば、「死霊のはらわた」とか「スパイダー・マン」で有名だ。9年ぶりの新作がこの作品。異世界にもドクター・ストレンジがいて…というお話。最近のアメコミ映画の例にもれず、満腹感あり。

 

死刑にいたる病:ミステリー作家・櫛木理宇の同名小説からの映画化。監督は白石和彌。20件以上の連続殺人事件の犯人として収監されている男から大学生のもとに送られた手紙。そこには1件だけは自分が犯人ではない、調べて欲しいと書かれていた。楽しめるミステリーだったが、犯人と大学生の関係性がちょっと弱いか。

 

君を想い、バスに乗る:イギリス・グレートブリテン島の端から端に定期バスを乗り継いで移動する90歳老人のロードムービー。まるで長い人生のごとく様々な事件が起こる。
6月3日封切り。5月末までにはUK Walkerのサイトに紹介文を載せる予定です。

 

エリザベス 女王陛下の微笑み:今年96歳になったエリザベス女王のドキュメンタリー。今年は戴冠70周年にもあたり、6月2日から4日間にわたりイギリス各地でプラチナ・ジュビリーのお祝いが催されるという。ユーモアにあふれた明るいドキュメンタリー。


6月17日封切り。こちらも今月末にはサイトにアップする予定です。 https://ukwalker.jp

 

 

シン・ウルトラマン:庵野秀明のシン・ゴジラに続くシン・シリーズの第2弾。ゴジラと同じく監督は樋口真嗣、庵野は脚本・製作を担当している。既に第3弾はシン・仮面ライダーと決まっていて2023年の公開だ。シン・シリーズはかつてのヒーローものを大人の目線で見直したというか、大人の鑑賞に堪えるものへの造りかえ。

 

教育と愛国:2017年毎日放送制作のドキュメンタリー「映像’17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか」が、その年のギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した。そのディレクター・斉加尚代が追加取材をし、再構成して劇場用映画にしたのがこの作品だ。安倍政権下で教育基本法が改変されて以降、教育現場で進められている変化を記録する。

 

ローレル・キャニオン 夢のウエストコースト・ロック:1960年代半ばから70年代にかけてロサンゼルス郊外のローレル・キャニオンに多くのミュージシャンが移り住んだ。そこから生まれたザ・バーズ、ママス&パパス、CSN&Y、ジョニ・ミッチェル、ジャクソン・ブラウン、イーグルスなどに焦点を当てて描かれる音楽ドキュメンタリー。

 

ヨナグニ 旅立ちの島:二人のイタリア人監督によって作られた与那国島についてのドキュメンタリー。島の言葉“どぅなん語”が消滅しつつあることに興味を持ち来日、ついでに作ったドキュメンタリーは高校がないため中学を卒業すると島を離れる若者たちを中心に、島の生活を描く。今月のトークショー「ばちらぬん」参照。

 

ばちらぬん:与那国島出身の監督東盛あいかが制作したこの映画は、京都造形大学の卒業作品として作られた。島の様々な顔を切り撮ったドキュメンタリーは、自分が育った島を忘れない(ばちらぬん)ように作られた。今月のトークショー参照。

 

ハケンアニメ:アニメがここまで発達してきた日本であれば、こうした小説が書かれていても不思議はない。そういう方向にアンテナを張っていないので知らなかった。アニメがどんな風に作られているかがよく分かる。連続アニメで夢の監督デビューとなった若い女性主人公を中心に、彼女を支えるプロデューサー、宣伝、製作デスクや声優、そして視聴率を争う競争相手作品の監督、プロデューサー、更に原画会社迄かなり詳しく描かれる。

 

大河への道:伊能忠敬についての真実を知らなかったし、立川志の輔の落語を聞いたこともなかったので、その真実を知るだけでも面白かった。この真実を香取市経由で大河ドラマと結び付けてドラマにしたのは原作者志の輔だろうが、脚本の森下佳子、監督の中西健二、多彩な出演者など程よく上手くいって面白い映画になった。中井貴一は企画でも名がある。

 

 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<日本映画>
宮本武蔵5部作>1961~5年にかけ内田吐夢監督、中村錦之助主演による宮本武蔵が毎年1本、計5本のシリーズ作品として作られた。1961年はテレビの人気により映画興行に陰りが出始めた時期。内田吐夢はそれを阻止しようと計画したという。今回丸の内TOEIにて5作品が上映された。
5作品の中では「宮本武蔵 一乗寺の決斗」が一番おもしろいと感じた。武蔵vs吉岡道場73名の対決、しかも、たちこめた朝霧が明けてくる薄氷の張った田んぼの上を縦横無塵に動く対決なのである。その迫力たるや凄いの一言。
3作目の「宮本武蔵 二刀流開眼」以降登場する佐々木小次郎を演じたのは高倉健。これがまるで宇宙人のようで、面白かった。自信満々というか、傲慢不遜な若者。
5作を通して中村錦之助の入れ込みようも尋常ではない。

 


<外国映画>
<アメリカ映画史上の女性先駆者たち>渋谷シネマヴェーラで4/16~5/13に期間上映されたこの特集に、前号に引き続き通った。見たのはアイダ・ルピノ監督の2作(「強く、早く、美しい」「恐れずに」)とドロシー・アーズナー監督の1作(「人生の高度計」)の計3作。
アイダ・ルピノの力強い映画は相変わらず面白い。しかし、より印象的だったのは「人生の高度計」だった。1933年の作品だが、主役のキャサリン・ヘプバーンの役は記録を狙う飛行士で、妻ある国会議員と愛し合うというもの。妻が妊娠した頃、それを知った彼女も妊娠したのだが、自ら身を引くというもの。

 

 

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー 

 

5月19日 「ばちらぬん」上映後挨拶 笹木奈美(出演者)
イタリア人の二人の監督により作られた「ヨナグミ~旅立ちの島~」と組み合わせて日本の最西端・与那国島で生まれた2本の特集上映が行われている。「ばちらぬん」の上映後には監督の東盛あいかと、「ヨナグミ」監督のアヌシュ・ハムゼヒアン、ヴィットリオ・モルタロッティの対談インタビューが16分の映像にまとめられて上映されている。イタリア人の二人が2018年に与那国島を訪れた。与那国の言葉“どぅなん語”が世界で最も消滅の危機に瀕している言語の一つであることに興味を持ったためだが、ついでに映画を作ることに。島には高校がないため中学卒業と同時に島を離れていくという若者たちを中心に、言葉や伝統文化がゆっくり引き継がれていく様子を描いている。どぅなん語で「忘れない」という意味の「ばちらぬん」は東盛の京都芸術大学の卒業制作として作られた作品で、2021年ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを獲得している。与那国出身の彼女が、監督・脚本・撮影・編集・主演を務め、言葉を含め与那国の空気を描いている。爽やかな画面が続く。
今回上映後に登場したのは映画に出演している笹木さん。東盛監督と同じ大学に学んでいた。映画には多くの仲間が出演しましたという。監督以外の仲間にとって与那国島は初めて訪れることになったという。

 

 

 

 

 

 今月のつぶやき

 

●実話だったのかと驚くことは時にあるが、「手紙と線路と小さな奇跡」にも驚いた。村には他の地域とつながる道路がなく、唯一線路が通っているが駅がなく、近くの駅に行くのには、線路上を歩き、危険な鉄橋を3つも渡らなければならないというのだ。その鉄橋を渡っている時に列車が来て、姉は死んでしまうのだから。住民が自分たちで駅を作るという韓国の実話だった。

 

●若者は「ライ麦畑」には惹かれるよねと改めて思った「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」。サリンジャーに対する思いを多くの人が書いてくる。更に出版エージェンシーという会社があるのも初めて知った。作家と出版社の間を結んだり、作家の進むべき道を示したり、或いは雑事を引き受けて処理したりと大変(作家には個性の強い人がいる)だろうけど、面白そうだ。

 

●高齢の主人公が無料パスで定期バスに乗ってくる「君を想い、バスに乗る」。イギリス全土かと思ったら、それはスコットランドだけで有効だったと分かる。それでもこれだけ広域に有効な無料パスがある事はうらやましい。

 

●昨年「東京クルド」というドキュメンタリー映画が公開された。そこに描かれたと同様な状況がドラマとして作られたのが「マイスモールランド」と言えるだろう。日本には2000人ほどのクルド人が住んでいるらしい。多くはトルコからの難民としてやってきた人たち。帰国すれば命の危険がある人が多い。日本はトルコと友好関係にありトルコ国籍保有者はトルコ人としてのみ認定し、クルド人としての民族認定はしていないため、正確な数は分からないらしい。難民申請が認められる可能性は殆どなく、しかも働くことも、県を越えての移動も許されない状況にあり、生きていくためには隠れて働くしかないことになる。この映画では子供たちを助けるために、父親は1人で国に帰ることを決意する。今までにそうして子供たちが日本に居られた例があったために。

 

●与那国島の映画が2本も公開されたので驚いたのが「ヨナグニ 旅立ちの島」と「ばちらぬん」だ。どちらからも島の方言である“どぅなん語”が聞こえてくる。日本の他の島より、台湾の方に近い島。

 

●ウクライナ映画の上映会については先月号でお伝えした。それとは別に2018年に作られた「ドンバス」が公開された。これまたウクライナとロシア勢力との戦いが、現在の映像のまま(?)に映像化されているのに驚く。これほどの状況がずっと続いてきたのかと考えると、ウクライナの粘り強さも納得できる。先日の上映会で披露された2本の映画が6月に映画館で封切り上映されることになった。「アトランティス」「リフレクション」の2本だ。

 

●パージシリーズの第5作「フォーエバー・パージ」という表現で、そんなシリーズがあったことを初めて知った。前4作は見ていない。1年に1晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法化される法律「パージ」について描く、スプラッターまがいの作品だ。スプラッターにしてはそこまで激しくはない、変な表現だが品があると言っていいかもしれない。製作にはマイケル・ベイもかんでいるようだ。それにしても、できれば見たくない映画だった。

 

 

 

 

 

 



今月のトピックス:最近の封切り映画館   

 

Ⅰ 最近の封切り映画館

 

毎週映画館の上映スケジュールをチェックしている。見に行く作品を決めるためだ。以前と違って、映画館、作品によってはその上映時間が週替わりではなく、日にちで変わる場合もあり作品を決めるのにも注意が必要になっている。
その時気が付くのは、この映画館は封切館なのか名画座なのかと迷うほど、旧作の上映が封切館で行われていることだ。勿論以前からリバイバル上映という形で、ヒット作品は何年後かに再上映されることは普通にあった。しかし、最近の状況は異常と言っていいほどと感じる。特定監督特集とか、4kリマスター版とかの名目は与えられている。これも今までも使われていた方法であるが、その使用頻度が大きくアップしたと言える。
どれくらいあったのか、実はきちんと記録はしていないので、思い出せる限りで、今年になってから封切館で上映された旧作、これから上映予定の旧作を挙げていこう。


<監督特集>という形
ピエル・パオロ・パゾリーニ生誕100年記念上映(テオレマ、王女メディア)
エリック・ロメール特集上映 四季の物語
エリック・ロメール監督特集上映 六つの教訓話 デジタルリマスター版
シャンタル・アケルマン映画祭
生誕90年記念タルコフスキー・アトモスフェア
フランソワ・トリュフォーの冒険 生誕90周年


<4Kとかデジタルとか~版>という形
ジャン=リュック・ゴダール作品(勝手にしやがれ60周年4K、気狂いピエロ50周年2K)
ショーシャンクの空に 4Kデジタルリマスター版
オールドボーイ4K
男たちの挽歌 4Kリマスター版
ひまわり 50周年HDレストア版
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド 4Kリマスター版
パイナップルツアー デジタルリマスター版
宮本武蔵5部作
テアトル・クラシックスACT1 愛しのミュージカルたち

 

こうした作品が封切り館でロードショー的に公開されているのである。新作は何処に行ったという気になるのも無理はない。
こうした状況になったのは、コロナ禍による作品不足があるのではと推測する。2年前、映画の製作がストップし新作不足が予想された。その時映画館にかける作品がないのを避けるため、旧作を利用しようという方法が色々な段階で考えられたのではないか?これはあくまで私の推測だ。

 

 

 

 

 

Ⅱ 増えた映画のジャンル


コロナ禍による作品不足対策ではないかと推測していることが他にもある。ドキュメンタリーの増加である。コロナがなくてもこの傾向は見られたような気がする。映像を撮るのがより容易になったこと、フィクションを超える面白さを秘めた題材が多くあることに気づかれたことなどがその理由だ。それがコロナによって加速された感がある。
この1~2年に公開された外国映画のドキュメンタリーには少し前に製作されていたものが見られる。更に、テレビまたは配信用に作られていたものも混じっているようだ。そうしたものが掘り起こされて新作として封切されている。先月号で紹介した「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」は2012年の作品であり、製作にはHBO(アメリカのケーブルテレビ放送局)も参加していた。それでもこの作品を見ることができたのは、特に映画ファンにとっては嬉しい事だった。
増えてきたドキュメンタリーの中でも、最近は音楽関係の作品が目立つ。これにも流行があるようで、昨年はジャズ関係、ソウル関係の作品が多く見られたが、最近はウエストコースト・ロックが目に付く。今月見た作品「ローレル・キャニオン 夢のウエストコースト・ロック」の他にも「リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス」「スージーQ」「エコー・イン・ザ・キャニオン」などがある。こうした流行には配給会社によるものがあるのだろう。
他にも「スパークス・ブラザース」「ZAPPA」「a-ha THE MOVIE」が現在公開中だし、夏にかけてはローリング・ストーンズ関係の映画が公開されるようだ。
コロナ禍の影響によって、通常であれば映画館で見ることができない作品が大きなスクリーンで見ることができたと考えよう。

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、雨の季節の真っただ中だろうかの6月25日にお送りします。

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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