やっと、少し秋らしい日がやってきた。
9月の後半だというのに猛暑日があった頃と比べれば、
まるで天国。
このまま素直に秋になってほしい。
素直な気持ちで楽しみたいのは、そう映画館!
8/26~9/25のまだまだ暑かった31日間に出会った作品は45本、
邦/洋画は15/30、洋画は旧作11本が大きい。
新作では15/19と互角に近い。
15本(新15本+旧0本)
【新作】
六つの顔
蔵のある街
8番出口
九龍ジェネリックロマンス
壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記
メイソウ家族
海辺へ行く道
遠い山なみの光
アオショー
ブラックショーマン
ベートーヴェン捏造
LIBERTY DANCE
Dear Stranger/ディア・ストレンジャー
風のマジム
宝島
30本(新19本+旧11本)
【新作】
ベスト・キッド レジェンズ
(Karate Kid: Legends)
愛はステロイド
(Love Lies Bleeding)
ユニバーサル・ランゲージ
(Universal Language)
パトリックとクジラ 6000日の絆
(Patrick and the Whale)
シャッフル・フライデー
(Freakier Friday)
ヒックとドラゴン
(How to Train Your Dragon)
タンゴの後で
(Maria/Being Maria)
銃弾と正義
(Vettaiyan)
リモノフ
(Limonov: The Ballad of Eddie)
非常戒厳前夜
(Search and Seizure: The Rise of an Insurrection)
最後のピクニック
(Picnic)
アハーン
(Ahaan)
テイク・ミー・サムフェア・ナイス
(Take Me Somewhere Nice)
ミッシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家
(Il était une fois Michel Legrand)
ザ・ザ・コルダのフェニキア計画
(The Phoenician Scheme)
ファンファーレ!ふたつの音
(En fanfare)
ブラックドッグ
(狗陣 / Black Dog)
<Peter Barakan's Music Film Festival>
ジャニス・イアン 沈黙を破る
(Janis Ian: Breaking Silence)
【試写】
ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男(
Midas Man)(9月26日公開)
【旧作】
<ルビッチ・タッチのすべて>
生活の設計
(Design for Living)
モンテカルロ
(Monte Carlo)
真珠の頸飾
(Desire)
ラヴ・パレイド
(The Love Parade)
ベルリンのマイヤー氏
(Meyer aus Berlin)
ニノチカ
(Ninotchka)
百萬弗貰ったら
(If I Had A Million)
極楽特急
(Trouble in Paradise)
小間使
(Cluny Brown)
生きるべきか死ぬべきか
(To Be or Not To Be)
<Peter Barakan's Music Film Festival>
ONCE ダブリンの街角で
(Once)
(新作だけを対象にしています)
一部説明の長いものがあります。
1 遠い山なみの光
カズオ・イシグロの長編デビュー作の小説を石川慶監督が映画化。イシグロはエグゼクティブ・プロデューサーとしても名を連ねている。戦後長崎から渡英してきた母親の半生を聞き作品にしたいとする娘の会話から始まる。長崎では仲良くなった同年代の女性が娘を連れてアメリカに渡っていったという話が出る。渡英してから30年たった母と話を聞く娘、戦後長崎の母と友達の女性。娘たちを含め、戦後の厳しい状態を生き抜いてきた女性たちの話が描かれる。
2 宝島
真藤順丈の直木賞受賞の小説「宝島」の映画化。戦後の沖縄を舞台に、アメリカの占領下で必死に生きる若者たちと沖縄社会を描く大作。何しろ3時間11分の上映時間だ。この長さをだれることなく観客を引っ張り続けた映画を監督したのは大友啓史。脚本は大友と高田亮の共同。当時の沖縄を再現して描かれるドラマ、その画面から伝わる熱量がすごい。主演の妻夫木聡をはじめ、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太等の俳優陣の演技も吹っ切れている。
3 ミッシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家
ミッシェル・ルグランは2019年86才で亡くなっている。彼のドキュメンタリー映画で、さすがに若いころから活躍してきた人だけに昔の映像も豊富で、映画界に入る以前のものも多くあり見てよかった。11歳でパリ国立高等音楽院に入学20歳で卒業、シュバリエ、ブレル、グレコなどのために編曲・作曲家となり、22歳の時には自身のアルバム「アイ・ラヴ・パリ」をリリースしている。この年1954年にアンリ・ヴェルヌイユの映画「過去を持つ愛情」で映画音楽を初担当。その後ヌーヴェルヴァーグの映画人と作品を作っている。ジャック・ドゥミとの「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」で世界的に評価され、ハリウッド作品も多く手掛けた。フランスでは「城の生活」のジャン・ポール・ラプノーとも多く仕事していて、彼のインタビューも出てくる。この映画では、彼の歌うところも多く見られる。多くの歌手とも仕事をしていて、モンタン、ストライサンド、シナトラ、ベネット、スティング(インタビューも出てくる)、さらにクラシック界ではキリ・テ・カウナ等とも共演。本当に偉大な人だったと再認識。
映画館で楽しめる映画は他にも沢山、映画館でどうぞ。(上映終了作品もあります)
◎六つの顔:94歳(撮影時は93歳)の狂言師、野村万作を追うドキュメンタリー。監督は犬童一心、今までドキュメンタリーは作ってないのではと思いつつ作品歴を見ると、前作が「名付けようのない踊り」で田中泯のドキュメンタリーだった。この時も「メゾン・ド・メヒコ」に出演した田中と親交を重ねてきたとあるが、今回の作品も「のぼうの城」主演の野村萬斎に能楽堂へ誘われてそれ以来15年通い続けているという。その縁で万作から監督を頼まれたという。犬童監督は人との付き合いから幅を広げているんだなと感心。
恥ずかしながら狂言をきちんと見たことがなく、知識もないが、94才でもなお芸を追求しようとする野村万作には驚く。
◎蔵のある街:監督の平松恵美子は2000年以降多くの山田洋二監督作品に参加、助監督や共同脚本家として活躍してきた、2012年に「ひまわりと子犬の7日間」で監督としてデビュー、今回の新作が監督としては3作目となる。もちろん脚本も書いている。映画の舞台となる倉敷の出身でもあり、郷土愛にあふれた良い脚本だ。きょん君という自閉症スペクトラムの青年を置くことで、物語が広がっていく。倉敷出身のフィギュアスケーター高橋大輔を学芸員役で起用している。
◎ベスト・キッド レジェンズ:1984年に始まったベスト・キッドシリーズは、1994年のベスト・キッド4の後、2010年にアメリカ・中国の合作で第1作がリメイクされた。ベスト・キッドの原題はKARATE KIDでパット・モリタ演じる空手の師匠ミスター宮城に空手を教えてもらっていた。このリメイク作では空手に代わりカンフーを習うことになる。師匠役はジャッキー・チェンが演じた。今回の新作は15年ぶりの5作目になる。第1作目で主人公の少年ダニエルを演じていたのはラルフ・マッチオだったが、今回の5作目ではマッチオが空手の師匠、さらにチェンがカンフーの師匠として登場する。
◎壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記:パレスチナ・ガザ地区からのハマスの越境攻撃が始まってもうすぐ2年になる。その後のイスラエルからの報復攻撃はどんどん激しさを増し、パレスチナ側の死者は65000人を超えている。中東ジャーナリストの川上泰徳が、ガザは封鎖され入ることは困難なためパレスチナ・ヨルダン川西岸地区とイスラエルを2024年7月に訪れた際の報告ドキュメンタリーだ。今月のトークショーも参照。
◎パトリックとクジラ 6000日の絆:パトリック・ダイクストラは10代の時にスミソニアン自然史博物館に行って、実物大のシロナガスクジラのレプリカに接して以来、海でクジラと出会うために旅をしてきた。8年間の弁護士生活の時も資金をためながら世界中の海へクジラを探しに出かけた。クジラが何頭も立って寝ている衝撃的な映像以上に、クジラが人間を見極め接してくることにも驚いた。
◎海辺へ行く道:横浜聡子監督の新作は三好銀という漫画家の作品を原作としている。海辺の町の主に子供たちをとらえながら描く映画はまあ面白くは見られるのだが、今一つつかみどころがない。そこがいいのかもしれないが。
◎ヒックとドラゴン:2010年にドリームワークスで製作されたアニメーション作品はヒットし、2019年の3作目までが公開された。今回の新作は、初作アニメの実写でのリメイクだ。もちろんドラゴン部分は広い意味でのアニメーションとなるが。その部分を含めうまく作られて違和感なく楽しめる。
◎リモノフ:リモノフという名前は聞いた気はするがよくは知らなかった。調べてみると、エドワルド・ヴェニアミノヴィッチ・リモノフ(1943.2.27-2020.3.17)はロシアの政治家だが、1970年代初期には作家としてある程度成功していた。しかし、ソ連の統治体制に反抗しソ連国籍剥奪と国外追放処分を受けている。アメリカ、フランスと渡り歩いたが、ゴルバチョフの国籍剥奪者に対する恩赦でソ連の崩壊前後にロシアに帰国したという。帰国後も極右と結びついたり、反政府行動をしたりしている。このリモノフをベン・ウィンショーが演じ、「チャイコフスキーの妻」などのキリル・セレブレンニコフが監督をしている。
◎非常戒厳前夜:2024年12月3日に突如発せられた韓国のユン・ソンニョル大統領による戒厳令には驚いた。何故?その疑問に答えてくれるのがこの映画だ。この映画はニュース打破が製作している。ニュース打破とは、イ・ミョンバク政権により公共放送から不当解雇されたり、辞職したりしたジャーナリストが中心となり立ち上げた調査報道専門の独立メディア。報道の独立性確保のため企業広告をとらず、現在約6万人の市民からの支援で運営。このニュース打破は、ユン・ソンニョルが検察総長候補者に指名された2019年から彼の不正を追及してきたため、ユン政権のメディア弾圧の標的になってきた。この戦いで不安になった大統領は戒厳令を発したのだが、反対に市民たちによって大統領は弾劾されてしまった。
◎ベートーヴェン捏造:かげはら史帆による書籍「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」をバカリズムが脚本化、関和亮が監督をした。聖なる孤高の天才ベートーヴェンというイメージは、彼の秘書シンドラーによって作られたというものだが、それを日本映画で作ったのが面白い。背景となる町はオーストリアだが、日本人俳優が日本語でベートーヴェン、シンドラー、シューベルト、ショパン等を演じている。違和感のない作り。
◎ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男:ビートルズのマネージャーだったブライアン・エプスタインの生涯を映画化した作品。1967年に32才で亡くなっていたことに最も驚いた。薬の過剰摂取らしいが、事故だったとビートルズのメンバーは言っているようだ。両親の家具店の片隅にあったクラシックレコードのみのレコード店にポップス系も置き始めたころに、誘われてキャバーンクラブでビートルズの音楽に出会ったのが1961年11月9日。その音楽に魅せられ自分からマネージャーを申し出たようだ。
◎ジャニス・イアン 沈黙を破る:1970年代に好きだった女性歌手ジャニス・イアンのドキュメンタリー。映画の製作は2024年なので、今も健在とわかる。おばさんになったジャニスも登場している。1951年生まれの現在74歳。15歳の時「ソサエティーズ・チャイルド」で衝撃デビュー、1966年は白人席、黒人席と区別されていた頃で、黒人と白人の若いカップルのことを歌ったのが衝撃だったのだ。多分この当時は日本ではそれほど騒がれなかったはず。今持っている彼女のLPレコードを見てみるとこの曲が入った最初のアルバム「Janis Ian」も持っているが、これは後で買った気がする。日本で彼女が人気になったのは1974年以降で「Stars ジャニスの私小説」「Between the Lines 愛の回想録」「Aftertones 愛の余韻」と毎年LPが発売されたころだろう。きれいな声で歌われる素晴らしいメロディー。映画を見た日以降、彼女のLPレコードを聴いている。この映画はピーター・バラカンの音楽映画フェスティバルで上映されたもので、通常のロードショーではないのが残念。この日はほぼ満席に近い状態だった。かつてのファンが来たのだろう。最後の上映が9/25 17:20~角川シネマ有楽町で行われる。今月のトークショーも参照。
◎アハーン:アハーンはダウン症の青年の名前だ。81分という短かさだが、実はインド映画というのも驚き。さらに、医療・健康領域の書籍を中心に扱う社員2人の小さな出版社「生活の医療株式会社」が配給を担当。同社代表の秋元麦踏氏が国際線の機内上映にて本作を鑑賞して感銘を受け、日本での配給権を取得したという。今月のトピックスも参照。
◎風のマジム:原田マハが、契約社員から社長になった金城裕子さんの実話をもとに書いた小説「風のマジム」の映画化。沖縄の南大東島のサトウキビから沖縄産ラム酒を作る女性の活躍を描く。マジムは主人公の名前で沖縄の言葉で真心を意味する。主人公を演じるのは伊藤沙莉、監督は芳賀薫で数々のCMを手掛けた後、この作品で長編劇映画監督デビュー。
◎ファンファーレ ふたつの音:世界的に活躍する指揮者が白血病になり、ドナーを探す過程で自分が養子であり、他に弟がいることを知る。弟は北フランスの田舎町で、学食で働きながら地元のワランクール炭鉱楽団でトロンボーンを吹いていた。環境の全く異なる家にそれぞれ養子になっていたのだ。音楽を通じて二人が互いを理解していく物語。シャルル・アズナブールの「世界の果てに」が使われていて、アズナブールも聞きたくなった。
◎ブラックドッグ:映画は多くを説明しないが、遠くまで見渡せる風景、ほとんど言葉を発しない主人公、いつのまにか彼になつく孤高の犬、そして荒野を駆ける野生化した多くの犬たちの姿が見ている我々に風を送ってくる。2008年北京オリンピックの開催が迫る中国、ゴビ砂漠近くの乾いた風景を描いたのはグアン・フー監督。
<外国映画>
<ルビッチ・タッチのすべて>
特集上映で10本のエルンスト・ルビッチ作品を見た。先月の2本を加えて12本を見たのだが、今回の特集の半分も見ていない。
ルビッチ・タッチとコンピューターで検索すると次のように出ていた。
『ルビッチ・タッチは、映画監督エルンスト・ルビッチの独特なスタイルや技法を指し、特に彼の作品に見られる洗練されたユーモアや巧妙な演出が特徴です。』
洗練されたユーモアと巧妙な演出が2大要素ということだ。エロチックなことを描いても直截ではなくふっと笑わせてくれ、映画に引きずり込む演出は巧く知らぬ間に引きずり込まれる。そのテクニックの中に、物語を膨らませるということがある。単純なお話ではなく、どんどん物語が増えていく、話が広がっていくということがある。たっぷり見せてもらった感が高い。
8月31日 ユーロスペース「壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記」上映後川上泰徳監督とダースレイダーさん(ラッパー)の対談
昨年の7月にヨルダン川西岸のパレスチナとイスラエルを1か月かけて歩いてきた。ガザは閉鎖されていて入国はできないのでヨルダン川西岸に行った。パレスチナの悲惨な状況は日本でも多く報道されているが、イスラエルの人々には知らされていない。イスラエルが報道規制をしているからだ。
次の2本は角川シネマ有楽町で上映されている<Peter Barakan's Music Film Festival>で上映されたもの。共にピーター・バラカンによるトークショーがあった。
9月13日 「ONCEダブリンの街角で」
2007年に公開されたアイルランドの映画。再見して、思っていた以上に多くの曲が歌われていて、作品が後にイギリスで舞台ミュージカルになったことも納得できた。
主演のグレン・ハンサードは「コミットメント」に出ていたらしい。彼の役はキリアン・マーフィが演じる予定があったが、相手役のマルケタ・イルグロヴァが当時17歳ということで辞退したらしい。マルケタはチェコの女優だが、アイルランドはEUに入っていたのでビザなしで入国することができた。監督のジョン・カーニーはベーシスト出身。
9月15日 「ジャニス・イアン 沈黙を破る」ゲストとして湯川れい子さん登壇
ジャニスとは長い付き合いがあり、日本でもロサンゼルスでも会ったことがある。LPレコードのライナーノーツを書いたこともある。ジャニスはユダヤ人で、チビで、美人でもないというコンプレックスがあったが、日本では美しい声と可愛さで人気があった。テレビドラマ「岸辺のアルバム」の主題歌に彼女の「ウィル・ユー・ダンス」が使われたほどだった。
●作る側はこの映画で不条理な状態を表そうとしたのだろうか、いやいや単純に大ヒットゲーム「8番出口」に乗っただけかもという「8番出口」。ゲームも知らない見る方にとってはこれほど苦しい映画はなかった。狭い場所が繰り返し現れる圧迫感、物語的面白さもなく我慢のみの95分。長くなくて良かった!
Wikipediaでインド映画とは?と検索すると、次のような文章が出てくる。
『特色:多くは3時間前後の大作で、わかりやすいストーリーの娯楽作となっている。ストーリーの途中で場面ががらりと変わり、原色の豪華な衣装、大人数のダンサーによるミュージカルシーンなどが含まれている。インドの娯楽映画はアクション・メロドラマ・コメディ・歌・ダンスなど娯楽作品としての要素を雑多に含んでおり、これらは日本で「マサラムービー」と呼ばれていたことがある。』
3時間前後で、途中にIntermissionと出る場合もあるが、日本では休憩とならずに上映が続けられることが多いインド映画。
中学2年生の時(1962年)に外国映画を見るようになって以来、インド映画が日本で注目を浴びたことが2回はあった。
はじめは「大地のうた」が公開された時。サタジット・レイのこの作品は製作されたのが1955年だが、日本で公開されたのは1966年だ。ATG(日本アート・シアター・ギルド)で公開された。その高い芸術性が高く評価され、その後、「大河のうた」「大樹のうた」のオプー(主人公の名前)三部作という映画が公開された。この時はサタジット・レイという監督のみが取り上げられたのだ。他の映画の日本公開はなかったと思う。
次はマサラ映画だ。マサラはインド料理で複数のスパイスを混ぜ合わせて使うことを意味する。マサラ映画は複数のジャンルをかけ合わせた作品を指し、アクション、コメディ、ロマンス、メロドラマなどをかけ合わせることが多い。インドには言語が複数あり、それぞれの言語による映画作品があるが、たとえ言葉が分からなくても楽しめるようにと歌や踊りが取り入れられ、時間的にも長くなった。先のWikipediaで特色として挙げられた要素はまさにマサラ映画の特色なのだ。今もインドで作られる映画の多くがマサラ映画といえる。
日本で今年に入って公開されたインド映画に、このマサラに属さない作品が2本ある。
1本は先月号で紹介した「私たちが光と想うすべて」だ。歌も踊りもない2時間弱の女性映画だ。サリーを着ていなければ、他の国の映画と変わらない。
2本目が今月号の「アハーン」だ。これは自閉症の青年が主人公だ。こうした病気を描く映画がインドから来るとは思わなかった。
映画の製作本数も世界一となる年が多いインド映画、人口も世界一となればどんな人がいても不思議はないから、いろいろな主人公も描くことになるだろう。これからどんな映画が出てくるか、今のインド映画はどんどん変身している。
先週末の映画の興行収入ベスト10で「国宝」は5位に入っている。公開から16週目に入っていて、累計では観客動員数が1050万人、興行収入は148億円を超えている。今やどこまでこの数字が伸びるのかが話題になっている。
アニメではない実写映画としては、2003年に公開された「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ」が興行収入173.5億円を挙げてNo.1になっている。「国宝」の現在の数字はNo.2となり、No.1を狙えるところまで来ている。20年以上破られていない記録が、更新されるかもしれないのだ。これがいろいろなところで話題になっている。
次号は、爽やかな秋が過ぎ、初冬に近づいているだろう10月25日にお送りします。