2025年9月号 戦後80年の戦争関連映画back

 

そろそろいい加減にしてほしいと思える今年の暑さ。

先月に続き真夏日が続いている。

まあまあ、カッカしては自ら暑くしているようなもの。

そんな時は頭を冷やして、

そう、映画館で!

 

 

 

 

今月の映画

 

7/26~8/25の暑~い暑~い31日間に出会った作品は46本、

邦/洋画は13/33とほぼ通常のペース。



<日本映画>

   13本(新13本+旧0本)

【新作】
木の上の軍隊 

事故物件ゾク 恐い間取り 

逆火 

長崎-閃光の影で- 

劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~何回ミッション』 

満天の星 

水の中で深呼吸 

行きがけの空 

近畿地方のある場所について 

神の島 

劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来 

雪風 YUKIKAZE 

豹変と沈黙-日記でたどる沖縄線への道

 

<外国映画>

   33本(新30本+旧3本)

【新作】
ファンタスティック4:ファースト・ステップ

  (The Fantastic Four: First Steps) 

私たちが光と想うすべて

  (All We Imagine as Light) 

MELT メルト

  (Het Smelt) 

スタントマン 武替道

  (武替道 / Stuntman) 

アフリカン・カンフー・ナチス2 逆襲のロボトラー

  (African Kung-Fu Nazis 2) 

アンティル・ドーン

  (Until Dawn) 

星つなぎのエリオ

  (Elio) 

入国審査

  (Upon Entry) 

原爆スパイ

  (A Compassionate Spy) 

盲山

  (盲山 /  Blind Mountain) 

美しい夏

  (La bella estate) 

エレベーション 絶滅ライン

  (Elevation) 

KNEECAP ニーキャップ

  (Kneecap) 

ジュラシック・ワールド 復活の大地

  (Jurassic World: Rebirth) 

キムズビデオ

  (Kim's Video) 

アイム・スティル・ヒア

  (Ainda estou aqui) 

野。良犬

  (野。良犬 / The Pye-Dog) 

IMMACULATE 聖なる胎動

  (Immaculate) 

ランド・オブ・バッド

  (Land of Bad) 

FOG OF WAR 見えざる真実

  (Fog of War) 

ダリ!!!!!!

  ( Daaaaaali!) 

セカンド・アクト

  (Le Deuxieme Acte) 

The Summer あの夏

  (The Summer)  

鮫が消えた入江

  (我在這裡等你 / A Balloon's Landing) 

バレリーナ:The World of John Wick

  (Ballerina) 

マルティネス

  (Martinez) 

大統領暗殺裁判16日間の真実

  (Land of Happiness) 

パルテノペ ナポリの宝石

  (Parthenope) 

わたしは異邦人

  (Gunduz Apollon Gece Athena
  / Apollon by Day Athena by Night) 

四つの悪夢

  (Thee Wreckers Tetralogy )

ニクスの怪物

  (Monster of Nix)

すべてが変わったようで、何も変わっちゃいない

  (Everything is Different, but Nothing has Changed)

(オランダの鬼才ROSTOの短編3本一挙上映、1本としてカウント)

 

【旧作】

<人間を描く ウィリアム・ワイラー特集> 

黄昏
  (Carrie)

 

<ルビッチ・タッチのすべて>

天国は待ってくれる

  (Heaven Can Wait) 

メリー・ウィドウ

  (The Merry Widow)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

今月は作品紹介文の長いものが多くなりました。

 

1   アイム・スティル・ヒア

“私は今もここにいる”という題名は、連れ去られた夫に対する妻の叫びだ。ブラジルで1970年代に起こった事件を、その一家の息子マルセロ・ルーベンス・パイヴァが書いたポルトガル語の同名小説Ainda Estou Aquirを原作としている。1964年のクーデターにより軍事政権になっていたブラジル。下院議員職を剝奪され民間のキャリアに戻っていたマルセロの父ルーベンス・パイヴァが1971年1月に逮捕されてしまう。彼は家族に秘密で政治亡命者を支援していた。この後パイヴァは帰ってこない。夫不在になった妻のエウニセは48歳で法学部を卒業、ブラジル先住民の権利についての専門家となり、ブラジル連邦政府、世界銀行、国連の顧問を務め、2018年89歳で亡くなっている。監督は久しぶりにブラジルに戻ったウォルター・サレス。

 

2-1   ランド・オブ・バッド

フィリピンの南西、マレーシアの北東に位置するスールー海はイスラム過激派の移動ルートとして使われるなど危険地帯となっているらしい。この地域で活躍する米軍特殊部隊デルタフォースの活躍を描く。今の戦いはこういうものかと驚く。現地で戦う4人の兵士の行動と、遠隔地アメリカから作戦を支援する空軍の無人戦闘機のオペレーターからの指示が繰り返される。言ってみればオペレーターはゲーム感覚だろうか。米海軍全面協力によるとはいえ、銃、ハイテク兵器、戦闘機、戦術など、すべてが実にリアル、これほどリアルな今の戦いは初めて経験した。監督・プロデューサー・共同脚本を担当したのはウィリアム・ユーバンク。

 

2-2   大統領暗殺裁判 16日間の真実

1979年韓国のパク・チョンヒ(朴正煕)大統領が暗殺された。側近の情報部部長キム・ジェギュによって暗殺されたのだ。映画はこの事件の裁判を様々な立場・観点から描いている。裁判にかけられている情報部長の秘書役の軍人パク・テジュとその弁護士チョン・インフ、そしてこの事件・裁判を裏で操る合同捜査団長チョン・サンドゥの3人の人物を巡って描かれる。監督のチュ・チャンミンは“法廷シーン以外の部分は脚色が行われた”と述べていて、事実と創作を混ぜて作られている。人物の名前も変えられていたりする。

 

3-1   木の上の軍隊

実際にあったことから井上ひさしが原案を作成、彼の亡き後こまつ座で舞台化された作品からの映画化。沖縄伊江島でアメリカ軍と戦った日本兵はいつの間にか二人になり、木の上に隠れて過ごすことに。終戦したことも知らず、そのまま終戦後2年も経ってしまったという二人だけの軍隊。笑っていいものか?堤真一と山田祐貴が主演、脚本・監督は沖縄出身の平一紘。今月のトピックスも参照。

 

3-2   豹変と沈黙-日記でたどる沖縄線への道

日中戦争から第二次世界大戦までに出兵した4人の日記に沿いながら、残された子供や親せきの人たちにインタビューをしていくドキュメンタリー。戦場を経験することで人間が豹変していく様や、日記には書いているのに様々な事柄について表立っては沈黙を守ってしまう様子が描かれる。出兵した人たちが亡くなり、遺品の中に日記があり、そこで初めて父親の豹変を知る人たち。南京虐殺など、負の記憶をないことにしようとする最近の風潮にNOを言わなければならない。今月のトピックスも参照。

 

 

 

今月も他にも楽しめる映画が沢山、映画館でどうぞ。(上映終了済作品もあります。)

 

◎ファンタスティック4:ファースト・ステップ:時代は1965年の設定とはいっても、アース828が舞台であるSF作品。お話の世界だが、いかにも半世紀前の感じがなんだか心地よい。昔のテレビ番組を見ている感じといえばよいか。

 

◎私たちが光と想うすべて:映画の製作本数、観客動員数がともに世界一というインド。その映画の特徴は、歌と踊り(複数言語のため言葉以外でも楽しめるように)と3時間前後の長さ。映画大国インドが昨年のカンヌ国際映画祭で初めてグランプリを受賞と話題になった作品。この映画には歌も踊りもなく、2時間弱の作品。二人の女性看護師の生き方を描く静かな映画だ。

 

◎スタントマン 武替道:ブルース・リーやジャッキー・チェンなどを中心に多くの人を魅了してきた香港のカンフーアクション映画。激しいアクションを支えてきたスタントマンたちに焦点を当てた映画がやってきた。見せよう会通信では香港及び香港映画が心配だと度々書いてきた気がするが、この映画を見ていて笑ってしまった。登場する映画関係者がこれからの香港(と映画界)を凄く心配しているのだ。やっぱり当事者の方が強く感じるはずだよね。いずれにしろ、楽しめる映画になっていて安心した。

 

◎長崎-閃光の影で-:原爆が投下された後の長崎で、人々を救おうとした若い看護師の活躍を中心に描く映画。日本赤十字社の看護師たちの手記を原案としての映画化だ。監督・脚本(共同)を担当した被爆3世の松本准平は、映画のラストで流れる主題歌を長崎出身の福山雅治に依頼している。福山は、被爆し一時は枯死寸前になりながらも今も生き続ける山王神社(長崎市)の“被爆クスノキ”を歌った自作の「クスノキ」を、看護師を演じた3人の女優が歌う「クスノキ-閃光の影で-」バージョンとして提供している。今月のトピックスも参照。

 

◎星つなぎのエリオ:ディズニー&ピクサーが送り出してきた新作アニメションは、いかにも優等生的な物語を持っている。誰もがひとりぼっちを感じることがあって、どこかにそれを共有してくれる誰かがいると信じられる世界。日本題名の“星つなぎ”の言葉通り、それを宇宙に広げて描いている。どんなに形がおかしな誰かでも、互いに認め合えばいいと教えてくれる。

 

◎原爆スパイ:原爆開発のマンハッタン計画に18歳という最年少で参加したテッド・ホールは、この爆弾をアメリカだけが独占してしまう危険性を考え、多くの情報をソ連に渡していた。言ってみれば核兵器の均衡を目指したともいえるこの行為とテッド・ホールの人生が1997年に知れ渡ると、当然ながら大論争が巻き起こったという。日本でも騒がれたのだろうか?騒がれないはずはないと思うが、知らずに来てしまった。このテッド・ホールとその妻ジョーン・ホールのインタビュー(テッドは1999年に亡くなっているので、多分1990年代の)を含めたこのドキュメンタリーの原題は、A Compassionate Spyで、思いやりスパイとなる。

 

◎美しい夏:イタリア文学界の巨匠チェーザレ・パヴェーゼの同名小説の映画化。16歳のお針子として働く少女ジーニアが主人公。1938年のトリノがその舞台。ある時、3歳年上の長身の女性アメーリアと知り合う。彼女はヌードモデルとして何人もの画家によって描かれている美女。彼女の生き方を知ることで、ジーニアは大人になっていく。

 

◎ニーキャップ:ニーキャップは北アイルランド・ベルファースト出身のヒップホップグループ。アイルランド語を話し、歌詞もすべてアイルランド語だ。さらに、アイルランド統一も訴えている。映画は彼ら3人が彼ら自身を演じるドキュメンタリー風物語。父親役はマイケル・ファスベンダーが演じている。最近の音楽グループは全く知らないし、ラップという音楽も訴えたい物事が分かってないので、この映画について書くのは遠慮したいところだ。しかし、昔のIRA(これは宗教が絡んでいるが)といい、今回の映画といい、アイルランド人の反抗精神にはかなり驚く。

 

◎ジュラシック・ワールド 復活の大地:1993年の衝撃的なジュラシックパークから7作目となるジュラシックシリーズの最新作。今回は人類を救う新薬開発のため、陸・海・空の3大恐竜のDNAを採取するのが目的。新薬開発の博士に同行するのは、秘密工作専門家の女性と彼女が信頼する傭兵で、3人での冒険だ。スカーレット・ヨハンセンが演じる秘密工作専門家という設定が功を奏し、結構新鮮だ。30年以上前にスピルバーグが作った大ヒットシリーズは、今回も大ヒットしている。

 

◎キムズビデオ:1950年代にビートニクの拠点となり、60年代には学生、芸術家、音楽家などが多く住みニューヨークのボヘミアと呼ばれたイーストヴィレッジ。その地にあったキムズビデオは1987年に開店、2008年には閉店となっているが、他では手に入らないビデオを含め55000本のビデオがあって、有名監督を含め会員数は25万にまでなったという。韓国系移民のキム・ヨンマンさんが経営していた。閉店後5万本以上のビデオは何故かシチリアに移送されたが、会員が訪ねると管理されていず、ひどい状態だった。それを秘密裏にニューヨークに運び入れる迄を追ったドキュメンタリーは面白い!

 

◎神の島:太平洋戦争時、ポートモレスビー作戦にて戦死した小山勲の魂は闇の中をさまよっていたが、神の島にたどり着き、肉体を与えられる。80年ぶりに家族を探しに日本を訪れるという物語。脚本・監督の谷口広樹はフィリピンへの遺骨収集の旅に参加して以来、作品のアイディアを温めてきたという。今月のトークショーも参照。

 

◎雪風:第二次大戦中、艦隊の駆逐艦として活躍した雪風と乗員のドラマ。雪風は機動性を生かし、沈没した船の乗員救助などに活躍、どんな激戦でも必ず帰ってくるのでいつしか“幸運艦”と呼ばれるようになったという。終戦後は復員船としても使われた。寺澤艦長を竹野内豊、先任伍長早瀬を玉木宏が過剰に熱くならずに演じて好感。監督は山田敏久。今月のトピックスも参照。

 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<外国映画>


<ルビッチ・タッチのすべて>

 

エルンスト・ルビッチ(1892-1947)はベルリン生まれのユダヤ人。16歳で高校を中退し人気喜劇俳優に弟子入り、出演のほか小道具や照明の助手を務める。劇団に入った後、1912年に映画にも出演、典型的なユダヤ人の容貌を買われコメディアンとして活躍した。1914年には短編映画で監督デビュー、1918年には長編を初監督、ヒット作を連発しドイツの映画会社の看板監督となる。1922年にハリウッドの大スターだったメアリー・ピックフォードに招かれ渡米、彼女主演の「ロジタ」を監督、その後ワーナー・ブラザースと契約、「結婚哲学」「当世女大学」などを撮る。1927年にはMGMに、その翌年にはパラマウントに移籍、モーリス・シュバリエ主演でルビッチにとって初のトーキーの「ラヴ・パレイド」や、「陽気な中尉さん」を監督、その後も「極楽特急」「生活の設計」等のミュージカルやコメディを作っている。1934年にはパラマウントの意向で製作も手掛けるようになり、翌年には製作主任となっている。

1935年1月にはナチスによってルビッチのドイツ市民権が剥奪され、ドイツに残っていた家族等を呼び寄せている。1936年1月にはアメリカの市民権を獲得している。

 

後にルビッチ・タッチと呼ばれるようになったのは何か?

「THE LUBITSCH TOUCH A CRITICAL STUDY」というハーマン・G・ワインバーグの本が翻訳され、2015年に国書刊行会から「ルビッチ・タッチ」として出版された。そのサイトに、原書が刊行された時の次のような絶賛評が掲載されている。

「『ルビッチ・タッチ』を楽しく読み通した。著者はルビッチの機知とユーモアを宝物のように慈しむ“ルビッチ崇拝者”のひとりである。そういう私たちの仲間が何と少なくなったことか」〈チャールズ・チャップリン〉

「この上ない興味を持って『ルビッチ・タッチ』を読み終え、この監督について知らなかったことを数多く教えられた。ルビッチの監督としての一生はあらゆるフィルムメイカーが胸に抱く夢そのものだった。見事な成果に拍手を送りたい」〈ジャン・ルノワール〉

 

つい長くなってしまったが、渋谷のシネマヴェーラでの特集上映は8/16に始まり、9/19まで行われている。1916年から1948年までの41作品が上映されている。その内訳は次の通り。

 

   短編(すべてサイレント):8本 

   サイレント長編:13本 

   トーキー長編:20本

 

シネマヴェーラでは過去にもルビッチ特集を行っているが、今回が最大本数といえる。

 

始まったばかりで今月見たのは次の2本のみ。

「天国は待ってくれる」「メリー・ウィドウ」

 

「天国は待ってくれる」は地獄行きか否かの判定をしている閻魔大王の前で、女性遍歴を告白し懺悔する主人公のお話だが、面白さは一級品。お勧めします。

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー


8月16日 K’sシネマ「神の島」上映後、谷口広樹監督と出演者の関口理紗のトークショー

 

初めは監督一人でトーク。

23年前に遺骨収集に参加してフィリピンに出かけた時に、こうした映画を作ろうと思ったのが作品に結実した。祖父から聞いた戦争体験もヒントになっている。さらに最近のロシアのウクライナ侵攻により、夫が出征し妻が家や国を守るドキュメンタリーを見たことにも影響された。母親は父がいないと子供から責められている。

どんな人であれ戦争に関わると罪人になる。そして子供が一番苦労している。

この作品は自主製作映画で予算が少なく、俳優の皆さんにも少ない出演料で演じていただいた。その一人、主人公の母を演じた関口理紗さんに登場してもらいます。

関口さんは次のように語った。

あの時代の寒村における女性についての資料はほとんどなく、想像を働かせて演じた。製作は季節を選んで2年にわたり行われた。自身の出演する撮影はそれほど多くはなかったが、2年の間この女性ことを考え続けていた。

谷口監督は、“映画は帰ってきた人は謝ることから始まった。謝るというところから戦後を生きてきた。”と語った。予算の関係でフィルムを多く作ることはできず、これから各県を巡って行くとのことだった。

 

 

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき(良いことも、悪いことも)

 

●結構緊張することがあるあの場面を映画にしたのは「入国審査」。バルセロナからニューヨークの空港に到着したカップルは、別室に案内され細かく質問される。別室というだけでも不安になるはず。そんな時、相手の答えが自分の知らないものだったりするとますます不安に。77分の短い映画ながら、押さえるべきところはきっちり、きっぱり。

 

●面白い部分もあるのになかなか乗り切れなかったのが「セカンド・アクト」。フランスのカンタン・デュピュー監督の新作だ。映画界を舞台にしていることも関係しているが、どこまでが映画の世界で、どこからが俳優たちの現実世界かがあいまいになってくるからだ。見る人を煙に巻き、すっきりしない感を見る者に抱かせるのはこの人の特徴かもしれない。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:戦後80年の戦争関係映画

 

Ⅰ  戦後80年の戦争関係映画   

 

例年8月15日の終戦記念日前後には戦争映画が製作され、公開されてきた。今年は戦後80年、つまり実際に戦争を経験した人がどんどん少なくなっているのだ。1949年生まれの自分も戦争を経験していない。戦後の、日本が貧しかった時代を少しは経験したが、それも1960年代の高度経済成長を経て、貧しさも半世紀以上前の記憶になってしまった。それだけ平和な時代が続いているからいいことなのだが、戦争があったことを忘れずに、戦争反対を再認識したい。

 

今月見た日本映画の中に、次の5本の戦争関連映画があった。

 

 「木の上の軍隊」

 「長崎~閃光の影で」

 「神の島」

 「雪風」

 「豹変と沈黙-日記でたどる沖縄線への道」

 

ちなみに、2020~2024の5年間の同じ時期に、私の見た日本映画の中の戦争関連映画の本数は次のようになっている。

2020年:2本、2021年:2本、2022年:0本、2023年:0本、2024年:1本

今年の本数が多くなっているのがはっきりしている。戦後80年という節目の年に合わせて、製作され、公開されたということだろう。

 

今年の作品はそれぞれの特徴を持っている。

 

木の上の軍隊:これは井上ひさし氏の遺した原案をもとに、こまつ座が上演した舞台を映画化したものだ。実話から取られた原案であり、沖縄・伊江島で終戦後2年に渡って木の上での生活を続けた二人だけの軍隊を描いている。

長崎~閃光の影で:原爆投下直後の長崎で命を救おうと奔走した若き看護学生たちの手記「閃光の影で-原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記-」を原案に、松本准平が脚本(保木本佳子と共同)と監督をした映画。

 

神の島:太平洋戦争中に戦死した兵士の魂が、流れ着いた紙の島で肉体を与えられ、現代の日本にやってくるという物語。

 

雪風:駆逐艦「雪風」は他船が撃沈された時など、その乗員の救助に活躍した様が多く描かれている映画「雪風」。戦時の船で映画化されるものといえば、大きな戦艦が頭に浮かぶが、大きな戦いはなくても面白い映画はできると示してくれた。

 

豹変と沈黙-日記でたどる沖縄線への道:戦争で戦った兵士たちが、日記にその時の状況、あるいは感情を書いていた。日記は基本的に表に出ることは想定されていないが、書き手が亡くなり遺品としてそれを読んだ家族がその内容を語っているドキュメンタリー。

 

 

 

 

 

Ⅱ  最近の映画業界、復活?


このところ、映画館に多くの人が映画を見に来ている感じがする。日本映画でいえば、アニメ作品ではない「国宝」が異常な大ヒットとなったことが象徴的な出来事だ。

「ランド・オブ・バッド」を見に行った時、用事があってTOHOシネマズ日比谷のスクリーン3に入った時は上映開始3分前だった。その時パッと見るとほぼ満席だったのだ。その後も入ってくる人もいたので、たぶん満席になったと思う。93席と決して大きくないスクリーンだったが、満席自体は随分久しぶりのことだった。土曜日だったことも関係しているだろう。出ている有名スターはラッセル・クロウ一人だし、普通に考えてそれほど吸引力のある作品には思えない。しかし、作品は上出来だった。それも知って来ているような感じもあった。

映画館の予約サイトでも、“ただいま混み合っており5分待ちとなります”等の表示が出ることも。

この好調さが続くことを願うのみ。

 

 

 

 

 

 

次号は、さすがに秋で涼しいといえるといい9月25日にお送りします。



                         - 神谷二三夫 -


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