2022年 11月号 東京の映画祭back

 

急に寒くなってきた昨日、今日、
自然の時間はいつの間にか進む。
季節に関係なく、心地良さを求めて、
いつの間にか映画館にいる。

 

 

 

今月の映画

 

9/26~10/25の円安が急激に進んだ30日間に出会った作品は42本、
邦/洋画は17/25,新/旧は37/5となり、
いつもより日本映画の新作が少し多いという状況。



<日本映画>

   17本(新15本+旧2本)

【新作】
AKAI 
犬も食わねどチャーリーは笑う 
アイ・アム まきもと 
原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち 
四畳半タイムマシンブルース 
七人の秘書 THE MOVIE 
マイ・ブロークン・マリコ 
ボーダレス アイランド
千夜,一夜
それがいる森 
木樵 
もっと超越した所へ。 
耳をすませば 
向田理髪店 
42-50 火光

 

【旧作】
<東宝の90年 モダンと革新の映画史(2)>
あこがれ 
俺たちの荒野

 

<外国映画>

   25本(新22本+旧3本)

【新作】
アザー・ミュージック
  (Other Music) 
バビ・ヤール
  ( Babi Yar, Context) 
ミーティング・ビートルズ・イ・インド
  (Meeting The Beatles In India) 
渇きと偽り
  (The Dry) 
ドライビング・バニー
  (The Justice of Bunny King) 
響け!情熱のムリガンダム
  (Sarvam Thaala Mayam / Madras Beats) 
LAMBラム
  (Lamb) 
暴力をめぐる対話
  (Un Pays Qui Se Tient Sage) 
バッドガイズ
  (The Bad Guys) 
ソングバード
  (Songbird) 
ザ・コントラクター
  (The Contractor) 
愛する人に伝える言葉
  (De Son Vivant / Peaceful) 
1950 鋼の第7中隊
  (長津湖 / The Battle at The Lake Changjin) 
メイクアップ・アーティスト:ケヴィン・オークイン・ストーリー
  (Larger Than Life; The Kevin Aucoin Story) 
アメリカから来た少女
  (美國女孩 / American Girl) 
七人樂隊
  (七人樂隊 / Septet: The Story of Hong Kong) 
声/姿なき犯罪者
  ( On The Line) 
アフター・ヤン
  (After Yang) 
グッド・ナース
  (The Good Nurse) 
ピッグ
  (Pig)

 

【試写】
ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ
  (The Electrical Life of Louis Wain)(12月1日公開) 
サイレント・ナイト
  (Silent Night)(11月18日公開)
(2作品ともUK Walkerにて紹介済です。
URL: https://ukwalker.jp

 

【旧作】
<二十一世紀のジョン・フォード PartⅡ>
逃亡者
  (The Fugitive) 
香も高きケンタッキー
  (Kentucky Pride) 
ドクター・ブル

  (Doctor Bull)

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

今月の上位3本はいずれもドキュメンタリーとなってしまった。私がドキュメンタリー好きというのもあるが、できのいいドラマも結構多かったのに、ドラマらしい訴える力が今一つ弱いと感じてしまった。見ている分にはそれなりに楽しめるのだが。

 

 原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち
3.11という災害・人災がありながら今もって原発を続けるのは信じられない。今や決して安い発電方法とはならないにもかかわらず、この貧乏国家で続ける意味は何だろうか?映画は大飯原原発の停止を命じた樋口裁判長が、退官後も反原発運動を続ける姿を追ったドキュメンタリーだが、原発の危険性も分かりやすく教えてくれる。裁判長の言葉の中に“裁判長は文科系出身者ばかりで、何故危険か科学的に分からない人が多い。”というのがあり、妙に納得した。今月のトークショー参照。

 

②-1 アザー・ミュージック
こんなレコード店がニューヨークにあったのか。好きな人たちが好きなレコードを売るために作ったレコード店。そこには好きな音楽についての情報を教えてくれる店員がいて、音楽の世界を広げてくれた。そんなOther Musicという、2016年に閉店したレコード店についてのドキュメンタリー。

 

-2 バビ・ヤール
ウクライナの映画監督セルゲイ・ロズニツァがアーカイブ映像を駆使して、1941年9月に起こったキーウ北西部のバビ・ヤール渓谷での3万3771名のユダヤ人虐殺のドキュメンタリーを作った。1941年6月にナチス・ドイツ軍がソ連に侵攻、ウクライナ各地に傀儡政権を作りながら9月19日にはキーウを占領する。そして、9月29、30日の2日間に虐殺は遂行された。

 

③-1 アメリカから来た少女
台湾の女性監督ロアン・フォンイーの長編デビュー作。この映画で描かれるのは彼女の体験をもとにしているという。母の病気治療のため、5年ぶりにアメリカから帰ってきた13歳の少女の、台湾に馴染めず苦しむ姿を繊細に描いている。32歳になる監督は、当時の自身の感情を思い出しながら映像化している。それにしても学校での体罰にはちょっと驚いた。

 

-2 42-50 火光
深川栄洋と言えば、私には昔の職人監督のように映る。現在46歳にしては本数が多い。しかも結構きちん(?)と作られた作品が多い。彼が原点回帰として始めたreturn to mY selF(YFはよしひろふかがわのイニシャル?)プロジェクトの自主映画2作目。この作品は結構自身のことを描いているようだ。妻役の女優宮澤美保は深川の奥さんだ。しかもここにあるリアルさは、今までの彼の作品とは違う。題名「42-50 かぎろい」の42-50は主人公夫婦の42歳と50歳から来ていると思われる。これは深川夫婦とは違うが。

 

 

 

 

他にも沢山あります、映画館で楽しめる映画!(上映が終了しているものもあります。)

 

渇きと偽り:オーストラリから生まれた同名のミステリー小説からの映画化。ハリウッドで成功したオーストラリア出身の俳優エリック・バナが原作に惚れ込み、製作・主演した作品。干ばつによる乾いた大地での事件を乾いたタッチで描いている。オーストラリアでの大ヒットにより、現在続編が製作中という。

 

アイ・アム まきもと:2015年に日本でも公開されたウンベルト・パゾリーニ監督作「おみおくりの作法」(イギリス・イタリア合作)を原作として、舞台を日本に移してリメイクされた作品。主人公をアスペルガー症候群にしたのが成功している。

 

LAMBラム:アイスランドからやってきた作品は不思議な、いや不気味な物語がアイスランドの山を背景に静かに語られる。題名の通りにまるで羊が主役であるように、羊たちの演技が凄い。監督はアイスランド生まれのヴァルディミール・ヨハンソン、42歳で監督としてのデビューとなった。それまでにハリウッド作品等の美術、特殊効果、技術部門を担当、その後サラエヴォ科学技術大学で映画製作を学んだという。主役のノオミ・ラパス(スウェーデン生まれ、アイスランド育ち)が製作総指揮も兼ねている。

 

暴力をめぐる対話:黄色いベスト運動はトラック運転手の燃料価格高騰に対する抗議運動として、3~4年前に日本のニュースで報道された。その運動が発展し社会的不平等に対する抗議となり、死傷者が出る武力鎮圧に発展していたとは。この映画はいかにもフランスらしく、色々な立場の人が対話しながら暴力の原因と結果を探求するのである。

 

四畳半タイムマシンブルース:森見登美彦原作、上田誠原案・脚本のもとに、夏目慎吾監督により作られたアニメは、時空を超えたてんやわんやが痛快に描かれるもの。久しぶりに大人の鑑賞に堪えるアニメで、映画館では大きな笑いが起こっていた。

 

バッドガイズ:こちらはハリウッド製の大人向け動物アニメ。ハリウッド製大人用動物アニメと言えば、先月号で紹介した「DCがんばれスーパーペット」に比べれば、こちらは結構快適な出来。「シュレック」のドリームワークスのアニメ、キャラクター造形も良。

 

マイ・ブロークン・マリコ:平庫ワカの同名漫画からの映画化。たった一人の友人の遺骨を略奪、彼女の名前にちなんだ“まりがおか海岸”までの二人旅。ハードボイルドな主人公の映画をテンポよく、感情を込めて作ったのはタナダユキ監督。永野芽郁もそれに応える。

 

ボーダレス アイランド:日本・台湾の合作として作られたこの映画、主人公の台北に住む女性が父親からの絵ハガキにあった沖縄の島を訪ねるというお話。その島・みらく島は旧盆の3日間、死者が戻ってくるという境界線の島だった。監督は沖縄出身の岸本司。

 

ザ・コントラクター:クリス・パインが元特殊部隊員役を演じるこの映画、ちょっと懐かしい味がするアクション映画になっている。痛めた膝のために使った治療薬のためヤク中と判断されて除隊、民間軍事会社で雇われ、任務遂行中に事件が…。監督はスウェーデン人のタリク・サレ。

 

千夜、一夜:田中裕子主演の新作は、帰らない夫を30年待つ女の物語。北の離島の港町。そこにやってくるもう一人の女(尾野真千子)の夫も疾走して2年。それぞれ違う二人の状況が描かれる。監督はNHKをはじめテレビのドキュメンタリーを多く手がけ、高く評価された久保田直。劇映画として2014年の「家路」以来2作目となる。

 

木樵:飛騨の山で山と生きるきこりの仕事と生活を追ったドキュメンタリー。高山市のきこりを続ける兄弟を中心に1年間の姿を追ったのは岐阜県下呂市出身の宮崎政記監督。美しい山の風景に、この山を守っていく彼らの仕事のありがたみを教えられる。

 

もっと超越した所へ。:自身の舞台用脚本を映画用に書き直したのは根本宗子。劇作家、演出家、脚本家、女優として活躍する33歳。映画の監督は山岸聖太。ダメ男ばかりを掴んでしまった女性たちが男達を追い出すまでを軽快に描く。それにしても2回りして相手がかわっても追い出すということは、男はみなダメ男ばかりということ?

 

耳をすませば:元は1989年に連載された柊あおいの少女漫画、1995年にジブリがアニメ化、27年後の今年実写映画が作られた。オリジナルの中学生時代も含めた上で、むしろ10年後の二人の物語に焦点を当てている。清野菜名と松坂桃李を主人公に、誰にも受け入れられやすい映画にしたのは平川雄一朗監督。

 

向田理髪店:奥田英朗の同名小説からの映画化。脚本・監督は森岡利行。物語の舞台は小説の北海道・苫沢町から福岡の筑沢町(いずれも架空の町)という寂れた炭鉱町に変更になっている。物語内容から暖かい方がよりほんわかムードが出せると考えたのだろうか?高橋克実の初主演作は寂れていく田舎町の雰囲気が出ていて楽しめた。

 

七人樂隊:香港はどんどん中国に侵略されて無くなってしまうのではと心配だ。香港映画はどうなってしまうのかというのも心配だ。そんな時、香港の七人の監督がオムニバス映画を作ってくれた。中ではサモ・ハン監督の「稽古」が圧倒的に面白かった。

 

/姿なき犯罪者:韓国からの新作は振り込め詐欺を題材としている。その手口が詳しく描かれている。この映画のサイトによれば、韓国の被害額は2018年4040億ウォン、2019年6398億ウォン、2020年7000億ウォンと増加傾向にあるようだ。7000億ウォンは日本円で約700億円、2020年の日本での被害は278億円なので、韓国は随分多い。韓国でNo.1大ヒットと言うのもうなずける。結構手の込んだ、組織的犯罪で参考になる。

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<日本映画>
<東宝の90年 モダンと革新の映画史(2)>
あこがれ:1966年の東宝作品。内藤洋子の主演作と記憶されているが、原案が木下恵介、脚色が山田太一ということで、しっかりしたドラマが展開する。戦後の貧乏や孤児院と言った設定があの時代を思い出させる。内藤洋子が芯のある女の子を演じている。

 

<外国映画>
二十一世紀のジョン・フォード Part
ドクター・ブル:主演者はウィル・ロジャース、彼はフォード作品の3作品に主演している。先月見た「プリースト判事」と同じように、その泰然としたユーモアあふれる人物を演じている。ウィル・ロジャースはカウボーイ、コメディアン、ユーモア作家、社会評論家、ボードビル芸人および俳優とWikipediaに定義されている。以前ブロードウェーでミュージカル「ウィル・ロジャース・フォーリーズ」を楽しんだが、それはボードビル芸人としての彼を表していたのだと改めて分かった。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー 

 

10月2日 イメージフォーラム「響け!情熱のムリダンガム」上映後 田代良徳(力士俳優)X 稲垣紀子(テンドラル代表社員CEO)
このインド映画「響け!情熱のムリダンガム」は東京荒川区の南インド料理店「なんどり」の映画部門・テンドラルによって配給された。この映画を配給するために作られた会社だ。
元相撲取りで、現在は力士俳優と称している田代良徳氏は上着の下にラルフ・ローレンのマドラスチェックのシャツを着て現れた。この映画に出演している訳ではないが、2019年に製作されたインド映画「SUMO」(現在日本未公開)に出演している。「SUMO」で撮影監督をしていたラージーヴ・メーナンが、「響け!情熱のムリダンガム」の監督をしている。田代氏によると「SUMO」の時、監督のS・P・ホシミンよりも撮影監督のメーナンの方が力を持っている印象だったという。招かれて行ったメーナンの自宅は豪邸だったとか。また、レストランに招待してくれたが、そのレストランはHokkaido(北海道)という店で刺身や、親子丼、ラーメンなどを満喫したという。
ここ30年くらい、CMを見るのが嫌でNHK以外のチャンネルをあまり見ていないので気が付いていないのだが、田代良徳は多くのCMに出ているようだ。中にはインドの大スター、サルマン・カーンと共演のCMもあったらしい。テレビのバラエティ番組にも結構出ている。
映画では中国映画「唐人街探偵 東京MISSION」、ハリウッド映画「ジョン・ウィック4」に出演している。

 

10月5日 ポレポレ東中野「原発をとめた裁判長」上映後 監督・脚本の小原浩靖の挨拶・トークショー(小原監督は2年前の年間の日本映画1位に選んだ「日本人の忘れ物」の監督でした。)
悪天候の中御来場いただきありがとうございます。今回、宣伝費用等のためにクランドファンディングを行い、目標の300万を上回ることができました。ご協力頂いた方にはお礼申し上げます。関西電力大飯原原発の運転停止命令の判決を出した樋口英明・福井地裁元裁判長は、原発の所在地の耐震基準がガル(地震の加速度を表す単位)の数値で基準を満たしていないという理論から運転停止命令の判決を出している。退官された後も、その危険性を知らせるために講演等を行われている。
地震国日本での原発が如何に危険であるか、これからも訴えていきたい。続編を作る可能性もあると話しされた。

 

 

 

 

 今月のつぶやき

 

●まるでホームムービーみたいだなと思った「AKAI」。まあ、赤井英和について教えてもらったのでいいのだが、本当のホームムービーが多く使われているなと思ったら、監督が赤井英五郎という彼の長男だった。

●ブラック企業が描かれているなと思った「マイ・ブロークン・マリコ」。日本社会でブラック企業が表に出て話題になるという状況はいつごろからだったろう。ブラック企業はそうみられないように注意するか、あるいはそれが表に出てこないように社会が注意していたのではなかったか。実際には昔から存在したのだろうが、社会が変わって、そうしたものが表に出ても構わないという状況になってきたと言える。

●えっ、これは親子?と思ったのが「愛する人に伝える言葉」。カトリーヌ・ドヌーブとブノワ・マジメルだが、実年齢は確かに親子のそれだが、彼女が華やかすぎるので恋人同士かと思ってしまった。

●朝鮮戦争で中国とアメリカが直接戦っているところを映画化した「1950 鋼の第7中隊」。中国では有名な戦いだろうけど、この映画を見ると今の米中対立に結びついて、ちょっと穏やかではない。勿論中国がアメリカに勝利するのである。

 

 

 

 



今月のトピックス:東京の映画祭  

 

Ⅰ 東京の映画祭

 

10月から11月にかけて2つの映画祭が東京で行われる。第35回東京国際映画祭と第23回東京フィルメックスだ。2つの映画祭が同じ時期に開催されるのは3年目となる。昨年からは場所もほぼ同じとなっている。
それぞれの映画祭のプログラム等は次の通り。

 

第35回東京国際映画祭  URL: 第35回東京国際映画祭(2022) (tiff-jp.net)
10月24(月)~11月2日(水)
有楽町・日比谷:TOHOシネマズ日比谷Screen12、Screen13,TOHOシネマズシャンテScreen1、Screen2、ヒューマントラストシネマ有楽町Theater1、丸の内TOEI Screen1、丸の内ピカデリーTheater2,角川シネマ有楽町、有楽町よみうりホール
銀座:シネスイッチ銀座
コンペティション:合作を含め日本人監督による3本を始め、全15本。(ワールドプレミア8本、アジアンプレミア6本、インターナショナルプレミア1本)
アジアの未来:長編3本目までのアジア新鋭監督の新作でのコンペティション。日本映画1本を含む10本。(全作品ワールドプレミア)
ガラ・セレクション:日本公開前の最新作プレミア上映。日本映画4本を含む14本。
ワールド・フォーカス:世界の国際映画祭での注目作、日本公開未定作の上映。ラテンビート映画祭とのコラボによる4本、デビュー30周年となる台湾のツァイ・ミンリャン監督の3本+短編5本を含む15本+5短編。
Nippon Cinema Now:この1年の日本映画の中で海外で上映されるべき作品。今年3月に急逝した青山真治監督の2本を含む11本。
ジャパニーズ・アニメーション:次のように3部門で上映、計7本+ウルトラセブン12本。
アニメーションで世界を作る:3本、アニメと東京:4本、「ウルトラセブン」55周年記念上映:12本を「対話」「特撮」「ヒーロー」のテーマに分けて上映。
ユース:TIFFティーンズで3本、TIFFチルドレンで4本、合計7本 他に映画教室あり。

 

第23回東京フィルメックス URL: Home - 第23回「東京フィルメックス」 (filmex.jp)
10月29日(土)~11月6日(日)
有楽町朝日ホール
コンペティション:2本の日本映画を含む9本
特別招待作品;世界の映画祭で受賞した作品など4本
メイド・イン・ジャパン:世界に向けて日本映画の新作2本
ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集:台湾のミンリャン監督作品3本
(東京国際映画祭との共催)

 

興味のある方お出かけください。どちらの映画祭も映画祭名の横に掲載したURLからサイトに入り予約できます。ただし、人気作は既に満員になっていますのでご注意ください。
私は唯一見たかった「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(東京国際映画祭ガラ・セレクションで上映)が取れず、今年は映画祭には行かないかもしれません。この作品は来年1月13日からロードショー公開されます。

 

 

 

 

Ⅱ 刈谷日劇


愛知県刈谷市にあるこの映画館、刈谷にある高校に通っていた私が学校の許可(許可制でした)を得てよく通っていた映画館だ(当時とは場所、建物は変わっているが)。10月11日ある映画館でチラシをあさっていると「よく晴れた日のこと」というチラシが目についた。40分という中編なので、普通の映画館での上映は結構難しい。裏面を見ると、全国順次公開と書かれた後に、9/17~30池袋シネマ・ロサ(東京)、10/8~10シアターセブン(大阪)、10/28~11/3刈谷日劇(愛知)とあったので驚いた。東京、大阪では既に上映が終了している。残るは刈谷日劇のみという状況ではないか。これには改めて驚いた。

 

 

 

 

Ⅲ 映画人の本


コロナ禍以降、本屋さんに行くのが減ってしまった。その間Webで本屋さんに注文する癖がついてしまい、下の3冊もそうして手にした本だ。入手するのが少し遅れている。

 

1.女になれない職業  浜野佐知著
副題に「いかにして300本越えの映画を監督・制作したか。」とある。
浜野佐知は日本の女性映画監督、1948年生まれで私と同学年である。
この本を読んで初めて彼女の名前を知ったのは、300本のほとんどはピンク映画だったからだ。なぜピンク映画だったのか?映画監督になりたいと思っていた彼女にとって、それしか方法がなかったからだ。当時、監督になる普通の方法は、東宝、松竹などの映画会社に入社して目指すというものだったが、募集は男性だけだった。そこでピンク映画に向かうのだが、そここそ女優以外は男の場所であり、様々な苦労が…。
男性のために作られていたピンク映画界で、女性のためのピンク映画を目指すとか、ピンク映画監督では映画監督として認識されないところから、一般映画を目指すなど、波乱万丈の人生が綴られている。

 

2.インディペンデントの栄光  堀越謙三著 高崎俊夫構成
副題は「ユーロスペースから世界へ」とある。堀越謙三はユーロスペースの代表で、1982年に開館している。この本は高崎の聞き取りで構成されている。
堀越さんはその後映画界にいろいろな面で貢献している。その一つが1997年にアテネ・フランセ文化センターと共同で映画美学校を設立したこと。2005年に私は映画美学校の映画上映専門家養成講座で勉強させてもらった。
実はまだ85ページまでしか読んでいないのだが、1945年生まれの堀越さんがどのような子ども時代を過ごし、更に1980年代のミニシアター時代を切り開いたかが分かりワクワクしてしまった。当時の映画状況を少しでも知っている人が読めば、面白いこと間違いなし。

 

3.恐るべき子供  リュック・ベッソン著
副題は「『グラン・ブルー』までの物語」となっている。
556ページの厚さで、まだ読んでいない。スキューバ・ダイビングのインストラクターだった両親のもとに生まれたベッソンの、海の映像化を成し遂げるまでをつづったメモワール。早く読みたい。

 

 

 

 

 Netflix


この時期になるとNetflix作品が映画館で上映されることが多い。目的が映画館で上映されることで、各種の賞に選ばれる可能性があり、それがNetflix自体の宣伝になるということであれば、これは辞めていただきたい。今月で言えば「グッド・ナース」だ。
元々配信作品と映画は同じ土俵で比べるべきではないと思う。上映方があまりに違う。だから、賞狙いだけで映画館に出すのはやめて欲しい。テレビドラマのエミー賞と同じように、配信作品用の賞を作ればいいのに。
出すならもっと真剣に宣伝もしてほしい。突然現れる作品に驚くことが多い。暫くは注意しないと。
さらに、Netflix作品はロードショーの後に2番館や名画座に出ることはあるのだろうか?映画に対する愛情は名画座等で育てられることが多いのだ。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、師走を前にそわそわ感ありの11月25日にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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