2023年 5月号 舞台挨拶有料編back

 

なんだかはっきりしない天気が続くこのごろ、
曇りなのか、雨なのか、あるいは晴なのか。
迷うことがあった時、
大事なのは心を落ち着けること。
それには、そう、映画館で!

 

 

 

今月の映画

 

3/26~4/25の突然の雨でビニール傘を2度も買った31日間に出会った作品は47本、邦/洋画は18/29、新/旧は37/10となりました。
日本映画も頑張っているが、今一つの作品が多い。



<日本映画>

   18本(新12本+旧6本)

【新作】
Revolution+1 
うつろいの時をまとう 
雑魚どもよ,大志を抱け! 
映画 ネメシス 黄金螺旋の謎 
トオイと正人 
GOLDFISH 
映画「仁義なき幕末‐龍馬死闘編‐」 
仕掛人・藤枝梅安2 
クモとサルの家族 
サイド・バイ・サイド 
世界の終わりから 
ヴィレッジ


【旧作】
<香川京子 畢生の純情派>
明日はどっちだ 
嵐の中の男


<没後10年 映画監督 大島渚>
天草四郎時貞 
御法度
少年 
月見草

 

<外国映画>

   29本(新25本+旧4本)

【新作】
シング・フォー・ミー,ライル
  (Lyle,Lyle,Crocodile) 
ハンサン 龍の出現
  (Hansan: Rising Dragon) 
マッシブ・タレント
  (The Unbearable Weight of Massive Talent) 
屋根の上のバイオリン弾き物語
  (Fiddlers Journey to The Big Screen) 
アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者
  (The Gospel According to Andre) 
ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトロ-たちの誇り
  (Dungeons & Dragons: Honor Among Thieves) 
トリとロキタ
  (Tori et Lokita / Tori and Lokita) 
エスター ファースト・キル
  (Orphan: First Kill) 
ノック 終末の訪問者
  (Knock at The Cabin) 
パリタクシー
  (Une Belle Course / Driving Madeleine) 
ザ・ホエール
  (The Whale) 
ジョージア,白い橋のカフェで逢いましょう
  (What Do We See When We Look at The Sky?) 
AIR/エア
  (Air) 
ノートルダム 炎の大聖堂
  (Notre-Dame Brule / Notre-Dame on Fire) 
最高の花嫁ファイナル
  (Qu'est-ce qu'on a tous fait au Bon Dieu ?

  / Serial (Bad) Wedding 3) 、 
聖地には蜘蛛が巣を張る
  (Holy Spider) 
マリウポリ 7日間の記録
  (Mariupolis 2) 
ダークグラス
  (Occhiali Neri / Dark Glasses) 
見知らぬ隣人
  ( Next Door) 
幻滅
  (Illusions Perdues / Lost Illusions) 
オオカミ狩り
  ( Project Wolf Hunting) 
午前4時にパリの夜は明ける
  (Les Passagers de La Nuit

  / The Passengers of The Night)

若き仕立て屋の恋

  (愛神手 / The Hand) 
独裁者たちのとき
  (Skazka / Fairytale) 
レッド・ロケット
  (Red Rocket)

 

【旧作】
<宿命の女 ルイズ・ブルックス>
パンドラの箱
  (Die Buchse der Pandora / The Box of Pandora) 
愛の勝利
  (Dark Victory)

 

<二十一世紀のジョン・フォードPartⅢ>
ウィリーが凱旋するとき
  (When Willie Comes Marching Home) 
虎鮫島脱出
  (The Prisoner of Shark Island)

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

① ザ・ホエール
昔からテレビのニュースなどで体重300㎏近い人たちを見ることがあったが、そんな体重になった中年男性が主人公の映画。演じたブレンダン・フレイザーは今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞した。さらにメイクアップ&ヘアスタイリング賞も受賞している。監督は「ブラックスワン」等のダーレン・アロノフスキー。流石の出来。

 

②-1 トリとロキタ
ベルギーのダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール、リュック)の新作はいつにもましてシンプル。音楽もなく、物語が淡々と進む。トリとロキタは出身地も違うし、年も姉弟という割には離れているが、互いに離れられない家族だと感じている。ベルギー社会の中で孤独な黒人姉弟に寄り添いながらも厳しい現実を描く。

 

②-2 マリウポリ 7日間の記録
ロシアのウクライナ侵攻から1年2か月が過ぎた。戦争はまだ終わっていない。監督のマンタス・クヴェダラヴィチウス(リトアニア出身)は2016年にウクライナ東部ドンバス地方マリウポリの日常生活を追ったドキュメンタリー「Mariupolis」(日本未公開)を発表していて、その続編を作るため侵攻間もない2022年3月に現地入りし撮影を開始していた。数日後の3月30日、親ロシア分離派勢力に拘束され殺害された。助監督でフィアンセだった女性によって撮影済みフィルムは確保され、作品は完成された。

 

 聖地には蜘蛛が巣を張る
イランの聖地マシュハドでの16人の娼婦連続殺人事件に着想を得て作られた作品。監督は北欧を拠点に活躍するイラン人のアリ・アッバシ、今回もイランに居ては描きえない題材を取り上げている。

楽しめる映画は他にも沢山ありますよ!(上映が終了しているものもあります。)


ハンサン 龍の出現:豊臣秀吉が朝鮮に侵攻した際の海戦を韓国で映画化した作品。言葉では知っていても映像として見るのは初めて。調べてみると同じ題材が2014年に韓国で映画化されその年の最大ヒット作となっている。この作品「バトル・オーシャン 海上決戦」(未見)は、日本では2019年に特集上映でやっと上映されたらしい。10年に満たずで再度映画化されるとは韓国では余程人気があるのだろう。今回も素晴らしい描写で朝鮮の勝利を見せてくれる。

 

屋根の上のバイオリン弾き物語:日本では森繁久彌が長く演じ続けた「屋根の上のバイオリン弾き」。ブロードウェーの舞台版開始の7年後1971年に映画版が公開されている。この映画は、その映画化についてのドキュメンタリー。映画を監督したノーマン・ジュイソンへのインタビューを中心に、作品の秘密を探る。ミュージカルファンは必見。

 

アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者:1948年生まれのアンドレ・レオン・タリーは私と同じ団塊世代。2022年逝去。「ヴォーグ」に長くかかわった人らしい。南部生まれの黒人でありながら、ファッション誌のエディターになった彼についてのドキュメンタリー。

 

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトロ-たちの誇り:ゲームから作られた映画と知れば、いかにもそんな感じの物語だと思う。こだわりなく、動き回る展開で、楽しめる。

 

トオイと正人:1968年生まれの写真家小林紀晴が初めて監督したのは、写真家・瀬戸正人の自伝エッセイ「トオイと正人」を映画化したドキュメンタリー。瀬戸の父・武治は昭和17年に出征、中国・ベトナムを経てラオスで終戦、その後帰国せずタイの小さな村でベトナム人として暮らし、結婚、息子トオイを得る。1953年生まれのトオイは8歳の時家族と共に日本にやってきて正人となった。

 

GOLDFISH:監督したのはパンクバンドのギタリスト藤沼伸一(1959年生)。物語は、80年代に人気を誇ったパンクバンド・ガンズのメンバーのその後を中心に描く。始まりは伴奏ギタリストとし働く主人公の映像だ。メンバーで一人だけ音楽を細々と続けている。そこからバンド再結成に向けて走り出す。

 

パリタクシー:パリ郊外南東にあるブリ=シュル=マルヌの自宅から、北西にあるクルブヴォワの養老院に92歳の女性を運ぶパリタクシー。彼女の希望でパリの様々な場所に立ち寄りながら明かされる彼女とドライバーの人生。パリの名所は我々にも懐かしい。

 

ジョージア,白い橋のカフェで逢いましょう:ジョージア(旧グルジア)からやってきた映画は、奇妙な設定で描かれるラブストーリー。脚本・監督はアレクサンドル・コペリゼ。二人が初めて出会うのは道ですれ違った時、彼女が本を落とし、それを彼が拾って渡したから。その日の夜に再会した二人は、名前を聞かないまま翌日カフェで逢う約束をする。しかし、その夜ふたりは共に外見が変わってしまう、名前も聞いていないのに…。

 

仕掛人・藤枝梅安2:豊川悦司の梅安第2作は、1作目より落ち着いた作り。事件が基本的に一つなので、それほど殺しが続くことはない。監督の河毛俊作、相棒の片岡愛之助とは今作も同じ。今月のトークショー参照。

 

AIR/エア:1984年ナイキがバッシュのテコ入れのために、ブルズのマイケル・ジョーダン用のシューズを作り、エア・ジョーダンとして売り出した実話の映画化。監督ベン・アフレック、主演マット・デイモンはご存知「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」の幼馴染コンビ。当時バッシュではトップだったコンバースは2003年にはナイキに買収されている。

 

クモとサルの家族:動物の映画でもなく、この奇妙な題名があらわすくらいには奇妙な映画を作ったのは、プロデューサー・脚本・編集・監督と1人4役の長澤佳也。時代劇、しかも忍者の映画を作るための様々な工夫をしながら作り上げた。今月のトークショー参照。

 

幻滅:フランスの文豪バルザックの「人間喜劇」の一編、「幻滅―メディア戦記」の映画化。19世紀前半、詩人を夢見る田舎の青年が、貴族の妻と駆け落ち同然でやってきたパリが舞台。200年前の物語が現代のメディア状況にも通ずるドラマになっている。

 

世界の終わりから:精緻に作られた画面で語られる終末に向けての物語。その暗さゆえに2時間15分の長さは耐えられない。マイナスに向けて、執拗に語られる物語を作り出したのは原作・脚本・監督の紀里谷和明。美しい画面にも心は休まらない、疲れるばかり。

 

独裁者たちのとき:チャーチルを独裁者と呼んでいいかは迷うところだが、原題は「おとぎ話」。20世紀のスターリン、ヒトラー、ムッソリーニ、チャーチルの4人の権力者と波のように流れる民衆、更にキリストまで登場させて描くアレクサンドル・ソクーロフ(ロシア)の新作。ソ連時代は全作品が上映禁止になっていた監督、ロシアになって世界のトップ監督の一人となった。今月のトークショー参照。

 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<日本映画>
国立映画アーカイブの特集<日本の女性映画人(1)―無声映画期から1960年代まで>で2作品を見た。その1本「宗方姉妹(むねかたきょうだい)」は小津安二郎が、初めて松竹以外で撮ったもので新東宝作品。かなりモダンな映画。アメリカ滞在3か月後の帰国パレードで投げキッス連発などで大バッシングされた田中絹代の再起作でもある。高峰秀子が明るい妹役。女性映画人としては鈴木伸さんという女性スクリプターが付いた。彼女は新東宝の文芸映画を一手に担当したという。

 

 

<外国映画>
渋谷シネマヴェーラの特集<二十一世紀のジョン・フォードPartⅢ>
1950年代、ファン雑誌の人気投票の監督部門で圧倒的な人気を誇ったジョン・フォードの良さは、1963年以降に映画を見始めた自分には今一つ分かっていなかった。というより、殆ど新作がなく、彼のホームタウンであった西部劇も50年代をピークに減少していたのである。
今回のPartⅢはまだ2作品しか見ていないが、その2作品が共に面白く、見応え十分だった。西部劇でもなく、人気スターが出ている訳でもないのにこれだけ楽しませてくれるとは。


ウィリーが凱旋するとき」(1950年作品)は、真珠湾攻撃で太平洋戦争が勃発した時、田舎町で一番に志願兵に応募したウィリーが・・・如何にして凱旋することになるかまでをテンポよく、笑わせながら83分で見せてくれる。


虎鮫島脱出」(1936年作品)リンカーン大統領の暗殺に関連して、その犯人を助けたとして逮捕され終身刑となったマッド医師の実話に基づく物語。虎鮫島は重罪犯が収容された監獄島、その周りには鮫がいるというもの。ここに収容された無実のマッド医師の闘いを描く。

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー 

 

4月9日 TOHOシネマズ日本橋 「仕掛人・藤枝梅安2」上映前のトークショー
豊川悦司、片岡愛之助、小野了(以上出演者)、河毛俊作(監督)、宮川朋之(司会)
この作品は日本映画専門チャンネル25周年記念としても製作されていて、今回司会をされた宮川氏は日本映画放送の執行役員・編成制作局長。
この映画の舞台挨拶としては「仕掛人・藤枝梅安」1・2を合わせて20回目で、最後の舞台挨拶とのこと。出席者各位の“今回お越しいただきありがとうございます”といった挨拶の後、客席からの質問に答える形で行われた。
作品1でのアクションについての質問で、水中でのアクションが印象深いが苦労とかありましたかの問いに、豊川から“水中では体が浮いてしまうが、身に付けているのはふんどしのみ、その下に5㎏程のウエイトを付けての撮影だった。ウエイトが見えないようにするのが大変だった。”と回答。片岡は吹き矢を武器にしていたが、“吹き矢自体は案外簡単にふけてしまうので、目の前に人がいる時は気を使った。”


この作品は梅安(豊川)と彦次郎(片岡)の関係がバディ・ムーヴィと言えるがそれについては?との問いに、豊川からは“片岡さん相手でやりやすかった。”、片岡からは“二人とも休憩中は気楽に会話をしていて、カチンコの音と共にすっと作品に入っていけるタイプで、スムーズに撮影が進んだ。”と回答していた。
今後二人がもし共演することがあったらどんな作品?がとの問いに、豊川から“ドラえもんの実写版とか”の回答あり。

 

4月13日 K’sシネマ「クモとサルの家族」上映後トークショー 長澤佳也監督の司会で、「メランコリック」のプロデューサー皆川暢二、監督田中征爾、俳優磯崎義知の3名が出席。
「クモとサルの家族」とは関係のない3名が登壇されたのは、長澤監督が自分と同じインディーズ作品を作っている人たちという観点から選ばれたようだ。その関係の話が続くことになる。当日見ていた人は15人前後しかいず、しかもインディーズ関係の人も多く、まるで内輪のトークショー的な雰囲気だった。
3人の誰もが言っていたのは、インディーズでありながら時代劇を撮ったことに対する驚きだった。さらに、デジタルではなくフィルム撮影したことにも驚いたと。大きな資本の後ろ盾がなく、製作費が高くなると言われる時代劇に挑んだことへの驚きだ。それに対し監督は、時代劇と言っても思いっきり変則で、金のかからない脚本にしたと答えた。確かにこの変わった作品は最小の時代劇衣装と小道具で出来上がっている。

 

4月15日 国立映画アーカイブ「御法度」上映後対談 成田祐介(映画監督)、樋口尚文(映画評論家)
成田監督はこの作品で大島監督の助監督として製作に関わった。それ以前に大島と働いたことはなく、突然大島から呼ばれたという。前作「愛の亡霊」製作中の大島に会いに行くと、ピンクのスーツを身に付けた大島がいて、驚いたという。実際に製作に関わって分かったことは、大島は事前準備をきっちり行い、撮影スタート時点では90%完成しているような体制で作っていたという。宴会好きな大島は撮影中も機会があれば飲み会をしていたらしい。
大島に請われてこの作品でデビューとなった松田龍平は、ナルシストでいつも自分を見つめていたとか。

 

4月21日 ユーロスペース「独裁者たちのとき」上映後トークショー ゲスト:佐野史郎 聞き手:上田洋子(ロシア文学者、「ゲンロン」代表)
2005年のアレクサンドル・ソクーロフ監督作品「太陽」(昭和天皇を描いた作品)で侍従長を演じた佐野史郎が当時の経験も交え語った。
優しい監督だったけれど、きっちり締めるところもあって、OKになるまで何回も撮り直しするときもあった。細かいところまで調べ上げて作られたセット、撮影開始の1日前にそのセットに呼ばれ、じっくり周りの状況を見せてくれ、話もしたことは、翌日からの撮影に役に立った。2005年のロシアには自由な空気があり、開放的なムードがあった。その中とは言え、あの作品を作ったのは凄い事だった。今では作ることはできない。
ある時メディアのインタビューを受けている時、天皇制をどう思うかと聞かれた。その少し前に教会で必死に神に祈る老婆を見て、その必死さの中に神がいないと生きていけない人もいるのだと感じた。天皇制がないと困ると考える人もいると答えた。
「独裁者たちのとき」は20世紀の独裁者4人(スターリン、チャーチル、ヒトラー、ムッソリーニ)の実際の映像を使いながら描く「おとぎ話(原題)」。キリストも、更に流れるような民衆の姿も登場する。

 

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき


●浪費するための資金稼ぎのため愚作にもどんどん出演すると言われるニコラス・ケイジが、自分自身を演じる「マッシブ・タレント」。ましな作品になったかと思ったのだが、う~む残念。

 

●いやー、ここまでやるかの「オオカミ狩り」は別の面でも驚いた。フィリピンにいた韓国人の犯罪グループの韓国への送還を描いているが、映画の始まりに以前2017年にも同じような犯罪グループ送還がありと出てくるのだ。日本でも最近フィリピンやカンボジアから犯罪グループが日本に送還されているが、こうした犯罪を映画にしたという話は聞かない。韓国映画では既に電話詐欺も描かれていた。今起きつつある状況を映画に取り込む速さに驚いたのだ。どうして日本ではできないのだろうか?いや、やればできる。今月見た「Revolution1」は安倍晋三銃撃事件の実行犯を描いていた。これを話題にしないマスコミは?

 

 

 

 

 



今月のトピックス:舞台挨拶有料編  

 

Ⅰ 舞台挨拶有料編

 

今月のトークショーでよく紹介している初日舞台挨拶は、事前にチェックしたわけではなく、初日に行ったら偶然行われたというものが多い。監督や主演者などが挨拶と共に作品についての話をされることが多く、面白く聞くことができる。こうした挨拶、トークショーは初日及び早い時期に来てくれる(集客数が映画の成績になり、ロードショ―期間が長くなったりする)ことに対するサービスのような扱いで、無料で行われるのが殆どだ。
殆どなので、極たまに料金アップという場合がある。登壇する人たちに出演料が払われるということだろうか?今までそうした舞台挨拶に行ったことはなかった。


今回「仕掛人・藤枝梅安2」の有料舞台挨拶に行ってみた。
この映画は4月7日に公開された。東京では、4月7日に丸の内ピカデリーで、4月8日に新宿ピカデリーで、4月9日にTOHOシネマズ日本橋で、いずれの日も2回ずつ行われた。そのいずれも均一料金2100円で、予約はチケットぴあとなり、チケット料金の他にシステム利用料220円、発券手数料110円が必要になる。つまりチケット入手には2430円が必要となるのだ。一般料金より530円アップ、シニア料金に対しては倍以上の1230円のアップとなる。上記3つの映画館は、いずれもサイト予約ができるが、このチケットに関しては映画館側での発売は一切なく、すべてチケットぴあでの発売となっていた。映画館での通常3日前からの発売と違って、かなり前から発売されていた。各映画館サイトのスケジュール欄には、舞台挨拶付きの回は掲載されていなかった。事前発売が完売とならず、当日券が映画館で発売されたかは確認していない。
つまり、この有料舞台挨拶付き上映会は、まるで演劇やショーのチケットと同じような扱いだったのだ。


この発売方は何処の誰の発案かは知らないが、ぴあ発売にすることによってシステム利用料、発券手数料合わせて330円も余分に支払わなければならない。最近ぴあのサイトを見ていたら「ロストケア」の舞台挨拶が出ていた。TOHOシネマズ真門(大阪府)のオープンイベントの一つとして行われるもののよう。これも2100円となっていた。ぴあによるこの舞台挨拶ビジネス、以前から行われていたのだろうか?
どうなんでしょうね、このシステム?

 

 

 

 

 

Ⅱ 映画本


1.ひるは映画館、よるは酒 by 田中小実昌
こみまささんは、映画好きだとは知っていた(映画についての本が数冊ある)が、それ以外の知識がなく、今回Wikipediaを読んで、作家、翻訳家、随筆家で、直木賞、谷崎潤一郎賞受賞者であることを知った。さらに、東京大学文学部哲学科に無試験入学(びっくり!)したにもかかわらず、殆ど出席することなく除籍になったらしい。
さらにさらに、著作リスト、翻訳リストを見るとその数の多さに驚く。今回のちくま文庫の「ひるは映画館、よるは酒」は、今までに出版された映画関係の本などから集められたオリジナルのアンソロジー。読んでいると映画館に出かける日々が綴られていて、1日3~4本を見ることも結構ある。しかも出かける映画館の幅広さも尋常ではない。映画館に辿り着くまでの旅をも楽しんでいる。こんな行動をしていて、遊んでばかりという印象の人にしては、こんなにも多くの本を出していたのかとびっくりしてしまう。
その中に映画館関係で驚く話が書かれている。
ひとつは、平日は途中から始まる映画館があったということ。映画館名は忘れてしまったが、3本立ての上映時、土・日曜日は始まりから上映してすべてを見られるが、平日の1回目は途中から上映されるというもの。土日のスケジュールをそのまま維持するために、開館時間の遅い平日は初めの方を端折って途中から始まるというもの。初めて聞いた。
もう一つは海外の映画館で、上映開始時間と同時に切符売り場が開くという映画館。当然、初めの方は見られない。ひどい時は開始時間を過ぎても切符売り場が開かない映画館があったという。

 

 

2.アメリカ映画に明日はあるか by 大高宏雄
著者大高宏雄さんは、映画の興行面について発信している映画ジャーナリスト。作品についても鋭い指摘が多い。今回の本は、現在も連載が継続しているキネマ旬報の「ファイトシネクラブ」(最新号で526回、23年以上の連載)から彼自身がピックアップした記事で構成されている。この20年間、日本の映画マーケットにおけるアメリカ映画の変化について書かれている。
アメリカ映画が日本マーケットで下降線をたどるようになった大元の原因は、スピルバーグが1993年に作った「ジュラシック・パーク」にあったとしている。画面の中に恐竜たちが闊歩しているのを見た時の衝撃は、多くの人の記憶に残っている。常に新しい技術でマーケットを開拓してきたハリウッドは、不可能を可能にしてしまうCG画面を送り出してきた。その衝撃は大きかった。しかし、どんな映像も可能になるために、一度慣れてしまうと新しい映像に感動する度合いは低くなってしまう。その結果、ハリウッドの新作映画に対する期待度が小さくなってしまったというのだ。
そうした状況に、日本におけるアニメの人気が重なり、日本の映画マーケットは世界のマーケットとは異なる動きになっている。最近では、世界的に大ヒットし、多くの国で興収1位になった「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が、日本ではアニメに負けて3位が最高になっている。
日本の映画マーケットはガラパゴス化しているのだろうか?

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、五月晴れはまだ続いているだろうかの5月25日にお送りします。


                         - 神谷二三夫 -


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