2025年11月号 俳優・スターの話題back

 

暑く長い夏がやっと終わり、

秋らしくなったと思ったら、

すぐに冬になりそうな…。

思ってもみない展開も楽しもう。

そう、映画館でも!

 

 

 

 

今月の映画

 

9/26~10/25の夏から急に冬になったような30日間に出会った作品は
39本、邦/洋画は17/22、洋画の方が多いとはいえかなり同数に近い。

すべて新作で、旧作がゼロというのは久しぶりという気がする。



<日本映画>

   17本(新17本+旧0本)

【新作】
俺ではない炎上 

ふつうの子供 

沈黙の艦隊 北極海大海戦 

The オリヴァーな犬 このヤロウ 

揺さぶられる正義 

By 6 am夜が明ける前に

種まく旅人 

そういうものに,わたしはなりたい 

SPIRIT WORLD スピリットワールド 

ホウセンカ 

男神 

見はらし世代 

バレンと小刀 時代をつなぐ浮世絵物語

おーい,応為 

ソーゾク 

アフター・ザ・クエイク 

ヒポクラテスの盲点

 

<外国映画>

   22本(新22本+旧0本)

【新作】
シナリオ

  (Senarios) 

プロセキューター

  (誤判 / The Prosecutor) 

Dreams

  (Drømmer) 

ブラックバッグ

  (Black Bag) 

ブロークン 復讐者の夜

  (Nocturnal) 

ラスト・ブレス

  (LastBreath) 

テレビの中に入りたい

  (I Saw the TV Glow ) 

ジュリーは沈黙したままで

  (Julie Keeps Quiet) 

ピアノフォルテ

  (Pianoforte) 

リビング・ラージ

  (Život k sežrání) 

サターン・ボウリング

  (Bowling Saturne) 

殺人配信

  (Streaming) 

トロン アレス

  (Tron: Ares) 

グランドツアー

  (GrandTour) 

ホーリー・カウ

  (Vingt dieux / Holy Cow ) 

ハウス・オブ・ダイナマイト

  (A House of Dynamite) 

ハンサムガイズ

  (Handsome Guys) 

さよならはスローボールで

  (Eephus) 

ナイトコール

  (La nuit se traîne / Night Call) 

モロカイ・バウンド

  (Molokaʻi Bound) 

KIDS キッズ

  (Kids) 

Mr.ノーボディ2

  (Nobody 2)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

1  ワン・バトル・アフター・アナザー

言ってみれば“次々戦い”という題名から、これはアクション映画だと思いながらも、時々入る不思議な展開や人物にあきれながら、笑いながら、映画は進む。これは喜劇か不条理劇か?元革命家と変態軍人に加えるに謎の空手道場の“センセイ”、それでもきちんと普通の映画に収めていくポール・トマス・アンダーソン監督の手腕。おじさんになったレオナルド・ディカプリオに、きっちり変態ぶりのショーン・ペン、不思議に日本っぽいベニチオ・デル・トロの豪華俳優陣も楽しめる。こんなに役にぴったりの俳優をよく選んだものだ。

 

 

2  おーい、応為

葛飾北斎の娘お栄は北斎からいつも“おーい、おーい”と呼ばれていて、ついには葛飾応為(おうい)の号をもらい、絵師として活躍した。ある絵師と結婚したが、夫の絵を見下して離縁となり出戻った応為と北斎の二人の絵師の生きるさまを描く。絵以外のことには無頓着な二人の暮らしを、北斎が90才で亡くなるまでの約30年間にわたって追っている。引っ越し魔であった北斎と共に色々な所に移り住む応為。あまりにも豪胆であった応為を長澤まさみが熱演、北斎は永瀬正敏が好演している。監督・脚本が大森立嗣。

 

 

3  ハウス・オブ・ダイナマイト

この映画Netflixで10/24から配信されているようだが、10/10から密かに映画館公開された。女性監督キャスリン・ビグローの新作で、今までの彼女の作品と同様サスペンスに満ちた作品になっている。アメリカに向け一発のミサイルが発射されたところから始まり、着弾寸前までの緊張感を描く。迎撃ミサイルを発射するがいずれも失敗。どこから発射されたものかも、結末さえも分からずエンドとなる。

 

 

 

映画館で楽しめる映画は他にも沢山、映画館でどうぞ。(上映終了作品もあります)

 

◎俺ではない炎上:今や人々の噂話に最も大きな影響を与えるのはSNSと言っていいだろう。SNSを全くやっていないので実態がどうなのか知らないが、SNSで炎上するほどに話題になってしまったらそれを消火するのはいかに難しいかと実感させてくれる映画。人の口に上るという昔の噂話であれば、誰から聞いたということははっきりしているが、SNSは無名(ですよね?)で燃え上がるのが怖い、無責任。

 

◎ふつうの子供:“ふつうの”とはどんな子供?と思ってしまうが、今までに「きみはいい子」「ぼくが生きてる、ふたつの世界」を作ってきた呉美保監督の新作を納得して見てしまったのは、主演の嶋田鉄太君が目も細く、いかにも普通の顔をしていたからだ。2014年生まれというから11才だろうか。2021年俳優デビューとあり、テレビドラマ、映画にも多く出ているという。「ぼくが生きてる、ふたつの世界」にも出ていたというが、忘れてしまうくらい普通の子だったのだろう。

 

◎Dreams:“オスロ、3つの愛の風景”として公開された3本の映画「Dreams」「Love」「Sex」、いずれもノルウェーの監督ダーグ・ヨハン・ハウゲルードの作品だ。Wikipediaには、図書館司書、小説家、脚本家、映画監督とあり、図書館司書というのがいかにも異色の60歳。女性教師にあこがれた17歳の女子高生がその気持ちを書いた手記を祖母に見せたことから発展する物語。

 

◎沈黙の艦隊 北極海大海戦:かわぐちかいじの大ヒット漫画の映画化第2弾。前作に続き吉野耕平が監督、同じトーンでしっかり北極海でのアクションを描く。安普請さが感じられないしっかりした作りで楽しめる。

 

◎ブラックバッグ:26歳の時の長編監督デビュー作「セックスと嘘とビデオテープ」でカンヌ映画祭のパルムドールを受賞したスティーヴン・ソダーバーグも現在62歳。衝撃的デビューの後しばらくスランプに落ちていたようだが、「エリン・ブロンコビッチ」とか「トラフィック」「オーシャンズ11」等の楽しめる作品を連発してきた。今回はスパイの世界を描く。いつものように大スターを使い、今回はケイト・ブランシェットとマイケル・ファスベンダーが主演、スマートな作りで楽しませてくれる。

 

◎ラスト・ブレス:世界の海にはパイプラインや通信ケーブルが敷設されている。全部で140万キロメートル、地球の35周分になるという。海底に設置された通信ケーブルが世界の情報の大部分を運んでいる。その海底ケーブルの補修に出向く映画だ。これにはちょっと驚いた。確かに何らかの不具合があれば補修に行くしかない訳だが、実際にその映像を見せられるとかなり驚く。

 

◎揺さぶられる正義:関西テレビ制作のドキュメンタリーは、“揺さぶられっこ症候群”を巡る問題だ。乳幼児を揺さぶって脳の中などに損傷を与えたとして逮捕される事件が、関西を中心に2010年代に急増したもの。これが冤罪ではないかと関西テレビが取り組んだ作品。関西テレビの報道記者上田大輔は企業内弁護士として関西テレビに入社後、この事件を調べるために記者になった人。虐待をなくす正義と冤罪をなくす正義が激しく衝突し合うドキュメンタリー。

 

◎ジュリーは沈黙したままで:ジュリーはベルギーの15歳の少女、テニスをコーチについて練習している。このコーチが教えている他の少女が自殺し、コーチは不適切な行為があったのではと疑われコーチができなくなる。このコーチについて証言を求められるが、ジュリーだけは沈黙を守る。映画はどんなことがあったのかを描いてはいない。この事件によって影響されるジュリーの感情を描く。

 

◎リビング・ラージ:チェコのアニメーション作家クリスティーナ・ドゥフコバが描く少年の物語。クラスの女の子が気になり始める年頃で、自分の太り気味の体形が気になる。そんな時、好きな音楽で“でっかく生きよう”などと歌っている。

 

◎トロン アレス:「トロン」の第1作が公開されたのは43前の1982年、主人公がデジタル世界に入り込み戦ったが、今回の第3作では反対にデジタル世界から現実世界に入ってくるという設定だ。生存できるのは29分間だけという期限付き。半世紀近くの間にデジタル世界の情報が随分進んだためか、初作に比べ衝撃度は強くない。

 

◎ホーリー・カウ:チーズ職人だった父親の死により、18歳の主人公は7歳の妹との二人暮らしになる。フランス・ジュラ地方でコンテチーズを作ってきた父のもとで育った彼は、自分でチーズを作り、コンテストでの賞金を獲得しようとする。ジュラ地方出身のルイーズ・クルボワジェ監督のデビュー作。日本語題名は英語題名からきているが、仏語題名にしろ“なんてこったい“的な感嘆の言葉。日本語で分かる題名にしてほしかった。

 

◎ハンサムガイズ:韓国からやってきたコメディ映画。長編映画監督デビューとなるナム・ドンヒョプが脚本も書いている。中年の二人組が田舎暮らしを夢見て山小屋を買い取りやってくるのだが、大学生グループに殺人鬼と勘違いされたり…というお話。

 

◎バレンと小刀 時代をつなぐ浮世絵物語:浮世絵は明治時代に多くの作品が海外に流れたとか、そして多くの画家に影響を与えたとかは知っていても、現在の日本でどうなっているかは知らなかった。アダチ版画研究所が“現代の浮世絵”を創造するプロジェクトを追ったドキュメンタリー。今なお新しい浮世絵が生まれることに安心するが、彫師とすり師を合わせても全国に50人という数は不安も。それでも案外若い人が多いのでほっとした。

 

◎ソーゾク:ソーゾクは相続である。相続を扱った映画といえば、相続争いを想像するがそれは正しい。この映画は普通の家族の相続に起こりがちなあらゆる場面を網羅して描き、参考になること間違いなしだ。監督・脚本は藤村磨実也という知らない人。これだけの相続場面を描けるのは実体験されているからだろうか?

 

◎さよならはスローボールで:男たちが毎週集まって草野球を楽しんでいた野球場の閉鎖が決まり、その最後の試合を描いた映画。男たちは年齢も体重もバラバラ、体が動かず転んだりしながら、それでも真剣に最後の試合を楽しんでいる。この愉快な作品を、監督・脚本・編集・音楽・製作したのがカーソン・ランドという人。映画ライターもしていて、さらに音楽活動もという多彩な人、この映画で長編映画監督デビューとなった。

 

◎ナイトコール:ブリュッセルで鍵屋として働く青年、ある夜女性から部屋の鍵を開けてほしいと依頼される。簡単に鍵を開けた時、女性から“早く部屋を出て”と電話が入る。そこからはノンストップにアクションとミステリーが突っ走る。脚本がきっちりできていて最後まで飽きさせない。脚本を書いたのはこの映画で監督デビューしたベルギーのミヒール・ブランシャール。1993年生まれの注目監督。

 

◎モロカイ・バウンド:モロカイといえばハワイ、中心都市ホノルルがあるオアフ島の南東にある隣(といっても船で8時間かかるようだが)の島だ。ハワイ諸島の中では観光開発が最も少なく、手つかずの自然と伝統文化が残る島。モロカイ出身の主人公の息子や別れた妻とのドラマだが、舞台は残念ながらオアフ島のホノルル。最後に母の住むモロカイに向かうのでほっとする。監督は沖縄にルーツを持ち、ハワイで育ったアリカ・テンガン。

 

◎アフター・ザ・クエイク:村上春樹の短編連作「神の子どもたちはみな踊る」の映画化。1995~2025年の30年間にわたる4つの物語が語られるが、印象に一番残るのはカエルくんが登場する最後の物語か?このカエル、どこかで見たと画像的印象が残り、調べてみると昨年見たアニメ「めくらやなぎと眠る女」(見せよう会通信2024年9月号)のカエルだったのだ。村上春樹の原作からピエール・フォルテスが監督したフランス等の合作作品だった。2メートルを超す巨大カエルが今回の映画でも強い印象を残す。

 

◎ヒポクラテスの盲点:2020年のコロナ感染は今になってみると、我々の生活に様々な影響を及ぼしていたことがよく分かる。ワクチンについても、あれは危険だという反ワクチン派もいて、ではどうやってコロナと戦うのかと分からないことが多かった。コロナに合わせて急遽開発されたmRNAワクチンがどうであったのかを教えてくれるのがこの映画だ。早くこの映画が公開されていれば、今回のワクチンは打たなかったのだが…。

 

 

 

 


Ⅱ 今月のつぶやき(良いことも、悪いことも)

 

●1995年に写真家のラリー・クラークによって監督された「KIDS キッズ」は何故30年後の今になって日本で公開されたのだろうか?脚本は当時19歳だったハーモニー・コリンが書いたという。ニューヨークの若者たちの生態をリアルに描いているというのが売りのようだが、今見てみるとちょっと古いという感じがする。ここまで若者たちがセックスにこだわっているのかという印象の上、12~3歳の女の子がいたりするのはセンセーショナルなテーマをセンセーショナルに扱ったという気がする。

 

 

 

 

 



今月のトピックス:俳優・スターの話題

 

Ⅰ  俳優・スターの話題  

 

俳優と呼びたい人と、スターと呼びたい人がいる。

スターはその人の持つ個性が比類なく、その人が登場するだけでその場面をつかんでしまう人だ。基本的には美男・美女が多いが、必ずしも必須条件ではない。

演技派などと呼ばれる人は通常俳優といえるだろう。自分の外見を売りにはしていない。演じる役に入り込み、その人になりきって演じようとする人だ。

そんな俳優とスターの分類を飛び越えて活躍する人たちもいる。

 

1 マッツ・ミケルセン

映画館のスクリーンにマッツ・ミケルセンが現れてこちらに語り掛けてくる映像を見た時、そこに<北欧の至宝>とか、<マッツ・ミケルセン生誕60周年祭>などという文字が躍っていたので驚いた。ミケルセンはそういう人だったろうか?といった違和感があったのだ。こんなことを言うとマッツファンの方から怒られそうだが、アクション中心のちょっと冷たい男優というイメージには合わないのではと思ったのだ。正義の味方とかより、心のない悪役の方がぴったりくる。皮膚も薄そうでいかにも北欧という感じで、暖かいところには似合わないとかで、スターイメージが希薄なのだ。

Wikipediaによれば、本名マッツ・ディットマン・ミケルセンはデンマーク・コペンハーゲン出身の俳優、1965年11月22日生まれの59歳。若いころは陸上競技を志し、さらに体操選手としてトレーニングを受けていたらしい。そしてヨーテボリのバレエ・アカデミーでダンスを学び、プロのダンサーとして約10年間活躍したという。1996年オーフスの演劇学校で学び俳優キャリアをスタートさせることになる。

1996年には「プッシャー」に麻薬の売人役で出演、映画デビューを果たしている。この時点で30歳を超えている。映画ではいろいろな役を演じてきたようだが、20歳前後の若者役はできず、社会から疎外された者、回避性人格障害の内気な映画マニア、ギャング役など一ひねりある役が多くなった。これが彼には幸いし、複雑な役を演じ切る演技力が付いたといえるだろう。

そういう意味で俳優と呼べる人だったのだが、そこに“マッツ・ミケルセン、祝!生誕60周年”とまるでスター扱いの特集が出てきたのだ。日本初公開3作品を含む2000~2015年の7作品が11月14日に公開される。11月14~21日の間はまだ59歳のはずで、11月22日がちょうど60周年ということになる。この日からスターになるのだろうか?

 

2 長澤まさみ

東宝「シンデレラ」に選ばれたのが2000年、12歳の小学6年生の時だった。それ以来東宝の秘蔵っ子的アイドルになり、テレビ、映画に出演、大切に育てられ、順調に成長してきた。言ってみれば東宝のお嬢様というスターだった。1987年6月3日生まれの現在38歳。

2004年の映画「世界の中心で、愛をさけぶ」が出世作で代表作となるだろうか。芸能生活25年の間に、歌や舞台にも手を広げ無難に芸域を広げてきた。そして今年初めての時代劇に出演した。「おーい、応為」である。

この映画で彼女は俳優と呼ばれてもおかしくないところまで来たといえるのではないか?映画の初めに聞こえてきた彼女の声は一部アイドル的な調子を含んでいたので心配したが、その後どんどん声は乾いていった。豪胆で自由な女という役柄からも、北斎と共に絵に邁進していく物語からも、強くすっきりした人物像が求められ、それに応えた演技だった。

 

3 レオナルド・ディカプリオ

1997年に公開され大ヒット、当時の世界歴代興行収入のトップに躍り出た「タイタニック」。船首に立ち両手を広げるローズと後ろから彼女を守るジャックの場面写真は今もよみがえるこの映画の象徴だ。ジャックを演じたレオナルド・ディカプリオはこの作品で一躍スターになった。

本名レオナルド・ウィルヘルム・ディカプリオは1974年11月11日にロサンゼルスで生まれている。レオナルドの名前は、妊娠中の母親がイタリアの美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画を鑑賞しているとき、胎児が強い反応を示したことに由来するという。ディカプリオは“カプリ島の”の意味で父方の祖先がカプリ島出身と思われる。

14歳でテレビコマーシャルに出演、テレビドラマから映画にも出演するようになり、1993年の映画「ギルバート・グレイプ」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、当時の若手スターのトップに立つことに。続いて「ロミオ+ジュリエット」に出演、そして「タイタニック」へ続いていく。「タイタニック」で世界中に生まれた熱狂的なファンは“レオマニア”と呼ばれたが、日本では“レオ様”と呼ばれ、レオ様旋風が巻き起こった。

30歳を過ぎるあたりからは世界の巨匠監督作品に多く出演するようになる。マーティン・スコセッシ、サム・メンディス、クリストファー・ノーラン、クエンティン・タランティーノ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ等の作品に出演、イニャリトゥ監督の「レヴェナント 蘇えりし者」ではアカデミー賞主演男優賞を受賞している。

今回の「ワン・バトル・アフター・アナザー」では50歳になったディカプリオが年相応のおじさんぶりを見せつける。どちらかといえば若者のイメージが強かったスターから、立派なおじさん俳優への変化がはっきりした。

 

<マッツ・ミケルセン 生誕60周年祭>の驚きから、俳優とスターの関係に思いをはせた。

 

 

 

Ⅱ  ダイアン・キートン


ダイアン・キートンが2025年10月11日に亡くなった。享年79歳だった。

本名はダイアン・ホール、1946年1月5日にロサンゼルスで生まれている。高校卒業後ニューヨークで俳優となり俳優協会に加入するとき、すでにダイアン・ホールという名前の登録があったため、母親の旧姓キートンで登録したという。ブロードウェイではミュージカル「ヘア」に出演している。

1969年2月、ブロードウェイの舞台でウディ・アレンの「Play It Again, Sam」に出演、トニー賞にノミネートされる。この作品は1972年に映画化され、日本題名「ボギー、俺も男だ」として公開された。

映画館で初めて彼女を見たのは「ゴッドファーザー」だった。彼女が一躍有名になったのは1977年の「アニー・ホール」、この年のアカデミー賞主演女優賞を受賞している。この作品製作時はすでに別れていたが、かつて公私共にパートナーであったウディ・アレンの監督・脚本・主演作品だ。彼女の本名はダイアン・ホールで、愛称アニーとも呼ばれていたようで、作品で死に取りつかれたスタンダップコメディアンを演じたアレンの自伝的作品ではと言われたが、アレン自身は否定している。

ダイアン・キートンはその後「ミスター・グッドバーを探して」「レッズ」等に出演したが、1990年以降はどちらかといえばあまり目立たない小さな作品に出演している。映画出演は亡くなるまで毎年に近く行っていた。

最後まで「アニー・ホール」の幸福なイメージを保ち続けたスターで女優だった。

天国でも幸福でありますように!

 

 

 

次号は、いよいよ忘年会が始まるだろう11月25日にお送りします。



                         - 神谷二三夫 -


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