2022年 7月号 時代は早送り?back

 

まだ梅雨明けとはなっていないが、
昨日から始まった真夏のような気温が来週にかけて続くらしい。
梅雨の部分が残っていて湿度が高く蒸し暑い。
できればカラッとした気分になりたい時は、
そう、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

5/26~6/25の円安が進んだ31日間に出会った作品は39本、
旧作が1本もなく、新作だけで邦/洋画は19/20とほぼ同数だった。
最後に見た「ベイビー・ブローカー」は是枝監督で邦画、いやいや洋画だった。
作品がなく、仕方なく見た作品も何本か。
しかし、時にそんな中に面白い作品があるので、
油断ならない、というか、面白いというか。



<日本映画>

   19本(新19本+旧0本)

【新作】
20歳のソウル
夜を走る 
瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと 
私だけ聴こえる
生きててよかった 
辻占恋慕 
極主夫道 ザ・シネマ 
冬薔薇 
犬王 
太陽とボレロ 
東京2020オリンピックSIDE:A
チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ 
はい,泳げません 
スープとイデオロギー、
バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版 
峠 最後のサムライ
メタモルフォーゼの縁側 
PLAN75 
百年と希望

 

 

<外国映画>

   20本(新20本+旧0本)

【新作】
トップガン マーヴェリック
  (Top Gun Maverick) 
息子の面影
  (Sin Senas Particulares / Identifying Features) 
ゴーストフリート 知られざるシーフード産業の闇
  (Ghost Fleet) 
エコー・イン・ザ・キャニオン
  (Echo in The Canyon)
オフィサー・アンド・スパイ
  (J’Accuse / An Officer and A Spy) 
歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡
  (Nomad; In The Footsteps of Bruce Chatwin)
不都合な理想の夫婦
  (The Nest) 
義足のボクサー Gensan Punch
  (Gensan Punch) 
ニューオーダー
  (Nuevo Orden / New Order) 
さよなら,ベルリン またはファビアンの選択について
  (Fabian-Der Gang Vor Die Hunde
  / Fabian-Going To The Dogs) 
FLEEフリー
  (Flugt / Flee) 
ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行
  (The Story of Film: A New Generation) 
クラウディ・マウンテン
  (峰爆 / Cloudy Moutain) 
クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち
  (Le Complexe de Frankenstein
  / Creature Designers: The Frankenstein Complex)
ぼくの歌が聴こえたら
  (The Box) 
三姉妹
  ( Three Sisters) 
炎の少女チャーリー
  (Firestarter) 
ナワリヌイ
  (Navalny)
ベイビー・ブローカー
  (Broker)

 

【試写】
ボイリング・ポイント/沸騰
  (Boiling Point)(7月15日封切り)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

①-1 ベイビー・ブローカー
是枝監督作品ながら韓国映画、韓国映画なのに完全に是枝作品であることが当然とは言え素晴らしい。始まりは赤ちゃんボックスの前に置かれる赤ちゃんからだが、既に警察に見張られているのだった。この速く無駄のない展開がその後も続いていく。何とも見事な語り口。そして、再度疑似家族を描いている。

 

①-2  FLEE フリー
NYCでインタビューを受けているアミンの画面から始まる映画は、実話から作られたドキュメンタリー・アニメーションだ。監督はデンマークのヨナス・ポヘール・ラスムセン。アミンは幼いころ当局に連行された父が帰らず、家族とともにアフガニスタンから裏ルートで脱出する。その後、家族はバラバラになり…。30代半ばになった彼は研究者として成功し、今誰にも明かしていなかった彼の人生を語り始める。

 

②-1 トップガン マーヴェリック
最近これほど話題になった映画は珍しいので、既にご存知の方も多いと思われるが、36年ぶりの続編に、元のイメージを保ったまま出演するトム・クルーズが凄いというか、驚きだ。さらに、前作のイメージを取り入れて、まるでその間にある年月を感じさせない作品、同じペースに作り上げた製作陣が素晴らしい。

 

②-2 歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡
ドイツのヴェルナー・ヘルツォーク監督が作ったドキュメンタリーは、イギリスの紀行作家ブルース・チャトウィンとの会話で成り立っている。互いの作品で会話していくのだ。二人の生き方が作品に反映され、さらに会話によって先に進んでいく。ヘルツォークファンは必見。

 

③-1 犬王
室町時代に実在した能楽師・犬王を主人公に作られたアニメーション。古川日出男の原作「平家物語 犬王の巻」から野木亜紀子が脚本を書き、松本大洋がキャラクター原案を描き下ろし、大友良英がロックをベースに様々な音楽を提供し、日本画のような端正な絵でアニメを作り上げたのは湯浅政明監督。爆発するエネルギーに振り回されるのが快適。

 

③-2 さよなら,ベルリン またはファビアンの選択について
2時間58分と長い映画は、エーリヒ・ケストナーの大人用小説を原作としている。時代は1931年、ナチスが政権を取る直前、ワイマール時代の熟覧した文化の最期頃に当たる。弾けるような、しかし不安が後ろから追ってくるような時代にあって、青年はどう動いていくのか?今月のトークショー参照。

 

 

 

 

 

映画館で楽しめる映画は他にも沢山!(上映が終了しているものもあります)

 


20歳のソウル:公立高校でありながらスポーツが盛んなことで有名な市立船橋高校の卒業生の実話の映画化。吹奏楽部に所属する浅野大義君が野球部の応援のために作曲した「市船ソウル」が誕生した経緯、更に大義くんががんのため20歳で亡くなったことを基に、彼の周りの物語が描かれる。

 

ゴーストフリート 知られざるシーフード産業の闇:アメリカ映画のドキュメンタリーだが描かれるのはタイに数万人いると言われる海の奴隷と彼らを助けようと活動する人々だ。人身売買業者に騙されて漁船に乗せられ何年間も働かされる人たち。タイからの水産物輸入で世界第二位の日本も無関係ではなく、キャットフードの約半分はタイ産だという

 

私だけ聴こえる:今年のアカデミー作品賞「CODA コーダ あいのうた」で使われたCODAはChildren of Deaf Adultsの頭文字だ。アメリカではかなり以前から使われているようだ。この映画はアメリカの聾家族の子供たちに焦点を当て作られた日本製のドキュメンタリー。こういう世界があったことに驚く。

 

オフィサー・アンド・スパイ:歴史の授業で習ったドレフュス事件は名前を覚えたいてもその内容を理解してはいなかった。ロマン・ポランスキー監督は色々な事件に出会って流れたり、流されたりしていたから、ドレフュスには同情したんだろうなと感じながら見ていた。

 

冬薔薇:ふゆばらと書いてふゆそうびと読むそうだ。冬にも咲く薔薇がある。阪本順治監督の新作は、若者が主人公だ。兄が早くに死んで以降、両親から声をかけられるのが少なくなった主人公。服飾の専門学校に席を置くも、まじめに勉強できず町のチンピラと付き合っている。その彼が自分の意思で歩みだそうとするまでを描くのだが、結構辛い結末。

 

不都合な理想の夫婦:アメリカで10年働き、結婚し、家族とイギリスに帰ってきた主人公はかつて働いていた会社で再度働き始めるのだが…。イギリスではロンドン郊外に貴族の館的な広大な屋敷に住むのだが…。ジュード・ロウが怪しい男を熱演。

 

義足のボクサー:義足のためにボクサーとしてのプロライセンスを得ることができず、フィリピンに渡りプロライセンスを獲得する主人公。実話からの映画化だ。同じジムのフィリピン人ボクサーと共に日本での試合に返ってくるのだが…。フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督作品。フィリピン=日本の合作。

 

ニューオーダー:メキシコのミッシェル・フランコ監督の新作は、貧富の格差から引き起こされる混沌を描く。裕福な家の娘の結婚式に格差に抗議する暴徒が侵入してくる。どんどんエスカレートしていく暴力の行きつく先は?

 

チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ:アイヌ文化を見せてくれる作品。1986年に75年ぶりに行われたキタキツネの霊送りを記録した映像が使われている。自分が育てたキタキツネを歌や踊りと共に神の国に送る「イオマンテ」を見ることができる。後世に伝えるために35年前の映像を使って2021年に完成させたと北村皆雄監督は語っている。

 

スープとイデオロギー:ヤン・ヨンヒ監督の新作は、デビュー作「ディア・ピョンヤン」でも描かれた家族の物語。と言っても父親は亡くなり、母親と彼女、彼女の夫の話。母親が子供のころ済州島で起こった4・3事件に遭遇していたことが明かされる。

 

ぼくの歌が聴こえたら:K-POPのBTSが世界を席巻している。まったく興味がないので、この映画の主演がEXOのチャンヨル初主演作と言われても、ぴんと来ない。時間が空いたから見に行ったのが正しい。しかし、この映画で歌われる曲がいずれも魅力に富み、工夫された映像で楽しめたのは間違いない。音楽的才能はあるが、人前で歌うことができない主人公は冷蔵庫の箱の中で歌うことになる。英語題名はThe Boxだ。

 

三姉妹:韓国映画では人物が実に様々な顔をしている。それは多分顔面の造り以上に、その人の持つ個性が俳優の枠を超えて出てきてしまう瞬間があるというような、リアルさがあるためだ。3人姉妹のそれぞれ違う生き方という、ありがちな筋立てで、思ったほど対比させていないなあと思いながら見ていたら、最後にはきっちり締めてきた。

 

PLAN75:早川千絵監督の長編デビュー作は今年のカンヌ映画祭「ある視点」部門に正式出品、カメラ・ドール 特別表彰を受けている。75歳以上になると自らの生死を選べるというプラン75という制度、それに関連した人々のドラマ。倍賞千恵子が78歳の女性を演じている。

 

ナワリヌイ:ナワリヌイと言えば、ロシア或いはプーチンから毒殺されかけた人。このドキュメンタリーは、その一部始終の真相が彼自身の手で謎が解き明かされるのを描く。驚きの事柄が満載である。CNNが製作にかんでいる。

 

ボイリング・ポイント/沸騰:ロンドンの一流レストランの厨房を舞台とし90分間カメラ回しっぱなしのワンショット映画。個人的悩みを抱えつつ、オーナーシェフとしての仕事をやり遂げようとするそのテンパリ方が、どんどん迫ってくる快作。7月15日封切り。
UK Walkerには7月上旬にはアップする予定です。

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

6月1日 「私だけ聴こえる」上映後トーク 松井至(監督・企画・撮影)
松井監督は“社会の周縁に生きる人々の知られざる物語”をテーマに映像作品を作ってきた物静かな人。今回の作品は、映画にも登場するアメリカと日本を行き来する手話通訳士のアシュリーとの出会いから生まれたという。アメリカの聾家族の子供たちが集まってくる年一回開催されるコーダキャンプを中心に、彼らの心の中に迫ろうとする。
日本ではどうなんだろうかと思っていると、今回の上映回には聾の方も結構来ていらして、その一人が手話での発言をされた。何を話されたか細かいところは忘れてしまったが、発言できることの嬉しさにあふれていたのが強く印象に残った。

 

 

6月10日 「さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について」上映後トーク
マライ・メントラインさん(2008年より日本在住のドイツ人、翻訳家、TVプロデューサー)
マライさんによれば、この映画はドイツ人にワイマール時代の最期頃を直截に思い出させるという。映画の時代より2年後の1933年にはナチスが政権を握るのだが、そこに行く前の時代、つまり、その時代の選択がナチスの時代につながっているのだ。この時代、ふわふわとした浮き立つ感じがあり、開放的で、一面退廃的な面もあり、それがナチスの進出を許してしまったという思いがある。後に考えて、ドイツ人には苦い時代だったようだ。
主人公の青年ファビアンの生き方も今一つはっきりしない。恋人と別れ、親友も亡くなってしまう。そうした不安定さが今現在の社会にも通じる面があり、監督はそのことを時に画面で見せてくれるという。当時にはなく現在にしかないものが見られるという。最初に出てくる現在の地下鉄とその駅は分かりやすいが、歩道の敷石のところにもそうしたものがあるという。
映画には当時のニュース映画が時々使われている。そのサイズに合わせてこの映画は昔の普通サイズで撮影されている。

 

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人 

 

☆ヴァル・キルマー
大ヒットしている36年ぶりの続編「トップガン マーヴェリック」で今や学校長になったアイスマンを演じたのは、前作ではマーヴェリックのライバルであったアイスマンを演じていたヴァル・キルマーだ。
トム・クルーズ同様「トップガン」でスターになったともいえるキルマーは、その後「ドアーズ」(1991年)「バットマンフォーエヴァー」(1995年)で主演し、大スターになっていた。最近見ていないと思っていたら、2015年に咽頭がんになっていたという。手術の結果、以前のようには声を出せない状態になったが、2021年8月声のクローンを作成するAI技術により、再び自身の声で会話が出来るようになったという。「トップガン マーヴェリック」の中で、その声を聴くことができる。

 

 

 

 

 

 今月のつぶやき

 

●チアリーディングの一糸乱れぬ激しい踊りで始まり度肝を抜く「20歳のソウル」。市立船橋高校の応援団の練習である。凄い人数で軽快に踊る。これらは実際の高校生たちが出ているはず。

 

●ロサンゼルス郊外のローレル・キャニオンの映画というか、そこに多くの歌手が住んでウエストコーストサウンドが生まれたという2本目の映画「エコー・イン・ザ・キャニオン」では、案内役兼歌手として登場するのはジェイコブ・ディラン。ボブ・ディランの息子である。顔を見れば息子と分かる、勿論名前からも。

 

●聾家族の中で一人だけ聴こえる主人公と言えば「CODA コーダあいのうた」を思い出すが、そのドキュメンタリー版と言える「私だけが聴こえる」を見ると、コーダの子供たちが、自分も聾になりたいと思うこと、更に他の人に理解されない苦しさを抱えていることに驚く。

 

●いい曲が多いなあと感心した「ぼくの歌が聴こえたら」だが、それもそのはず、次のような曲が使われていた。コールドプレイ「A Sky Full of Stars」、ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」、マライア・キャリー「Without You」、ファレル・ウィリアムス「Happy」、ルイ・アームストロング「What a Wonderful World」チェット・ベイカー「My Funny Valentine」

 

●「はい、泳げません」は泳げない人が泳ぎを習う映画だが、翌日に見た「さよなら,ベルリン またはファビアンの選択について」ではファビアンが泳げないことが最後に分かる。上映後のトークショーで、ナチス時代に標語として“泳げますか?”があったと語られたように思う。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:時代は早送り?   

 

Ⅰ 時代は早送り?

 

新書部門で売り上げNo.1になっていた「映画を早送りで見る人たち」を読んでみた。内容には驚くことが多かった。考えさせられる点も多かった。
私自身はDVDや配信で映画を見ることがないので、Netflixに1.5倍速で見る機能ができていたとはじめに書かれていたことに驚いた。配信だけではなく、DVDやBlu-rayにも数種類の倍速機能があるという。こうした機能は利用者からの要望によるものだろう。倍速で見るのは若い人に多いようだが、中高齢者にも倍速にする人はいるようだ。若い人たちは友達との会話についていくために見るべき作品が多くなり、時間がなく倍速で見ることが多いようだ。そうした機能がある作品はタムパ(タイムパフォーマンス)がいいというらしい。さらに、若い人は一つのことに入れ込んでいくオタクに憧れていて、その理由は他の人にない自分だけの特徴だと言えるからだという。かつてオタクは否定的な捉え方をされていたことを思うと時代は変わったと感慨深い。オタクになるため多くの作品を見る必要があり、そのためにはタムパのいい倍速機能を活用し、見たという実績を積むというのである。かつてのオタクは、自分の好きなものを微に入り際に渡って観ることによって、他の人が気づかない細かい点に注目するという人達だった。好きだから入れ込んでいくのだ。オタクという概念が随分変わっているようだ。手軽にオタクになろうとしているようだ。そんなことはできないはずなのに。

最近上映時間の長い映画が多くなったと以前にからこの通信でお伝えしている。長くなる要素の一つが、作品をBlu-rayや配信で見る人が増え、繰り返し見る人たちを想定して論理的矛盾がないように、説明する映画が増えたことではないか。この新書ではすべてを言葉で説明する作品が増えていると書かれている。倍速で見る人たちが、映像で語られる物語を読み取ることができず、言葉を求めるからだという。そんなことまでして映画を鑑賞する必要はあるのだろうか?何でも分かりやすさを求めることが本当にいいのかという反省もなく、分からないというクレームを怖がるテレビが多いことがこうした結果に結びつく。

1960~70年代は情報がどんどん増え始めた時代だった。新しい情報には極力接していたのだが、ある時気付いた、総ての情報を見ることはできないと。当たり前ですよね、神様じゃないんだから。そこで接する情報の範囲を限定したのである。こんな風に構えずとも、自分が好きな情報は自然に限定されてくる。無理することはないと悟った。SNSが始まった頃、とある事情で参加したグループでは情報が爆発してすぐ離れることに。

新書にははじめに結末を読んでしまって、見てしまった後、はじめから読み、見始めるという人達も紹介されている。安心して向き合える、更に結末に関連する伏線などがよく分かるというのである。理解できる部分もあるが、それではドキドキ感を味わえないと思うし、基本的に邪道だろう。何があっても不思議はない実人生に向き合う勇気もなくなるのではないか?驚きがない世界は、感性を鈍らせる。

 

 

 

 

Ⅱ 河村光庸さん


映画製作者の河村光庸さんが6月11日に亡くなった。享年72歳。私より1歳下になる。現在の日本映画界において貴重な人だった。
2008年に映画配給会社スターサンズを設立、それ以前にも一部映画に関わっていたとはいえ、基軸は出版に置いていた。スターサンズではヤン・イクチェン監督の韓国映画「息もできない」等を配給、2011年には初めてのプロデュース作品、ヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」を製作している。その後、「あゝ、荒野」「愛しのアイリーン」を製作、2019年には「新聞記者」「宮本から君へ」「i-新聞記者 ドキュメント-」を、2020年には「MOTHER マザー」「泣く子はいねぇが」、2021年には「ヤクザと家族」「茜色に焼かれる」「パンケーキを毒見する」「空白」「人と仕事」を作ってきた。
社会的テーマ、政治的な題材も変な忖度することなく製作、そうした題材に閉鎖的な日本映画界では貴重な存在になっていた。本当に残念だ。

 

 

 

 

 

Ⅲ テレビドラマの映画化


「極主夫道 ザ・シネマ」と「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」、今月2本のテレビドラマからの映画が公開された。
テレビドラマを殆ど見ない私だからいけないのか、その映画化作品はえてして楽しめない。今月の2本も楽しめなかった。その一つの原因は、それらの映画がいつもテレビドラマを見ている人たちに向けて作られているからだ。当然と言えば当然の話ではある。しかし、登場人物の人間関係の説明もなく、しかしそこに寄りかかった物語進行だったりすると、ついていくのに結構疲れてしまう。
2作品とも、興行成績的にはある程度成功しているので製作をしているテレビ局にとってはこの作り方で大丈夫だと思っているのだろう。しかし、テレビドラマを知らない者からすると、同じ作り方であればテレビの特番としてやってくれと言いたくなる。更にこうした内向き姿勢の映画は、日本の映画界にとって良い事なのかどうか?新しい風が吹いてこない。

 

 

 

 

 

 外国の映像作品


コロナ禍、映画の作品不足のためドキュメンタリー、しかも海外作品が増えたことは以前にお伝えした。今月も次の4本が公開された。


「ゴーストフリート 知られざるシーフード産業の闇」

「エコー・イン・ザ・キャニオン」

「クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち」

「ナワリヌイ」


ドキュメンタリーの目的の一つ、特定のテーマについて情報を集め、掘り下げて伝えるという点で見る価値がある作品ばかり。その点で見ていて面白い。5月号でお伝えした「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」もそんな作品の一つだ。
しかしこれらの作品の作られ方はいかにもテレビ的という感じもする。こうした作品はテレビ用に、或いは配信用に結構作られているのではないかと想像する。
どんな作られ方にせよ、こうした作品の存在を認識させてくれたのは、コロナによる良い影響の一つかもしれない。

 

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、ひょっとして真夏日が続いているかもの7月25日にお送りします。

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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