2022年 8月号back

 

戻り梅雨(のようなもの)の後ふたたび暑い日が。
7月下旬ですから当然かも。
いつの間にか当然という状態がやってきた時、
驚きながらも心落ち着けてください。
そう、映画館でのように!

 

 

 

今月の映画

 

6/26~7/25の旧統一教会が再び脚光を浴びた30日間に出会った作品は44本、
邦/洋画は15/29,新/旧作は39/5となりました。
外国映画の新作に入れている<ヴェルナー・ヘルツォーク レトロスペクティブ 極地への旅>はヘルツォーク監督のドキュメンタリー映画で、1時間未満の中編が多いため、岩波ホールでの上映組み合わせ作品を1本と数えています。



<日本映画>

   15本(新10本+旧5本)

【新作】
神は見返りを求める 
東京2020オリンピックSIDE B 
シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~ 
鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成 
破戒 
こちらあみ子 
キングダム2 遥かなる大地へ 
TELL ME Hideと見た風景 
島守の塔 
こどもかいぎ

 

【旧作】
<東宝の90年 モダンと革新の映画史>
クレージー黄金作戦 
無法松の一生 
華麗なる一族 
エレキの若大将 
日本沈没

 

 

<外国映画>

   29本(新29本+旧0本)

【新作】
ザ・ロストシティ
  (The Lost City) 
アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場
  (Tuntematon Sotilas / The Unknown Soldier) 
イントロダクション
  (Introduction) 
あなたの顔の前で
  ( In Front of Your Face) 
リコリス・ピザ
  (Licorice Pizza) 
バス・ライトイヤー
  (Lightyear) 
マーベラス
  (The Protégé) 
エルヴィス
  (Elvis) 
ブラック・フォン
  (The Black phone) 
わたしは最悪。
  (Verdens Verste Mennske
 / The Worst Person in The World) 
母に捧げる僕たちのアリア
  (Mes Freres et Moi / My Brothers and I) 
マルケータ・ラザロヴァー
  (Marketa Lazarova / Marketa Lazarova) 
神々の山頂
  (Le Sommet des Dieux
 / The Summit of The Gods) 
アルピニスト
  (The Alpinist) 
ソー:ラブ&サンダー
  (Thor: Love and Thunder) 
Xエックス
  (X)
ルッツ 海に生きる
  (Luzzu)
モガディッシュ 脱出までの14日間
  ( Escape From Mogadishu) 
ヘイ!ティーチャーズ!
  ( Hey! Teachers!)
WANDAワンダ
  (Wanda) 
キャメラを止めるな
  (Coupez! / Final Cut) 
グレイマン
  (The Gray Man) 
バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
  (Super-Heros Malgre Lui / Superwho?) 
ミニオンズ フィーバー
  (Minions: The Rise of Gru) 
戦争と女の顔
  ( Beanpole) 
Blue Island 憂鬱之島
  (憂鬱之島/ Blue Island) 
炎のデスポリス
  (Cop Shop)

<ヴェルナー・ヘルツォーク レトロスペクティブ 極地への旅>
ウォダベ 太陽の牧夫たち
  (Wodaabe-Die Hirten der Sonne / Hrdsmen of The Sun)(49分)
+彫刻家シュタイナーの大いなる陶酔
  (Die Grobe des Bildschnitzers Steiner / The Great Ecstasy of Woodcarver Steiner)(45分) 
生の証明
  (Lebenszeichen / Signs of Life)(90分) 
闇と沈黙の国
  (And des schweigens und Der Dunkelheit / Land of Silence and Darkness)(85分)
+スフリエール

  (La Soufriere / La Soufriere)(30分)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

①-1 神々の山頂
原作は夢枕獏の小説を谷口ジローが漫画にしたもの。この漫画はフランスでも発行され、それが今回のフランス製アニメ映画として結実した。エベレスト登山場面がほとんどの時間を占めるが、新橋の飲み屋での場面等もあり、勿論主要人物も日本人のアニメを、谷口の絵のままにアニメにしようと思うほど、フランスの製作陣はこの原作・漫画に惚れ込んだということだ。完成した作品も素晴らしい。

 

①-2 モガディッシュ 脱出までの14日間
映画の時代は1991年、韓国は国連加入を目指し、賛成国を得るためにアフリカとの外交に力を入れていた。ソマリアには北朝鮮に大使館開設では先を越されたが、大使は遅れを挽回すべく政府要人に接触しようとしているのだが…。その頃ソマリアの内戦が激化、韓国も、北朝鮮も脱出せざるを得なくなる。総ての通信が使えず、電気、水道等もダメになる中、どのように脱出するのか。全く知らなかったこの実話の映画化。韓国では誰もが知っていて、この映画は昨年、韓国で自国映画として最大のヒット作となったという。後半のアクションも凄い。おススメです。

 

②-1 マーベラス
主人公は子供の頃ベトナム戦争で殺されそうになった時、黒人男性に助けられロンドンへと脱出した。30年ほどたった現在、彼女はその黒人男性と同じプロの殺し屋になっていた。久しぶりにスタイリッシュな殺し屋映画がやってきた。主演はマギーQ、美貌とアクションの動きが立派。サミュエル・ジャクソン、マイケル・キートンもいい味。監督は「007ゴールデンアイ」(ピアーズ・ブロスアン)、「007カジノ・ロワイヤル」(ダニエル・クレイグ)を撮ったマーティン・キャンベル。流石のアクション!

 

②-2  キングダム2 遥かなる大地へ
2時間14分の上映時間のほとんどが戦いの場面だ。それでも退屈しないのは、そのスケールの大きさとアクションの切れ・スピードと言えるだろう。かなりの製作費をかけているらしい。

 

シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~
名古屋の駅裏にある映画館シネマスコーレはちょっと特異な映画館。何しろ映画監督若松孝二が1983年に創立した映画館だ。それ以来51席のミニシアターを運営してきた木全支配人を中心にしたドキュメンタリーを製作したのは名古屋テレビ。面白いです。今月のトークショー参照。

 

 

 

 

他にも映画館で楽しめる映画は沢山あります!(上映が終了しているものもあります。)


神は見返りを求める:日常生活に潜む悪や善を描く事の多い吉田恵輔監督(前作「空白」)の新作。今回の主人公は、ユーチューバーの女性と彼女に協力した男性の物語。さらに二人の間にあって、どちらともつかない発言をする男性の存在など、怖い人間模様が描かれる。

 

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場:当時のソ連と長い国境を接するフィンランドは、1939~40年にソ連がフィンランドに侵攻して領土を拡大した冬戦争の後、1941~44年にかけてソ連と継続戦争を戦った。映画は継続戦争に出兵したフィンランド兵士の闘いを描く180分の戦争映画だ。

 

あなたの顔の前で:韓国のホン・サンス監督の新作は例によって登場人物たちの会話でストーリーが語られる。アメリカで長く暮らしていた元女優の主人公が突然帰国し、妹や出演依頼をする監督と会って話をする1日を描く。

 

リコリス・ピザ:ポール・トーマス・アンダーソン監督の長編第9作目となる「リコリス・ピザ」は、1970年代ハリウッド近郊のフェルナンド・バレーでの男子高校生と25歳の女性の恋を描く。世界三大映画祭(カンヌ、ヴェネチア、ベルリン)の監督賞を30代で受賞した天才監督は現在52歳。まだまだ若く、今まで様々な題材を取り上げてきているが、今回の作品が一番若い人たちを描いている。

 

わたしは最悪。:ノルウェーのヨアキム・トリア監督の新作はアラサー女性の恋愛を描く。そのリアルさが世界中で賞賛された。人生は必ずしも最高状態で進む訳ではない。特に恋愛関係においては。喜びと悲しみが訪れる。

 

母に捧げる僕たちのアリア:フランスの新人監督ヨアン・マンカの長編第一作。南仏の海沿いの町の公営団地に住む昏睡状態の母と兄弟4人の家族の物語。町名は特定されず、ひょっとしてアフリカかと思うほど国籍不明の出だしから、彼らの生活の不安定さが正直に描かれる。母が好きなオペラのアリアをカセットで聞かせるのは14歳の末弟、勿論意識が戻るのを願ってだ。オペラとのつながりが彼に新しい出会いの場を与えている。

 

マルケータ・ラザロヴァー:1967年に作られた2時間46分の白黒映画が、“チェコ映画史上最高傑作、55年の時を経て日本初劇場公開”と銘打って公開された。13世紀半ばのボヘミア公国の少女マルケータの物語。衣装や武器などを当時の素材・方法で作成、極寒の山奥で生活しながら548日間のロケーション撮影を行ったとある。ハッとする映像が時に飛び出すが、そこまで(史上最高)言うかという気もする。

 

破戒:島崎藤村の「破戒」が60年ぶりに3度目の映画化がされた。部落問題はかつてほど騒がれなくなっているが、無くなった訳ではない。地域的に問題のところもある。更に差別という意味ではLGBTQ的な問題に通じるものもある。

 

キャメラを止めるな:2018年日本の「カメ止め」は大ヒットした。アイディアの秀逸さが評判になり話題に。それをフランスの映画人がリメイクしたのが今回の「キャメ止め」である。ほぼ「カメ止め」通りの「キャメ止め」は、しかし、始まりは随分と入り難いと感じる。しかし、後半に入ると突然開けてきて面白くなる。

 

グレイマン:マーク・グリーニーの小説「暗殺者グレイマン」の映画化。製作はNetflix。刑務所に服役していた時CIAにスカウトされエージェントになった“グレイマン”はある事件を契機にCIAから追われる身に。ストーリーはちょっと古さを感じさせるが、監督のルッソ兄弟によってスーパーマンのように強いヒーローに変身した。

 

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー:フランスはハリウッドのアメコミ映画なんか馬鹿にしているイメージがあるが、実は結構憧れている?そんな気持ちから作られたのか、バットマンのパロディのバッドマンを主人公にしたこの作品。結構小さいところで笑わせるところも奥ゆかしい。期待しないで観て欲しい。

 

ミニオンズ フィーバー:今や人気のミニオンズ、みんなが仕える最悪のボスはグルー。彼が少年であった1970年代を舞台にミニオンズとグルーの関係を描くミニオンズ青春変?さあ%#$*&(ミニオンズ語)で笑って!

 

戦争と女の顔:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」は日本では漫画でも描かれ話題になっているが、ロシアの若い(31歳)監督カンテミール・バラーゴフはこの原作の証言集を原案に脚本を書き、長編第2作として完成させた。

 

Blue Island 憂鬱之島:1997年中国に返還された香港、50年間は1国2制度を維持するとの言葉はあったが、最近は香港の中国化が激しく進んでいる。1973年に中国から泳いで香港に渡った兄妹から2019年の香港まで、ドキュメンタリーとフィクションを駆使して自由を守ろうとする人々を描く。

 

炎のデスポリス:これはちょっとした拾い物。ネバダ州のガンクリーク警察署を舞台に様々な悪人と、これまた様々な警官、そして新人女性警官が繰り広げるバトル・ロイヤル。がんばれヴァレリーと叫びたいジョー・カーナハン監督作品。

 

島守の塔:2021年4月号で紹介したドキュメンタリー「生きろ 島田叡(あきら)—戦中最後の沖縄県知事」で描かれた島田知事が萩原聖人によって演じられたフィクション映画がやってきた。沖縄戦を住民の立場から描く。

 

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

7月3日 K’sシネマ「シネマスコーレを解剖する。~コロナなんかぶっ飛ばせ~」上映後トーク シネマスコーレ支配人・木全純治の司会による3人の監督(入江悠、松本卓也、菅原竜太)とのトークショー
入江監督がデビュー作「サイタマのラッパー」を公開する時10日前から映画館の事務所に泊まり込み自作の宣伝に動き回ったとか。松本監督は、A級映画が好きな木全支配人、C級映画が好きな坪井副支配人の間で自分はB級とか。この映画の監督を務めた菅原監督は、名古屋テレビの社員で、取材に入る前は少し恐いというイメージのあったシネマスコーレだったが、インディ映画の砦と知って印象が変わったとの発言があった。
入江監督から2008年に社長が若松監督から木全支配人に変わった訳は?という鋭い質問が。これに対する答えは次の通り。この頃映画館の経営が徐々に苦しくなり、負債も増えていた。毎月の経費をチェックすると、その中で大きなものが社長に対する支払だったので、自分が社長となることでと恐る恐る社長に申し出ると、案外あっさりOKとなった。若松監督はこのころ新作の評判も良く、経済的にも問題がなかったのが良かったらしい。

 

 

7月15日、17日、18日 岩波ホール「ヴェルナー・ヘルツォーク レトロスペクティブ 極地への旅」 上映後トークショー プログラムアドバイザーの渋谷哲也など
この上映回ではヘルツォーク監督のドキュメンタリーが6本上映された。用事があって観に行けなかったのは「ガッシャ―ブルーム 輝ける山」で、有名な登山家ラインホルト・メスナーとハンス・カンマーランダー(この人は知らないが)がヒマラヤのガッシャ―ブルームⅠ、Ⅱ峰に登るところを撮ったもの。ヘルツォークのドキュメンタリーでは特異な人物が取り上げられるが、これもその1本と言えそうだ。


3日間の上映後には、渋谷さんが司会で、7月15日は詩人・明治大学教授の菅啓次郎さんと、17日は映画評論家の柳下毅一郎さんと、18日は渋谷さんのみで話をされた。
中で印象に残る発言は、ヘルツォークはドキュメンタリーの他にフィクションも作っているが、ドキュメンタリーがまるでフィクションのようであり、フィクションはまるでドキュメンタリーのように作られているというもの。

 

 

7月23日 シネスイッチ「こどもかいぎ」上映後トークショー 水野敬也(「夢をかなえるゾウ」等著者)X 豪田トモ(この映画の監督)
なんだか互いによいしょが多くて、印象に残らない話だった。

 

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人 

 

☆ロバート・パトリック
スタイリッシュにプロの殺し屋の世界を描く「マーベラス」、主人公アンナの故郷ベトナムでオートバイ軍団を率いるビリー・ボーイを演じているのは、「ターミネーター2」で警官姿のアンドロイドT-1000を演じていたロバート・パトリックだ。
一度見たら忘れられないちょっとステンレス系の冷たさ・無表情を秘めた俳優は、その後も時々顔を見せている。今回の登場は結構いい役、温かみのある役だった。

 

 

 

 

 

 今月のつぶやき

 

●父親のフィリップ・シーモア・ホフマンはポール・トーマス・アンダーソン監督作品の常連だったが、その息子のクーパー・ホフマンが恋する高校生を演じるのが「リコリス・ピザ」だ。ちょっとふっくら感のある白い肌の男の子は、言われれば父親を思い出させる。

 

●南仏のビーチリゾートの近くだなと途中から分かるのは「母に捧げる僕たちのアリア」だ。長男は裏取引を仕事とし、次男はシーズンにやってくるドイツとかからの有閑マダム相手で金を稼ぎ、三男はただただ暴力的、末弟の四男ヌールはオペラのアリアを自然に覚えたことから新しい世界に。リアルな貧しさの中に希望が灯る。

 

●製作に7年の歳月を要したというフランス製アニメ「神々の山頂」。谷口ジローはフランスを2度訪れ、製作に協力してきたという。映画の公式サイト映画『神々の山嶺』公式サイト (longride.jp)の予告編のところに、2014年に撮られた谷口ジローのメッセージ動画が掲載されている。谷口自身は完成映画を観ることなく2017年にこの世を去ってしまった。

 

●カンヌ映画祭で上映された「キャメラを止めるな」。その原題は「Coupez!」だが、もともとは「Z」だった。しかし、Zはウクライナ戦争でロシアが使ったマーク。カンヌでの上映直前にそのことに気づき、カットの意味のCoupezに変えたという。映画を観ていると時々Zが顔を出す。

 

●「戦争は女の顔をしていない」の原作を読み始めたばかりで見た「戦争と女の顔」。映画はかつて戦友であった2人の女性兵士が描かれている。驚いたのは、ラスト近くで彼女たちが前線では男性兵士たちの世話係だった的な発言が出てきたこと。慰安婦的なニュアンスまで感じたのは私の勘違いか?銃を持って戦うイメージがあったソ連女性兵士、狙撃手などで活躍したイメージだったので、ちょっと驚いた。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:永遠の若大将   

 

Ⅰ 永遠の若大将

 

1961~81年にかけて18作品が製作された若大将シリーズは加山雄三が主演した東宝の人気シリーズの一つだ。


現在国立映画アーカイブ(旧フィルムセンター)で開催されている特集<東宝の90年 モダンと革新の映画史>の1本として初めて若大将シリーズの第6作目「エレキの若大将」を見た。特集上映のチラシには若大将シリーズの最高傑作とあったので、今まで1本も見たことのない若大将を見ることにしたのだ。


確かにこの映画は楽しい、見ていて楽しくなる映画だった。若大将シリーズを最多の6本監督している岩内克己監督が初めて手掛けた作品だ。この作品が評価され最多登板となったのだろう。作られたのは1965年、当時高校生だった私は、エレキがいかにブームであったかを知っている。映画には寺内タケシも出ていて、物語の中で加山とバンドを組んでその演奏を見せている。


加山雄三は本名を池端直亮(いけはたなおあき)、共に俳優の上原謙と小桜葉子の長男として1937年に生まれている。母の高祖父は岩倉具視という名家の出身だ。上原謙は「エレキの若大将」で加山の父親役を演じていた。調べるとこの前に作られた4作の若大将にも出演しているので、計5作で親子共演をしていたことになる。


1960年に東宝に入社し、「男対男」で同年デビューしている。2作目の「独立愚連隊西へ」で初主演をしているところから、如何に期待されていたかが分かる。デビューから5年経つ「エレキの若大将」を見ていると加山雄三のスター性に目を見張る。今これだけの魅力を持ったスターがいるのかどうかと考えてしまう。1965年に作られているから28歳ころの作品になる。


加山雄三にはもう一つの名前がある、弾厚作だ。1961年には若大将シリーズの第一作「大学の若大将」が作られているが、その中で「夜の太陽」を歌い東芝音楽工業からシングルレコードとして発売されている。つまり歌手としてデビューしている。東宝に入社した頃、一次渡辺プロにも在籍していたらしい。
いずれにしろ日本におけるシンガーソングライターの草分け的存在であり、ソングライターとしてのペンネームは弾厚作だ。尊敬していた團伊玖磨と山田耕筰を足して2で割った「だんこうさく」をペンネームに、その後多くの名曲を生み出していくことになる。実は映画俳優としての加山雄三は1970年代前半でほぼ終わっている。若大将シリーが1981年まで作られたと書いたが、1981年の最終作「帰ってきた若大将」の前の第17作「若大将対青大将」は1971年に作られている。


対して音楽はその後もずっと続くことになる。実は今回“永遠の若大将”としたのは、加山雄三が12月年内をもってコンサート活動に終止符を打つということで、7月18日の朝日新聞朝刊に全3面広告“永遠の若大将ありがとう!”が掲載されていたからだ。


勿論「エレキの若大将」を見てそのスター性に改めて感心したことも大きな契機ではあった。85歳になった若大将、今まで多くの愉しみを与えてくれた加山雄三に感謝!!

 

 

 

 

 

 

Ⅱ CNC


6月14日、映画監督の是枝裕和、西川美和、諏訪敦彦、深田晃司らが記者会見を行った。日本映画界の労働環境改善、映画製作への支援のための新たな団体「日本版CNC設立を求める会」の設立を目指すという発表を行った。


コロナ感染が始まった2020年、映画業界も大きな影響を受け、映画館も、映画製作現場もともに窮地に陥った。ミニシアターに関しては映画ファンによるクラウドファンディングが行われ、各劇場には義援金が送られた。しかし、製作現場に対する救済策は何も行われず、職を失う人も多かった。コロナはこうした状況を表に出したのだが、こうした危機がなかったとしても、もともと映画業界全体に救済すべき深刻な状況が存在しているので改善したいというのが今回の記者会見の要旨だった。その要点は次の通り。


1.労働条件
経済産業省の調査によると、映画製作に携わる人の75%はフリーランスで、その6割以上が年収300万円未満。半数以上の人が契約書をもらっていず、平均睡眠時間は4~6時間という人も半数を超す。この「長時間労働」「低収入」という日本の状況に比べると、フランスでは1日の撮影時間は8時間、昼休みは1時間と決まっているという。更に芸能業界全体に対するアンケートでは、ハラスメントを受けたとの回答が4割を超え、映画製作現場におけるジェンダー不平等の実態も目立っている。
多様化しているという現在の日本映画界は、スタッフの犠牲の上に成り立っている。持続的に映画が作れるようにしなければならない。


2.持続可能な映画製作
2-1 フランスのCNC(国立映画映像センター)
二次大戦後、文化の復興を目的に設立、現在は450名以上が働く機関で、映画制作支援、脚本、海外展開まで幅広く支援をしている。小さな映画館支援もしている。財源は映画館に観客が払うチケット料金の10%強があてられる。時代に合わせて放送・ビデオ・配信にも徴収範囲を広げている。


2-2 韓国のKOFIC(韓国映画振興委員会)
韓国では映画製作に公的資金が投入されている。KOFICの財源は国債などの国家予算が62%、興行収入などが38%となっている。資金は企画、脚本、製作、流通、人材育成などに分配されている。


3. 「日本版CNC設立を求める会」が掲げる4つの柱
「教育支援」、「労働環境保全」、「制作支援」、「流通支援」

日本では文化的産業に対する資金援助が多くは行われていないのではないか?持続的な文化活動が可能になるような仕組み作りも遅れているように感じる。若い人たちの犠牲の上に一時的な繁栄はあったとしても、それでは持続的な活動にはならない。

 

 

 

 

 

Ⅲ わが映画人生


日本映画監督協会という組織がある。1936年に創設され、1943年に一旦解散、1949年に再結成で現在に至る。この教会が創立50年を機に後輩監督が先輩監督にインタビューし、その映画人生を語ってもらうという「わが映画人生」というインタビュー集が作られてきた。その数2020年2月末までに173編が製作されたという。


このインタビュー集、後半はデータファイルで作成されたが、前半の全体の7割はビデオテープで作られていた。それをデジタルデータファイルに変換するためのクラウドファンディングが、国立美術館のクラウドファンディング第3弾として2021年12月~2022年3月で行われ、500万円の目標に対し544万2千円で終了している。


5月24日に一定額以上の寄付者に、完成したデータファイルによる3編の試写会がデジタルファイル化を行った国立映画アーカイブで行われ参加してきた。
上映されたのは次の3篇。「インタビューされる側Xする側」
「黒澤明X大島渚」、「堀川弘通X浅尾政行」、「谷口千吉X岡本喜八」
いずれも面白かったが、内容が充実していたのは黒澤X大島、面白かったのは谷口X岡本というところ。


こういう面白いインタビュー集がある事を知らなかった。今後データファイル化されたものは、図書館等に送られるという。

日本監督協会の歴代理事長は、村田実、溝口建二、小津安二郎、五所平之助、大島渚、深作欣二、山田洋次、崔洋一とそうそうたる名前が並ぶ。もっとも長く18年務めた崔監督は、今年体調不良のために引退し、今年から本木克英監督に変わった。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、できれば真夏日も、コロナBA5も沈静化していてほしい8月25日にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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